奥村組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

奥村組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する奥村組は、土木事業や建築事業を中心に、不動産や再生可能エネルギーによる投資開発事業などを展開しています。直近の業績は、売上高が約3072億円、経常利益が約253億円と堅調に推移し、増収増益を達成しました。技術力と誠実な施工で社会インフラに貢献する企業です。


※本記事は、株式会社奥村組の有価証券報告書(第89期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 奥村組ってどんな会社?


同社は、土木や建築を中心とした建設事業に加え、不動産や再生可能エネルギーなどの投資開発事業を展開しています。

(1) 会社概要


1907年に個人企業として土木建築請負業を創業し、1938年に会社を設立しました。1962年に大証二部に上場し、翌年には東証一部へ上場を果たしています。1970年に太平不動産を設立して投資開発事業を強化し、近年では2018年以降に子会社を通じた再生可能エネルギー事業への参入も進めています。

連結従業員数は2586名、単体では2492名が在籍しています。大株主については、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位に奥村組従業員持株会、第3位に日本カストディ銀行(信託口)が名を連ねており、金融機関や従業員による安定した資本構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.61%
奥村組従業員持株会 5.52%
日本カストディ銀行(信託口) 4.06%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は奥村太加典氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
奥村太加典 代表取締役社長 1986年入社。関西支社次長、東京支社営業部長、常務取締役などを経て、2001年12月より現職。
金重昌宏 代表取締役専務執行役員営業本部長 1988年入社。東日本支社東京支店長、常務執行役員東日本支社長などを経て、2024年4月より現職。
松島弘幸 代表取締役常務執行役員管理本部長 1990年入社。東日本支社副支社長、西日本支社副支社長などを経て、2024年6月より現職。
小西邦武 取締役常務執行役員西日本支社長 1989年入社。西日本支社副支社長建築事業担当などを経て、2024年6月より現職。
樫木正成 取締役常務執行役員東日本支社長 1989年入社。東日本支社土木工務部長、東北支店長などを経て、2024年6月より現職。
中谷泰之 取締役常務執行役員土木本部長 1990年入社。西日本支社土木工務部長、執行役員土木本部長などを経て、2024年4月より現職。
木村真也 取締役執行役員建築本部長 1991年入社。西日本支社関西建築第三部長、副支社長などを経て、2025年6月より現職。
佐々木晃 取締役(常勤監査等委員) 1990年入社。西日本支社副支社長、管理本部副本部長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、上田理恵子(マザーネット代表取締役社長)、小寺哲夫(小寺法律事務所代表)、西原健二(西原公認会計士事務所代表)、前田栄治(ちばぎん総合研究所代表取締役社長)、廣瀬恭子(広瀬製作所代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木事業」「建築事業」「投資開発事業」および「その他」事業を展開しています。

土木事業


インフラストラクチャーの整備に関わる土木工事の設計や施工を提供し、官公庁や民間企業を主な顧客としています。防災・減災対策やインフラ長寿命化などの社会的ニーズに応える高い技術力を持っています。

顧客からの工事請負代金を主な収益源としています。事業の運営は同社、および関連会社のオーゼットユーが行っています。

建築事業


工場や倉庫、商業施設、事務所、医療施設など、多岐にわたる建築物の設計および施工を提供し、民間企業や官公庁を主な顧客としています。環境に配慮した設計や免震技術の開発などにも注力しています。

顧客からの工事請負代金が主な収益源です。事業の運営は同社、および関連会社のオーゼットユーが行っています。

投資開発事業


不動産の販売や賃貸、および再生可能エネルギーによる発電・売電事業を展開しています。建設事業に依存しない安定的な収益基盤の構築を目指して事業の拡大を図っています。

不動産賃料や売却益、および売電収入を収益源としています。運営は同社、太平不動産、石狩バイオエナジーおよび平田バイオエナジーが行っています。

その他


建設事業に付帯関連するコンサルティングや、建設資機材等の製造・販売、およびPFI事業などを提供しています。幅広い周辺領域からグループ全体の事業を支えています。

製品の販売代金やサービス提供に対する対価が主な収益源です。運営は同社、奥村機械製作などが主に行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が2425億円から3072億円へと順調に拡大しています。経常利益も一時的な落ち込みはあったものの、直近では253億円へと大幅に増加し、利益率も8.2%に向上するなど、着実な成長と収益力の改善が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2425億円 2494億円 2881億円 2982億円 3072億円
経常利益 140億円 129億円 149億円 89億円 253億円
利益率(%) 5.8% 5.2% 5.2% 3.0% 8.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 127億円 118億円 126億円 70億円 157億円

