※本記事は、ユキグニファクトリー株式会社 の有価証券報告書(第8期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ユキグニファクトリーってどんな会社?
旧社名は雪国まいたけ。まいたけ等の人工栽培・量産化技術を強みに「茸事業」を展開するきのこ総合企業です。
■(1) 会社概要
同社は1983年に設立され、まいたけ等の生産販売を開始しました。2015年にベインキャピタルグループによる公開買付けを経て非上場化し、経営体制を再構築した後、2020年に東京証券取引所市場第一部へ再上場しました。2023年にはオランダのきのこ事業会社を買収して海外展開を加速させ、2025年4月には現在の商号へ変更しました。
同社グループの従業員数は連結1,064名、単体1,022名です。筆頭株主は米卸大手の神明ホールディングスで、過半数の株式を保有する親会社となっています。第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は外国法人の常任代理人である銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社神明ホールディングス | 50.03% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 7.75% |
| HSBC BANK PLC A/C M AND G (ACS) VALUE PARTNERS CHINA EQUITY FUND | 1.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長は湯澤尚史氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 湯澤 尚史 | 代表取締役社長 | 1995年同社入社。八海醸造執行役員を経て2016年同社復帰。常務執行役員営業本部長等を経て2022年4月より現職。 |
| 藤尾 益雄 | 取締役 | 1989年神明入社。同社社長、カッパ・クリエイトHD社長、元気寿司会長等を歴任。2022年4月より神明HD社長兼任。 |
| 大塚 杉男 | 取締役(監査等委員) | 1990年同社入社。購買部長、生産本部副本部長、品質保証部長等を歴任。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、千林紀子(元アサヒカルピスウェルネス社長)、辻田淑乃(元日本たばこ産業IR広報部長)、内藤哲哉(元新日本有限責任監査法人シニアパートナー)、岡香里(元デロイト弁護士法人)です。
2. 事業内容
同社グループは、「茸事業」および「その他」事業を展開しています。
■茸事業
同社グループの主力事業であり、まいたけ、エリンギ、ぶなしめじ、マッシュルーム、本しめじ、はたけしめじ等の生産及び販売を行っています。独自の工業生産手法により、農薬や化学肥料を使用せず、安定的な生産能力と品質を実現しています。また、海外事業としてオランダでのマッシュルーム製造販売も展開しています。
主な収益は、小売事業者等への製品販売による対価です。運営は、国内では主にユキグニファクトリーがまいたけ・エリンギ・ぶなしめじ等を、瑞穂農林が本しめじ・はたけしめじ等を担当しています。海外ではSPROOMZ B.V.がマッシュルーム等の製造販売を行っています。
■その他
茸事業に含まれない事業として、健康食品や2025年2月に販売を開始した茸代替肉製品「キノコのお肉」シリーズの製造販売、直売所の運営、培地活性剤の販売などを行っています。まいたけ由来の抽出物を含む健康食品や、きのこの新たな価値を提案する加工食品を展開しています。
収益は、製品や商品の販売代金です。運営は、健康食品や代替肉製品、直売所についてはユキグニファクトリーが、培地活性剤の販売については瑞穂農林が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 514億円 | 471億円 | 422億円 | 475億円 | 531億円 |
| 税引前利益 | 71億円 | 46億円 | 18億円 | 22億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | 13.9% | 9.7% | 4.3% | 4.7% | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 47億円 | 30億円 | 12億円 | 14億円 | 15億円 |
直近5期間の業績を見ると、売上収益は2023年3月期に底を打った後、回復傾向にあり、2025年3月期には500億円台に復帰しました。一方、利益面では2021年3月期をピークに減少傾向にありましたが、直近2期は横ばいから微増で推移しており、下げ止まりの兆しが見られます。
■(2) 損益計算書
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 334億円 | 371億円 |
| 売上総利益 | 111億円 | 131億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.1% | 35.3% |
| 営業利益 | 28億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 8.4% | 6.5% |
売上収益は前期比で増加し、売上総利益率も改善しました。しかし、営業利益は減少しています。これは販売費及び一般管理費の増加に加え、その他の費用が増加したことが主な要因です。本業の収益性は向上していますが、販管費等のコストコントロールが課題となっています。
販売費及び一般管理費のうち、運賃が33億円(構成比34%)、従業員給付費用が23億円(同24%)を占めています。また、売上原価においては、材料費・人件費等が237億円(売上原価の60%)、公正価値変動による利得が158億円(同40%)となっています。
