※本記事は、株式会社極洋 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
極洋は、水産事業、生鮮事業、食品事業、物流サービス事業を主軸に展開しています。同社グループは、極洋、子会社36社、関連会社5社および非連結子会社1社により構成されています。
単体従業員数は769名、連結従業員数は2,542名です。セグメントは水産事業、生鮮事業、食品事業、物流サービス事業、その他事業の5つです。
主な国内グループ会社は、キョクヨー秋津冷蔵、極洋商事、極洋食品、極洋水産、キョクヨー総合サービスなどです。
同社グループは、前連結会計年度に海外企業を買収し、海外現地事業の売上貢献と事業規模の拡大を図っています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
株式会社極洋は、食の安定供給を支える水産事業を中核とする企業です。同社グループでは、従業員の長期的なキャリア形成を支援し、多様な働き方を尊重する環境づくりに力を入れています。給与水準や人材育成、多様性に関する取り組みを通じて、どのような働き方ができるのかを見ていきましょう。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高いことから、従業員が安定して長く働き続ける傾向にあることがうかがえます。経験豊富な人材が多数在籍し、組織の安定性に貢献していると考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 9,268,717円 |
| 平均勤続年数 | 16.5年 |
| 平均年齢 | 41.6歳 |
| 単体従業員数 | 769人 |
| 連結従業員数 | 2,542人 |
| 単体のグループ内比率 | 30.3% |
同社グループは、退職一時金制度、確定給付企業年金基金制度、確定拠出年金制度を設けています。これらの制度は、同社及び連結子会社に適用されています。
退職一時金制度はありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。確定給付制度における退職給付債務は48.3億円、年金資産は54.6億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、「人間尊重」を企業理念とし、働きやすい職場環境づくりを通じて従業員のモチベーション向上と能力発揮を促すことを人材戦略の基本方針としています。これにより、生産性の向上や効率的な経営の実現、メンタルヘルスの不調予防にもつながると考えています。
給与制度については、3年前に導入した役割等級制度に基づき、各等級の職責と求められる成果を明確化した基本給テーブルを設定しています。これにより、従業員は自身の役割と報酬水準の関係を明確に把握でき、給与決定プロセスの透明性が高まっています。基本給の改定は、能力・資質を主たる評価項目とする年1回の人事評価に基づいて行われます。
賞与は年2回支給され、会社の業績指標、所属組織の目標達成度、個人の組織貢献度を総合的に評価し、業績連動基準に基づき支給額が決定されます。短期的な成果を賞与に、長期的・中期的な能力発揮を基本給に反映させることで、従業員のモチベーション向上と持続的な企業価値向上を両立させる方針です。
具体的な人材育成・環境整備の取り組みとして、若手社員の育成に力を入れており、新入社員には約6ヶ月間の国内主力工場での現場研修を実施しています。また、社員の主体的な学びをサポートするため、通信教育講座の奨励金制度や、海外事業拡大を見据えた英語力試験の団体受験なども行っています。女性活躍推進では、女性管理職比率の向上、働きやすい環境整備、人材育成を目指し、キャリアデザイン研修やキャリアリターン制度を導入しています。男性の家事・育児への積極的な参画を促す啓発活動や、時間単位年休の導入、エンゲージメントサーベイの実施による職場環境改善にも取り組んでいます。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。男性育児休業取得率は、育児介護休業法に基づく公表義務の対象項目として選択しておらず、公表されていません。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 57.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 59.5% |
多様性・登用
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性の継続雇用の割合 | 57.5% |
| 退職者の再雇用 | 0名 |
育児・介護支援
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性社員の育児休業取得率及び育児を目的とした休暇利用者の割合 | 85.7% |
| 男性社員の育児休業等取得者数 | 12名 |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
極洋グループは、水産物の調達から加工、販売、そして物流までを一貫して手掛ける食の総合企業です。多岐にわたる事業を通じて、人々の食生活を支えています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、水産事業、生鮮事業、食品事業、物流サービス、その他の事業セグメントを展開しています。水産物の買付から加工、販売、生鮮品の加工や漁獲・養殖、各種食品の製造・販売、さらには冷蔵倉庫業まで、幅広い領域で事業活動を行っています。特定の外部顧客への売上高が連結売上高の10%以上となることはなく、収益源が分散していることが特徴です。また、海外での事業も拡大しており、日本以外の地域からも収益を得ています。
水産事業
水産物の買付、加工、販売を行っています。国内販売では一部商品の販売量が減少したものの、魚卵やカニ、ホタテ、サバ、北洋魚の販売が伸長しました。海外事業も拡大傾向にあります。
収益は、水産物の国内外での取引から得ています。
生鮮事業
寿司種や刺身などの生食商材の加工・販売、カツオ・マグロ等の漁獲・養殖・買付を行っています。マグロや養殖マグロ、寿司種などの販売が好調に推移しました。海外まき網事業も売上が伸長しています。
収益は、生鮮水産物の調達・加工・販売、および漁獲・養殖から得ています。
食品事業
業務用冷凍食品、市販用冷凍食品、缶詰・海産物珍味の製造・販売を行っています。業務用冷凍食品ではカニ風味かまぼこやエビフリッターなどの販売が増加し、缶詰ではサバ缶やマグロ缶、サンマ缶が伸長しました。
