※本記事は、株式会社ニッチツ の有価証券報告書(第100期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニッチツってどんな会社?
1929年創業の鉱山開発を起源とし、現在は機械、資源、素材、不動産の4事業を展開する多角化企業です。
■(1) 会社概要
同社は1929年に朝鮮鉱業開発として創業し、1950年に国内資産を引き継ぐ形で日窒鉱業を設立しました。1951年には東京証券取引所への上場を果たし、1973年に日窒工業へ商号を変更しています。その後、1989年に現在の社名であるニッチツへと変更し、多角的な事業展開を進めてきました。2023年には資源開発本部及び建材本部を廃止するなどの組織再編を行っています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は270名、単体従業員数は225名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は「扇栄会」、第3位は主要取引行である大手都市銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託E口) | 7.25% |
| 扇栄会 | 5.13% |
| みずほ銀行 | 4.97% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は松原祐生氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松原 祐生 | 代表取締役社長 | 1984年第一勧業銀行入行。みずほフィナンシャルグループ常務執行役員、ヤナセ取締役専務執行役員などを経て2022年6月より現職。 |
| 艸薙 望 | 代表取締役専務取締役管理本部長兼経営管理部長 | 1988年日本興業銀行入行。みずほフィナンシャルグループ執行役員、アセットマネジメントOne取締役常務執行役員などを経て2022年6月より現職。 |
| 堤 清治 | 常務取締役ハイシリカ事業本部長 | 1984年山一証券入社。親和銀行入行後、同社ハイシリカ事業本部管理部長などを経て2023年6月より現職。 |
| 土屋 裕一 | 取締役管理本部総務部長 | 1983年青木建設入社。シーザーパークホテルアンドリゾートアジアを経て2007年同社入社。管理本部総務部長などを経て2020年6月より現職。 |
| 石黒 正浩 | 取締役機械本部長 | 1985年三菱重工業入社。三菱造船を経て2018年同社入社。機械本部副本部長などを経て2023年6月より現職。 |
| 小山田 行輝 | 取締役環境・安全、技術担当兼管理本部休廃止鉱山管理室長 | 1986年同社入社。資源開発本部長、粉体技術研究所長などを経て2024年6月より現職。 |
| 山口 正雄 | 取締役(常勤監査等委員) | 1981年同社入社。機械本部管理部管理課長、管理本部財務経理部長などを経て2020年6月より現職。 |
社外取締役は、成田睦夫(元旭化成常務執行役員兼製造統括本部長)、橋爪宗一郎(元旭化成取締役常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「機械関連事業」「資源関連事業」「不動産関連事業」「素材関連事業」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
**(1) 機械関連事業**
舶用機器、空気予熱機などの一般産業機械等の設計・製作、プラント関連機器の製作、機械装置の据付、施工、監理を行っています。主な顧客は造船所やプラントメーカーなどです。
収益は、製品の販売代金や据付・施工・監理などの役務提供の対価から得ています。また、OA機器等の販売も含まれます。運営は主に同社が行っていますが、OA機器関連については子会社のミンクスが担当しています。
**(2) 資源関連事業**
半導体封止材などの原料となるハイシリカ(精製珪石粉等)の製造・仕入・販売を行っています。主な顧客は半導体関連メーカーやガラスメーカーなどです。
収益は、ハイシリカ製品の販売代金から得ています。運営は同社が行っています。
**(3) 不動産関連事業**
東京都内においてオフィスビルの賃貸事業を行っています。顧客は法人テナントが中心です。
収益は、テナントからの賃貸料収入から得ています。運営は同社が行っており、ビルの管理業務は外部に委託しています。
**(4) 素材関連事業**
耐熱塗料の製造・販売およびライナテックス(高純度天然ゴム)の仕入・加工・販売を行っています。また、製缶や機械の製造・販売も行っています。
収益は、耐熱塗料やライナテックス製品、機械製品などの販売代金から得ています。運営は、耐熱塗料については子会社の東京熱化学工業、ライナテックスについては子会社の三扇機工が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績推移を見ると、売上高は80億円前後で推移していましたが、直近の2025年3月期には約99億円へと大きく伸長しました。利益面では、2023年3月期に一時的な赤字を計上したものの、その後は黒字回復し、安定した収益を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 85億円 | 79億円 | 80億円 | 83億円 | 99億円 |
| 経常利益 | 1.0億円 | 0.5億円 | -0.2億円 | 2.5億円 | 2.2億円 |
| 利益率(%) | 1.2% | 0.6% | -0.3% | 3.0% | 2.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.1億円 | -2.1億円 | -2.6億円 | 2.4億円 | 2.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の大幅な増加に伴い売上総利益は微増しましたが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少しました。また、特別損失の計上などにより当期純利益も減少しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 83億円 | 99億円 |
| 売上総利益 | 12億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.7% | 12.4% |
