※本記事は、ホクト株式会社 の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ホクトってどんな会社?
国内最大級のきのこ総合企業です。研究開発から生産、販売までを一貫して行い、「きのこで菌活」を提唱しています。
■(1) 会社概要
1964年に一般包装資材の販売会社として設立され、1968年にきのこ栽培用ビンの製造を開始しました。1983年にきのこ総合研究所を設置して研究開発体制を強化し、1999年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2006年には米国に現地法人を設立するなど、海外展開も積極的に進めています。
同社の連結従業員数は4,048名、単体では3,267名です。筆頭株主は株式会社北斗で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には主要取引銀行である地方銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 北斗 | 18.73% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.97% |
| 八十二銀行 | 4.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は水野雅義氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 水野 雅義 | 代表取締役社長 | 1990年入社。きのこ生産・販売本部長やホクト産業会長等を歴任し、2006年より現職。 |
| 稲冨 聡 | 取締役生産本部長 | 1985年入社。きのこ総合研究所長、開発研究本部長、生産本部長などを経て2025年より現職。 |
| 中田 康平 | 取締役財務本部長 | 2014年みずほ銀行業務監査部副部長。2018年同社入社。経理部長を経て2025年より現職。 |
| 佐藤 由幸 | 取締役営業本部長 | 2001年入社。第四営業部長、執行役員第二営業部長などを経て2025年より現職。 |
| 原 明 | 取締役経営企画本部長 | 1996年入社。ホクト産業各支店長、同社社長室長、経営企画部長を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、北村晴男(弁護士)、小竹貴子(クックパッド本部長)、池田潤(インターメスティック執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内きのこ事業」「海外きのこ事業」「加工品事業」および「化成品事業」を展開しています。
■(1) 国内きのこ事業
日本全国に配置された生産センターにおいて、「ブナシメジ」「エリンギ」「マイタケ」等の生産および販売を行っています。また、新品種の開発やきのこの機能性研究も推進しています。
主な収益は、市場、量販店(スーパー)、生活協同組合等への製品販売による対価です。運営は主にホクトが行っています。
■(2) 海外きのこ事業
米国、台湾、マレーシアに拠点を持ち、現地の生産センターにおいてきのこの生産および販売を行っています。各地域での市場拡大を目指し、営業活動を展開しています。
主な収益は、現地の小売店や市場等への製品販売による対価です。運営はHOKTO KINOKO COMPANY、台灣北斗生技股份有限公司などが担当しています。
■(3) 加工品事業
カレーや健康食品、きのこを使用した加工品(水煮・冷凍など)の販売を行うほか、レトルトパウチ食品の製造を手掛けています。
主な収益は、消費者や取引先への製品販売による対価です。運営はホクトの加工食品事業部および子会社のアーデンなどが行っています。
■(4) 化成品事業
きのこ生産に必要な栽培用資材(P・Pビン等)や包装用機械、食品包装用資材等の製造・販売を行っています。
主な収益は、きのこ生産者や食品メーカー等への資材・機械販売による対価です。運営は子会社のホクト産業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は700億円台から800億円台へと緩やかな増加傾向にあります。利益面では、2023年3月期に一時的な赤字を計上しましたが、その後は回復し、直近では増益基調にあります。特に最新期では、野菜相場の高騰に伴うきのこ価格の堅調な推移により、利益率が大きく改善しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 739億円 | 709億円 | 730億円 | 794億円 | 831億円 |
| 経常利益 | 65億円 | 37億円 | -19億円 | 47億円 | 70億円 |
| 利益率(%) | 8.8% | 5.2% | -2.5% | 5.9% | 8.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 33億円 | 16億円 | -28億円 | 40億円 | 36億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益率は大きく向上しており、収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 794億円 | 831億円 |
| 売上総利益 | 198億円 | 238億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.9% | 28.6% |
| 営業利益 | 32億円 | 66億円 |
| 営業利益率(%) | 4.0% | 8.0% |
販売費及び一般管理費のうち、運搬費が52億円(構成比30.4%)、販売手数料が42億円(同24.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内きのこ事業は、野菜相場の高騰によるきのこ価格の堅調な推移により、増収かつ大幅な増益となりました。海外きのこ事業は減収となったものの増益を確保し、加工品事業と化成品事業も増益となりました。全セグメントで利益が増加しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内きのこ事業 | 520億円 | 551億円 | 39億円 | 70億円 | 12.7% |