収益は、各種食品の製造・販売から得ています。
物流サービス
冷蔵倉庫業等を行っています。入庫数量や荷動きの増加により売上が伸長しました。
収益は、冷蔵倉庫の運営や利用運送サービスから得ています。
その他の事業セグメント
保険代理店業等を行っています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 水産事業 | 1,687億円 | 1,950億円 |
| 生鮮事業 | 658億円 | 717億円 |
| 食品事業 | 659億円 | 655億円 |
| 物流サービス | 16.7億円 | 17.4億円 |
| その他の事業セグメント | 5.5億円 | 5.8億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの直近5期間の業績を見ると、売上高は継続して増加傾向にあります。経常利益は直近で減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益は増加を続けています。これは、厳しい経営環境の中でも事業基盤の拡充に努め、着実に収益を確保している状況を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,536億円 | 2,722億円 | 2,616億円 | 3,027億円 | 3,346億円 |
| 経常利益 | 69.0億円 | 81.8億円 | 88.6億円 | 109億円 | 100億円 |
| 経常利益率 | 2.7% | 3.0% | 3.4% | 3.6% | 3.0% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 46.3億円 | 57.8億円 | 59.4億円 | 67.4億円 | 68.4億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 430.83 | 539.10 | 548.61 | 567.48 | 576.02 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は前期から増加しており、生産性が向上している傾向を示しています。一方で、従業員1人あたりの営業利益は前期から減少しています。これは、売上高の増加に対して営業利益の伸びが追いついていない状況を反映していると考えられます。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 122.2百万円 | 131.6百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 4.5百万円 | 4.2百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループの財務状況は、事業活動と投資活動の資金の流れから、現在の経営状態と将来に向けた方向性を示しています。自己資本の厚みや手元資金の状況、そして事業活動によるキャッシュフローの動向から、経営の安定性を確認できます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤を見ると、自己資本比率は36.1%となっています。これはプライム市場の製造業平均と比較すると低い水準ですが、非製造業平均よりは高い水準です。ROE(自己資本利益率)は9.5%で、プライム市場平均の9.4%とほぼ同水準を示しています。
手元資金である現金及び預金は、当期末に110億円となり、前期末から増加しました。これらの財務指標は、同社グループが事業活動を継続していく上での安定性を示すものです。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 684億円 | 789億円 |
| 自己資本比率 | 36.5% | 36.1% |
| ROE(自己資本利益率) | 10.7% | 9.5% |
| 現金及び預金 | 75.1億円 | 110億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは、棚卸資産の増加などにより7.5億円の支出となりました。投資活動によるキャッシュフローは、固定資産の取得による支出などにより52.2億円の支出となっています。この結果、事業活動と投資活動を合わせたフリーキャッシュフローは59.6億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュフローは、短期借入金の増加などにより90.8億円の収入となっています。これは、事業活動と投資活動に必要な資金を、主に借入によって調達している状況を示しています。このような資金の流れは、事業の拡大や設備投資を積極的に行っている可能性を示唆しており、将来の成長に向けた投資が継続されている状況です。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 58.4億円 | △7.5億円 |
| 投資CF | △90.4億円 | △52.2億円 |
| 財務CF | 21.5億円 | 90.8億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △31.9億円 | △59.6億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、国内外から水産物をはじめとする原材料を買付しており、漁獲規制の強化や水揚げ数量の変動などにより原材料市況が変動するリスクがあります。また、中国・東南アジアでの海外加工をはじめ、欧州、北米などで海外事業を営んでおり、海外における物流の混乱や予期しない法律・規制の変更、紛争などが業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、海外事業や商品開発などの業務・研究を営んでおり、海外人材や専門的知識を有する人材の流出・不足、または十分な人材育成や人材獲得ができない場合に、競争力や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
極洋は、人間尊重を経営の基本とし、食を通じて社会に貢献することを目指す総合食品会社です。健康で心豊かな生活と食文化の発展に寄与する企業文化を大切にしています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
