日本コークス工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本コークス工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本コークス工業は東京証券取引所プライム市場に上場し、コークスの製造・販売、燃料・資源リサイクル、粉粒体機器の製造などを展開する企業です。直近の業績では、前年度から減収となったものの、固定費削減等の効果により営業利益は黒字に転換しました。資源と技術で社会に貢献し続けることを目指しています。


※本記事は、日本コークス工業の有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本コークス工業ってどんな会社?


コークスや粉粒体機器の製造、燃料の販売を手がけるエネルギー関連素材メーカーです。

(1) 会社概要


同社は、1889年に三井組などが設立した三池炭鉱社をルーツとし、1911年に三井鉱山として独立しました。その後、石炭採掘からの撤退などを経て、2009年に日本コークス工業へ商号を変更しました。近年は粉体技術センターの開設やコークス炉の更新など、主力事業の基盤強化とソリューションビジネスを推進しています。

同社グループの従業員数は連結で983名、単体で465名です。筆頭株主は事業会社である日本製鉄で、第2位も事業会社である住友商事となっています。両社とは業務提携を通じて緊密な協力関係を構築しており、製品の販売先や原材料の仕入先としても重要なパートナーです。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本製鉄 22.55%
住友商事 19.43%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は松岡弘明氏が務めています。取締役は6名で、そのうち社外取締役の比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松岡弘明 代表取締役社長 元新日本製鐵棒線事業部長、大阪支社長等を経て、2022年より現職。
森俊一郎 常務取締役 元三井鉱山出身。同社コークス部長、燃料部長等を経て、2023年より現職。
井伊誠一郎 常務取締役 元三井鉱山出身。同社石炭部長、燃料販売部長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、德永直之(住友商事炭素ユニット長)、宮内直孝(元日本製鋼所代表取締役社長)、森尻善雄(元三井銀行執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コークス事業」「燃料・資源リサイクル事業」「総合エンジニアリング事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) コークス事業


同社北九州事業所で生産するコークスおよび副産物を、国内外の鉄鋼会社などに販売しています。老朽化した炉を休止し、健全な2炉団体制への移行を進めることで、生産性の向上と安全・安定操業を維持し、国内の販売基盤を盤石なものとしています。

製品の納入時に売上が計上される収益モデルです。運営は主に日本コークス工業が行い、連結子会社である日本コークス工業東北などの販売会社を通じての販売も実施しています。日本製鉄や住友商事などとの取引が主力となっています。

(2) 燃料・資源リサイクル事業


海外から輸入した一般炭や石油コークスを、セメント会社や製紙会社などに販売しています。また、私有の港湾設備やコールセンターといった独自のインフラを活用し、産業廃棄物処理やリサイクル事業、バイオマス燃料の取り扱い拡大も進めています。

製品の納入時に収益を認識するほか、石炭灰などの産業廃棄物処理に関する仲介取引は手数料相当額を収益として認識します。運営は日本コークス工業のほか、三美鉱業などの子会社が担っています。

(3) 総合エンジニアリング事業


栃木工場で設計・製造する粉粒体装置や機器などを販売し、産業全般にわたる粉体処理の基礎技術を提供しています。日本食ブームを背景とした抹茶製造用の新製品投入など、ニッチ分野での独自性を生かした展開が特徴です。

機器の販売に加え、産業機械の製造や修理、機械・電気工事の一部を施工することで収益を得ています。工事契約においては履行義務の充足に応じて収益を認識します。運営は日本コークス工業に加え、有明機電工業やサンテックなどの子会社が行っています。

(4) その他


主に福岡県の大牟田地区を中心に、三池港における港湾荷役および貨物輸送を行っています。また、自社で保有する社有地の開発・賃貸事業や、仲介・分譲事業などの不動産関連ビジネスも手がけています。

