東京エネシス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京エネシス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京エネシスは、東京証券取引所プライム市場に上場する総合エンジニアリング企業です。電力関連設備や一般電気設備の設計・施工を主力に、再生可能エネルギー事業も展開しています。直近の業績は、原子力設備の安全対策工事や再生可能エネルギー案件の進捗等により、売上高831億円で増収、経常利益55億円で増益を達成しました。


※本記事は、株式会社東京エネシスの有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京エネシスってどんな会社?


同社グループは、電力関連設備工事や一般電気設備工事を主力とし、エネルギーの安定供給とサステナブルな社会の実現に貢献しています。

(1) 会社概要


1947年に設立され、1961年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1981年に市場第一部へ指定替えされました。2001年に現在の東京エネシスに商号変更しています。近年は2015年の太陽光発電所設置、2021年の日立プラントコンストラクションからの火力発電事業承継、2022年のバイオマス発電所の営業運転開始など、再生可能エネルギー分野への事業拡大を推進しています。

従業員数は連結で1,687名、単体で1,334名です。筆頭株主は事業会社の東京電力ホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
東京電力ホールディングス 18.11%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.79%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長社長執行役員は眞島俊昭氏が務めています。社外取締役比率は70.0%です。

氏名 役職 主な経歴
眞島 俊昭 代表取締役社長社長執行役員 2016年東京電力ホールディングス経営企画ユニット事業管理室。2017年東京電力フュエル&パワー常務等を経て、2019年東京エネシス副社長に就任。2022年より現職。
堀川 総一郎 取締役副社長執行役員エネルギー本部長 1989年東京エネシス入社。2018年上席執行役員等を経て、2020年Tokyo Enesys(Thailand)取締役社長。2022年常務を経て2024年より現職。
佐藤 誠 取締役(常勤監査等委員) 1987年東京エネシス入社。2018年業務管理部長、2020年監査・内部統制部部長等を経て、2021年執行役員監査・内部統制部長。2023年より現職。


社外取締役は、西山茂(早稲田大学大学院教授)、長谷川園恵(はせがわ公認会計士・税理士事務所代表)、伊藤直哉(東京海上ビジネスサポート代表取締役社長)、大島めぐみ(弁護士法人おおしま法律事務所入所)、垣内桂子(垣内公認会計士事務所代表)、二宮照興(丸市綜合法律事務所開設)、森秀文(森秀文税理士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 設備工事業


火力、原子力、水力、コージェネレーション、太陽光およびバイオマス発電設備の建設・保守、ならびに変電、一般電気、情報通信および空調設備工事の設計・施工を提供しています。主な顧客は東京電力グループをはじめとする電力会社や一般産業の企業です。

収益源は、設備工事の請負代金や保守サービスの提供対価です。運営は主に東京エネシスおよびテクノ東京、Tokyo Enesys Vietnam Co.,Ltd.などの子会社が行っています。

(2) その他の事業


太陽光発電やバイオマス発電による電力販売、不動産の賃貸・管理、工具・備品・車両などのリース・レンタル、および保険代理業等の事業を展開しています。

収益源は、発電による電力販売収入、不動産の賃貸収入、リース・レンタル料、および保険代理店としての販売手数料などです。運営は主に東京エネシス、東工企業、バイコムなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は大型案件の進捗等により年度ごとに増減がありますが、全体としては成長傾向にあります。経常利益および当期利益についても、採算性を重視した受注活動や生産性向上の取り組みにより利益率が改善しており、直近の2026年3月期は増収かつ大幅な増益を達成しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 726億円 791億円 885億円 677億円 831億円
経常利益 33億円 28億円 52億円 33億円 55億円
利益率(%) 4.5% 3.5% 5.9% 4.9% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 28億円 28億円 27億円 41億円

(2) 損益計算書


売上高の増加にともない、売上総利益も拡大しています。また、売上総利益率および営業利益率がいずれも前年度を上回っており、収益性の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 677億円 831億円
売上総利益 90億円 127億円
売上総利益率(%) 13.3% 15.3%
営業利益 27億円 47億円
営業利益率(%) 4.0% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が37億円(構成比47%)、退職給付費用が1億円(同1%)を占めています。売上原価の内訳としては、外注費が344億円(構成比51%)、経費が138億円(同21%)、材料費が133億円(同20%)となっています。

(3) セグメント収益


設備工事業は、原子力設備の安全対策工事や再生可能エネルギー案件、変電設備の新設工事などの進捗により大幅な増収となりました。その他の事業は、発電事業やリース事業などが堅調に推移し、前年と同水準の売上を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
設備工事業 617億円 773億円
その他の事業 61億円 61億円
連結(合計) 677億円 831億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益と投資有価証券の売却等により資金を獲得し、借入金の返済を進める改善型のキャッシュ・フロー状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -152億円 47億円
投資CF -0億円 9億円
財務CF 107億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「暮らしのより確かな基盤をつくる」という基本理念を掲げています。社会と産業のエネルギーインフラへの要請に応え続けることで持続的成長を図り、株主、地域社会、顧客、取引先、従業員などのステークホルダーから「信頼・選択され続ける」企業となることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業活動を支えるのは「人」であり、最大の財産であるとの認識のもと、「人の成長こそが企業の成長や価値向上につながる」という価値観を重視しています。「常に本質を問う企業でありたい」という願いを込めたシンボルワード「Q'd(キュード:クオリティオリエンテッド)」を掲げ、組織基盤を強化しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「2024年度中期経営計画(2024~2026年度)」において、持続的な成長を実現するための目標を掲げています。最終年度の2026年度に向けて、以下の財務指標の達成に向けた取り組みを進めています。

・2027年度ROE8.0%達成

(4) 成長戦略と重点施策


「『人』を真ん中にした強くてしなやかなQ'dづくり」を基本方針とし、「人材への投資による人的資本の強化」「顧客に選ばれるための『Q'd』の磨きこみ」「当社に関わるすべての人・組織とのつながり強化」の3つを重点課題としています。脱炭素関連分野や原子力設備の安全対策工事など、成長分野への積極的な展開を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材育成大綱」を策定し、求める社員像として「協働する社員」「成果を挙げるリーダー」「プロフェッショナル」の3要件を定義しています。階層別教育や若手からの選抜型研修の拡充、100名規模の安定的な採用活動、そして業務のデジタル化による生産性向上を通じて、社員が成長を実感し活躍できる環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.6歳 19.0年 7,905,527円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.6%
男性育児休業取得率 41.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.1%
男女賃金差異(正規雇用) 73.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 47.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコアの改善(72.9)、健康診断受診率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 投融資事業の不採算


投資や融資を行っている事業において、想定外のリスクが顕在化した場合、多額の損失を計上する可能性があります。同社は、経営層による会議の場でのリスク確認と、運用状況の継続的なモニタリングを実施することで、リスクの低減に努めています。

(2) 国際情勢変化への対応


国際紛争などの地政学リスクの高まりにより、在外社員の避難や、資機材・燃料の調達遅延、価格高騰などが発生し、事業継続に影響を及ぼす可能性があります。同社は、国際インテリジェンスの強化や調達先の多様化、複数のシナリオ想定などの対策を講じています。

(3) バイオマス発電所の重大災害発生


他社のバイオマス発電所で爆発火災事故が発生している状況を受け、同社が関わる施設でも同様の事故が発生するリスクがあります。これに対し、安全な設備構成への改良、関係者への教育、設備巡視、計画的な点検清掃などを実施し、重大事故の未然防止に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。