松井建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松井建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松井建設は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、建設工事の請負事業と不動産事業を主力として展開しています。直近の連結業績では、売上高が減少したものの、完成工事総利益率の改善などが寄与し、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも増加しており、減収増益のトレンドとなっています。


※本記事は、松井建設株式会社の有価証券報告書(第97期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 松井建設ってどんな会社?


建設工事の請負事業および不動産事業を主力とし、歴史ある社寺建築から一般建築まで幅広く手がける企業です。

(1) 会社概要


1586年に初代松井角右衛門が加賀藩の命を受けて越中守山城の普請に従事し、以来代々神社仏閣の造営を専業とした長い伝統が基盤です。1922年に一般建築へ業種を拡張し、1939年に松井組を設立、1948年に松井建設へ改称しました。その後、不動産事業等を行う松友商事や建設事業を行う松井リフォームなどを設立し事業を拡大しています。

従業員数は連結で771名、単体で742名です。大株主については、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は光通信KK投資事業有限責任組合、第3位は従業員や取引先などで構成される松井建設取引先持株会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.01%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.55%
松井建設取引先持株会 4.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役執行役員社長は松井角平氏が務めています。取締役9名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
松井角平 取締役社長(代表取締役)執行役員社長 1989年1月同社入社。営業部長、取締役、常務取締役、専務取締役等を経て、2005年6月より代表取締役社長。2006年6月より現職。
片山剛 取締役専務執行役員営業本部長 みずほ銀行執行役員公務第一部長を経て、2015年5月同社常務執行役員に就任。2018年6月取締役。2024年6月より現職。
金子勇 取締役常務執行役員東京支店長 1981年4月同社入社。東北支店建築部長、東北支店長等を経て、2023年4月常務執行役員東京支店長。2024年6月より現職。
堀博之 取締役執行役員管理本部長・兼コンプライアンス推進室担当 1981年4月同社入社。管理本部総務部長、経理部長等を経て、2020年6月取締役。2025年4月より現職。
鈴木博光 取締役執行役員経営本部長 1982年4月同社入社。管理本部人事部長等を経て、2020年4月執行役員経営本部長兼人事部長。2020年6月取締役。2025年4月より現職。
長谷川浩市 取締役執行役員DX推進部担当・兼営業本部営業担当 北陸銀行高岡支店長、北銀リース常務取締役等を経て、2020年6月同社取締役。2022年4月より現職。


社外取締役は、鈴木裕子(東京リード法律事務所)、森田裕三(正和商事相談役)、藤野秀吉(藤野秀吉税理士事務所)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」および「不動産事業等」を展開しています。

建設事業


建設工事の請負事業を展開しており、社寺建築から一般建築、土木工事まで幅広く建設サービスを提供しています。官公庁および民間企業を主な顧客とし、伝統技術と新技術を融合させた高品質な建造物の提供に努めています。

建設工事の請負代金を収益源とし、契約の進捗度などに応じて収益を認識します。同社および連結子会社の松井リフォームが運営を行っており、同社は松井リフォームに一部を発注するほか、連結子会社の松友商事から工事を受注しています。

不動産事業等


土地や建物の売買、賃貸住宅や貸事務所等の不動産事業、および建設工事全般の設計や監理に関する事業などを展開しています。安定した収益源の確保と保有資産の有効活用を目的としています。

物件の引渡時の販売代金や、保有不動産の賃貸借契約に基づく賃貸料、設計・監理の業務委託料を収益源としています。運営は同社および連結子会社の松友商事が行っており、同社は賃貸建物の一部を関連会社等に賃貸しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあったものの当期は減少に転じています。一方、利益面では一時的な落ち込みを経て直近2期で大幅な回復を見せており、特に当期は経常利益、当期純利益ともに大きく伸長し、利益率も大きく改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 825億円 887億円 970億円 993億円 960億円
経常利益 28億円 27億円 8億円 38億円 62億円
利益率(%) 3.4% 3.0% 0.8% 3.9% 6.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 15億円 11億円 26億円 42億円

(2) 損益計算書


直近の損益状況を見ると、売上高が減少した一方で売上総利益は大幅に増加し、売上総利益率も大きく向上しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も前期間から大きく改善し、高い収益性を確保する結果となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 993億円 960億円
売上総利益 68億円 103億円
売上総利益率(%) 6.9% 10.7%
営業利益 34億円 57億円
営業利益率(%) 3.4% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が20億円(構成比37%)、貸倒引当金繰入額が5億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上推移を見ると、主力の建設事業は前期からわずかに減収となっています。また、不動産事業等についても開発型不動産売上の減少などが影響し、前期比で減収となるなど、両セグメントともに売上高が減少する結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設事業 971億円 945億円
不動産事業等 22億円 16億円
連結(合計) 993億円 960億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 76億円 92億円
投資CF -2億円 -7億円
財務CF -31億円 -51億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も65.1%で市場平均を上回っており、いずれも良好な水準を示しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「人・仕事・会社を磨き続け、建設事業を通じて、社会に貢献する。」を企業理念として掲げています。創業以来の長い歴史に基づく「信用日本一」の社是のもと、法と社会倫理に基づき行動し、あらゆるステークホルダーの信頼と要望に応えることで中長期的な企業価値の向上を図ることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、「質素・堅実・地道の社風」を企業文化として重視しています。1586年創業という長い歴史と連綿と受け継がれてきた社寺建築の技術を背景に、「良い仕事をすれば、その仕事が次の仕事を呼ぶ」という「工匠精神」を大切にし、当事者意識をもって地道に本業に取り組み、社会に貢献する姿勢を貫いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年度(2026年3月期)を初年度とする「中期経営計画〈2025-2027〉」を策定し、規模の拡大ではなく「身の丈経営を徹底し、質的成長を遂げる」ことを方針としています。2027年度に向けて以下の数値を目標として掲げています。

* 売上高 990億円
* 売上総利益 80億円
* 営業利益 35億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益 30億円
* 自己資本利益率(ROE) 6%
* 配当性向 50%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は経営環境の変化に対応し、持続的な質的成長を実現するための課題に対処する戦略を推進しています。基幹システムの再構築や時間外労働規制への対応強化のほか、選別受注へのシフト、次世代経営職階の育成に取り組みます。また、ROE6%の回復と8%に向けた基盤拡充、自然災害リスクへの対応などの施策を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、企業を支える屋台骨は人材であるとの認識のもと、「全社員のスキルアップ」を人的資本強化の施策として掲げています。継続的な採用と定着率の向上を目指し、多様な人材が能力を最大限発揮できる職場環境や企業風土の醸成に注力しています。また、女性の積極的な採用や管理職候補者の育成にも努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.0歳 19.4年 8,377,425円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 2.0%
男性労働者の育児休業取得率 71.4%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 61.0%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 68.4%
労働者の男女の賃金の差異(契約社員) 77.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術系女性社員の採用(2名)、看護休暇取得者の割合(31.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注価格競争リスク


建設業においては、建設工事を発注者から個別に受注し生産するという構造的な特徴があります。過当競争によって競合他社との受注価格競争が激化した場合には、利益率の低下などを招き、同社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 取引先の信用リスク


建設業は発注者との一契約当たりの金額が大きく、代金回収までに長期間を要する特徴があります。そのため、工事代金を受領する前に取引先が支払不能に陥るなどの信用リスクが顕在化した場合、同社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 建設資材価格の高騰リスク


建設工事は受注から完成引渡しまでに長期間を要するため、その間に建設資材の価格が高騰するリスクがあります。コスト上昇分を契約した工事の請負金額に反映することが困難な場合、利益を圧迫し同社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。