港湾運送や不動産の賃貸・売却等により収益を獲得しています。運営は、日本コークス工業のほか、子会社である三池港物流やサン情報サービスなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は資源価格の変動等により増減を繰り返していますが、近年は減少傾向にあります。一方、利益面では経常赤字と黒字が交錯しており、直近では減収ながら赤字幅が縮小傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,247.1億円 1,740.6億円 1,351.5億円 990.5億円 913.9億円
経常利益 114.5億円 -7.5億円 36.4億円 -102.7億円 -2.8億円
利益率(%) 9.2% -0.4% 2.7% -10.4% -0.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 70.1億円 -15.3億円 14.9億円 -145.2億円 -64.8億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い売上総利益がマイナスからプラスへと大きく改善し、営業利益も黒字転換を果たしました。老朽化炉の休止に伴う修繕費の大幅削減など、製造原価の削減効果が表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 990.5億円 913.9億円
売上総利益 -21.2億円 72.2億円
売上総利益率(%) -2.1% 7.9%
営業利益 -85.6億円 6.1億円
営業利益率(%) -8.6% 0.7%


販売費及び一般管理費のうち、積揚地諸掛が15.7億円(構成比約24%)、給与手当が7.6億円(同約11%)、海上運賃が7.3億円(同約11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のコークス事業は販売数量が増加したものの、販売単価の影響等で減収となりました。燃料・資源リサイクル事業も顧客の燃料転換により減収となっています。総合エンジニアリング事業も前期の大口案件剥落により売上を落としています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
コークス事業 587.1億円 561.3億円
燃料・資源リサイクル事業 272.4億円 233.4億円
総合エンジニアリング事業 93.0億円 79.2億円
その他 37.9億円 39.9億円
連結(合計) 990.5億円 913.9億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-20.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も27.5%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「人類の活動に不可欠な資源や素材と高付加価値技術を社会に供給し続けることにより、存在価値のある企業として、よりよい社会環境の構築に貢献するとともに、人類社会の永続的発展に寄与する」ことを企業理念として掲げています。

(2) 企業文化


「独自の企画・提案力によるソリューションビジネスの展開」や「社会的に信頼される新しい企業文化の創造」を掲げています。また、企業活動を通じた働く社員の自己実現と生活の安定・充実を図り、多様性を尊重する風通しのよい職場風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


健全な財務体質を維持しつつ、企業価値を高めるための各種施策や安定的な配当を実施するため、中期的には以下の経営指標を目標として掲げています。

・連結経常利益:40億円以上確保

(4) 成長戦略と重点施策


コークス事業では安全・安定操業を維持し、生産体制最適化による筋肉質な収益体質を確立します。非コークス事業では需要家の燃料転換に対応し、バイオマス燃料などのカーボンニュートラル向け商品の拡販を進めます。さらに、電池・電子分野への展開など技術の高度化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


自律的にスキルを磨き、専門性を発揮して持続的成長を支える人材の育成を目指しています。OJTを基本とし、階層別教育等のOFF-JTやメンター制度を通じて若手の早期戦力化を推進しています。また、多様性を尊重し、柔軟な働き方の実現と安全な労働環境の提供に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.4歳 18.2年 6,066,971円


※平均年間給与は賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 73.7%
男女賃金差異(正規雇用) 73.3%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※女性管理職比率および非正規雇用の男女賃金差異について、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒総合職採用の女性比率(37.5%)、女性、中途採用、外国人等の管理職比率(18.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 需給および市況の変動


石炭やコークスといったエネルギー関連素材は、国内外の経済状況や需給の変動により、仕入・販売価格および数量が大きく変動する可能性があります。これに対処するため、コークス事業の競争力強化と、市況に左右されない事業基盤の確立を目指しています。

(2) 海外情勢の変動


原料炭やバイオマス燃料等を海外から輸入しているため、自然災害や政治的変化、規制変更などにより、仕入価格の高騰や供給の遅延・停止が発生した場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) コークス事業への依存


同社グループの主力はコークス事業であり、当該事業への依存度が高いため、市場環境等によって業績が変動するリスクがあります。非コークス事業の基盤を強化し、多面的な利益構造を確立することでリスクの分散を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。