※本記事は、株式会社錢高組 の有価証券報告書(第94期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 錢高組ってどんな会社?
1705年創業の歴史を持つ大阪発祥のゼネコンです。土木・建築の建設事業を柱に、堅実経営を掲げています。
■(1) 会社概要
1705年、業祖が棟梁として建立に携わった本願寺尾崎別院が落慶し創業しました。1887年に錢高組を創立し、1931年に株式会社錢高組を設立しています。1961年に大阪証券取引所第二部に上場し、1966年には第一部へ指定替えとなりました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は907名、単体従業員数は902名です。筆頭株主は創業家関連企業の泉で、第2位も同様に大泉商事です。第3位にはメインバンクである三菱UFJ銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 泉 | 35.46% |
| 大泉商事 | 13.01% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長役員は銭高久善氏です。社外取締役比率は10.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 銭高 久善 | 代表取締役社長社長役員 | 2000年同社入社。建築事業本部長、総合企画部長などを経て、2016年より現職。 |
| 銭高 善雄 | 代表取締役会長 | 1967年同社入社。取締役副社長、代表取締役社長などを歴任し、1988年より現職。 |
| 宮本 茂弘 | 代表取締役副会長事業統轄本部長 | 1961年同社入社。副社長役員、取締役副会長などを経て、2015年より現職。 |
| 銭高 丈善 | 取締役専務役員総合支援本部長 | 2008年同社入社。大阪支社長、不動産事業部長などを経て、2020年より現職。 |
社外取締役は、田尻邦夫(元デサント社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」および「不動産事業」を展開しています。
■(1) 建設事業
国内外において総合建設業を営んでおり、土木工事および建築工事の請負を行っています。また、一部の子会社では建設工事用資機材等の賃貸なども行っています。顧客は官公庁から民間企業まで多岐にわたります。
収益は主に顧客からの工事請負代金によって構成されています。運営は主に錢高組が行っており、関連する資機材賃貸などを非連結子会社等が担当しています。
■(2) 不動産事業
オフィスビルやマンション等の不動産の売買、賃貸、仲介、管理などを行っています。東京都や大阪府などに賃貸用不動産を保有しており、安定的な収益源となっています。
収益は不動産の販売代金、賃貸料、仲介手数料、管理料などから構成されています。運営は錢高組のほか、子会社である五番町ビル、京町堀地所、泉地所、ゼット・ウェスト・アメリカ・コーポレーションなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は1,000億円から1,200億円前後で推移しています。直近の2025年3月期は微減収となったものの、利益面では改善傾向にあり、経常利益および当期純利益は増加しています。利益率は3%から4%台で安定的に推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,058億円 | 1,019億円 | 1,076億円 | 1,210億円 | 1,207億円 |
| 経常利益 | 56億円 | 34億円 | 29億円 | 50億円 | 51億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 3.4% | 2.7% | 4.1% | 4.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 32億円 | 19億円 | 18億円 | 27億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高はほぼ横ばいですが、売上総利益が増加しており、収益性が向上しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も改善しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,210億円 | 1,207億円 |
| 売上総利益 | 78億円 | 88億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.5% | 7.3% |
| 営業利益 | 33億円 | 37億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が26億円(構成比39%)を占めています。売上原価については、完成工事原価等が1,104億円(構成比100%)を計上しています。
■(3) セグメント収益
建設事業は売上高が微減となりましたが、利益率は改善し増益となりました。不動産事業は売上高、利益ともに減少しました。建設事業が売上・利益の大半を占める構造となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設事業 | 1,183億円 | 1,182億円 | 26億円 | 33億円 | 2.8% |
| 不動産事業 | 27億円 | 25億円 | 16億円 | 13億円 | 51.9% |
| 調整額 | - | - | -9億円 | -9億円 | - |
| 連結(合計) | 1,210億円 | 1,207億円 | 33億円 | 37億円 | 3.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
錢高組は、建設事業を中心に、売上債権の増加等により営業活動によるキャッシュ・フローは支出超過となりました。投資有価証券の取得等により、投資活動によるキャッシュ・フローも支出超過となりました。一方、短期借入金の増加等により、財務活動によるキャッシュ・フローは収入超過となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -224億円 | -77億円 |
| 投資CF | 27億円 | -0億円 |
| 財務CF | 193億円 | 27億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「社是」として「信用第一」「堅実経営」「積極的精神」「和親協同」を掲げています。また、経営理念として「社会から認められ社会から求められる企業として永遠に発展する」「進取の精神を発揮し地球規模企業として世界に躍進する」「人材を育成し自己の向上をすすめ活力ある企業として繁栄する」ことを定めています。
■(2) 企業文化
1705年の創業以来、宮大工の棟梁を家業としてきた歴史的背景を持ち、技術と信用を重んじる文化があります。社是にある「堅実経営」と「積極的精神」のバランスを重視し、顧客満足の獲得と組織力の強化を通じて、すべてのステークホルダーからの信頼に応えることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標は有価証券報告書本文には記載されていませんが、顧客満足の獲得、組織力の強化、財務体質の強化により「企業価値」を継続的に向上させることを目指しています。また、サステナビリティに関する課題解決の進捗を経営会議等で検証しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
国内外のマーケット解析による受注拡大を掲げ、技術提案力や価格競争力の向上に取り組んでいます。また、総力を結集した生産システムの構築により、顧客満足に応え収益力を高めることを目指しています。さらに、内部統制システムの強化やコンプライアンスの徹底、環境保全への取り組みを通じて、企業の社会的責任を果たす経営を実践しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業は人であり、構成する一人ひとりの人物こそが企業存続発展の原動力である」との認識のもと、次代を担う中堅・若年層の教育やマネジメント力の強化に注力しています。また、女性活躍推進やワークライフバランスの充実に向けた社内環境整備を進め、安心して働ける職場づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.6歳 | 13.7年 | 8,604,371円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.4% |
| 男性育児休業取得率 | 42.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 63.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 47.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設資材価格・労務費の高騰
建設資材価格の上昇や技能労働者不足に伴う労務費の高騰リスクがあります。これらが急激に上昇し、請負金への転嫁が困難な場合、工事利益の減少や工期の延伸を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外事業に伴うリスク
海外での工事においては、為替レートの変動、現地の法令・税制の予期せぬ変更、テロ・紛争などの政治・経済情勢の急激な変化などが生じる可能性があります。これらは事業運営の障害となり、業績に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 取引先の信用リスク
発注者や協力企業、共同施工会社の信用不安が顕在化した場合、資金回収の不能や施工遅延などの問題が発生する可能性があります。これにより、同社グループの財政状態や経営成績に悪影響が及ぶリスクがあります。



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