若築建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

若築建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合建設会社です。創業130年を超える歴史を持ち、海上土木・陸上土木・建築事業を柱とする建設事業および不動産事業を展開しています。当期は大型工事の進捗遅れや投資拡大の影響を受け、売上高865億円(前期比8.9%減)、経常利益52億円(同32.1%減)の減収減益となりました。


※本記事は、若築建設株式会社 の有価証券報告書(第209期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 若築建設ってどんな会社?


海洋土木(マリコン)の名門として知られ、陸上土木や建築事業、不動産事業も展開する総合建設会社です。

(1) 会社概要


同社は1890年に若松築港会社として設立され、港湾の築造と経営を目的としてスタートしました。1938年には港湾土木請負業へ転換し、1965年に現在の若築建設へ商号変更を行っています。1976年にはスエズ運河浚渫工事を受注して海外進出を果たしました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

現在の従業員数は、連結で854名、単体で768名です。大株主構成については、筆頭株主は同社と長年の関係を持つ事業会社の麻生で、第2位は協力会社による持株会、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
麻生 38.73%
若築建設協力会社持株会 8.07%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長兼執行役員社長安全環境本部長は烏田克彦氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
烏田 克彦 代表取締役社長兼 執行役員社長安全環境本部長 1983年入社。九州支店長、建設事業部門担当役員、営業統括兼国際統括、建設事業部門長などを歴任し、2021年4月より現職。
石井 一己 代表取締役兼 専務執行役員建設事業部門長兼 安全環境本部副本部長 1982年入社。名古屋支店長、東京支店長などを経て、2021年4月より現職。
恵下 弘幸 取締役兼 専務執行役員建設事業部門副部門長 1982年入社。開発・不動産部長、営業企画部長、総合システム部担当などを経て、2025年4月より現職。
牧原 久利 取締役兼 専務執行役員建設事業部門担当役員兼 土木部長 1986年入社。名古屋支店副支店長、土木部長などを経て、2024年4月より現職。
中村 誠 取締役兼 常務執行役員経営管理部門長 1983年入社。経営企画部長、管理部門長などを経て、2022年4月より現職。
平田 靖祐 取締役兼 常務執行役員経営管理部門財務部担当兼 財務部長 1983年入社。経理部次長、財務部長などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、朝倉康夫(東京工業大学名誉教授)、原田美穂(原田司法書士合同事務所司法書士)、森田隼人(シャボン玉石けん代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

建設事業


総合建設業として、港湾等の海上土木、道路・トンネル等の陸上土木、マンション・施設等の建築工事を行っています。主な顧客は国土交通省や地方自治体などの官公庁および民間企業です。

収益は、顧客との工事請負契約に基づき、工事の進捗や完成・引渡しに応じて受け取る請負代金から構成されています。運営は主に若築建設が行い、新総建設、大丸防音などの連結子会社が施工協力を行っています。

不動産事業


所有する不動産の販売および賃貸事業を展開しています。主な顧客は、住宅や用地を求める個人や法人、テナント企業などです。

収益は、不動産の販売による代金および賃貸物件からの賃貸料収入です。運営は若築建設および連結子会社の都市空間が行っており、同社は都市空間に一部の不動産管理を委託しています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、船舶監理業務などを行っています。

収益は、船舶の監理業務やその他のサービス提供に伴う手数料や対価などから構成されています。運営は若築建設およびグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は800億円台後半から900億円台半ばの間で推移しており、当期は前期から減少しました。経常利益は50億円から70億円台を維持しており、比較的安定した利益率を確保しています。当期は減収に伴い利益面でも減少が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 898億円 892億円 840億円 949億円 865億円
経常利益 30億円 68億円 65億円 77億円 52億円
利益率(%) 3.4% 7.6% 7.8% 8.1% 6.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 18億円 47億円 54億円 51億円 37億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益が減少し、売上総利益率は若干低下しました。営業利益も減少しており、減収が利益を圧迫する形となりました。利益率は低下したものの、依然として一定の水準を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 949億円 865億円
売上総利益 132億円 117億円
売上総利益率(%) 13.9% 13.6%
営業利益 70億円 52億円
営業利益率(%) 7.4% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が29億円(構成比39%)、雑費が8億円(同11%)を占めています。また、売上原価においては、外注費が427億円(売上原価合計に対する構成比58%)、材料費が118億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