■(3) セグメント収益
茸事業は、野菜高騰による代替需要や価格転嫁の浸透により売上が伸長しましたが、原材料費や労務費の上昇によりセグメント利益は減少しました。その他事業は、健康食品や新規事業が含まれますが、赤字となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 茸事業 | 331億円 | 368億円 | 28億円 | 25億円 | 6.8% |
| その他 | 3億円 | 3億円 | 0.5億円 | -0.8億円 | -23.9% |
| 調整額 | - | - | -0.4億円 | -0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 334億円 | 371億円 | 28億円 | 24億円 | 6.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ現金を借入金の返済や株主還元、投資に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 53億円 | 55億円 |
| 投資CF | -34億円 | -23億円 |
| 財務CF | -2億円 | -22億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、パーパスとして「キノコのチカラ、ミライのセカイ」を掲げています。雪国で磨いた技術や探求心をベースにきのこの新たな可能性を結集し、「世界の健康を創造する企業」となることをコーポレートアイデンティティとしています。地域社会との調和を育みながら、持続可能な共生の世界を実現することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「Credo(行動指針)」として、「個を磨き、オープンマインドに行動します」「プレミアムな活動で、周囲に感動を与えます」「人々と世界の健康に貢献します」の3つを定めています。自然への敬意と感謝を持ち、高い倫理観とチャレンジ精神で社会課題に向き合う姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年3月期から2028年3月期までの中期経営計画では、「プレミアムきのこ総合メーカーとしてグローバルに展開し成長する」というビジョンのもと、高収益体質の構築と海外展開を推進しています。
* 売上収益:420億円超(アップサイド計画:600億円超)
* 海外売上収益比率:6~7%前後(アップサイド計画:30%前後)
* コアEBITDAマージン:18%前後
* 投下資本利益率(ROIC):10%前後
■(4) 成長戦略と重点施策
国内市場では、プレミアムブランドの強化と新商品開発により他産地との差別化を図り、高収益化を目指します。また、全社横断的な業務プロセス改革(BPR)とDX活用によりコスト削減を推進します。グローバル展開においては、買収したオランダ企業の統合効果を最大化しつつ、北米・欧州・アジアでの更なる事業機会を探索します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、グローバル展開と新たな価値創造を実現するため、多様で多才な人材の確保と育成に注力しています。従業員の「自律」と「挑戦」を尊重し、専門性の高い人材の育成・登用を進めるとともに、女性活躍推進や次世代人材の育成に取り組んでいます。また、エンゲージメント向上と健康増進を通じ、安全・安心な職場環境づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.9歳 | 12.6年 | 4,432,767円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.1% |
| 男性育児休業取得率 | 125.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 76.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理監督職比率(29.2%)、障がい者雇用率(2.7%)、有給休暇取得率(92%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 財務に関するリスク
同社グループは多額ののれんや有形固定資産を保有しており、事業収益性が低下した場合には減損損失が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、多額の借入金があり、金利上昇リスクや財務制限条項への抵触による期限の利益喪失リスクがあります。実際、当連結会計年度にはマッシュルーム事業において約16億円の減損損失を計上しています。
■(2) 低炭素経済への移行リスク
気候変動対応として炭素税導入等の規制強化が進む中、原油価格高騰による原材料・エネルギーコストの上昇が懸念されます。同社はTCFD提言への賛同やGHG排出量削減目標の設定等を進めていますが、想定以上のコスト増や消費者志向の変化が生じた場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 競争優位性低下リスク
国内人口減少による市場縮小や、競合他社との競争激化、気候変動による野菜市況の影響等により、主力製品であるきのこの需要や価格が変動するリスクがあります。特に売上の過半を占めるまいたけの需要が大幅に縮小した場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社はプレミアム戦略や海外展開等で対応を図っています。



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