若築建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

若築建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

若築建設は、プライム市場に上場し、海上土木工事や陸上土木工事、建築工事などの建設事業と、国内での不動産販売・賃貸を行う不動産事業を主力として展開しています。直近の連結業績は、大型工事の進捗が高水準で推移したことにより売上高が増加し、生産性の向上等により各段階利益も増加して増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社若築建設の有価証券報告書(第210期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 若築建設ってどんな会社?


海上土木や陸上土木、建築工事などの建設事業と不動産事業を展開する総合建設企業です。

(1) 会社概要


同社は1890年に若松築港会社として設立され、若松港の築造・経営を担ってきました。1961年に東京証券取引所第二部に上場し、翌1962年には同第一部へ上場を果たしました。1965年に現在の若築建設へ商号を変更し、その後1972年に川田工業、1975年に昭和ドレッジングをそれぞれ吸収合併して事業基盤を拡大してきました。

現在の従業員数は連結で900名、単体で808名です。筆頭株主は事業会社の麻生で、第2位も同社グループのACVEホールディングスです。第3位には若築建設協力会社持株会が名を連ねており、関係先との強固な資本関係が構築されています。

氏名 持株比率
麻生 42.26%
ACVEホールディングス 8.35%
若築建設協力会社持株会 7.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は長廻幹彦氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
長廻幹彦 代表取締役社長兼執行役員社長安全環境本部長 1987年4月同社入社。東京支店次長、経営企画部・部長、執行役員などを経て、2026年4月より現職。
牧原久利 代表取締役兼専務執行役員建設事業部門長兼安全環境本部副本部長 1986年4月同社入社。名古屋支店次長、建設事業部門土木部長、常務執行役員などを経て、2026年4月より現職。
烏田克彦 取締役会長 1983年4月同社入社。福岡支店長、九州支店長、代表取締役社長などを経て、2026年4月より現職。
石井一己 取締役兼専務執行役員建設事業部門管掌 1982年4月同社入社。名古屋支店長、東京支店長、代表取締役などを経て、2026年4月より現職。
花田和孝 取締役兼専務執行役員建設事業部門担当役員営業統括 1985年4月同社入社。九州支店開発・不動産部長、建設事業部門営業企画部長などを経て、2026年4月より現職。
中村誠 取締役兼常務執行役員経営管理部門長 1983年4月同社入社。総務人事部・部長、経営企画部長などを経て、2022年4月より現職。


社外取締役は、朝倉康夫(元東京工業大学大学院教授)、原田美穂(原田司法書士合同事務所入所)、森田隼人(シャボン玉石けん代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」、「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 建設事業


同社グループの主力である建設事業では、国内を中心に海上土木工事、陸上土木工事、建築工事といった総合建設サービスを提供しています。官公庁からの公共インフラ整備や、民間企業からの設備投資案件などを幅広く請け負っています。

顧客との工事請負契約に基づき、目的物を完成させて引き渡すことで収益を獲得します。工事の進捗度に応じて対価を受領するモデルを採用しています。事業の運営は主に若築建設が担い、新総建設や大丸防音などの子会社が施工協力を行っています。

(2) 不動産事業


不動産事業では、国内のさまざまな地域において販売用不動産の開発・分譲や、賃貸用建物の運営管理を行っています。個人や法人の顧客に対し、良質な不動産物件を提供しています。

不動産の販売による売却収入や、物件の貸し出しによる賃貸収入を主な収益源としています。販売は物件の引き渡し時点に収益を認識します。事業の運営は主に若築建設が行い、不動産の一部の管理を都市空間へ委託しています。

(3) その他事業


報告セグメントに含まれない事業として、船舶監理業務などを展開しています。

当該業務を通じたサービス提供の対価として収益を得ています。運営は若築建設および関連グループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は800億円台から1000億円超へと拡大傾向にあります。経常利益も資材価格の高騰などがある中で、大型工事の順調な進捗などにより安定して利益を確保し、直近では利益率も改善傾向を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 892億円 840億円 949億円 865億円 1,047億円
経常利益 68億円 65億円 77億円 52億円 64億円
利益率(%) 7.6% 7.8% 8.1% 6.0% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 46億円 53億円 50億円 36億円 43億円

