DOWAホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

DOWAホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

DOWAホールディングスは東証プライム市場に上場する非鉄金属・環境関連企業です。環境・リサイクル、製錬、電子材料、金属加工、熱処理などの事業を展開しています。直近の業績は売上高7,454億円、経常利益543億円と増収増益を達成しており、資源循環と優れた素材・技術の提供を通じて持続的成長を目指しています。


※本記事は、DOWAホールディングス株式会社の有価証券報告書(第123期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. DOWAホールディングスってどんな会社?


同社は、環境・リサイクル事業や非鉄金属の製錬、電子材料・金属加工事業をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1884年に秋田県小坂町で鉱山業として創業しました。その後、1937年に藤田組を設立し、1949年に東京証券取引所へ上場しています。金属加工事業や電子材料事業などへ多角化を進め、2006年に持株会社制へ移行して現在の社名に変更しました。近年は東南アジア等への海外展開を強化しています。

現在、同社グループは連結で8,355名、単体で98名の従業員を擁しています。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は日本カストディ銀行(信託口)となっており、主に資産管理業務を行う金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.94%
日本カストディ銀行(信託口) 9.64%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 7.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長執行役員CEOは関口明氏が務めています。取締役13名のうち4名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
関口明 代表取締役社長執行役員CEO 1983年同社入社。資源・原料部長、企画室長、小坂製錬代表取締役社長等を経て、2018年より代表取締役社長。2025年6月より現職。
飛田実 取締役副社長執行役員CIRO 1984年同社入社。DOWAエコシステム代表取締役社長などを歴任し、品質保証や環境・安全部門を管掌。2025年6月より現職。
菅原章 取締役常務執行役員CTO 1984年同社入社。金属材料研究所長、DOWAメタルテック代表取締役社長を経て、技術・事業開発担当を歴任。2025年6月より現職。
片桐敦 取締役常務執行役員CHRO 1985年同社入社。DOWAメタルマイン取締役、同社人事部長等を経て、人事・総務・法務部門を管掌。2025年6月より現職。
細野浩之 取締役常務執行役員CFO 1991年同社入社。DOWAオーリンメタル代表取締役社長等を経て、経営企画部長や広報IR室長を歴任。2025年6月より現職。


社外取締役は、小泉淑子(シティユーワ法律事務所パートナー)、佐藤公生(元日鉄鉱業代表取締役社長)、柴山敦(秋田大学国際資源学部長)、山口純子(元日本電信電話)です。

2. 事業内容


同社グループは、「環境・リサイクル」「製錬」「電子材料」「金属加工」「熱処理」および「その他」事業を展開しています。

環境・リサイクル部門

廃棄物処理、土壌浄化、資源リサイクルなどのサービスを国内外の企業や自治体向けに提供しています。
顧客からの廃棄物処理手数料や、リサイクルで回収した資源の販売代金を主な収益源としています。事業の運営は主にDOWAエコシステムが行っています。

製錬部門

金、銀、銅、鉛、亜鉛などのベースメタルや貴金属・レアメタルの製造・販売を行っています。
顧客への金属製品の販売代金を主な収益源としています。事業の運営は主にDOWAメタルマインが担っています。

電子材料部門

半導体ウェハ、LED、導電材料、電池材料などの高付加価値な電子材料を電子部品メーカー等に提供しています。
顧客への製品販売代金を主な収益源としています。事業の運営は主にDOWAエレクトロニクスが行っています。

金属加工部門

銅や銅合金の板条、回路基板などの製造・販売のほか、めっき加工などのサービスを自動車・情報通信業界向けに提供しています。
製品の販売代金および加工受託手数料を主な収益源としています。事業の運営は主にDOWAメタルテックが担っています。

熱処理部門

自動車部品等の金属材料の熱処理・表面処理加工や、工業炉などの設備の製造・販売を行っています。
顧客からの加工受託手数料および設備販売代金を主な収益源としています。事業の運営は主にDOWAサーモテックが行っています。

