三井松島ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三井松島ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三井松島ホールディングスは東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場し、生活消費財、産業用製品、金融その他の事業を展開しています。直近の業績は、売上高が655億円と増収、経常利益が99億円と増益を確保した一方、当期純利益は67億円の減益となりました。M&Aによる事業多角化を推進しています。


※本記事は、三井松島ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第170期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三井松島ホールディングスってどんな会社?

生活消費財や産業用製品、金融事業など多角的な事業展開を行うニッチトップ企業の集合体です。

(1) 会社概要

1913年に長崎県松島地区の良質石炭鉱区を買収し松島炭鉱として設立されました。その後、1961年に東京証券取引所等に上場し、2018年に持株会社体制へ移行して現社名へ変更しました。近年は積極的なM&Aによりストロー製造や事務用設備などの企業を子会社化し、2024年に石炭関連事業から完全撤退しました。

従業員数は連結で1,746名、単体で45名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位はフォルティス、第3位はシティインデックスファーストとなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.50%
フォルティス 9.29%
シティインデックスファースト 5.00%

(2) 経営陣

同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は29.0%です。代表取締役社長は吉岡泰士氏が務めています。役員全体に占める社外取締役の比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
吉岡泰士 代表取締役社長 J.P.モルガン証券会社、プルデンシャル生命保険、デロイトトーマツFASなどを経て2013年同社入社。経営企画部長、常務執行役員などを歴任し、2020年6月より現職。
串間新一郎 代表取締役会長 三井銀行(現三井住友銀行)に入行し、鹿児島支店長などを経て2005年同社入社。取締役、代表取締役社長などを歴任し、2014年6月より現職。


社外取締役は、脇山章太(地域みらいグループ代表取締役社長)、金丸絢子(弁護士法人大江橋法律事務所パートナー)、荒木隆繁(FFGビジネスコンサルティング元代表取締役社長)、満江由香(満江由香公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「生活消費財」「産業用製品」「金融その他」事業を展開しています。

生活消費財

同社グループは、大手メーカー向けの伸縮ストロー製造販売を中心に、ペットフード類の輸入国内販売やシュレッダーを中心とする事務用設備の製造、販売、保守などを行っています。また、住宅や家具向けのプラスチック製部材の企画製造から、レジロール用記録紙の加工販売まで、生活に密着した幅広い消費財を取り扱っています。

収益は、顧客への製品および商品の販売等によって得ています。運営は、日本ストロー、明光商会、ケイエムテイ、システックキョーワ、MOSなどの各子会社がそれぞれの専門分野を担当して事業を展開しています。

産業用製品

液晶パネルや電子部品等の用途で使われるマスクブランクスをはじめ、水晶デバイス用の計測器や生産設備、送変電・配電用の架線金具などの製造と販売を行っています。また、食料品加工機械の企画・設計や、動力伝導用の産業用ローラーチェーンおよびコンベヤチェーンの製造販売など、多様な産業向け製品を提供しています。

収益は、国内外の顧客に対する製品の販売によって獲得しています。運営は、CST、三生電子、日本カタン、プラスワンテクノ、ジャパン・チェーン・ホールディングスといった各子会社が行っています。

金融その他

事業者向けの不動産担保融資を中心に、株式の投資、保有、運用管理および売買などの金融事業を展開しています。また、歴史遺産である三井港倶楽部の管理運営や、同社自身による不動産賃貸管理事業など、金融以外のサービスや施設運営も多角的に行っています。

収益は、貸出業務から生じる営業貸付金利息や手数料、および施設の利用料や不動産賃貸収入などから得ています。運営は、同社のほか、エム・アール・エフ、MM Investments、港倶楽部オペレーションズなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は安定的に推移するなか、直近では子会社の増加等により増収を達成しています。利益面では、経常利益が大きく改善し増益となったものの、特別損失等の計上により当期利益は減益となりました。収益性は引き続き底堅い水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 466億円 800億円 775億円 606億円 655億円
経常利益 86億円 359億円 260億円 84億円 99億円
利益率(%) 18.4% 44.9% 33.6% 13.9% 15.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 50億円 133億円 227億円 82億円 20億円

(2) 損益計算書

売上高および売上総利益は、事業子会社の追加等により直近で増加傾向にあります。また、営業利益も売上の増加に伴い前年度から大きく成長しており、営業利益率も向上するなど、本業の稼ぐ力が順調に拡大していることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 606億円 655億円
売上総利益 223億円 251億円
売上総利益率(%) 36.9% 38.3%
営業利益 76億円 96億円
営業利益率(%) 12.6% 14.6%


販売費および一般管理費のうち、人件費が56億円(構成比36%)、のれん償却額が12億円(同8%)、福利厚生費が12億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益

生活消費財および産業用製品では、既存子会社の堅調な販売や新たな子会社の連結効果により売上を伸ばしました。金融その他でも新規子会社化の影響等で大幅な増収となり、全セグメントにおいて事業規模の拡大が進んでいます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
生活消費財 268億円 271億円
産業用製品 296億円 333億円
金融その他 42億円 51億円
連結(合計) 606億円 655億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 46億円 58億円
投資CF -119億円 -68億円
財務CF -102億円 -23億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「人と社会の役に立つ」を経営の基本理念として掲げています。この理念のもと、より豊かな活気ある社会づくりに向けての事業展開を行い、常に社会から必要とされる企業を目指して邁進していくことを存在理由として事業活動を続けています。

(2) 企業文化

同社は、企業倫理とコンプライアンスの重要性を深く認識し、企業の社会的責任を全うすることを経営上の最も重要な課題の一つとして位置づけています。株主をはじめ、取引先、地域社会、社員等の各ステークホルダーとの良好な関係を築き、透明性の高いガバナンス体制と法令遵守を重視する文化を根幹としています。

(3) 経営計画・目標

「中期経営計画2030」のもと、持続的な企業成長と安定した利益基盤の確立を目指しています。株主還元についても「累進配当」を基本方針とし、利益成長を通じた1株あたり年間配当額の持続的な向上を掲げています。

* 当期純利益:100億円以上(2030年3月期)

(4) 成長戦略と重点施策

確かな技術力を持つニッチトップ企業へのM&Aを引き続き推進し、「日本のものづくりを100年先まで守り育てる企業グループ」を目指す成長戦略を掲げています。中東地域の不安定化によるエネルギーや原材料の供給・価格動向を注視しつつ、各事業において適正な利ざやの維持や安定的な事業ポートフォリオの構築に注力しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「中期経営計画2030」の目標達成に向けて、更なる競争力の強化と収益性の向上を図るため、年齢や性別に囚われない実力主義に基づく適材適所の人材配置を推進しています。役割と成果・行動に基づく公正で納得性の高い評価・処遇を実現し、従業員の心身両面の充実や自律的キャリアの形成を支援する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.6歳 9.5年 10,964,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「提出会社の状況」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役員のうち女性の比率(29%)、電子技術のプロフェッショナルの採用人数(1名)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 投資等のリスク

同社の子会社において上場株式への投資を行っており、投資した株式の株価が急激に下落した場合、グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) グループ会社における原材料等の調達に関するリスク

各グループ会社において原材料等の調達先を確保していますが、中東情勢の影響等により調達に支障が生じ、ルート変更などで調達価格が上昇した場合、収益性を圧迫し業績に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) 情報漏洩リスク

機密情報や顧客情報、専門性の高い技術情報等を保有しており、人的ミスやインターネットを通じた外部からの攻撃等により漏洩した場合、取引先や顧客からの信頼低下につながり、事業活動に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。