| 海外きのこ事業 | 79億円 | 77億円 | 9億円 | 12億円 | 15.6% |
| 加工品事業 | 75億円 | 82億円 | 3億円 | 4億円 | 4.9% |
| 化成品事業 | 120億円 | 121億円 | 2億円 | 3億円 | 2.5% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -21億円 | -22億円 | - |
| 連結(合計) | 794億円 | 831億円 | 32億円 | 66億円 | 7.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ホクトグループは、事業運営に必要な流動性と資金源を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動から生み出される資金を示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や資産の取得・売却等による資金の増減を表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や社債の発行・返済、配当金の支払い等による資金の動きを示しています。
同社は、自己資金に加え、銀行借入や社債発行により資金を調達し、成長に向けた投資を継続しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 84億円 | 122億円 |
| 投資CF | 10億円 | -90億円 |
| 財務CF | -88億円 | -17億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「きのこで健康を届けることを使命に市場と消費を拡大する」および「利益の創出と企業の社会的責任を両立する」ことを経営ビジョンとしています。健康食材であるきのこの研究、生産、販売を通じ、すべてのステークホルダーの信頼と期待に応えることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
コーポレートメッセージ「しあわせ栽培」の旗のもと、だれもがより健やかに笑顔で毎日を送れるように、健康という「しあわせ」の胞子を飛ばし、「しあわせ」を栽培しつづけることを約束しています。また、「整理、整頓、清潔、清掃」の「4S運動」を実行しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年5月に、2025年度からの5カ年中期経営計画を発表しました。安定的な増収・増益を基本目標とし、より高い収益性を確保する観点から、「売上高」および「営業利益」を最も重要な指標と位置づけています。
■(4) 成長戦略と重点施策
国内きのこ事業では、品質向上と安定栽培、生産オペレーションの効率化、調達コストの最適化に取り組みます。営業面では、鮮度重視の営業やエリア・アイテム別の戦略遂行、健康成分の訴求による高付加価値商品の拡販を進めます。海外事業では、米国でのマーケティング強化や台湾での高付加価値化、マレーシアでの早期黒字化を目指します。全社的には、組織再編やDXを含む経営基盤の強化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中長期的な企業価値向上を目指し、「人」への投資を積極的に行う方針です。「女性活躍推進」「働きやすい職場づくりの推進」「健康経営の推進」を重点課題とし、DE&Iの推進やエンゲージメントの向上、自律的なキャリア形成の支援などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.2歳 | 14.1年 | 6,123,130円 |
※平均年間給与は、税込支払給与であり、賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 51.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 53.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 69.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性係長職数(2人)、女性主任職数(18人)、エンゲージメントサーベイにおけるトータルポイント(3.51)、有給休暇取得率(79.2%)、正社員の月間平均残業時間(15.4時間)、正社員の離職率(6.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気候変動に関するリスク
多くの野菜が露地栽培であり天候の影響を受けるため、野菜相場に連動してきのこ価格も変動する可能性があります。特に最需要期である秋から冬にかけて、暖冬等の気候要因によりきのこの需要が伸び悩んだ場合、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の変動に関するリスク
きのこの主要生産材であるコーンコブミール等の輸入原材料や、生産過程で使用する重油等について、為替変動や原油価格高騰による価格上昇が発生した場合、燃料費、電力費、荷造包装費等のコスト増につながり、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 自然災害、事故等に関するリスク
きのこは栽培管理設備の整った工場内で生産されていますが、地震等の自然災害や突発的な事故が発生した場合、生産活動に支障をきたす可能性があります。実際に上田第一きのこセンターでの火災が発生しており、こうした事象は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外事業に関するリスク
米国、台湾、マレーシアに現地法人を設置して事業を行っていますが、現地の政治・経済情勢の変化、法律・税制の変更、テロや紛争、公衆衛生上の問題など予期せぬ事態が発生した場合、海外事業の運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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