中電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合設備エンジニアリング企業です。中国電力グループの中核として、中国地域を中心に屋内電気工事や空調管工事、情報通信工事などを手掛けています。当連結会計年度は、屋内電気工事や空調管工事の増加に加え、利益率の改善も寄与し、売上高は前期比10.4%増、経常利益は83.9%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社中電工 の有価証券報告書(第109期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中電工ってどんな会社?


中国電力グループの設備工事業大手です。電気・空調・情報通信等の設備工事をトータルで提供しています。

(1) 会社概要


同社は1944年、中国5県下の電気工事会社12社が統合し、中国電気工事として広島市に設立されました。1949年には広島証券取引所へ上場し、1956年にビニール外装ケーブル工法を導入開発しました。1990年に現在の商号である中電工へ変更しています。2020年には昭和コーポレーションの株式を取得し子会社化しました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は4,612名(単体3,400名)です。大株主構成は、筆頭株主が同社の親会社に相当する中国電力で40.43%を保有し、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は従業員持株会となっています。安定した株主基盤のもと、中国地域を地盤に事業を展開しています。

氏名 持株比率
中国電力 40.43%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.38%
中電工従業員株式投資会 3.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名、計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は重藤隆文氏です。社外取締役比率は63.6%です。

氏名 役職 主な経歴
重藤隆文 代表取締役社長 2017年中国電力取締役常務執行役員、2020年同社代表取締役副社長執行役員などを経て、2022年6月より現職。
迫谷章 代表取締役会長 2013年中国電力常務取締役などを経て、2018年中電工代表取締役社長に就任。2022年6月より現職。
谷口実男 代表取締役副社長執行役員 1987年中電工入社。技術本部空調管技術部長、取締役常務執行役員営業本部長などを経て、2024年6月より現職。
緒方秀文 取締役監査等委員 (常勤) 1981年中電工入社。秘書室長兼人事部長、取締役常務執行役員業務本部長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、稲本信秀(元マツダ取締役専務執行役員)、餘利野直人(広島大学大学院先進理工系科学研究科特任教授)、江國成基(元天満屋代表取締役社長)、村田治子(公認会計士・税理士)、飯岡久美(弁護士)、廣田亨(元広島銀行取締役専務執行役員)、吉永浩之(中国電力常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 設備工事業


屋内電気工事、空調管工事、情報通信工事、配電線工事、送変電地中線工事など、建設設備全般の設計・施工を行っています。中国電力グループの設備工事に加え、官公庁や一般民間企業、海外(マレーシア、シンガポール等)での工事も手掛けています。

収益は、顧客である施主やゼネコン等から受け取る工事請負代金が主な源泉です。運営は主に中電工が行い、国内子会社の中電工エレテック各社や三親電材などが下請け施工や材料納入を担当しています。また、海外ではCHUDENKO(MALAYSIA)SDN. BHD.などが事業を行っています。

(2) その他の事業


設備工事以外の多角的な事業を展開しており、電気機器・工事材料の販売、リース、保険代理、PFI事業、農業関連事業、再生可能エネルギー発電事業などが含まれます。

収益は、商品の販売代金、リース料、保険手数料、売電収入などから得ています。運営は、三親電材(材料販売)、昭和コーポレーション(管工機材製造・販売)、中工開発(リース・保険)、OCソーラー(太陽光発電)など、各連結子会社が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第107期を除き増加傾向にあり、特に当期は2,219億円と大きく伸長しました。利益面では、第107期に赤字を計上したものの、翌期に黒字回復し、当期は経常利益234億円、当期純利益191億円と過去最高水準の利益を達成しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,845億円 1,907億円 1,890億円 2,010億円 2,219億円
経常利益 119億円 120億円 -19億円 127億円 234億円
利益率(%) 6.4% 6.3% -1.0% 6.3% 10.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 78億円 64億円 -80億円 78億円 191億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大幅に増加しています。売上総利益率は17.5%と前期から改善し、営業利益率は9.8%に達しました。増収効果に加え、原価管理の徹底や施工効率化が利益率向上に寄与した形です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,010億円 2,219億円
売上総利益 238億円 339億円
売上総利益率(%) 11.8% 15.3%
営業利益 119億円 217億円
営業利益率(%) 5.9% 9.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が83億円(構成比48%)と最も大きな割合を占めています。売上原価においては、材料費や労務費、外注費などが主な内訳となります。

