松井建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松井建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する同社は、建設工事の請負事業および不動産事業を展開しています。1586年創業の長い歴史と社寺建築の技術に強みを持ちます。直近の業績は、売上高が993億円、経常利益が38億円となり、増収増益で着地しました。


※本記事は、松井建設株式会社 の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 松井建設ってどんな会社?

建設工事の請負事業と不動産事業を展開しています。1586年創業という長い歴史と伝統を持ち、社寺建築の高い技術力に特徴がある企業です。

(1) 会社概要

同社は、1586年(天正14年)に初代松井角右衛門が創業し、1939年に株式会社松井組を設立、1948年に現在の松井建設へ改称しました。1961年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1966年には市場第一部へ指定替えとなりました。その後、市場区分の見直しに伴い、2022年にプライム市場、2023年10月にスタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は762名、単体では734名です。筆頭株主は信託銀行の信託口で、第2位は通信サービスや電力販売等を行う事業会社、第3位は同社のメインバンクの一つである都市銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.78%
光通信 7.50%
みずほ銀行 4.53%

(2) 経営陣

同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は松井隆弘氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
松 井 隆 弘 取締役社長(代表取締役)執行役員社長 1989年入社。営業部長、専務取締役等を経て2005年社長に就任。2006年より現職。
片 山  剛 取締役専務執行役員営業本部長 元みずほ銀行執行役員。2015年同社常務執行役員。2018年取締役。2024年より現職。
金 子  勇 取締役常務執行役員東京支店長 1981年入社。東北支店長等を経て2023年常務執行役員東京支店長。2024年より現職。
堀  博 之 取締役執行役員管理本部長・兼コンプライアンス推進室担当 1981年入社。経理部長、管理本部副本部長等を経て2020年取締役。2025年より現職。
鈴 木 博 光 取締役執行役員経営本部長 1982年入社。人事部長、経営本部長兼人事部長を経て2020年取締役。2025年より現職。
長谷川 浩市 取締役執行役員DX推進部担当・兼営業本部営業担当 元北陸銀行高岡支店長。2020年同社執行役員。2020年取締役。2022年より現職。


社外取締役は、鈴木裕子(弁護士)、森田裕三(正和商事取締役会長)、藤野秀吉(藤野秀吉税理士事務所代表)です。

2. 事業内容

同社グループは、「建設事業」および「不動産事業等」を展開しています。

(1) 建設事業

建築工事および土木工事等の請負事業を行っています。顧客は官公庁から民間企業、寺社仏閣まで多岐にわたります。

収益は、顧客からの工事請負代金として受け取ります。運営は主に同社が行っていますが、連結子会社の松井リフォームも建設工事の請負事業を営んでいます。

(2) 不動産事業等

土地・建物の売買、賃貸住宅・貸事務所等の賃貸事業、および建設工事全般の設計・監理に関する事業を行っています。

収益は、不動産の販売代金や賃貸料、設計・監理料として受け取ります。運営は同社のほか、連結子会社の松友商事が土地・建物の売買および賃貸事業を営んでいます。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は800億円台から900億円台後半へと堅調に推移しています。利益面では、2024年3月期に一時的な落ち込みが見られましたが、2025年3月期には大きく回復し、経常利益、当期純利益ともに過去5期間で最高水準に近い数値を記録しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 876億円 825億円 887億円 970億円 993億円
経常利益 33億円 28億円 27億円 8億円 38億円
利益率(%) 3.8% 3.4% 3.0% 0.8% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 17億円 15億円 11億円 26億円

(2) 損益計算書

2025年3月期は前期と比較して、売上高が増加するとともに、売上総利益率が大きく改善しました。これに伴い営業利益および営業利益率は大幅に上昇しています。完成工事総利益率や不動産事業等総利益率の改善が寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 970億円 993億円
売上総利益 40億円 68億円
売上総利益率(%) 4.1% 6.9%
営業利益 3億円 34億円
営業利益率(%) 0.3% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が19億円(構成比45%)、賞与引当金繰入額が3億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益

建設事業は増収となり、利益面でも完成工事総利益率の改善等により大幅な増益となりました。不動産事業等は、連結子会社における開発型不動産売上の減少により減収となりましたが、利益率は改善し増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 946億円 971億円 6億円 36億円 3.8%
不動産事業等 23億円 22億円 6億円 7億円 30.4%
調整額 - - -9億円 -9億円 -
連結(合計) 970億円 993億円 3億円 34億円 3.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

松井建設は、建設事業を中心に、受注高・売上高ともに増加傾向にあります。

同社のキャッシュ・フローは、営業活動で大きく増加しました。これは、税金等調整前当期純利益の計上や、未成工事受入金の増加などが主な要因です。一方、投資活動では、有価証券等の売却収入があったものの、設備投資等による支出が上回り、減少となりました。財務活動では、短期借入金の返済や配当金の支払いなどにより、資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -162億円 76億円
投資CF -0.2億円 -2億円
財務CF 38億円 -31億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「人・仕事・会社を磨き続け、建設事業を通じて、社会に貢献する。」を企業理念として掲げています。この理念の実現に向けて、変化の波にただ身を任せるのではなく、自らの力で事業基盤の強化に取り組む姿勢を示しています。

(2) 企業文化

同社は「信用日本一」を社是とし、法と社会倫理に基づき行動することを基本方針としています。1586年の創業以来受け継がれてきた社寺建築の技術や、質素・堅実・地道の社風を強みとしています。コンプライアンスを徹底し、地道に本業に取り組み、顧客満足や地域社会の安全・安心を提供することを重視しています。

(3) 経営計画・目標

同社グループは、2025年度(2026年3月期)を初年度とする「中期経営計画〈2025-2027〉」を策定しています。2027年度の主な目標数値は以下の通りです。
* 売上高:990億円
* 営業利益:35億円
* 自己資本利益率(ROE):6%
* 配当性向:50%

(4) 成長戦略と重点施策

同社は「身の丈経営 質的成長」を基本方針とし、規模の拡大ではなく質的成長を目指しています。具体的には、基幹システムの再構築、時間外労働規制への対応強化、選別受注へのシフト、次世代経営職階の育成などを優先課題として挙げています。

* ROE6%の回復と8%に向けた基盤拡充
* 工事請負代金支払条件の改善
* GHG関連の情報開示要求への対応
* 自然災害リスクへの対応

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は、従業員を企業価値向上の重要な存在と位置づけ、女性や外国人等の多様な人材が能力を発揮できる環境整備に努めています。特定の属性に対する数値目標は設定せず、意欲と適性のある従業員を育成し、能力のある人材を管理職に登用する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.6歳 19.2年 8,048,220円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.4%
男性育児休業取得率 21.8%
男女賃金差異(全労働者) 58.9%
男女賃金差異(正規雇用) 67.0%
男女賃金差異(非正規) 76.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術系女性社員の採用(7名)、看護休暇取得者の割合(17.9%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注価格競争リスク

建設業は工事を発注者から個別に受注生産する構造的特徴があります。過当競争により競合他社との価格競争が激化した場合には、同社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 取引先の信用リスク

建設業は一契約当たりの金額が大きく、代金回収までに長期間を要する特徴があります。工事代金を受領する前に取引先が支払不能に陥った場合には、貸倒れ等により経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 建設資材価格の高騰リスク

受注から完成引渡しまで長期間を要するため、その間に建設資材の価格が高騰した場合、契約済みの請負金額にコスト上昇分を反映させることが困難なケースがあります。これにより採算が悪化し、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。