(2) 損益計算書


収益構造を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益が312億円から371億円へと大きく伸びています。売上総利益率も改善し、営業利益は97億円から159億円へと大幅に増加するなど、本業の収益性が高まっていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2982億円 3072億円
売上総利益 312億円 371億円
売上総利益率(%) 10.5% 12.1%
営業利益 97億円 159億円
営業利益率(%) 3.3% 5.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が80億円(構成比35%)と最も大きく、次いで賞与引当金繰入額が15億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上を見ると、主力である建築事業はわずかに減収となったものの、土木事業が順調に売上を伸ばして全体を牽引しています。投資開発事業やその他事業も一定の規模を維持し、安定した収益基盤の構築に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
土木事業 990億円 1152億円
建築事業 1856億円 1801億円
投資開発事業 79億円 72億円
その他 58億円 46億円
連結(合計) 2982億円 3072億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型であることを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -118億円 76億円
投資CF -15億円 -100億円
財務CF 121億円 -97億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「堅実経営と誠実施工を信条に、社会から必要とされ続ける企業として、社業の発展を通じ広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げています。社会のニーズの変化を見据え、確かな技術と誠実な事業運営により、関係するすべての人とともに豊かさを分かち合い成長し続ける企業グループを目指しています。

(2) 企業文化


「人を活かし、人を大切にする、社員が誇れる企業」というありたい姿を掲げています。同社の歴史の中で培ってきた高い現場力や「堅実・誠実」のDNAを継承しつつ、「変わらない信念」と「変えていく勇気」を併せ持ち、すべての社員が生き生きと活躍し、主体的に挑戦できる企業風土を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画(2025〜2027年度)」において、持続的な成長に向けた経営基盤の強化を掲げています。株主還元と成長投資のバランスを図りつつ、安定的な業績向上を目指しています。
* 連結配当性向 70%以上
* 自己資本配当率(DOE) 2.0%(下限)
* 新卒3年以内の離職率 10%未満
* 管理職に占める女性比率 6%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な業績拡大に向け、建設事業の収益力・技術力の向上を中心とした「企業価値の向上」と、建設事業に依存しない安定的な収益基盤の構築に向けた「事業領域の拡大」を推進しています。また、多様な人材が能力を最大限発揮できる環境整備など「人的資源の活用」にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人を活かし、人を大切にする、社員が誇れる企業」を目指し、人材の育成と環境整備を中核とする人材戦略を推進しています。階層別・職種別研修やオンライン学習などのスキルアップ支援のほか、定年年齢を65歳としベテランの知見を若手へ伝承するとともに、多様な人材が活躍できる職場づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.6歳 15.1年 10,062,259円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 102.8%
男女賃金差異(全労働者) 59.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 67.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 63.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用者に占める女性比率(12.8%)、工事所4週8閉所実施率(土木)(72.3%)、工事所4週8閉所実施率(建築)(59.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設投資動向による受注環境の悪化


同社の事業ポートフォリオは建設事業の割合が大きく、財政政策の変更による公共投資の縮減や国内外の景気後退による民間設備投資の縮小などが生じた場合、受注環境が悪化して競争が激化し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 資材価格および労務費の高騰


原材料や原油価格の高騰、建設技能労働者の不足、需給バランスの偏りなどにより資材価格や労務費が高騰し、コスト増加分を請負代金に十分に反映させることが困難な場合、建設コストの上昇を通じて同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 契約不適合責任に関するリスク


同社は品質マネジメントシステムを運用して施工管理を徹底していますが、設計や施工の過程において万一重大な欠陥などの契約不適合責任を問われる事態が発生した場合、企業評価の悪化や損害賠償金の支払いなどにより、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。