(2) 損益計算書


直近2期で売上高は約182億円増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。営業利益も増加しており、本業の収益性が着実に向上していることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 865億円 1,047億円
売上総利益 117億円 136億円
売上総利益率(%) 13.5% 13.0%
営業利益 52億円 66億円
営業利益率(%) 6.0% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が30億円(構成比38%)、雑費が9億円(同11%)を占めています。売上原価の大半は完成工事原価などの事業運営に直結するコストとなっています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業は、大型工事の進捗が高水準で推移したことにより大幅な増収となりました。不動産事業は売上高がやや減少したものの、安定した水準を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設事業 849億円 1,029億円
不動産事業 5億円 5億円
その他 11億円 14億円
連結(合計) 865億円 1,047億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -102億円 5億円
投資CF -19億円 -12億円
財務CF 64億円 71億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.1%で非製造業の市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、すべてのステークホルダーと連携し、工事を通して安心・信頼を提供していくことが建設業の社会的使命と考え、「内外一致 同心協力」を企業理念に掲げています。また、経営理念として「『品質と安全』を核とした施工により、お客様の信頼を高め、社会に貢献する」ことを定め、事業を推進しています。

(2) 企業文化


気候変動への対応や人権尊重といった企業の社会的責任への取り組みを、企業理念である「内外一致 同心協力」に基づき、重要な経営課題として積極的に推進する文化があります。また、法令やコンプライアンスの遵守を徹底し、社員の安全と健康を守りながら安定的に事業運営を継続する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


創業140周年にあたる2030年に向けた長期ビジョン「すべてのステークホルダーの期待に応えられる企業」に基づき、「中期経営計画(2024年度-2026年度)」を推進しています。最終年度となる2027年3月期の目標として、以下の数値を掲げています。

* 連結売上高 1,160億円
* 連結経常利益 65億円
* 連結当期純利益 44億円

(4) 成長戦略と重点施策


「ステークホルダーとの連携強化による持続可能性の追求」を基本方針とし、市場、組織、社会の3つの持続可能性向上に取り組んでいます。具体的には、各部門の強みをいかした案件の大規模化・高収益化や新エネルギー分野への事業展開を進めるとともに、ICTの活用による生産性向上や働き方改革を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


建設業界が直面する人材不足に対応するため、人的資本経営の推進を重要課題と位置づけています。働きがいや達成感の醸成、仕事と育児・介護の両立支援を進めるほか、若手社員の育成を主眼に置いた教育プログラムの整備、資格取得や自己啓発支援を通じて、組織全体の生産性向上と持続的な成長を目指す方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.0歳 17.8年 8,776,664円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.6%
男性育児休業取得率 36.4%
男女賃金差異(全労働者) 59.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 66.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 50.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、土曜閉所率(70.2%)、新卒女性採用比率(17.3%)、採用者数(90名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 施工物等の瑕疵に対するリスク


施工において重大な瑕疵が発生した場合、同社グループの経営成績や企業評価に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、本社品質監理室や支店の品質アドバイザーによる品質監理の強化に努めるとともに、瑕疵発生時には誠実な顧客対応と確実な是正措置を実施する体制を整えています。

(2) 建設市場の変動リスク


経済動向や天災等の影響による建設需要の変動、資材価格の高騰は、主力である建設事業の収益に影響を与えます。民間設備投資が減少するリスクへの対策として、比較的影響を受けにくい官庁工事や再生可能エネルギー分野への重点的な取り組みを進め、収益基盤の安定化を図っています。

(3) 人材の確保におけるリスク


少子高齢化による労働人口の減少や技能労働者の高齢化により、必要な人材を十分に確保できない場合、長期的な業績に影響を及ぼす恐れがあります。採用活動を強化するとともに、産官学連携による人材育成プログラム等を通じて、建設業の担い手確保に積極的に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。