※本記事は、ホクト株式会社の有価証券報告書(第63期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ホクトってどんな会社?
きのこの生産・販売を中核とし、関連する加工品や化成品の製造も展開する企業です。
■(1) 会社概要
1964年に一般包装資材の販売を目的として設立され、1968年にきのこ栽培用ビンの製造を開始しました。1972年より本格的なきのこ生産・販売に着手し、1999年に東証一部(現プライム)へ上場を果たしています。その後、全国各地へのきのこセンター設置や海外現地法人の設立により事業を拡大しています。
従業員数は連結4,097名、単体3,325名です。筆頭株主は事業会社の北斗で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には八十二長野銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 北斗 | 18.73% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.88% |
| 八十二長野銀行 | 4.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は水野雅義氏が務めており、社外取締役比率は27.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 水野雅義 | 代表取締役社長 | 1990年同社入社。常務取締役、専務取締役、取締役副社長などを経て、2006年7月より現職。 |
| 稲冨聡 | 取締役生産本部長 | 1985年同社入社。きのこ総合研究所長、取締役開発研究本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 中田康平 | 取締役財務本部長 | 2014年みずほ銀行業務監査部副部長。2018年同社入社、執行役員経理部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 佐藤由幸 | 取締役営業本部長 | 2001年同社入社。第四営業部長、執行役員第二営業部長、執行役員営業本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、北村晴男(弁護士法人北村・加藤・佐野法律事務所代表弁護士)、小竹貴子(クックパッド料理の楽しみ共創室部長)、池田潤(インターメスティック執行役員CHRO人事戦略本部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内きのこ事業」「海外きのこ事業」「加工品事業」「化成品事業」を展開しています。
■国内きのこ事業
ブナシメジ、エリンギ、マイタケなどきのこの生産・販売を行っており、全国各地の市場や量販店等に安全・安心なきのこを安定供給しています。
収益源はスーパー等の量販店や生協へのきのこ販売代金です。運営は同社が主体となり、生産から営業まで全国のきのこセンターを通じて一貫して行っています。
■海外きのこ事業
米国、台湾、マレーシアに拠点を持ち、きのこの生産・販売を行うとともに、アジアやヨーロッパでの市場調査などの営業活動を展開しています。
各現地の小売店や市場に対するきのこ販売代金が主な収益源です。運営はHOKTO KINOKO COMPANY等の現地子会社が担っています。
■加工品事業
きのこを使用したレトルトパウチ食品(カレー、スープ等)や健康食品の新商品開発、販売、および通信販売事業に注力しています。
消費者や大手食品メーカー、スーパー等からの加工品販売代金が収益源です。運営は同社の加工食品事業部や、子会社のアーデンが行っています。
■化成品事業
きのこ生産用資材(ビン等)の製造、農業・包装資材や飲料用ボトルの販売、きのこの生産から包装までの総合相談・指導を行っています。
きのこ生産農家や食品・非食品業界のメーカーからの資材・機械販売代金が収益源です。運営は子会社のホクト産業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は709億円から859億円へと着実に増加傾向にあります。経常利益は一時的に赤字となった期間もありましたが、その後は回復し、直近では82億円(利益率9.5%)まで収益性が向上しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 709億円 | 730億円 | 794億円 | 831億円 | 859億円 |
| 経常利益 | 37億円 | -19億円 | 47億円 | 70億円 | 82億円 |
| 利益率(%) | 5.2% | -2.5% | 5.9% | 8.4% | 9.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16億円 | -28億円 | 40億円 | 36億円 | 57億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の売上高は831億円から859億円へと増加し、売上総利益も238億円から249億円へと拡大しています。営業利益率も8.0%から8.2%へと微増し、安定した収益基盤を維持しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 831億円 | 859億円 |
| 売上総利益 | 238億円 | 249億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.6% | 29.0% |
| 営業利益 | 66億円 | 70億円 |
| 営業利益率(%) | 8.0% | 8.2% |
販売費及び一般管理費のうち、運搬費が54億円(構成比30%)、販売手数料が43億円(同24%)、給料手当が24億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントにおいて売上高が前期から増加しています。特に主力の国内きのこ事業が売上の大部分を牽引しており、化成品事業も121億円から136億円へと順調な成長を見せています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内きのこ事業 | 551億円 | 561億円 |
| 海外きのこ事業 | 77億円 | 82億円 |
| 加工品事業 | 82億円 | 80億円 |
| 化成品事業 | 121億円 | 136億円 |
| 連結(合計) | 831億円 | 859億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で借入の返済を進めつつ、投資も手元資金で賄う健全な状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 122億円 | 108億円 |
| 投資CF | -90億円 | -29億円 |
| 財務CF | -17億円 | -44億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.1%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「きのこで健康を届けることを使命に市場と消費を拡大する」「利益の創出と企業の社会的責任を両立する」という経営ビジョンを掲げています。健康食材であるきのこの研究や生産を通じて、関わるすべての人に満足していただける企業を目指しています。
■(2) 企業文化
コーポレートメッセージ「しあわせ栽培」のもと、だれもが健やかに笑顔で送れるよう健康という「しあわせ」の胞子を飛ばし続けることを約束しています。「良質」「安定収穫」を掲げ、整理、整頓、清潔、清掃の「4S運動」を実行する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
安定的な増収・増益を実現し、高い収益性を確保することを目標としています。連結売上高営業利益率と親会社株主に帰属する当期純利益を最重要指標と位置づけ、以下の数値目標を掲げています。
* 連結売上高営業利益率:8.2%
* 親会社株主に帰属する当期純利益:53億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「ホクト サステナビリティ目標」などの重要課題に取り組みつつ、各部門の戦略を推進します。国内ではエネルギーマネジメントやDXで原価低減を図り、海外では米国での新工場建設やマレーシアでの早期黒字化などを通じて事業を拡大する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「従業員エンゲージメントの向上」と「人材ポートフォリオの最適化」を両輪とし、事業戦略に応じた人材(イノベーション人材、コア人材、マネジメント人材)の確保・育成を進めています。働きがいのある職場の実現と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.6歳 | 14.5年 | 6,029,004円 |
※平均年間給与は賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 106.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 49.9% |
| 男女賃金差異(正規労働者) | 53.2% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 64.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントサーベイにおけるトータルスコア(3.59)、正社員の離職率(3.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気候変動による需要変動リスク
国内のきのこ価格は露地栽培される野菜相場の影響を受けやすく、暖冬などの気候要因できのこの需要が伸び悩んだ場合、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格・エネルギー費高騰のリスク
きのこの培地原料であるコーンコブミール等の輸入価格や、生産工程で使用する重油・電気等のエネルギー価格が高騰し、費用増加分を適切に転嫁できない場合、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) きのこ市場における競合リスク
国内市場には複数の有力な競合先が存在し、他社による供給量の増加や値引き戦略、広告宣伝活動などにより同社グループの優位性が確保できなくなった場合、販売単価の下落等を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。



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