※本記事は、大末建設株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大末建設ってどんな会社?
マンション建設を中心とした建設事業を展開する、大阪発祥の独立系ゼネコンです。ミサワホームと資本業務提携を結んでいます。
■(1) 会社概要
1937年3月に山本工務店として創業し、1947年に大末組を設立しました。1961年に大阪証券取引所市場第2部に上場、1967年には東京・大阪証券取引所市場第1部へ上場を果たしました。1970年に現在の社名である大末建設へ商号変更し、2022年の市場区分見直しに伴い東証プライム市場へ移行しています。
同社の従業員数は連結で671名、単体で597名です。筆頭株主は資本業務提携先である事業会社のミサワホームで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は外国法人の常任代理人である銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ミサワホーム | 19.55% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.07% |
| BNYM SA/NV FOR BNYM FOR BNYM GCM CLIENT ACCTS M ILM FE | 2.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は村尾 和則氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村尾 和則 | 代表取締役社長 | 1988年同社入社。大阪本店長、東京本店長、DX推進本部長などを歴任し、2020年より現職。 |
| 片岡 基宏 | 取締役 | 1989年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2018年同社入社。経営企画部担当等を経て2024年よりDXシステム戦略部担当。 |
| 鶴 浩一郎 | 取締役東京本店長 | 1988年同社入社。東京本店工事部長などを経て2020年東京本店長。2025年4月より常務執行役員。 |
| 松田 健城 | 取締役大阪本店長 | 1988年同社入社。DX推進本部DX推進部長などを経て2024年大阪本店長。2025年4月より事業戦略部管掌。 |
| 前田 延宏 | 取締役(監査等委員) | 1972年同社入社。執行役員副社長、システム部担当などを経て2022年より現職。 |
社外取締役は、中庄谷博規(ミサワホーム執行役員)、磯和春美(元毎日新聞社デジタルメディア局長)、梶原祐理子(元NHK千葉放送局長)、安岡正晃(元ユニチカ代表取締役専務)、谷明典(弁護士法人北浜法律事務所社員弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」および「その他」事業を展開しています。
**建設事業**
マンションやビルなどの建設工事および土木工事を行っています。主な顧客は不動産デベロッパーや官公庁、民間企業です。同社が主体となり、連結子会社の大末テクノサービスや神島組、関連会社等が連携して施工や技術サービスを提供しています。
**その他**
不動産事業、保険代理業、労働者派遣業、警備業、訪問看護事業などを展開しています。不動産の売買・賃貸による収益や、各種サービス提供による手数料収入などを得ています。運営は同社および大末テクノサービス、やすらぎが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な増加傾向にあり、直近では890億円に達しています。利益面では、原材料価格の高騰などで利益率が低下した時期もありましたが、当期は採算性の改善や増収効果により、経常利益、当期純利益ともに大きく回復し、V字回復の傾向を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 565億円 | 696億円 | 718億円 | 778億円 | 890億円 |
| 経常利益 | 22億円 | 27億円 | 19億円 | 16億円 | 37億円 |
| 利益率 | 3.9% | 3.9% | 2.7% | 2.1% | 4.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 18億円 | 13億円 | 14億円 | 36億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間では、売上高が14.4%増加し、売上総利益は約1.7倍に拡大しました。これに伴い、営業利益率は2.0%から4.2%へと大きく改善しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 778億円 | 890億円 |
| 売上総利益 | 49億円 | 81億円 |
| 売上総利益率 | 6.3% | 9.1% |
| 営業利益 | 16億円 | 37億円 |
| 営業利益率 | 2.0% | 4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が12億円(構成比27%)、支払手数料が5億円(同11%)を占めています。売上原価については、完成工事原価などが売上原価合計の99%以上を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の建設事業は、大型案件の進捗や受注の好調により売上が伸長しました。一方、その他事業は不動産事業等の売上減少により減収となりました。なお、同社は単一セグメントのためセグメント利益の開示はありません。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 建設事業 | 765億円 | 882億円 |
| その他 | 14億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 778億円 | 890億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
大末建設のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少などにより、資金が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入などにより、資金が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の返済などにより、資金が減少しました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度より減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -19億円 | -31億円 |
| 投資CF | -30億円 | 8億円 |
| 財務CF | 37億円 | -21億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
誠実をもってお客様の信頼を得るという一貫した理念に基づき、建設業を通じて豊かな人間生活に貢献することを経営理念としています。洗練された最高の住環境をお客様と共に創り上げる総合建設企業を目指しています。
■(2) 企業文化
「お客様の期待に応える対応力」と「高い技術と革新性を常に追求する姿勢」を強みとしています。2030年ビジョンとして「安心と喜びあふれる空間を創造する会社」を掲げ、日々夢をもって技術向上を目指し、研鑽を積む風土があります。
■(3) 経営計画・目標
創業100周年に向けて、2024年度を初年度とする中長期経営計画「Road to 100th anniversary~飛躍への挑戦~」(2024年度~2030年度)を策定しています。収益性の改善と企業価値の向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「建築事業の強靭化」「高収益ポートフォリオの拡充」「経営基盤の次世代化」という3つの挑戦を掲げています。具体的には、非マンション分野の強化や不動産・土木事業への進出による事業ポートフォリオのバランス確保、DX推進や新工法採用による生産性向上に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人」こそが企業価値向上の重要な基盤であるとの考えのもと、人材マネジメント計画を策定し、全社員への研修実施や資格取得支援を行っています。また、多様な人材の活躍推進のため、ダイバーシティ推進やワークライフバランスの向上に取り組み、働きがいのある環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.7歳 | 17.1年 | 7,664,653円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 77.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 74.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、時間外労働時間(18時間53分/月・人)、女性従業員の割合(14.1%)、労働者の経験者採用数の割合(45.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化
同社グループは建設事業、特に分譲マンション建設事業を主業としています。そのため、建設事業市場が著しく縮小した場合、業績の悪化につながる可能性があります。対応策として、非マンション分野の強化や不動産・土木事業への進出を進めています。
■(2) 資材価格等の変動
建設プロジェクトは長期にわたるため、計画・見積段階から労務賃金や資材価格が大幅に上昇し、それを価格転嫁することが困難な場合には、工事原価が上昇し業績等に影響を及ぼす可能性があります。予測可能な範囲での原価への内包や、価格転嫁交渉の確認などで対応しています。
■(3) 建設技術者・技能労働者不足
長時間労働による人材流出や需給逼迫により、必要人員の確保が困難になった場合、受注機会の喪失や工事遅延、原価上昇により業績等に影響を及ぼす可能性があります。DX推進による省力化や、建設技術者の計画的な採用などで対応を図っています。



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