ユキグニファクトリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユキグニファクトリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、まいたけ、エリンギ、ぶなしめじ等のきのこ類の生産及び販売を主力事業とする企業です。2026年3月期は、消費者ニーズに合わせた新商品の投入や販促活動により、前連結会計年度に対して増収増益を達成しました。独自の生産技術により高品質な製品を国内外へ安定供給しています。


※本記事は、ユキグニファクトリー株式会社の有価証券報告書(第9期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ユキグニファクトリーってどんな会社?


きのこ類の生産・販売を主力事業とし、きのこ総合企業としてグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1983年7月に設立され、まいたけの生産販売を開始しました。1994年3月に新潟証券取引所に上場し、2000年には東京証券取引所市場第二部へ指定されました。その後、2015年に一度上場廃止となりましたが、2020年9月に東証一部へ再上場し、2022年4月にプライム市場へ移行しました。2025年4月に現在の名称へ商号変更しています。

従業員数は連結で1,106名、単体で1,065名です。筆頭株主は事業会社の神明ホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
神明ホールディングス 50.05%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.65%
SMBC日興証券 0.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長は湯澤尚史氏が務めています。社外取締役は7名中4名を占めています。

氏名 役職 主な経歴
湯澤尚史 代表取締役社長 八海醸造の執行役員などを経て、2016年7月に同社常務執行役員に就任。2022年4月より現職。
藤尾益雄 取締役 神明ホールディングスの代表取締役社長などを務め、2017年10月より同社取締役に就任。
大塚杉男 取締役(監査等委員) 雪国商事の代表取締役社長などを経て、2023年6月より同社取締役に就任。


社外取締役は、千林紀子(アサヒカルピスウェルネス代表取締役社長)、辻田淑乃(ルリエ代表取締役)、内藤哲哉(内藤哲哉公認会計士事務所代表)、岡香里(岡かおりFORTUNA法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「茸事業」および「その他」事業を展開しています。

茸事業
まいたけ、エリンギ、ぶなしめじ、マッシュルーム、本しめじ等のきのこ類の生産および販売を行っています。自社開発の「極」ブランドのまいたけを中心に、小売事業者や消費者へ高品質なきのこを提供しています。
収益は、これらのきのこ製品の販売による代金から得ています。運営は同社およびオランダの子会社であるSPROOMZ B.V.などが行っています。

その他
健康食品の製造および販売、きのこを原料とした代替肉製品の製造および販売、培地活性剤の販売、直売所の運営などを行っています。
収益は、これらの製品の販売代金から得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、税引前利益と当期利益は一時的に落ち込みを見せたものの、2026年3月期には大きく回復して増益となっています。新商品の投入やパッケージの刷新など、消費者ニーズを捉えた提案活動の強化が利益の拡大に貢献しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
税引前利益 46億円 18億円 22億円 22億円 42億円
当期利益(親会社所有者帰属) 30億円 12億円 14億円 15億円 30億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を見ると、売上高および各利益段階において改善傾向が確認できます。社名変更に伴うパッケージ刷新や新規事業製品の拡充により、売上総利益率と営業利益率の双方が向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 371億円 378億円
売上総利益 131億円 137億円
売上総利益率(%) 35.3% 36.2%
営業利益 24億円 43億円
営業利益率(%) 6.5% 11.4%

(3) セグメント収益


茸事業とその他の売上が伸びており、特に茸事業の増益が全体の利益成長を牽引しています。販売単価の向上や多様な顧客ニーズに応じた商品開発により、収益性が大幅に改善しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率(2026年3月期)
茸事業 368億円 375億円 25億円 44億円 11.7%
その他 3億円 4億円 -1億円 -1億円 -26.3%
調整額 - - -0億円 0億円 -
連結(合計) 371億円 378億円 24億円 43億円 11.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金の範囲内で投資や借入金の返済を行う「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 55億円 45億円
投資CF -23億円 -21億円
財務CF -22億円 -24億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.8%でプライム市場の平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も54.3%でプライム市場の製造業平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「キノコのチカラ、ミライのセカイ」をパーパスに掲げ、世界の健康を創造する企業を目指しています。自然の恩恵に感謝し、地域社会との調和を育みながら、すべてのステークホルダーとともに持続可能な共生の世界を実現することをミッションとして定めています。

(2) 企業文化


「個を磨き、オープンマインドに行動します」「プレミアムな活動で、周囲に感動を与えます」「人々と世界の健康に貢献します」というクレド(行動指針)を設定しています。自然への敬意と高い倫理観、そしてチャレンジ精神を持って社会課題に向き合う文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2024年3月期~2028年3月期)において、安定的な増収・増益と企業価値向上を目指しています。
・売上収益:420億円超
・海外売上収益比率:6~7%前後
・コアEBITDAマージン:18%前後
・投下資本利益率(ROIC):10%前後

(4) 成長戦略と重点施策


既存のプレミアム事業の強化と新規事業の創出により国内基盤を高収益化するとともに、全社横断的な業務プロセスの合理化でコスト削減を進めます。また、取得した海外企業の統合(PMI)と欧米・アジアでの展開を通じ、グローバルなきのこ総合メーカーとしての成長を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大を支える専門人材や、グローバル展開を担える多様な人材の確保・育成に注力しています。従業員の自律や挑戦を尊重し、スキル向上の機会を提供するとともに、女性活躍の推進や次世代人材の育成を通じて、多様で多才な人材が活躍できる安全・安心な職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.3歳 12.9年 4,691,647円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.4%
男性育児休業取得率 112.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.3%
男女賃金差異(正規雇用) 78.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(85%)、障がい者雇用率(2.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食の安全に関するリスク

異物混入や誤表示など、消費者に健康被害を及ぼす製品事故が発生した場合、社会的信用の低下や対応費用の発生により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は高度な検査体制の構築や品質管理を通じて未然防止に努めています。

(2) 財務に関するリスク

過去の組織再編に伴い多額ののれんを計上しており、事業の収益性が低下した場合には減損損失が発生するリスクがあります。また、多額の借入金に付された財務制限条項に抵触し、期限の利益を喪失する可能性もあります。

(3) 市場の縮小や競争激化

国内の少子高齢化に伴う食品市場の縮小や、競合他社の増産による価格下落圧力が生じるリスクがあります。これに対し同社は、プレミアムブランド戦略の推進や海外市場への展開、新規事業の創出による収益源の多様化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。