ニッチツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニッチツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニッチツは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、舶用機器や一般産業機械等の機械関連事業、ハイシリカを扱う資源関連事業を展開しています。直近の業績は、素材関連事業等での案件剥落等の影響で減収となったものの、工事採算の改善等により経常利益は微増益となり、減収増益のトレンドとなっています。


※本記事は、株式会社ニッチツの有価証券報告書(第101期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニッチツってどんな会社?


同社は舶用機器や一般産業機械の製造、精製珪石粉の製造販売などを主力とする機械・資源メーカーです。

(1) 会社概要


1950年8月、日窒鉱業として国内資産を引き継ぎ設立されました。1951年10月に東京証券取引所へ上場し、1973年6月に日窒工業、1989年10月に現在のニッチツへと商号を変更しています。2020年6月には監査等委員会設置会社へ移行するなど、企業統治の強化を図りながら事業を拡大しています。

現在、同社グループの従業員数は連結で268名、単体で225名となっています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位は事業会社である銀行と化学メーカーが名を連ねており、安定した株主構成のもとで事業を展開しています。

氏名 持株比率
日本カストディ銀行(信託E口) 7.25%
みずほ銀行 4.97%
旭化成 4.72%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長社長執行役員は松原祐生氏が務めており、役員全体に占める社外取締役の比率は30.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
松原祐生 代表取締役社長社長執行役員 第一勧業銀行入行後、みずほフィナンシャルグループ常務執行役員などを経て、2022年6月に同社社長に就任。2025年6月より現職。
艸薙望 代表取締役専務執行役員管理本部長兼経営管理部長 日本興業銀行入行後、アセットマネジメントOne取締役常務執行役員などを経て、2022年6月に同社代表取締役専務取締役に就任。2025年6月より現職。
堤清治 取締役常務執行役員ハイシリカ事業本部長 山一証券、親和銀行を経て、2012年7月に同社入社。ハイシリカ事業本部管理部長などを歴任し、2018年6月に取締役就任。2025年6月より現職。
土屋裕一 取締役執行役員管理本部総務部長 青木建設などを経て2007年9月に同社入社。管理本部総務部長などを歴任し、2020年6月に取締役就任。2025年6月より現職。
石黒正浩 取締役機械本部付 三菱重工業入社後、2018年11月に同社入社。機械本部副本部長などを歴任し、2023年6月に取締役機械本部長に就任。2026年4月より現職。
小山田行輝 取締役執行役員環境・安全、技術担当兼管理本部休廃止鉱山管理室長 1986年4月に同社入社。資源開発本部長兼粉体技術研究所長などを経て、2023年6月に取締役就任。2025年6月より現職。
山口正雄 取締役(常勤監査等委員) 1981年4月に同社入社。管理本部財務経理部長などを歴任し、2020年6月に常勤監査等委員である取締役に就任し現在に至る。


社外取締役は、石田尚子(元西武ホールディングス執行役員)、成田睦夫(元旭化成常務執行役員)、橋爪宗一郎(元旭化成取締役常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「機械関連事業」「資源関連事業」「不動産関連事業」「素材関連事業」を展開しています。

(1) 機械関連事業


船舶のハッチカバー等を提供する舶用機器、空気予熱機等の一般産業機械の設計・製作、プラント関連機器の製作や据付・施工を主に行っています。国内外の造船所や製鉄・電力会社等を主要顧客としています。

収益は、顧客からの製品販売代金や保守・施工の請負代金等から得ています。運営は主に同社が行い、情報処理やOA機器等の販売については子会社のミンクスが担い、同社に役務等を提供しています。

(2) 資源関連事業


半導体封止材や特殊ガラス、光学関連の原料となるハイシリカ(精製珪石粉等)の製造、仕入および販売を行っています。電子部品メーカーやガラスメーカーを主な顧客として事業を展開しています。

収益は、製造・仕入した製品の販売代金や受託加工業務に伴う手数料等によって構成されています。本事業の運営は同社が主体となって実施しています。

(3) 不動産関連事業


東京都港区等にあるオフィスビルの賃貸事業を行っています。立地を活かした安定的な賃貸収益の確保を目的としており、主に一般事業会社や各種団体を賃貸先の顧客としています。

収益源は、テナントとして入居する顧客からの定期的な不動産賃貸料収入です。賃貸業務は同社が直接行い、ビルの管理業務等については外部の専門業者に委託する体制で運営しています。

