※本記事は、大末建設株式会社の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大末建設ってどんな会社?
同社グループは、土木建築請負などの建設事業を中心に、不動産や訪問看護事業などを展開する総合建設企業です。
■(1) 会社概要
1937年に個人経営の山本工務店として創業し、1947年に大末組として設立されました。1961年に大阪証券取引所第二部に上場後、1970年に現在の大末建設に社名を変更しました。近年は事業領域の拡大を進めており、2023年に訪問看護事業を行うやすらぎを設立、2024年には神島組や川西土木を傘下に収めています。
従業員数は連結で680名、単体で605名です。筆頭株主は資本業務提携先であるミサワホームで、第2位および第3位には証券業務等を行う金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ミサワホーム | 19.37% |
| NOMURA INTERNATIONAL PLC A/C JAPAN FLOW | 2.70% |
| モルガン・スタンレーMUFG証券 | 2.24% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は村尾和則氏が務めており、全取締役10名のうち社外取締役は5名で、半数を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村尾和則 | 代表取締役社長 | 1988年同社入社。西日本技術グループリーダー、大阪本店工事部長、執行役員、大阪本店長兼名古屋支店担当などを経て、2020年4月より現職。 |
| 鶴浩一郎 | 取締役 | 1988年同社入社。東京リニューアル事業部長、東京本店建設営業部長、東京本店工事部長を経て、2020年4月東京本店長。2026年4月より現職。 |
| 片岡基宏 | 取締役 | 1989年三和銀行入行。同社入社後、経営企画部担当兼CSR推進室担当、監査部担当兼新規事業企画部担当などを経て、2026年4月より現職。 |
| 松田健城 | 取締役 | 1988年同社入社。東京本店工事部長、DX推進本部DX推進部長、大阪本店長兼事業戦略本部副本部長などを経て、2026年4月より現職。 |
| 前田延宏 | 取締役(監査等委員) | 1972年同社入社。生産管理部担当、大阪マンション事業部長、総務部担当、執行役員副社長などを経て、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、中庄谷博規(ミサワホーム建設・CS本部副本部長)、磯和春美(元毎日新聞社デジタルメディア局長)、梶原祐理子(元日本放送協会千葉放送局長)、安岡正晃(元三和銀行審査部長)、谷明典(弁護士法人北浜法律事務所代表社員弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」および「その他」事業を展開しています。
■建設事業
マンションや商業施設、公共施設などの土木建築工事に関する企画、設計、施工および監理等の総合建設サービスを提供しています。
顧客からの工事請負代金を主な収益源としており、運営は同社を中心に、大末テクノサービスや神島組などが担っています。
■その他
建設事業の付帯業務として、不動産事業や保険代理業、労働者派遣業、警備業、および訪問看護事業などを展開しています。
不動産の賃貸収入や売却益、派遣料金などを収益源としています。不動産事業は同社および大末テクノサービスが運営し、訪問看護事業はやすらぎが提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は年々順調に拡大しており、安定した成長基調にあります。利益面においては、一時的な落ち込みがあったものの、直近では工事採算の改善や売上高の増加により、経常利益および当期利益ともに大幅な増益を達成しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 70億円 | 718億円 | 778億円 | 890億円 | 1056億円 |
| 経常利益 | 27億円 | 19億円 | 16億円 | 37億円 | 66億円 |
| 利益率(%) | 3.9% | 2.7% | 2.1% | 4.2% | 6.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 13億円 | 14億円 | 36億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調に増加しています。利益率も改善傾向にあり、本業の収益性が高まっていることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 890億円 | 1056億円 |
| 売上総利益 | 81億円 | 117億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.1% | 11.1% |
| 営業利益 | 37億円 | 66億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 6.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が13億円(構成比24%)、支払手数料が7億円(同13%)を占めています。また、売上原価においては、完成工事原価が930億円(構成比99%)を占めており、建設事業が主要なコスト構造となっています。
■(3) セグメント収益
主力である建設事業が一般建築における複数の大型案件受注の寄与などにより順調に推移し、全社的な売上高の増加を牽引しました。一方、不動産事業等を含むその他の売上高は横ばいで推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 建設事業 | 882億円 | 1047億円 |
| その他 | 9億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 890億円 | 1056億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業活動で得た資金を借入金の返済に充てつつ、設備投資等を手元資金の範囲内で賄っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -31億円 | 93億円 |
| 投資CF | 8億円 | -3億円 |
| 財務CF | -21億円 | -27億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も42.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「誠実をもってお客様の信頼を得る」という一貫した理念に基づき、「建設業を通じて豊かな人間生活に貢献する」ことを経営理念に掲げています。社会から信頼され、必要とされ続ける企業を目指し、洗練された最高の住環境を創り上げる総合建設企業として事業に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
「お客様の期待に応える対応力」と「高い技術と革新性を常に追求する姿勢」を強みとしています。日々夢をもって技術向上を目指し、研鑽を積むことを重視する文化があります。また、株主や協力会社、地域社会と共生し、社員と家族が安心でき、誇りとやりがいをもって働ける組織づくりを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期経営計画「Road to 100th anniversary~飛躍への挑戦~」を掲げています。策定から約2年で業績が想定を上回り、2030年度に想定していた主要な経営指標を2025年度に前倒しで達成したため、より高い目標に向けた計画の見直しを行いました。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長段階に向けて、一般建築事業のさらなる強化や、事業拡大に向けたM&Aを推進します。また、成長の原動力となる人材基盤の強化、生産性向上に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用を中心に、従来の戦略をアップデートし、企業価値の継続的な向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働きがいの向上」「人材育成の加速」「多様な人材の活躍推進」を通じて飛躍的な成長を支える人材基盤の強化を図っています。「人」こそが企業価値向上の重要な基盤であるとの考えから、階層別の教育プログラムを整備し、子育てや介護と仕事の両立支援など、多様な働き方に対応できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.7歳 | 16.8年 | 9,261,812円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 76.4% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の増加(14.9%)、経験者採用数の割合(44.9%)、エンゲージメントスコア(68.5)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 資材価格等の変動
建設事業はプロジェクトが長期にわたるため、計画や見積段階から労務賃金や資材価格が大幅に上昇し、価格転嫁が困難な場合には、工事原価が上昇して業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 建設技術者・技能労働者不足
長時間労働による人材流出や需給関係の急激な逼迫により、必要人員の確保が困難になった場合、受注機会の喪失や労働力不足による工事遅延が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 取引先の信用不安
建設業界特有の商習慣により売上高の増加に伴い売掛金が増加します。工事代金を受領する前に事業主である取引先が信用不安等に陥った場合、回収遅延や貸倒損失の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 契約不適合の発生
設計や施工等において重大な契約不適合責任による損害賠償が発生した場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。同社は品質検査の実施や社員教育の徹底などの対応策を講じています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。