トーエネック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーエネック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は名証プレミアおよび東証プライムに上場し、中部電力グループ向けの配電線工事や一般顧客向けの屋内線・空調管工事等の設備工事業を主力としています。当連結会計年度の業績は、配電線工事や大型太陽光発電工事の進捗等により、売上高は2,710億円、経常利益は154億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社トーエネック の有価証券報告書(第107期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トーエネックってどんな会社?


中部地方を基盤とする総合設備企業です。中部電力グループの配電設備工事を担うほか、一般向けの電気・空調管工事も展開しています。

(1) 会社概要


1944年、企業整備令に基づき東海4県の電気工事業者23社が合同し、東海電気工事として設立されました。1961年に管工事へ進出し、1972年には名古屋・東京・大阪証券取引所各市場第一部へ指定されました。1989年に現社名へ変更し、2024年には中部電力が保有株式の一部を売出し、同社は中部電力の連結子会社から関連会社へ移行しました。

現在の連結従業員数は6,416人(単体4,942人)です。筆頭株主はその他の関係会社である中部電力株式会社で44.61%を保有しています。第2位は同社の従業員持株会、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっており、電力会社との強固な関係を維持しつつ、従業員や機関投資家も主要株主となっています。

氏名 持株比率
中部電力 44.61%
トーエネック従業員持株会 6.06%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長 社長執行役員は滝本 嗣久氏です。取締役13名のうち8名が社外取締役であり、社外取締役比率は過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
滝本 嗣久 代表取締役社長 社長執行役員 1986年入社。静岡支店長、東京本部長などを経て、2022年より副社長執行役員として経営全般を補佐。2024年4月より現職。
藤田 祐三 代表取締役会長 中部電力執行役員などを経て、2018年同社入社。専務執行役員、代表取締役社長を歴任し、2024年4月より現職。
山崎 重光 代表取締役副社長執行役員 1987年入社。人事部長、東京本部長などを歴任。現在は経営全般に関し社長を補佐し、国際事業統括部統括、営業本部長を務める。
池山 竜夫 取締役専務執行役員 1987年入社。三重支店長などを経て、現在は技術研究開発部、情報システム部、情報通信統括部を統括する。
寺田 修一 取締役(常任監査等委員) 中部電力法務部長、執行役員、監査役などを経て、2023年6月より現職。
木村 昌彦 取締役(監査等委員) 1982年入社。秘書室長、経理部長、長野支店長などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、飯塚 厚(元財務省関税局長)、鵜飼 裕之(元名古屋工業大学学長)、吉本 明子(元愛知県副知事)、五十嵐 一弘(元日本車輌製造社長)、瀧上 晶義(瀧上工業社長)、杉田 勝彦(弁護士)、柴田 光明(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事業」「エネルギー事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 設備工事業


配電線工事、地中線工事、屋内線工事、空調管工事、通信工事などの施工を行っています。中部電力グループからの配電設備新増設や修繕工事に加え、一般顧客向けのビル・工場等の電気・空調設備工事を手掛けています。

収益は、発注者である電力会社や官公庁、民間企業からの工事代金によって構成されています。運営は主にトーエネックが行い、一部工事を連結子会社のトーエネックサービスが下請施工するほか、旭シンクロテックが空調管工事を行っています。海外では中国、タイ、フィリピン等の現地子会社が施工を担っています。

(2) エネルギー事業


太陽光発電事業、学校空調システムサービス、マンション高圧一括受電サービス事業などを行っています。再生可能エネルギーの普及や省エネニーズに対応したサービスを提供しています。

収益は、太陽光発電による売電収入や、空調システム・受電サービスの利用料等から構成されています。運営はトーエネックが行うほか、連結子会社の合同会社たてしなサンサンファームが営農型太陽光発電所に関連する農業事業を行っています。

