清水建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

清水建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する大手総合建設会社です。建設事業、開発事業、道路舗装事業等を展開しています。直近の業績は、建設事業の採算改善や政策保有株式の売却等により、減収ながらも経常利益は黒字転換し、大幅な増益となりました。


※本記事は、清水建設株式会社 の有価証券報告書(第123期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 清水建設ってどんな会社?


1804年創業の歴史を持つ大手総合建設会社(スーパーゼネコン)です。伝統的な建築・土木事業に加え、非建設分野やグローバル展開も推進しています。

(1) 会社概要


1804年に初代清水喜助が創業し、1937年に株式会社清水組を設立、1948年に現在の社名へ変更しました。1961年に株式を公開し、翌年には東証・名証一部に上場しています。2000年代以降は不動産開発や環境・エンジニアリング分野へも事業を拡大し、2022年には日本道路を連結子会社化しました。

連結従業員数は21,286名、単体では11,163名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は関連会社の清水地所、第3位は創業家が設立に関わった社会福祉法人清水基金となっており、創業家や関連企業との結びつきが見られます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 14.41%
清水地所株式会社 12.12%
社会福祉法人清水基金 5.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長は新村達也氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
新村達也 代表取締役社長社長執行役員 1984年入社。建築総本部建築企画室長や名古屋支店長、東京支店長等を歴任。2024年副社長執行役員を経て、2025年4月より現職。
井上和幸 代表取締役会長 1981年入社。名古屋支店長等を経て2016年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。
池田謙太郎 代表取締役副社長副社長執行役員土木総本部長安全環境担当 1983年入社。土木総本部土木企画室長や土木営業本部長等を歴任。2023年4月より現職。
関口猛 取締役副社長副社長執行役員エンジニアリング事業担当グリーンエネルギー事業本部長情報統括担当DX経営推進室長 1984年入社。エンジニアリング事業本部長やLCV事業本部長等を歴任。2024年4月より現職。
堤義人 代表取締役副社長副社長執行役員建築総本部長生産性向上推進担当建築総本部 原子力・火力担当スマートシティ推進担当常盤橋プロジェクト総支配人 1982年入社。九州支店長や東京支店長等を歴任。2025年6月より現職。
東佳樹 代表取締役専務執行役員管理部門担当コーポレート企画室長サステナビリティ担当人事担当 1983年入社。コーポレート企画室長等を歴任し、管理部門やサステナビリティ、人事を担当。2025年4月より現職。
清水規昭 取締役 1995年入社。土木営業本部営業部長等を経て、2023年6月より清水地所代表取締役社長。同年より現職。


社外取締役は、岩本保(元味の素代表取締役副社長執行役員)、川田順一(元JXホールディングス取締役副社長執行役員)、田村真由美(元西友執行役員CFO)、定塚由美子(元厚生労働省人材開発統括官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「当社建設事業」「当社投資開発事業」「道路舗装事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 当社建設事業


親会社である同社が主体となり、国内外における建築工事および土木工事の請負を行っています。オフィスビル、工場、商業施設、学校、病院などの建築物から、トンネル、橋梁、ダム、鉄道などの社会インフラまで、幅広い建設プロジェクトを手掛けています。

収益は、発注者(官公庁、民間企業等)からの工事請負代金が主な源泉となります。運営は同社に加え、設備工事を担う第一設備工業や鉄骨工事等の日本ファブテックなどのグループ会社が連携して行っています。

(2) 当社投資開発事業


同社の投資開発本部が主体となり、オフィスビル、物流施設、データセンターなどの不動産開発事業を行っています。開発した不動産の賃貸や売却、管理運営を通じて収益を上げています。

収益は、テナントからの賃貸料や物件の売却代金等が主な源泉です。運営は同社が中心となって行っていますが、一部の業務についてはグループ会社と連携しています。

(3) 道路舗装事業


連結子会社である日本道路が主体となり、道路建設や舗装工事を中心とした建設事業、およびアスファルト合材等の製造・販売を行っています。

収益は、官公庁や民間企業からの工事請負代金、および舗装工事施工会社等へのアスファルト合材等の製品販売代金が源泉となります。運営は日本道路が行っています。

(4) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、エンジニアリング事業(エネルギー、環境浄化等)、グリーンエネルギー開発事業(再生可能エネルギー発電等)、建物ライフサイクル事業(ビルマネジメント等)などを展開しています。

