※本記事は、錢高組の有価証券報告書(第95期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は日本基準です。
1. 錢高組ってどんな会社?
建築および土木工事を主体とする総合建設業として、国内外で社会基盤の構築に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
1887年に錢高組として創立し、1931年に錢高組を設立しました。1961年に大阪証券取引所に上場し、総合建設業者としての地位を固めました。1981年には国際事業部を設置して海外進出を進め、1994年には米国に連結子会社を設立するなど、国内外で事業基盤を拡大してきました。
現在の従業員数は連結で885名、単体で880名です。大株主の構成は、筆頭株主が役員の関連会社である泉で、第2位も同じく役員の関連会社である大泉商事となっており、第3位には三菱UFJ銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 泉 | 35.46% |
| 大泉商事 | 13.01% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長は銭高善雄氏、代表取締役社長は銭高久善氏が務めています。取締役7名のうち社外取締役は2名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 銭高善雄 | 代表取締役会長 | 1967年同社入社。取締役、常務取締役、代表取締役副社長等を経て、1980年代表取締役社長に就任。1988年より現職。 |
| 銭高久善 | 代表取締役社長社長役員 | 2000年同社入社。取締役、常務役員、専務役員、副社長役員等を経て、2016年より現職。 |
| 銭高丈善 | 取締役専務役員総合支援本部長 | 2008年同社入社。執行役員、常務役員、不動産事業部長、取締役等を経て、2020年より現職。 |
| 近藤修 | 取締役専務役員事業統轄本部建築事業本部長 | 1980年同社入社。執行役員、常務役員事業統轄本部建築事業本部建築本部長等を経て、2025年より現職。 |
| 田中好秀 | 取締役常務役員事業統轄本部土木事業本部長 | 1993年同社入社。事業統轄本部土木事業本部営業統轄部長、執行役員等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、田尻邦夫氏(元デサント社長)、池田全德氏(元日本触媒会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、建設事業および不動産事業を展開しています。
■建設事業
国内外での建築・土木・環境分野における総合建設工事全般を提供しています。官公庁や民間企業を主な顧客として、社会基盤の構築や物流施設、商業施設の建設などを行っています。
請負契約に基づいて建設物を引き渡し、顧客から工事対価を受け取る収益モデルです。運営は主に錢高組が行っています。
■不動産事業
東京都をはじめとする各地域において、オフィスビルなどの賃貸用不動産の運用を行っています。不動産の売買、賃貸、仲介および管理等を幅広く手がけています。
不動産売買に伴う代金や、物件の賃貸による賃貸収入などを顧客から受け取る収益モデルです。錢高組のほか、五番町ビルなどが運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は1000億円台から徐々に拡大し、直近では1250億円を超える規模へと成長しています。経常利益および当期純利益も堅調に推移しており、特に直近2年間は増益基調が明確となっており、収益性の向上がうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1019億円 | 1076億円 | 1210億円 | 1207億円 | 1255億円 |
| 経常利益 | 34億円 | 29億円 | 50億円 | 51億円 | 64億円 |
| 利益率(%) | 3.4% | 2.7% | 4.1% | 4.2% | 5.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 19億円 | 18億円 | 31億円 | 35億円 | 42億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。販売費および一般管理費の増加を吸収し、営業利益も堅調な伸びを示しており、本業の収益力が向上していることが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1207億円 | 1255億円 |
| 売上総利益 | 102億円 | 126億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.5% | 10.1% |
| 営業利益 | 37億円 | 47億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 3.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が28億円(構成比35%)、賞与引当金繰入額が4億円(同5%)を占めています。また、売上原価の内訳としては、完成工事原価において外注費が715億円(構成比64%)、経費が173億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力の建設事業が着実な増収を果たしており、全体業績を牽引しています。また、不動産事業についても底堅く推移しており、安定した収益基盤として貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 建設事業 | 1182億円 | 1228億円 |
| 不動産事業 | 25億円 | 27億円 |
| 連結(合計) | 1207億円 | 1255億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金を元に、投資や借入金の返済を進める「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -77億円 | 188億円 |
| 投資CF | -0億円 | -13億円 |
| 財務CF | 27億円 | -45億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「社会から認められ社会から求められる企業として永遠に発展する」「進取の精神を発揮し地球規模企業として世界に躍進する」「人材を育成し自己の向上をすすめ活力ある企業として繁栄する」を経営理念に掲げています。すべてのステークホルダーからの信頼と期待に応え、社会の発展に貢献することを使命として経営を行っています。
■(2) 企業文化
「信用第一」「堅実経営」「積極的精神」「和親協同」の4つを社是として掲げています。あらゆる事業活動において高い倫理観の下で企業の社会的責任を果たすことを重視し、コンプライアンス研修の定期的な実施や環境保全行動指針に基づくゼロエミッションへの取り組みなど、法令順守と環境対応を組織全体で実践しています。
■(3) 経営計画・目標
気候変動への対応を永続的な発展に不可欠な経営課題と位置づけ、温室効果ガスの排出総量削減目標を設定しています。
* 2030年度:Scope1およびScope2排出量を2020年度比で42%削減
* 2030年度:Scope3排出量を2020年度比で25%削減
■(4) 成長戦略と重点施策
国内外の建設市場の変化を予測し、マーケット解析やリスク解析を徹底することで重点地域・有望分野における受注拡大を目指しています。また、技術提案力や価格競争力の向上、工業化工法や省力化工法の積極的な導入などにより生産性の向上を図り、顧客満足に応える生産システムの確立に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業は人であり、構成する一人ひとりの人物こそが企業存続発展の原動力である」という認識のもと、人材確保のための安定した新卒採用と積極的なキャリア採用を実施しています。中長期的な企業価値の向上に向け、次代の主力となる中堅・若年層の教育や組織運営におけるマネジメント力強化に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.0歳 | 13.9年 | 9,453,434円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.5% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 60.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 47.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 海外事業におけるカントリーリスク
海外での工事においては、為替レートの大きな変動、法令諸規制や税制の予期せぬ変更、テロ・紛争の発生などによる政治・経済状況の急激な変動が生じた場合、事業の円滑な遂行が妨げられ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 建設資材価格や労務費の高騰リスク
建設資材価格や技能労働者不足による労務費が急激に上昇した場合、工事利益の減少や工期延伸が発生する可能性があります。早期購買等で対応していますが、請負金額に適切に反映できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 施工等における契約不適合責任のリスク
品質確保のための生産システムを確立し品質管理に万全を期していますが、万一、引き渡した建設物に品質上の不具合が発生した場合、その補修等の対応に要する費用負担が発生し、業績および社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。



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