※本記事は、極洋の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 極洋ってどんな会社?
水産物の買付や加工から、寿司種や冷凍食品の製造、冷蔵倉庫の運営まで食の総合事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1937年に極洋捕鯨として設立され、1949年に上場しました。1971年に極洋に商号を変更し、極洋商事や秋津冷蔵を設立して多角化を進めました。1980年代には冷凍食品の製造を開始し、1990年代以降は米国に子会社を設立するなど海外展開を推進。近年もトルコやオランダの水産会社に出資するなどグローバルな事業拡大を続けています。
従業員数は連結で2,542名、単体で769名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に金融機関であるりそな銀行、第3位は農林中央金庫となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 11.86% |
| りそな銀行 | 4.37% |
| 農林中央金庫 | 3.72% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性3名の計18名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は井上誠氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上誠 | 代表取締役社長 | 1980年入社。水産冷凍食品部長や大阪支社長等を歴任し、2018年より現職。 |
| 近藤茂 | 取締役副社長 | 1982年入社。海外事業部長や水産事業本部長等を歴任し、2024年より現職。 |
| 木山修一 | 専務取締役業務本部長 | 1983年入社。企画部長や総務部長等を歴任し、2026年より現職。 |
| 檜垣仁志 | 常務取締役管理本部長 | 1986年入社。経理部長や経営管理部長等を歴任し、2026年より現職。 |
| 田中豊 | 取締役大阪支社長 | 1984年入社。調理冷凍食品部長やロジスティクス本部長等を歴任し、2023年より現職。 |
| 山口敬三 | 取締役生鮮事業本部長 | 1984年入社。品質保証部長や市販食品本部長等を歴任し、2025年より現職。 |
| 服部篤 | 取締役水産事業本部長 | 1988年入社。東京支社長や食品事業本部長等を歴任し、2026年より現職。 |
| 三山正樹 | 取締役食品事業本部長水産加工事業本部長 | 1989年入社。海外事業部長や生鮮事業本部長等を歴任し、2026年より現職。 |
| 小田匡彦 | 取締役業務副本部長 | 1990年大和銀行入行。2020年入社後、人事部長等を歴任し、2026年より現職。 |
社外取締役は、三浦理代(日本栄養大学名誉教授)、白尾美佳(実践女子大学教授)、町田勝弘(元水産庁長官)、山田英司(元日本電子計算社長)、長野麻子(元農林水産省大臣官房広報評価課長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「水産事業」「生鮮事業」「食品事業」「物流サービス」および「その他」の事業を展開しています。
■水産事業
水産物の買付、加工、販売を行う事業です。世界中から多様な水産資源を調達し、国内市場への供給や海外での現地加工・販売、さらには輸出事業も手掛けています。
収益は、国内外の取引先への水産物販売から得ています。運営は同社や米国の現地法人をはじめ、タイやベトナムなどの海外子会社が中心となって行っています。
■生鮮事業
寿司種や刺身などの生食商材の加工と販売、ならびにカツオやマグロなどの漁獲、養殖、買付を担っています。自社グループでの一気通貫体制に強みがあります。
生食商材や養殖魚の販売による収益が柱です。運営は同社のほか、極洋水産やキョクヨーマリンファームといった子会社が事業を推進しています。
■食品事業
業務用冷凍食品や市販用冷凍食品、缶詰、海産物珍味などの製造・販売を行っています。中食・内食向けのニーズに対応した簡便性の高い商品を展開しています。
食品スーパーやコンビニエンスストア、外食産業への製品販売が主な収益源です。同社のほか、極洋食品やジョッキなどの子会社が製造と販売を担っています。
■物流サービス
冷蔵倉庫を活用した水産物や食品の保管、ならびに運送会社や荷主と連携した利用運送事業などを展開し、グループ内外の物流を支えています。
倉庫での保管料や配送手配に伴う運送料などを収益源としています。この事業は、主に子会社であるキョクヨー秋津冷蔵が運営を行っています。
■その他
同社グループの事業活動をサポートするための保険代理店業などを展開しています。
主な収益源は、グループ内企業などに対する保険代理店業務による手数料です。運営は、子会社であるキョクヨー総合サービスが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
直近5年間の業績は、売上高が2,536億円から3,346億円へと概ね右肩上がりで拡大しています。経常利益も成長基調にありましたが、直近は原材料価格の高騰などの影響により、やや減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,536億円 | 2,722億円 | 2,616億円 | 3,027億円 | 3,346億円 |
| 経常利益 | 69億円 | 82億円 | 89億円 | 109億円 | 100億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 3.0% | 3.4% | 3.6% | 3.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 34億円 | 41億円 | 49億円 | 72億円 | 57億円 |