(4) 素材関連事業


各種プラント等で使用される耐熱塗料の製造・販売のほか、鉱山やプラント向けの高純度天然ゴムであるライナテックスの仕入・加工・販売を行っています。

収益は、顧客からの耐熱塗料やライナテックス関連製品の販売代金から得ています。耐熱塗料は子会社の東京熱化学工業が、ライナテックス関連は三扇機工が事業を運営し、両社から同社へ製品供給等が行われています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が80億円前後から90億円台へと拡大基調にあるものの、当期はやや減収となりました。一方、経常利益は安定して2億円台を維持しており、利益率も2%台で堅調に推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 79億円 80億円 83億円 99億円 94億円
経常利益 0.5億円 -0.2億円 2.5億円 2.2億円 2.2億円
利益率(%) 0.6% -0.3% 3.0% 2.2% 2.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.1億円 -2.6億円 2.4億円 2.2億円 1.8億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い売上総利益も微減となりましたが、利益率は12%台で安定しています。営業利益も減少したものの、一定水準の利益率を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 99億円 94億円
売上総利益 12億円 12億円
売上総利益率(%) 12.4% 12.6%
営業利益 2.7億円 2.2億円
営業利益率(%) 2.7% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、運賃諸掛が2.5億円(構成比26%)、給料及び手当が1.8億円(同18%)、役員報酬が1.6億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の機械関連事業は国内造船所の需要増で堅調に推移したものの、前期の大型工事の剥落により微減収となりました。素材関連事業等も大型案件の剥落で減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
機械関連事業 65億円 65億円
資源関連事業 21億円 19億円
不動産関連事業 1.4億円 1.4億円
素材関連事業 11億円 8.0億円
連結(合計) 99億円 94億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローはともにマイナスであり、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8.7億円 19億円
投資CF -8.8億円 -11億円
財務CF -0.3億円 -1.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「ニッチツグループは、その経営の原点を、株主はじめ、取引先各位、地域社会との「パートナーシップ」に置き、たゆみ無い向上心の発揮を通じて、高度な産業生産財を提供し、もって、社会の発展に貢献することを究極の理念とします。」という企業理念を掲げています。

(2) 企業文化


同社は、企業理念を実現するための規範として「行動規準」を定めています。法と社会規範の遵守による公正・透明な事業活動、安全や環境保全の重要性を認識した活力ある職場づくり、企業体質の強化と適時的確な情報開示、相互信頼に基づくグループ全体のシナジー発揮を重視し、誇りを持って行動する文化を重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期経営計画「シン・ニッチツ2025」において、積極投資によるレジリエンス向上(現場力強化)と新たなビジネス領域への挑戦により経営基盤を再構築し、企業価値の向上を着実に図ることを基本方針としています。目標とする経営指標には、「営業利益」「売上高営業利益率」「当期純利益」「自己資本比率」のほか、「ROE」「ROIC」を取り入れています。

(4) 成長戦略と重点施策


機械関連事業では造船業再生に伴う需要増を見据え、工場設備の増強やロボット導入による自動化・省人化を進めるとともに、再生可能エネルギー等の新規分野での受注獲得に注力します。資源関連事業では新型ミルによる高付加価値製品の拡販や汎用品の海外生産拡大を推進し、現業の競争力強化と新領域への挑戦を両輪として進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、企業理念の実現に向けた共通の基盤を「人財」と位置づけ、人財への投資(採用・育成・福利厚生制度の充実)を加速しています。性別・国籍を問わない採用や適材適所の配置を行い、OJTによる技術・技能の伝承や資格取得支援を通じて従業員の自律的な成長意欲を醸成するとともに、多様な働き方を通じた社内環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.2歳 16.0年 4,657,201円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.1%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(6.5%)、社員休業度数率(0.00)、社員休業災害強度率(0.00)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向の影響と対策


機械関連事業は社会的潮流や関連設備の投資動向に、資源関連事業のハイシリカ部門はシリコンサイクル等による市況変動や技術革新に伴う仕様変更の影響を大きく受けます。同社は顧客ニーズへの対応や新規分野の開拓、汎用製品の海外生産委託等により、特定顧客や市況の動向に左右されにくい収益基盤の確立を目指しています。

(2) 原材料および資材等の調達リスク


原材料や副資材等を海外も含めた取引先から調達しているため、商品市況の変動による調達価格の上昇や調達不能等のリスク、電気・ガス等の価格高騰による影響が存在します。同社は市場動向の注視や調達先の多様化、適正在庫の確保を図るほか、為替変動リスクに対してはデリバティブ取引を利用して対応しています。

(3) 人財の確保と技術・技能の伝承


同社グループの生産活動は長年培ってきた技術や技能を有する優秀な人財に支えられているため、定年退職等による退職者からの技術伝承が十分になされなかった場合、製品品質や生産物量に影響を及ぼす可能性があります。同社は新たな採用活動の展開や海外実習生の受入れ等を含む人財確保と育成計画を推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。