その他

不動産の賃貸業やプラント建設業、土木・建築工事業などのサービスをグループ内外の顧客に提供しています。
賃貸料や工事請負代金を主な収益源としています。事業の運営は主にDOWAテクノエンジなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績は、外部環境の影響を受けつつも安定した事業規模を維持しています。直近の期では増収増益となり、利益率も改善傾向を示しています。

項目 119期 120期 121期 122期 123期
売上高 8,318億円 7,801億円 7,172億円 6,787億円 7,454億円
経常利益 761億円 55億円 447億円 436億円 543億円
利益率(%) 9.1% 7.1% 6.2% 6.4% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 121億円 215億円 135億円 157億円 414億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も堅調に推移しています。原価のコントロールにより安定した利益水準を確保しています。

項目 122期 123期
売上高 6,787億円 7,454億円
売上総利益 866億円 903億円
売上総利益率(%) 12.8% 12.1%
営業利益 322億円 342億円
営業利益率(%) 4.7% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が120億円(構成比21%)、開発研究費が84億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


各事業分野ともに前期から増収となっており、特に製錬部門が金属価格の上昇などを背景に大きく売上を伸ばしています。

区分 売上(122期) 売上(123期)
環境・リサイクル 1,001億円 1,111億円
製錬 2,541億円 3,522億円
電子材料 1,584億円 961億円
金属加工 1,287億円 1,473億円
熱処理 338億円 340億円
その他 36億円 47億円
連結(合計) 6,787億円 7,454億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面です。

項目 122期 123期
営業CF 128億円 52億円
投資CF -414億円 121億円
財務CF -41億円 -100億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も57.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「地球を舞台とした事業活動を通じて、豊かな社会の創造と資源循環型社会の構築に貢献する」という企業理念を掲げています。創業以来培ってきた資源の回収・再生・供給に関する技術を基盤として、社会課題の解決に取り組んでいます。

(2) 企業文化


ビジョン(2030年のありたい姿)として、「本業とする資源循環と優れた素材・技術の提供を進化させ、安心な未来づくりに貢献し続ける」という価値観を重視しています。持続可能な循環経済への移行を果たすことが自社の使命であるという意識を持っています。

(3) 経営計画・目標


「中期計画2027」において、持続的な成長を実現するための具体的な数値目標を設定しています。

* 営業利益 470億円
* 経常利益 600億円
* ROA 9%
* ROE 10%

(4) 成長戦略と重点施策


「循環のクオリティを追求する」ことをメインテーマに掲げ、これまでに培った技術を結集して循環型ビジネスモデルの強化を目指します。これまで未活用だった廃棄物を資源化する「複合的な循環」と、製品寿命を延長させる高付加価値素材を提供する「長期的な循環」の2側面からアプローチします。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「勝ち抜ける人材層の拡充」「働きたいと思う組織づくり」「社内外に開かれた会社」の3つを柱とする人材戦略を展開しています。採用力の強化や階層別教育の拡充を進めるとともに、ワークライフバランスの支援や健康経営を推進し、多様な人材が活躍できる環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
123期 43.3歳 15.7年 8,313,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 82.9%
男女賃金差異(全労働者) 66.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 66.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(84.9%)、新卒入社3年後の定着率(86.4%)、女性新規採用比率(27.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要市場の需要減少リスク

同社の製品・サービスの主要用途である自動車や情報通信機器分野において、景気の悪化や産業構造の変化が生じた場合、需要の減少を招き、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。事業の多角化によるリスク分散で対応を図っています。

(2) 気候変動と脱炭素対応リスク

気象災害による操業停止のほか、カーボンプライシングの導入等によるコスト増加が懸念されます。同社は2050年までのカーボンニュートラル実現を目指し、省エネや再生可能エネルギーの導入など積極的なGHG排出削減策を推進しています。

(3) 金属価格・為替の相場変動リスク

非鉄金属等のグローバル市場における価格変動や為替相場の変動により、調達コストや販売価格が影響を受けるリスクがあります。デリバティブ取引などを活用したヘッジを行うことで、これらの相場変動リスクの軽減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。