※本記事は、DOWAホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第122期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. DOWAホールディングスってどんな会社?
独自の循環型ビジネスモデルを強みとし、環境・リサイクルから高機能材料製造まで手掛ける非鉄金属大手です。
■(1) 会社概要
1884年の創業以来、鉱山・製錬技術を基盤に事業を進化させてきました。1949年に東京証券取引所へ上場し、2006年には持株会社制へ移行して現在の商号に変更しました。主要事業の分社化により競争力を高めるとともに、2000年代以降は東南アジアでの環境・リサイクル事業や、2019年のメキシコでの亜鉛鉱山操業開始など、グローバル展開を加速させています。
連結従業員数は8,076名、単体では94名が在籍しています。筆頭株主は信託銀行で、第2位も同様に資産管理を行う信託銀行です。第3位には英国の投資ファンドが名を連ねています。国内外の機関投資家が上位を占める一方、藤田観光などの事業会社も株主に含まれており、安定した資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.83% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 9.83% |
| NORTHERN TRUST CO. (AVFC) RE SILCHESTER INTERNATIONAL INVESTORS INTERNATIONAL VALUE EQUITY TRUST | 6.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.0%です。代表取締役社長は関口明氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山田 政雄 | 代表取締役会長 | 1978年同社入社。エコビジネス&リサイクル部門のトップを経て、2009年代表取締役社長に就任。2018年より現職。 |
| 関口 明 | 代表取締役社長 | 1983年同社入社。メタルズカンパニー資源・原料部長、DOWAメタルマイン社長等を経て、2018年より現職。 |
| 飛田 実 | 取締役 | 1984年同社入社。DOWAエコシステム社長等を歴任し、2021年より品質保証、環境・安全担当取締役。 |
| 菅原 章 | 取締役 | 1984年同社入社。金属材料研究所長、DOWAメタルテック社長等を経て、2025年より事業開発、知財担当取締役。 |
| 片桐 敦 | 取締役 | 1985年同社入社。DOWAメタルマイン取締役、人事・人材開発部門部長等を経て、2022年より人事部長兼総務・法務担当取締役。 |
| 細野 浩之 | 取締役 | 1991年同社入社。DOWAオーリンメタル社長、企画・広報部門部長等を経て、2023年より経営企画部長兼広報IR室長、経理・財務担当取締役。 |
社外取締役は、小泉淑子(弁護士)、佐藤公生(元日鉄鉱業社長)、柴山敦(秋田大学国際資源学部教授)、山口純子(元日本電信電話)です。
2. 事業内容
同社グループは、「環境・リサイクル」「製錬」「電子材料」「金属加工」「熱処理」の5つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■環境・リサイクル部門
廃棄物処理、土壌浄化、資源リサイクル、物流業等を展開しています。廃棄物の無害化処理や有用金属の回収を行い、国内外の環境保全に貢献しています。特に、難処理廃棄物の処理技術やリサイクル原料の集荷ネットワークに強みを持ちます。
主な収益源は、排出事業者からの廃棄物処理費やリサイクル原料からの有価金属回収益です。運営は主にDOWAエコシステムなどの子会社が行っており、国内だけでなく東南アジア等の海外でも事業を展開しています。
■製錬部門
金、銀、銅、鉛、亜鉛などのベースメタルや、プラチナ、パラジウム等の貴金属・レアメタルの製造・販売を行っています。鉱石からの製錬に加え、リサイクル原料からの金属回収も大規模に行い、循環型社会の一翼を担っています。
主な収益源は、地金および製錬副産物(硫酸等)の販売代金です。運営は主にDOWAメタルマインや秋田製錬、小坂製錬などの子会社が行っています。グローバルな原料調達と製品販売を展開しています。
■電子材料部門
高純度金属材料、化合物半導体ウェハ、LED、導電材料、電池材料、磁性材料などを製造・販売しています。スマートフォンや自動車、新エネルギー分野などで使用される高機能素材を提供し、先端技術産業を支えています。
主な収益源は、電機メーカーや部品メーカー等への製品販売代金です。運営は主にDOWAエレクトロニクスやDOWAハイテックなどの子会社が行っています。独自技術を活かしたニッチトップ製品を多数保有しています。
■金属加工部門
銅・黄銅・銅合金の板条、黄銅棒、回路基板等の製造・販売およびめっき加工サービスを行っています。自動車の電動化や電子機器の高性能化に対応した高機能銅合金や、パワーモジュール用基板などを提供しています。
主な収益源は、自動車部品メーカーや電子部品メーカー等への製品販売および加工賃収入です。運営は主にDOWAメタルテックなどの子会社が行っています。
■熱処理部門
自動車部品等の金属材料の熱処理・表面処理加工、および工業炉(熱処理設備)の製造・販売・メンテナンスを行っています。自動車の重要保安部品の強度や耐久性を高める加工技術を提供しています。
主な収益源は、自動車部品メーカー等からの受託加工賃および設備販売代金です。運営は主にDOWAサーモテックなどの子会社が行っています。国内外の主要な自動車生産拠点の近くに工場を展開しています。
■その他
不動産賃貸業、プラント建設業、土木・建築工事業、事務管理業務、技術開発支援業務などを行っています。グループ全体のインフラ整備や共通業務の効率化を支援する役割も担っています。
主な収益源は、工事請負代金、賃貸料収入、事務受託手数料などです。運営はDOWAテクノエンジ、DOWA興産、DOWAマネジメントサービスなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2022年3月期をピークに売上高は減少傾向にありますが、利益面では一定の水準を維持しています。直近の2025年3月期は、自動車生産の低調や金属価格変動の影響を受けつつも、廃棄物処理事業の堅調さなどが下支えしました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,880億円 | 8,318億円 | 7,801億円 | 7,172億円 | 6,787億円 |
| 経常利益 | 372億円 | 761億円 | 555億円 | 447億円 | 436億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 9.1% | 7.1% | 6.2% | 6.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 218億円 | 510億円 | 250億円 | 279億円 | 271億円 |
■(2) 損益計算書
売上原価率の改善により、売上高が減少する中でも売上総利益は増加しました。一方で、販売費及び一般管理費は増加しており、営業利益の伸びを一部抑制する要因となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,172億円 | 6,787億円 |
