東京エネシス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京エネシス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の電力関連設備や一般電気設備工事を手掛ける総合エンジニアリング企業。東京電力グループからの受注が主力です。当期は大型工事の端境期や受注活動への注力期間であったことなどから、売上高は677億円(前期比23.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は29億円(同2.0%減)の減収減益となりました。


※本記事は、株式会社東京エネシス の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京エネシスってどんな会社?


電力インフラの構築・保守を中核とし、再エネや海外事業も展開する総合エンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


1947年に設立され、1961年に東証二部へ上場、1981年には東証一部へ指定替えとなりました。2001年に現在の東京エネシスへ商号を変更しています。近年では、2019年にタイでの事業会社株式取得や2022年の東証プライム市場への移行を経て、2024年にはベトナムに現地法人を設立するなど、海外展開も進めています。

同グループは連結従業員数1,628名、単体1,312名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は、主要顧客でもある東京電力ホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。安定した顧客基盤と技術力を背景に、エネルギー関連事業に取り組んでいます。

氏名 持株比率
東京電力ホールディングス 27.21%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.81%
光通信 7.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長社長執行役員は眞島俊昭氏が務めています。社外取締役比率は70.0%です。

氏名 役職 主な経歴
眞 島 俊 昭 代表取締役社長社長執行役員 東京電力(現東京電力ホールディングス)を経て、2019年東京エネシス取締役副社長執行役員に就任。2022年6月より現職。
堀 川 総 一 郎 取締役副社長執行役員エネルギー本部長 1989年東京エネシス入社。エネルギー・産業本部長、電力本部長などを歴任し、2024年6月より現職。
佐 藤   誠 取締役(常勤監査等委員) 1987年東京エネシス入社。業務管理部長、監査・内部統制部長、執行役員を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、田中等(弁護士)、西山茂(早稲田大学大学院教授)、長谷川園恵(公認会計士・税理士)、伊藤直哉(元東京海上日動火災保険専務執行役員)、稲垣宜昭(元東京電力執行役員)、二宮照興(弁護士)、森秀文(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 設備工事業


火力、原子力、水力、コージェネレーション、太陽光およびバイオマス発電設備の建設・保守を行います。また、変電、一般電気、情報通信および空調設備工事の設計・施工も手掛けています。

収益は、顧客からの工事請負代金等が主な源泉です。主要な顧客は東京電力グループであり、電力インフラの安定供給を支える重要な役割を担っています。運営は主に同社が担当するほか、テクノ東京などの子会社も施工を行っています。

(2) その他


発電事業、不動産事業、リース・レンタル事業、保険代理業、製造・販売事業および卸売業を展開しています。具体的には、太陽光やバイオマス発電による電力販売、不動産の賃貸・管理、工具・車両のリースなどを含みます。

収益は、電力会社等への売電収入、テナントからの賃料収入、リース料収入などから構成されます。運営は、同社のほか、東工企業(不動産)、バイコム(リース)、東輝(保険)、および特定目的会社(発電事業)など、各事業を担当するグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は600億円台から800億円台で推移しています。当期は売上高が前期比で大きく減少しましたが、利益面では経常利益33億円、当期純利益29億円を確保し、黒字を維持しています。利益率は安定的で、当期純利益率は4%台を推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 595億円 726億円 791億円 885億円 677億円
経常利益 39億円 33億円 28億円 52億円 33億円
利益率(%) 6.6% 4.5% 3.5% 5.9% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 12億円 28億円 28億円 27億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が減少しています。売上総利益率は前期の12.0%から当期は13.3%へと上昇しており、収益性の改善が見られますが、販管費の負担により営業利益率は低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 885億円 677億円
売上総利益 106億円 90億円
売上総利益率(%) 12.0% 13.3%
営業利益 40億円 27億円
営業利益率(%) 4.5% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が31億円(構成比49.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の設備工事業は、エネルギー部門や原子力部門の売上減少により、減収減益となりました。一方、その他の事業は売上が増加し、セグメント損益も黒字転換しています。全社費用等の調整額の影響もあり、連結全体では減益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
設備工事業 830億円 617億円 100億円 42億円 6.8%
その他 54億円 61億円 -0.5億円 1.1億円 1.8%
調整額 -58億円 -49億円 -60億円 -16億円 -
連結(合計) 885億円 677億円 40億円 27億円 3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東京エネシスは、短期借入れによる財務活動で資金を増加させています。営業活動では、売上債権及び契約資産の増加により資金が減少しましたが、投資活動では、有形固定資産の取得により資金が減少しました。設備工事業では受注高が増加したものの、売上高は減少しました。その他の事業では、受注高、売上高、利益ともに増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 85億円 -152億円
投資CF -51億円 -1億円
財務CF -44億円 107億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「暮らしのより確かな基盤をつくる」という理念を掲げています。この理念のもと、エネルギービジネスにおけるバリューチェーン全体を手掛ける総合エンジニアリング力を発揮し、安全最優先で社会インフラ構築事業を強固なものにするとともに、カーボンニュートラル事業等を通じてサステナブルな社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「『人』を真ん中にした 強くて しなやかな Q'dづくり」を基本方針として掲げています。「Q'd(キュード)」とは「クオリティオリエンテッド」の略で、常に本質を問う企業でありたいとの願いを込めたシンボルワードです。人を最上位に位置づけ、人材への投資による人的資本の強化やお客さまに選ばれるための質の向上を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


「2024年度中期経営計画(2024~2026年度)」を策定し、最終年度の目標達成に向けて取り組んでいます。経営環境の変化に適応し持続的な成長を実現するため、人的資本の強化や顧客評価の向上、組織間のつながり強化を重点課題としています。また、2030年度のありたい姿も新たに設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


電力需要増加に伴う変電分野や、再稼働に向けた工事が期待される原子力分野へ注力する方針です。また、再生可能エネルギー関連市場においても採算性が見込める分野で選択的な受注に取り組みます。海外事業では、タイやベトナムでの製造・販売やO&M(運転・保守)業務の拡大を進め、エネルギー関連事業の海外展開を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「『人』を真ん中にした強くてしなやかなQ'dづくり」を実現するため、人材育成を重要な企業活動と位置づけています。教育訓練費や福利厚生費などの人材への投資を強化し、社員の成長と企業価値の向上を目指しています。「目指す社員像」を明確化し、階層別教育の再構築や選抜型研修を実施するとともに、採用活動の強化やエンゲージメントの向上にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.9歳 19.3年 8,043,443円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 2.4%
男性労働者の育児休業取得率 33.3%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 72.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 72.3%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 61.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、施工管理技士資格保有率(45.7%)、エンゲージメントスコア(70.8)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営・財務リスク


投融資事業においてリスクが顕在化し、多額の損失を計上する可能性があります。また、エネルギー政策をはじめとする外部環境の変化に事業戦略が追従できず、収支悪化につながる恐れがあります。これに対し、経営層によるモニタリングや市場分析、組織体制の見直しを行っています。

(2) 国際情勢変化への対応


国際情勢の変化や不安定化に起因する為替変動、資材高騰などが収支悪化を招くリスクがあります。米国政府の関税政策による影響なども懸念されます。同社は為替予約や調達先の多様化によるリスク分散、専門知識を有するパートナーとの連携による情報収集と事業性評価を実施しています。

(3) 人材リスク


知識・技術が継承されず事業運営に支障をきたす技術力低下のリスクや、採用活動の難航による人材不足のリスクがあります。これに対し、若手社員の教育プログラム見直しや資格取得推進による早期育成、多様な採用チャネルの活用、処遇改善などによるエンゲージメント向上に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。