建設事業は、土木・建築ともに大型工事の進捗が下半期に高水準であったものの、上半期の遅れを回復できず減収減益となりました。不動産事業は、地価上昇傾向を背景に販売活動を行い、増収増益を達成しました。その他事業も増収増益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 849億円 849億円 71億円 71億円 8.4%
不動産事業 5億円 5億円 2億円 2億円 45.0%
その他 11億円 11億円 1億円 1億円 10.4%
調整額 -1億円 -1億円 -22億円 -22億円 -
連結(合計) 865億円 865億円 52億円 52億円 6.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「内外一致 同心協力」を企業理念とし、経営理念として「「品質と安全」を核とした施工により、お客様の信頼を高め、社会に貢献する。」を掲げています。工事を通じて安心・信頼を提供することを建設業の社会的使命と位置づけ、すべてのステークホルダーとの連携を重視しています。

(2) 企業文化


同社は長期ビジョンにおいて「品質と安全」を核とした施工をベースに、持続可能性の追求を基本方針としています。気候変動への対応や人権尊重などの社会的責任への取り組みを「内外一致 同心協力」に基づいて積極的に推進しており、ステークホルダーとの連携強化を通じて、持続的な成長と企業価値向上を目指す姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は創業140周年にあたる2030年に向けた長期ビジョンに基づき、中期経営計画(2024年度-2026年度)を推進しています。最終年度の目標として以下の数値を掲げています。

* 2027年3月期 売上高:1,100億円以上(単体)
* 2027年3月期 純利益:45億円以上(単体)

(4) 成長戦略と重点施策


「ステークホルダーとの連携強化による持続可能性の追求」を基本方針とし、市場・組織・社会の3つの持続可能性向上に取り組んでいます。市場面では各部門の強みを活かした案件の大規模化や新エネルギー分野への展開、組織面では人的資本経営や働き方改革、社会面ではインフラ提供やカーボンニュートラルの推進を重点施策としています。

* 2026年3月期 売上高:980億円(単体)
* 2026年3月期 経常利益:52億円(単体)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


働きがいのある職場環境の実現と建設業を担う人材の育成を掲げています。中期経営計画では、働き方改革や社員エンゲージメントの向上、多様な人材確保をKPIに設定しており、これらを通じて組織全体の生産性を高め、持続可能な成長を促進することを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.7歳 18.5年 9,119,438円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 0.6%
男性労働者の育児休業取得率 50.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 60.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 65.9%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) 53.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ワークエンゲージメントスコア(2.62)、土曜閉所率(61.4%)、採用者数(64名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 施工物等の瑕疵に対するリスク


施工管理の徹底により品質管理を行っていますが、万が一提供する施工物等に重大な瑕疵が発生した場合、経営成績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、本社品質監理室および支店の品質アドバイザーによる監理体制を強化し、発生時には誠実な対応と是正措置を実施するとしています。

(2) 重大な労働災害の発生リスク


年間安全管理計画に基づき安全管理に万全を期していますが、重大な労働災害が発生した場合、多大な補償費負担や社会的信用の低下により、経営成績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。労働安全マネジメントシステムの運用と改善により、災害撲滅に努めています。

(3) 建設市場の変動リスク


経済動向や天災、建設需要の変動、資材価格の高騰は、主たる事業である建設業の経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。特に民間設備投資の減少は受注活動のリスクとなるため、比較的影響を受けにくい官庁工事や再生可能エネルギー分野への取り組みを強化しています。

(4) コンプライアンス違反リスク


法令遵守や従業員へのコンプライアンス教育を推進していますが、個人的な不正行為を含め重大な法令違反が発生した場合、信頼失墜とともに業績に影響を及ぼす可能性があります。社内ヒアリングの実施等によりコンプライアンスの周知徹底を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。