| 売上総利益 | 814億円 | 866億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.4% | 12.8% |
| 営業利益 | 300億円 | 322億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 4.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が115億円(構成比21%)、開発研究費が90億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
環境・リサイクル部門が増収増益となり全体を牽引しました。製錬部門は金属価格上昇の恩恵があったものの減収となりましたが、営業増益を確保しました。電子材料部門は需要調整局面により大幅な減益となりました。金属加工部門は増収増益と堅調でした。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 環境・リサイクル | 1,001億円 | 1,001億円 | 112億円 | 150億円 | 15.0% |
| 製錬 | 2,987億円 | 2,541億円 | 182億円 | 171億円 | 6.7% |
| 電子材料 | 1,781億円 | 1,584億円 | 35億円 | 3億円 | 0.2% |
| 金属加工 | 1,163億円 | 1,287億円 | 52億円 | 59億円 | 4.6% |
| 熱処理 | 322億円 | 338億円 | 32億円 | 22億円 | 6.5% |
| その他 | 29億円 | 36億円 | 6億円 | 9億円 | 24.8% |
| 調整額 | - | - | 29億円 | 21億円 | - |
| 連結(合計) | 7,172億円 | 6,787億円 | 447億円 | 436億円 | 6.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、運転資金や設備投資、研究開発投資、株主への利益配分といった資金需要に対し、内部資金からの充当を主としてグループファイナンスを通じて効率向上に努めています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や棚卸資産の増加、減価償却費等により収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が主な要因となり、支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の増加や社債の償還、配当金の支払い等により、支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,186億円 | 128億円 |
| 投資CF | △263億円 | △414億円 |
| 財務CF | △592億円 | △41億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「地球を舞台とした事業活動を通じて、豊かな社会の創造と資源循環型社会の構築に貢献する」という企業理念を掲げています。また、2030年のありたい姿(ビジョン)として「本業とする資源循環と優れた素材・技術の提供を進化させ、安心な未来づくりに貢献し続ける」ことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「DOWAグループの企業理念、ビジョン、価値観、行動規範」を定めており、これに基づいた行動を重視しています。特に「安全はすべてに優先する」という基本理念のもと、労働安全衛生の確保に努めています。また、独自の「循環型ビジネスモデル」を通じて、社外との連携により新たな価値を創出することを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「中期計画2027」(2025年度~2027年度)を策定し、企業価値の向上を目指しています。最終年度である2027年度の数値目標として、以下を掲げています。
* 営業利益:470億円
* 経常利益:600億円
* ROA:9%
* ROE:10%
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期計画2027」では、「価値の創出」と「変動の抑制・期待の醸成」を基本戦略としています。成長事業の強化、新規事業・製品の開発、資本効率の向上、リスクの低減などを推進します。また、気候変動対応を重要課題とし、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めるとともに、循環型ビジネスモデルの進化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材がすべての企業活動の基本であると考え、「成長し続ける人と組織」を目指しています。具体的には、グループ全体での採用力強化、自律的に学ぶ風土の醸成による中核人材の育成、多様な働き方の支援や健康経営による「働きたいと思う組織づくり」を推進しています。また、人事DXを推進し、データ活用による人材発掘や公平な処遇を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.9歳 | 15.8年 | 8,071,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.9% |
| 男性育児休業取得率 | 89.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男女賃金差異(非正規雇用)は、対象となる労働者がいない等の理由により記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性新規採用比率(27%)、新卒入社3年後の定着率(89%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場変動に関わるリスク
主要な用途市場(自動車、情報通信機器等)の景気悪化や産業構造の変化により需要が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、廃棄物発生量の減少やリサイクル原料の確保難、海外鉱山の稼働状況による原料調達条件の悪化などもリスク要因です。これに対し、同社はリスクの異なる複数の事業ポートフォリオを構築し、リスク分散を図っています。
■(2) 気候変動に関わるリスク
気象災害による工場停止やコスト増、炭素税導入等の規制強化が業績に影響する可能性があります。同社は2050年カーボンニュートラルを目指し、省エネや再生可能エネルギー活用、新技術開発を進めています。また、2030年度の中間目標としてGHG排出削減目標を設定し、気候変動対応を事業機会としても捉え、社会の脱炭素に貢献する製品・サービスの拡大に取り組んでいます。
■(3) 相場変動に関わるリスク
製品や原料に非鉄金属や為替の影響を受けるものが多く、金属価格の下落や円高が業績悪化につながる可能性があります。特に製錬部門は影響を大きく受けます。同社は、非鉄金属先渡取引や為替予約取引などのデリバティブ取引を活用し、価格変動リスクの回避・軽減に努めています。しかし、これらの対策を行っても、急激な変動は業績に影響を与える可能性があります。



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