(3) その他


商品販売、リース、不動産賃貸、PFI事業などを行っています。設備工事に関連する資機材の販売や、保有資産を活用した事業を展開しています。

収益は、商品の販売代金、リース料、賃貸料、PFI事業の運営受託料等から得ています。運営はトーエネックおよびトーエネックサービスが行うほか、PFI豊川宝飯斎場などの関連会社が特定事業の運営を受託しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な増加傾向にあり、直近では2,700億円台に達しています。利益面では、原材料価格高騰などの影響を受けつつも、経常利益は回復基調にあり、直近では150億円を超えました。当期純利益も増益傾向を維持しており、安定した収益力を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,157億円 2,196億円 2,321億円 2,529億円 2,710億円
経常利益 137億円 134億円 90億円 127億円 154億円
利益率(%) 6.4% 6.1% 3.9% 5.0% 5.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 73億円 67億円 -65億円 87億円 97億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。原価管理や効率化の取り組みにより、利益率も改善傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,529億円 2,710億円
売上総利益 321億円 361億円
売上総利益率(%) 12.7% 13.3%
営業利益 159億円 160億円
営業利益率(%) 6.3% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が119億円(構成比49%)、雑費が29億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


設備工事業は、配電線工事や屋内線工事、大型太陽光発電工事の進捗により増収増益となりました。一方、エネルギー事業は、太陽光発電の出力制御の影響などにより減収減益となりました。その他事業は増収増益で推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
設備工事業 2,354億円 2,540億円 180億円 203億円 8.0%
エネルギー事業 129億円 123億円 39億円 28億円 22.9%
その他 45億円 47億円 5億円 6億円 11.7%
調整額 -億円 -億円 -65億円 -77億円 -%
連結(合計) 2,529億円 2,710億円 159億円 160億円 5.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金を元に、投資活動を行いつつ、借入金の返済や配当支払い等の財務活動を行っており、「健全型」のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 191億円 190億円
投資CF -21億円 -31億円
財務CF -99億円 -137億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.0%で市場平均(24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会のニーズに応える快適環境の創造」「未来をみつめ独自性を誇りうる技術の展開」「考え挑戦するいきいき人間企業の実現」を経営理念の柱として掲げています。また、「いかなる時も、人や社会に“活力と豊かさ”を生み出す快適環境を創り、守る」を使命(パーパス)としています。

(2) 企業文化


設備工事を中核事業とする同社グループにとって、「安全の追求」は創業以来変わることのない重要なテーマであり、絶対に災害を発生させない企業風土の確立を目指しています。また、コンプライアンスの推進やガバナンス強化により、健全で透明性の高い企業運営に努める姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2023年度から2027年度までの「中期経営計画2027」を策定しています。2027年度の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:2,700億円
* 経常利益:180億円
* ROE:8.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2027」に基づき、カーボンニュートラルやDX関連、首都圏・近畿圏・アジア等の成長分野・エリアでの受注拡大を図っています。また、人材の確保と育成を喫緊の課題と捉え、積極的な採用や働き方改革、生産性向上を推進しています。

* 成長が見込まれる分野(カーボンニュートラル、DX関連)やエリア(首都圏、近畿圏、アジアなど)での戦略的営業活動
* グループ一体でのバリューチェーン強化と柔軟な施工体制の構築
* かいぜん活動やDXによる生産性向上、時間外労働削減

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「トーエネックグループ人材戦略方針」を掲げ、人材を成長の源泉と位置付けています。多様な人材の採用推進、自律的な成長を促す育成、エンゲージメント向上による働きがい・働きやすさの追求を基本姿勢とし、社会から必要とされる技術者集団の形成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.7歳 19.5年 7,530,288円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.5%
男性育児休業取得率 91.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.9%
男女賃金差異(正規) 83.5%
男女賃金差異(非正規) 54.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期採用者の離職率(3.1%)、有給休暇の平均取得日数(14.2日)、月平均の所定外労働時間数(26.9h)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 電力会社向け売上高に関するリスク


同社は中部電力グループからの受注が売上高の約3分の1を占めています。電力会社の設備投資抑制や取引価格の低下が生じた場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、コスト競争力の強化等に努めています。

(2) 一般得意先向け売上高に関するリスク


一般得意先向けの売上高は全体の約6割を占め、景気動向や民間設備投資の影響を受けます。景気悪化による設備投資の抑制や競争激化による受注減・低価格化が生じた場合、業績に影響が出る可能性があります。新規市場・顧客の開拓等で対応しています。

(3) 完成工事原価の変動に関するリスク


工事原価は材料費、労務費、外注費等で構成されます。想定を上回る資機材価格の高騰や労務需給の逼迫によるコスト増が発生した場合、利益を圧迫する可能性があります。受注前の原価検討や資材の廉価購買等によりリスク低減を図っています。

(4) 重大な不良工事に関するリスク


施工に関して品質上の重大な不具合や事故が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。マニュアル整備や教育、現場パトロール等により品質管理を徹底しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。