| 営業利益 | 3.3億円 | 2.7億円 |
| 営業利益率(%) | 3.9% | 2.7% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃諸掛が2.4億円(構成比25%)、給料及び手当が1.8億円(同19%)を占めています。売上原価については、材料費や外注加工費などが主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
直近の業績をセグメント別に見ると、機械関連事業は造船所からの需要増により大幅な増収増益を達成しました。素材関連事業も大型案件の寄与で大きく伸長しています。一方、資源関連事業は半導体市場の調整局面の影響を受け、減収および赤字転落となりました。不動産関連事業は安定して推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機械関連事業 | 53億円 | 65億円 | 1.3億円 | 2.1億円 | 3.3% |
| 資源関連事業 | 22億円 | 21億円 | 1.4億円 | -0.2億円 | -0.8% |
| 不動産関連事業 | 1.4億円 | 1.4億円 | 0.3億円 | 0.3億円 | 24.5% |
| 素材関連事業 | 6.7億円 | 11億円 | 0.2億円 | 0.3億円 | 3.0% |
| 連結(合計) | 83億円 | 99億円 | 3.3億円 | 2.7億円 | 2.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ニッチツのキャッシュ・フローの状況は、営業活動で資金を創出し、投資活動で設備投資等に資金を使用し、財務活動で資金を一部返済するという構造になっています。営業活動では、事業活動を通じて得られた資金が前連結会計年度から大きく増加しました。一方、投資活動では、有形固定資産の取得等により、前連結会計年度よりも使用額は減少しましたが、引き続き多額の資金を使用しました。財務活動では、配当金の支払い等により、前連結会計年度よりも使用額は大幅に減少しました。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、経営の原点を株主、取引先、地域社会との「パートナーシップ」に置いています。たゆみない向上心を発揮することを通じて、高度な産業生産財を提供し、社会の発展に貢献することを究極の理念として掲げています。
■(2) 企業文化
同社グループは、社員一人ひとりの行動規範として「ニッチツグループ行動規準」を定めています。法や社会規範の遵守、安全・環境保全の重要性の認識、企業体質の強化と適時的確な情報開示、そしてグループ全体のシナジー効果を展望した行動を重視しています。また、「ニッチツグループ安全宣言」を制定し、安全で快適な職場環境の確保や地域社会との共生を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2023年度から2025年度までの中期経営計画「シン・ニッチツ2025」を策定しています。この計画では、積極投資による現場力強化と新たなビジネス領域への挑戦を通じて経営基盤を再構築し、企業価値向上を図ることを目指しています。
* ROE(自己資本利益率)
* ROIC(投下資本利益率)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社グループは中期経営計画に基づき、各事業において収益力の強化と安定した経営基盤の確立に取り組んでいます。機械関連事業では生産体制の整備や新規分野での受注獲得、資源関連事業では生産設備の増強や海外生産委託の推進、素材関連事業では新規用途の開拓などを進めています。また、全社的には工場の更新改修や生産合理化への積極的な投資を行っています。
* 機械関連事業:工事採算の改善、生産性向上、新規分野(再生可能エネルギー等)の開拓
* 資源関連事業:高付加価値製品への対応、調達先の多様化、受託加工業務の拡大
* 共通:工場・設備の老朽化更新、人財の確保と育成
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、「人財」を共通の基盤と位置づけ、中期経営計画において人財への投資を基本戦略の一つに掲げています。性別・国籍を問わない多様な採用を行うとともに、OJTや資格取得支援を通じた育成、独身寮や借上社宅などの福利厚生の充実に注力しています。また、安全確保を最重要課題とし、働きがいのある職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.1歳 | 15.9年 | 4,497,009円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律および育児・介護休業法の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(9.0%)、社員休業度数率(1.78)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場動向による影響
機械関連事業は造船や重電などの設備投資動向の影響を受けやすく、資源関連事業のハイシリカ部門は半導体市場の変動や技術革新の影響を強く受けます。これらの市場環境の変化により、同社グループの業績が悪化する可能性があります。
■(2) 原材料、資材等の調達リスク
原材料や副資材等を海外を含む取引先から調達しているため、商品市況の変動による価格上昇や調達不能のリスクがあります。また、電気・ガス価格の高騰も製造原価に影響を与えます。さらに、為替変動の影響を受ける可能性もあります。
■(3) 人財の確保と技術伝承
製品の品質や生産量は熟練した技術・技能を有する人財に支えられています。定年退職等による人員減少に対し、採用や育成、技術伝承が十分に進まない場合、生産活動や品質に支障をきたす可能性があります。
■(4) 鉱業関連リスク
休廃止鉱山に関して、鉱山保安法等の法令に基づき鉱害防止に努めています。法令改正による新たな費用負担や、自然災害等に起因する事故防止のための対策工事費用が発生する可能性があり、これらは業績に影響を与える可能性があります。



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