極洋グループは、人間尊重を経営の基本に据え、健康で心豊かな生活と食文化への貢献、そして社会とともに成長することを目指しています。魚を中心とした総合食品会社として成長を追求し、安心・安全な食品の供給と環境保全を経営の重点課題に掲げています。
内部統制システムの整備と企業倫理の徹底を通じて、透明度の高い事業運営を行い、企業価値を高めることをビジョンとしています。中期経営計画『Gear Up Kyokuyo 2027』では、企業パーパスのもと、事業基盤や財務基盤、ステークホルダーとのパートナーシップの強化を図る方針です。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
極洋グループは、企業理念である「人間尊重」に基づき、働きやすい職場環境づくりを重視しています。これにより、従業員のモチベーション向上や能力発揮、生産性向上を目指す企業風土です。
また、「キョクヨーグループサステナビリティ基本方針」を策定し、価値の創出と共有、社会とのコミュニケーション、多様な人材が活躍できる環境、環境との調和、コーポレートガバナンスの充実を掲げています。公正な事業活動とコンプライアンスの徹底を通じて、社会的な責任を果たすことを大切にしています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
極洋グループは、原材料価格の高騰や円安、消費者の消費意欲の低下、水産資源の減少といった国内外の不透明な事業環境に直面しています。これらの課題に対し、取引先との関係強化による安定的な原料調達と商品提案力の強化を通じて、持続的な成長に努めています。
また、海外での収益性向上による事業規模の拡大と利益伸長、環境変化に耐えうる財務基盤の拡充も重点テーマです。中期経営計画『Gear Up Kyokuyo 2027』では、「人財・組織」の強化を重要な視座として施策を実行しています。
ステークホルダーとのパートナーシップ強化策として、積極的なコミュニケーションやサステナビリティを意識した取り組みを行い、信頼関係の構築を図る方針です。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
極洋の取締役会は、社外取締役による監督と監査役による監査を通じて、透明性の高い経営を目指しています。経営の意思決定と業務執行を分離する執行役員制度も導入されています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
極洋の筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行であり、機関投資家が上位を占める資本構成です。特定の創業家や事業会社が過半数を占めるような状況は見られず、幅広い株主によって支えられている傾向があります。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 11.86% |
| りそな銀行 | 4.37% |
| 農林中央金庫 | 3.72% |
| 日本カストディ銀行 | 3.17% |
| 東洋製罐グループホールディングス | 2.63% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は18名(男性15名・女性3名)で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は井上誠氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上誠 | 代表取締役社長 | 1980年同社入社、水産部門や大阪支社長などを経て、2018年より同社代表取締役社長に現職。 |
| 近藤茂 | 取締役副社長 | 1982年同社入社、海外事業部長、水産加工部長などを経て、2024年より同社取締役副社長に現職。 |
| 木山修一 | 専務取締役業務本部長 | 1983年同社入社、企画部長、総務部長などを経て、2026年より同社専務取締役業務本部長に現職。 |
| 檜垣仁志 | 常務取締役管理本部長 | 1986年同社入社、経理部長、経営管理部長などを経て、2026年より同社常務取締役管理本部長に現職。 |
| 田中豊 | 取締役大阪支社長 | 1984年同社入社、大阪支社冷凍食品部長、調理冷凍食品部長などを経て、2023年より同社取締役大阪支社長に現職。 |
| 山口敬三 | 取締役生鮮事業本部長 | 1984年同社入社、品質保証部長、家庭用冷凍食品部長などを経て、2025年より同社取締役生鮮事業本部長に現職。 |
| 服部篤 | 取締役水産事業本部長 | 1988年同社入社、水産加工第2部長、東京支社長などを経て、2026年より同社取締役水産事業本部長に現職。 |
| 三山正樹 | 取締役食品事業本部長水産加工事業本部長 | 1989年同社入社、Kyokuyo America Corporation代表取締役社長などを経て、2026年より同社取締役食品事業本部長、水産加工事業本部長に現職。 |
| 小田匡彦 | 取締役業務副本部長 | 1990年りそな銀行入行、同行ローン管理部長などを経て、2020年同社入社、企画部長、人事部長などを経て、2026年より同社取締役業務副本部長に現職。 |
社外取締役は、三浦理代氏(日本栄養大学名誉教授)、白尾美佳氏(実践女子大学教授)、町田勝弘氏(元農林水産省事務次官)、山田英司氏(元日本電子計算代表取締役社長)、長野麻子氏(㈱モリアゲ代表取締役社長)です。
同社は監査役制度を採用しています。5名の社外取締役と2名の社外監査役を選任しており、独立した立場からの経営監督体制を強化しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
極洋の役員報酬は、固定の基本報酬と業績連動型株式報酬を組み合わせた体系です。社外取締役には業務執行から独立した立場であるため、固定の基本報酬のみが支給されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 9名 | 4.2億円 | 46.1百万円 |
| 監査役(社外除く) | 3名 | 14百万円 | 4.7百万円 |
| 社外役員 | 8名 | 1.1億円 | 13.1百万円 |
個人別報酬が開示されている役員は、井上誠氏(1.13億円)です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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