(3) セグメント収益


主力の設備工事業は、屋内電気工事や空調管工事の増加により増収となり、利益面でも大幅な増益を達成しました。その他の事業も増収増益となり、全セグメントで好調な推移を示しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
設備工事業 1,784億円 1,981億円 113億円 210億円 10.6%
その他 226億円 238億円 7億円 9億円 3.8%
調整額 -億円 -億円 -1億円 -2億円 -%
連結(合計) 2,010億円 2,219億円 119億円 217億円 9.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

中電工は、営業活動で潤沢な資金を獲得し、事業基盤の強化に努めています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資や有価証券への投資を行いました。財務活動では、株主への還元として配当金の支払いを実施しました。これらの活動の結果、同社の資金は増加し、期末には安定した資金ポジションを確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 137億円 228億円
投資CF -61億円 -115億円
財務CF -73億円 -76億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、精神的なよりどころとして社是「眞心」を掲げるとともに、企業理念として「私たちは、技術と品質と誇りをもって、社会の発展を支え続けます。」を定めています。グループ一体となって社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現への貢献と持続的成長を目指しています。

(2) 企業文化


社会情勢の変化に対応し、持続的な成長と企業価値向上を目指す「中電工グループ 2030ビジョン」を掲げています。テーマに「変革と成長」を据え、働くすべての人が誇りと歓びを持って変革にチャレンジすること、高い技術と品質で社会の多様なニーズに応えることを重視する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2027(2025~2027年度)」を策定し、最終年度および2030年度に向けた数値目標を設定しています。2030年度には、連結売上高2,600億円、営業利益240億円、ROE7.0%以上の達成を目指しています。

* 2027年度目標:売上高2,400億円、営業利益230億円、ROE7.0%以上
* 2030年度目標:売上高2,600億円、営業利益240億円、ROE7.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


安全とコンプライアンスを最優先に、中国地域の基盤強化と都市圏の事業拡大に注力します。営業力・施工力の強化、DXや施工効率化による生産性向上、M&Aや成長投資による事業拡大を推進します。また、カーボンニュートラルに向けた環境関連ビジネスの展開も強化します。

* 安全・コンプライアンスの徹底と品質の向上
* 営業力・施工力の一層の強化と受注の拡大
* 生産性の向上による利益の創出
* 人材の確保・育成の強化と魅力ある職場づくり
* 成長投資による事業拡大

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」を企業価値の源泉と位置づけ、採用方法の多様化による人材確保や、資格取得教育等によるスキルアップ支援を推進しています。また、ワークライフバランスの推進や健康経営など、従業員が誇りと歓びを持って働ける魅力ある職場づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.1歳 18.7年 7,895,000円


※平均年間給与は、賞与、基準外賃金及びライフプラン加算支援金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.0%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.3%
男女賃金差異(正規雇用) 81.7%
男女賃金差異(非正規) 69.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期採用数における女性比率(7.5%)、管理職(主任以上)に占める女性比率(3.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材確保・育成に関するリスク


主要事業である設備工事業において、新規入職者の減少や高齢化が進む中、必要な国家資格や技能を有する人材が確保できない場合、施工力不足により売上が確保できず、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、採用活動の強化や福利厚生の充実、人材育成に注力しています。

(2) 受注環境の変化に関するリスク


主要取引先である中国電力グループや民間企業、官公庁の設備投資減少など、受注環境に著しい変化が生じた場合、受注高が確保できず業績に影響を与える可能性があります。提案営業の強化や省エネ関連工事の拡大、施工体制の効率化などにより対応を図っています。

(3) 法令・コンプライアンス違反に関するリスク


建設業法や労働安全衛生法などの関連法規違反、コンプライアンスに反する行為が発生した場合、社会的信頼の失墜や指名停止処分などにより、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス教育の徹底や相談窓口の設置、内部統制の強化などにより未然防止に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。