清水建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

清水建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

清水建設は東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する大手総合建設会社です。主に建築・土木工事などの建設事業、不動産の開発事業、エンジニアリング事業などをグローバルに展開しています。直近の業績は、国内建築工事の採算改善などにより増収増益となり、堅調な推移を見せています。


※本記事は、清水建設の有価証券報告書(第124期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 清水建設ってどんな会社?


同社は国内外で建築・土木などの建設事業を中心に、不動産開発やエンジニアリング分野まで幅広く事業を展開しています。

(1) 会社概要


1804年に清水喜助が江戸で大工業を開業したのが起源です。1915年に合資会社清水組を設立し、1937年に改組しました。1948年に清水建設へ社名を変更し、1961年に東京証券取引所へ上場しました。近年は2022年に日本道路を連結子会社化するなど事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で22,278名、単体で11,434名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は関連会社の清水地所、第3位は社会福祉法人の清水基金となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.17%
清水地所 12.18%
社会福祉法人清水基金 5.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長は井上和幸氏、代表取締役社長は新村達也氏が務めています。社外取締役比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
井上和幸 代表取締役会長 1981年同社入社。建築事業本部第二営業本部長、名古屋支店長等を経て、2016年代表取締役社長に就任。2025年より現職。
新村達也 代表取締役社長社長執行役員 1984年同社入社。横浜支店長、東京支店長、建築総本部長等を経て、2024年代表取締役副社長に就任。2025年より現職。
池田謙太郎 代表取締役副社長副社長執行役員土木総本部長安全環境担当 1983年同社入社。土木営業本部長、土木総本部長等を経て、2021年代表取締役専務執行役員に就任。2023年より現職。
関口猛 取締役副社長副社長執行役員エンジニアリング事業担当情報統括担当 1984年同社入社。エンジニアリング事業本部長等を経て、2023年取締役専務執行役員に就任。2024年より現職。
堤義人 代表取締役副社長副社長執行役員建築総本部長原子力・火力担当スマートシティ推進担当常盤橋プロジェクト総支配人 1982年同社入社。九州支店長、東京支店長等を経て、2023年副社長執行役員に就任。2026年より現職。
清水規昭 取締役 1995年同社入社。営業総本部土木営業本部営業部長、清水地所監査役等を経て、2023年同社取締役および清水地所代表取締役社長に就任。現在に至る。


社外取締役は、岩本保(元味の素代表取締役)、川田順一(元JXホールディングス取締役)、田村真由美(元西友執行役員)、定塚由美子(元厚生労働省人材開発統括官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「当社建設事業」「当社投資開発事業」「道路舗装事業」および「その他」事業を展開しています。

当社建設事業

同セグメントでは、国内外において建築工事および土木工事全般の企画、設計、施工を提供しています。顧客は官公庁や民間企業など多岐にわたり、オフィスビルや工場、インフラ施設の建設を通じて社会基盤の整備を担っています。

収益は、顧客から受け取る工事の請負代金が主な柱となっています。事業の運営は同社の各支店および建築・土木総本部が中心となって行っており、工事の一部については日本道路やあおみ建設などの関係会社に発注しています。

当社投資開発事業

同セグメントでは、オフィスビルや物流施設、住宅などの不動産開発事業を提供しています。都市部を中心とした賃貸用不動産の開発や既存物件のバリューアップを通じて、企業や個人などの顧客へ価値を提供しています。

収益は、賃貸用不動産のテナントから受け取る賃貸料や、開発した物件の売却代金が主な柱となっています。事業の運営は同社の投資開発本部が主体となっており、施設管理の受託や賃貸借の取引において清水総合開発などの子会社と連携しています。

道路舗装事業

同セグメントでは、道路建設や舗装工事、一般土木工事のほか、アスファルト合材などの建設資材の製造・販売を提供しています。官公庁や民間企業を顧客とし、交通インフラの整備や維持修繕に貢献しています。

収益は、顧客からの工事請負代金や、舗装工事施工会社などへ販売する製品の代金から構成されています。事業の運営は、連結子会社である日本道路が一貫して担っており、同社から工事の一部を受注しています。

その他事業

同セグメントでは、エンジニアリング事業、グリーンエネルギー開発事業、建物ライフサイクル事業などを含みます。再生可能エネルギー発電施設の建設や電力小売、建設資機材の販売・リース、施設の維持管理などを提供しています。

収益は、各種施設の建設請負代金、電力販売料、資機材のリース料などから構成されます。事業の運営は同社の各関連部門のほか、建設資機材を扱うミルックスや建設機械レンタルのエスシー・マシーナリなどの子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は概ね増加傾向にあり、直近では2兆円を突破しています。経常利益は一時赤字を計上したものの、その後は急回復し、直近では1,223億円に達するなど収益力が大きく改善しています。当期利益も過去最高水準を記録し、利益率も向上するなど力強い成長を見せています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 14,830億円 19,338億円 20,055億円 19,444億円 20,578億円
経常利益 504億円 565億円 -198億円 717億円 1,223億円
利益率(%) 3.4% 2.9% -1.0% 3.7% 5.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 457億円 418億円 116億円 621億円 1,329億円