収益は、プラント等の設計・施工代金、売電収入、建物の維持管理・リニューアル工事代金、建設資機材の販売・リース料(ミルックス等が担当)など多岐にわたります。運営は同社および各事業を担当する子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は2兆円前後で推移しています。利益面では、2024年3月期に建設コストの上昇等の影響で経常赤字となりましたが、2025年3月期には工事採算の改善等により黒字転換し、V字回復を果たしました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 14,565億円 14,830億円 19,338億円 20,055億円 19,444億円
経常利益 1,055億円 504億円 565億円 -198億円 717億円
利益率(%) 7.2% 3.4% 2.9% -1.0% 3.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 772億円 478億円 491億円 172億円 660億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、売上総利益率は大幅に改善しました。前期に計上された営業赤字が解消され、営業黒字に転換しています。コスト管理と採算重視の受注活動の効果が現れていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 20,055億円 19,444億円
売上総利益 895億円 1,955億円
売上総利益率(%) 4.5% 10.1%
営業利益 -247億円 710億円
営業利益率(%) -1.2% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が393億円(構成比32%)、研究開発費が162億円(同13%)を占めています。売上原価に関しては、完成工事原価が売上原価合計の88%を占めています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業は減収ながらも、採算性の向上により大幅な増益となりました。投資開発事業は物件売却の減少により減収減益です。道路舗装事業は増収増益と堅調に推移しました。その他事業は増収でしたが減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
当社建設事業 14,202億円 13,667億円 208億円 564億円 4.1%
当社投資開発事業 824億円 531億円 276億円 169億円 31.8%
道路舗装事業 1,435億円 1,508億円 78億円 99億円 6.6%
その他 3,595億円 3,737億円 280億円 249億円 6.7%
調整額 -億円 -億円 -1,088億円 -371億円 -%
連結(合計) 20,055億円 19,444億円 -247億円 710億円 3.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動によるキャッシュ・フローがプラス、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、改善型(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)に該当します。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -213億円 1,591億円
投資CF -54億円 78億円
財務CF -240億円 -711億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.6%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.1%で市場平均(24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、渋沢栄一翁の教えである「論語と算盤」(道徳と経済の合一)を社是としています。これを基に、「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により 社会の期待を超える価値を創造し 持続可能な未来づくりに貢献する」ことを経営理念として定めています。

(2) 企業文化


長期ビジョンの実現に向け、役員・従業員一人ひとりが新たなマインドセット「超建設」を共有しています。これは、既存の事業や組織の枠を超えて顧客や社会の本質的なニーズを探究し、新しい価値を提供することで、同社グループも共に成長していくという考え方です。

(3) 経営計画・目標


2030年を見据えた長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」の実現に向け、中期経営計画〈2024‐2026〉を策定しています。2030年度の連結経常利益2,000億円以上を目指し、事業ポートフォリオの変革を進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


「スマート イノベーション カンパニー」への進化を目指し、事業構造、技術、人財の3つのイノベーションを推進しています。建設事業では高収益体質への転換と生産体制の再構築を図り、非建設分野(不動産開発、エンジニアリング、フロンティア事業など)の収益拡大と安定化を目指しています。また、グローバル展開の加速や資本コストを意識した経営にも注力しています。

* 2030年度連結経常利益目標:2,000億円以上
* 中期経営計画(3年間)の成長投資:3,600億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財と組織力の成長」を経営基盤強化の柱の一つとしています。挑戦し共創する多様な人財を育成するため、人事制度の改正やスキルの可視化、人財育成施策の整備を進めています。従業員の自己実現と自律的なキャリア形成を支援し、エンゲージメントの向上を図ることで、経営戦略の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.7歳 16.0年 10,116,000円


※平均年間給与は期末手当及び諸手当を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 36.4%
男女賃金差異(全労働者) 63.6%
男女賃金差異(正規雇用) 63.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 63.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(3.6)、建設基幹資格取得率(81.6%)、DXコア人財の育成(47名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 倫理・法令違反リスク


建設業界は建設業法や独占禁止法など多くの法的規制を受けています。グループ内で違法行為が発生した場合、指名停止処分や社会的信用の失墜を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は企業倫理行動規範の制定やコンプライアンス研修の実施により対策を講じています。

(2) 安全・環境事故リスク


施工段階での人身事故や環境事故が発生した場合、多額の対策費用や工程遅延、刑事・行政処分等により事業運営に支障をきたす可能性があります。「安全第一」「人命尊重」を掲げ、安全衛生管理システムの運用や事故防止対策の水平展開に取り組んでいます。

(3) 技術・品質リスク


施工物の重大な欠陥や不具合が発生した場合、補修費用や損害賠償負担が発生し、信頼性の低下を招く恐れがあります。顧客第一の姿勢の下、品質マネジメントシステムの運用や品質管理体制の強化を図っています。

(4) 長時間労働リスク


建設業界の慢性的な人手不足や繁忙期の業務集中により、長時間労働が発生するリスクがあります。これは従業員の健康被害や離職、生産性低下につながる可能性があります。同社は業務効率化やアウトソーシングの活用、勤務状況のモニタリング等により改善を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。