直近2期の損益を比較すると、売上高は順調に増加し、売上総利益も拡大しています。一方で、販売費や一般管理費の増加が影響し、営業利益はわずかに減少する結果となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,027億円 | 3,346億円 |
| 売上総利益 | 388億円 | 413億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.8% | 12.4% |
| 営業利益 | 111億円 | 107億円 |
| 営業利益率(%) | 3.7% | 3.2% |
販売費及び一般管理費のうち、発送費及び配達費が75億円(構成比25%)、給料及び手当が70億円(同23%)を占めています。売上原価は2,933億円であり、売上高に対して88%を占めています。
水産事業が売上高の過半を占め、全体の増収を牽引しています。生鮮事業や物流サービスも順調に増収を達成しており、食品事業は売上がほぼ横ばいでの推移となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 水産事業 | 1,687億円 | 1,950億円 |
| 生鮮事業 | 659億円 | 717億円 |
| 食品事業 | 659億円 | 655億円 |
| 物流サービス | 17億円 | 17億円 |
| その他 | 6億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 3,027億円 | 3,346億円 |
本業は赤字ですが、将来の事業成長に向けて借入などを通じて積極的な投資を継続している局面です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 58億円 | -7億円 |
| 投資CF | -90億円 | -52億円 |
| 財務CF | 21億円 | 91億円 |
企業の収益力を測るROEは9.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.1%で製造業の市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは企業理念として、「人間尊重を経営の基本に、健康で心豊かな生活と食文化に貢献し、社会とともに成長すること」を掲げています。その実現に向け、魚を中心とした総合食品会社への成長と、安心・安全な食品の供給、そして環境保全を経営の重点課題として位置づけ、事業を展開しています。
■(2) 企業文化
人間尊重という基本理念のもと、ステークホルダーとの積極的なコミュニケーションを重んじる文化があります。多様な人材が活躍できる環境づくりや、法令遵守と企業倫理の徹底による透明性の高い事業運営を通じて、社会の要請に応えながら豊かな社会づくりに貢献する価値観を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画のもと、グローバルな事業拡大と収益性の向上を目指しています。中期的な連結経営指標の目標として以下を掲げています。
* 海外売上高比率:15.0%以上
* ROIC(投下資本利益率):6.0%以上
* DOE(株主資本配当率):3.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「魚を中心に、食で人と暮らしと地球によりそう サステナブルな世界へ」というパーパスのもと、安定的な原料調達と商品提案力の強化を図ります。水産事業では海外での「つくり・売る」連携強化、生鮮事業では一気通貫体制を活かした事業拡大、食品事業ではローコストオペレーションの徹底を重点施策として推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業理念である「人間尊重」に基づき、働きやすい職場環境づくりを推進しています。若手社員の現場研修による育成や、自発的な学びをサポートする通信教育制度の充実を図るほか、女性活躍の推進、男性の育児参画の啓発、時間単位年休の導入など、多様な人材が能力を十分に発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 16.5年 | 9,268,717円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.8% |
| 男性育児休業取得率 | 85.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 57.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 59.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の継続雇用の割合(57.5%)、退職者の再雇用(0名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品の安全性に関するリスク
食品の安全性が損なわれる製品クレームや、調達国における出荷制限・輸入禁止措置などが発生した場合、製品の回収費用の発生やグループの信用力低下につながる可能性があります。
■(2) 原材料価格の変動リスク
国内外から水産物等の原材料を調達しているため、漁獲規制の強化や水揚げ数量の変動などにより原材料市況が予想以上に悪化した場合、業績や財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外事業に関するリスク
海外で加工や販売を展開しているため、物流の混乱や予期せぬ法律・関税等の規制変更、紛争やテロなどの社会的混乱が生じた場合、事業運営や人材確保に影響を及ぼす可能性があります。



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