(2) 損益計算書


売上高が堅調に推移する中、売上総利益および営業利益ともに大幅な増益となっています。これに伴い、売上総利益率と営業利益率も大きく改善しており、収益性の向上が顕著に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 19,444億円 20,578億円
売上総利益 1,579億円 2,187億円
売上総利益率(%) 8.1% 10.6%
営業利益 710億円 1,187億円
営業利益率(%) 3.7% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が461億円(構成比33%)、研究開発費が166億円(同12%)を占めています。売上原価では、完成工事原価が1兆6,266億円(構成比90%)、開発事業等売上原価が1,731億円(同10%)となっています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業が売上高を牽引し、全体として増収を達成しています。道路舗装事業も堅調に推移する一方、投資開発事業やその他事業は前期並みの水準を維持しています。主力事業の好調が全体の成長を支えています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
当社建設事業 13,667億円 14,778億円
当社投資開発事業 531億円 526億円
道路舗装事業 1,508億円 1,557億円
その他 3,737億円 3,717億円
連結(合計) 19,444億円 20,578億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で生み出した資金を将来への投資と借入金の返済に充てる健全な資金循環が形成されています。企業の収益力を測るROEは13.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.8%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1,591億円 416億円
投資CF 8億円 -69億円
財務CF -711億円 -1,206億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、道徳と経済の合一を旨とする「論語と算盤」を社是とし、「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により 社会の期待を超える価値を創造し 持続可能な未来づくりに貢献する」ことを経営理念に掲げています。長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」では、建設事業の枠を超えて時代を先取りする「スマート イノベーション カンパニー」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「超建設」というマインドセットの下、既存の事業や組織の枠を超えて顧客や社会の本質的なニーズを積極的に探求する文化を重視しています。安全・安心でレジリエントな社会、誰もが快適に暮らせるインクルーシブな社会、そして地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現に向け、多様な人財が共創し挑戦を続ける風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画では「持続的成長に向けた経営基盤の強化」を基本方針とし、2030年度の連結経常利益2,000億円以上を目指しています。また、事業別の売上利益構成として建設65%・非建設35%、地域別で国内75%・海外25%を想定しており、株主資本コストを上回る収益力の確保によってPBRの早期改善を掲げています。

* 2030年度目標:連結経常利益2,000億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


各事業セグメントに応じた戦略として、建設事業では技術と品質の追求による高収益な事業体質への転換を進めます。不動産開発・エンジニアリング事業では、成長分野への挑戦や洋上風力のトップランナーを目指して収益拡大と安定化を図ります。さらに、フロンティア事業として宇宙・海洋開発などの新領域に投資を継続し、ビジネスモデルの確立を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「挑戦し共創する多様な人財の確保・育成」に向けた人財マネジメント体系の再構築を推進しています。役割や職責を重視した賃金体系への移行など新しい人事制度を導入し、従業員一人ひとりの働く意欲の向上や自律的なキャリア形成を支援することで、従業員と会社が健全な緊張感の中で互いに成長する関係性の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.7歳 16.1年 10,431,000円


※平均年間給与は期末手当及び諸手当を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.7%
男性育児休業取得率 54.3%
男女賃金差異(全労働者) 64.2%
男女賃金差異(正規雇用) 64.2%
男女賃金差異(有期雇用) 59.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア目標(4.0)、CO2削減目標(2035年度Scope1+2で61%削減)、外国産合板(非認証材)使用目標(2030年ゼロ)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 倫理・法令違反リスク

同社グループは建設業法や独占禁止法など多くの法的規制を受けており、違反が生じた場合、業績や企業評価に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として「企業倫理行動規範」の制定や内部通報制度の整備、全従業員向けのコンプライアンス研修などを通じて倫理意識の徹底を図っています。

(2) 安全・環境事故リスク

施工段階での人身事故や環境事故、関連法令違反が発生した場合、修復に多大な費用を要し、事業上の制約を受けるリスクがあります。「安全第一」「人命尊重」の姿勢を共有し、労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)や環境マネジメントシステムの運用により事故防止に努めています。

(3) 技術・品質リスク

重大な技術・品質面の事故や契約不適合が生じた場合、修復費用の負担や工程遅延、信用の毀損を招く可能性があります。「顧客第一」「品質確保」の事業姿勢の下、品質管理を所掌する組織の設置や品質マネジメントシステムの運用を通じ、品質不具合事例の水平展開とPDCAを徹底しています。

(4) 長時間労働リスク

建設業界全体で人手不足が課題となる中、繁忙期に特定従業員へ負荷が集中し長時間労働が発生するリスクがあります。対策として労務管理システムの導入や産業保健スタッフによるフォロー体制を構築するとともに、DX活用による業務の効率化や適正工期の確保に向けた活動を推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。