大豊建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大豊建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する建設会社。土木事業におけるニューマチックケーソン工法等の独自技術に強みを持つほか、建築事業も展開しています。当連結会計年度は、大型工事の進捗遅れ等により減収となりましたが、利益面では採算性の改善等により経常利益、当期純利益ともに大幅な増益となりました。


※本記事は、大豊建設株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大豊建設ってどんな会社?


土木・建築事業を柱とする総合建設会社です。特に「ニューマチックケーソン工法」などの特殊土木技術に強みを持ち、インフラ整備に貢献しています。

(1) 会社概要


同社は1949年、旧満州国でダム建設等に従事した技術者らにより設立され、1952年には独自の潜函工法(ニューマチックケーソン工法)の特許を登録しました。1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1972年には同第一部へ指定替えとなりました。その後もシールド工法などの技術開発を進め、2022年の市場区分見直しを経て、2023年にスタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は1,694名、単体では1,054名です。筆頭株主は親会社でありセメント事業等を手掛ける麻生で、50.17%を保有しています。第2位は不動産販売等を行う南青山不動産、第3位は投資会社のシティインデックスイレブンスとなっており、親会社との連携を強めつつ事業を展開しています。

氏名 持株比率
麻生 50.17%
南青山不動産 9.23%
シティインデックスイレブンス 9.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.8%です。代表取締役執行役員社長は森下覚恵氏が務めています。社外取締役比率は35.3%です。

氏名 役職 主な経歴
森下 覚恵 代表取締役執行役員社長 1979年同社入社。広島支店長、九州支店長、名古屋支店長、土木本部長などを歴任。2021年取締役兼執行役員副社長を経て、2022年6月より現職。
中村 百樹 取締役専務執行役員建築本部長 1985年同社入社。東京支店建築部長、同副支店長、東京建築支店長などを歴任。2021年常務執行役員建築本部長を経て、2022年4月より現職。
釘本 実 取締役常務執行役員管理本部長 1983年同社入社。管理本部経理部長、東北支店総務部長などを歴任。2021年4月常務執行役員管理本部長に就任し、同年6月より現職。
瀬知 昭彦 取締役常務執行役員企画本部長 1984年同社入社。秘書室長、企画室長などを経て、2021年常務執行役員企画室長。2022年1月常務執行役員企画本部長に就任し、同年6月より現職。
益田 浩史 取締役常務執行役員土木本部長 1981年同社入社。大阪支店土木部長、九州支店工事部長、東北支店営業部長、大阪支店長などを歴任。2022年4月常務執行役員土木本部長に就任し、同年6月より現職。
麻生 巌 取締役 1997年日本長期信用銀行入行。2010年麻生代表取締役社長に就任。麻生セメント代表取締役社長などを歴任し、2021年6月より現職。麻生代表取締役社長。
屋宮 康信 取締役 1981年日特建設入社。同社取締役執行役員副社長経営戦略本部長などを歴任。2024年4月同社非常勤顧問を経て、同年6月より現職。


社外取締役は、内藤達次郎(元SCSK取締役専務執行役員)、藤田和弘(藤田公認会計士事務所代表)、大島義孝(東京ベイ法律事務所代表弁護士)、渥美陽子(あつみ法律事務所代表弁護士)、神谷宗之介(弁護士法人神谷法律事務所代表)、加藤智治(まん福ホールディングス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木事業」「建築事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 土木事業


ダム、トンネル、橋梁、港湾などの土木工事全般の施工を行っています。官公庁や民間企業が主な顧客です。特に独自技術であるニューマチックケーソン工法やシールド工法を用いた地下構造物の建設に強みを持っています。

工事請負契約に基づき、発注者から工事代金を受け取ることで収益を得ています。同社が主体となって事業を営んでいるほか、子会社の森本組が土木事業の施工および施工協力を行っています。

(2) 建築事業


マンション、オフィスビル、工場、物流施設、医療・福祉施設などの建築工事全般を請け負っています。民間企業や個人、官公庁など幅広い顧客に対して、企画・設計から施工までを提供しています。

顧客からの工事代金が主な収益源です。運営は主に同社が行っていますが、子会社の森本組が施工および施工協力を担うほか、タイ大豊(タイ王国)も現地で建築事業を展開しています。

(3) その他の事業


不動産の売買・賃貸、建設資材の販売・リース、塗装工事などを手掛けています。グループの経営資源を有効活用し、建設事業を補完する役割も担っています。

不動産賃貸料や資材の販売・リース料等が収益源となります。運営は、大豊不動産(不動産事業)、大豊塗装工業(塗装工事業)、進和機工(建設資材リース業等)などの子会社が主に行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年3月期は大型工事での採算悪化等により損失を計上しましたが、2025年3月期は利益面でV字回復を果たしました。売上高は減少傾向にあるものの、利益率は改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,617億円 1,565億円 1,561億円 1,632億円 1,434億円
経常利益 94億円 93億円 51億円 13億円 52億円
利益率(%) 5.8% 6.0% 3.2% 0.8% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 47億円 104億円 14億円 -22億円 29億円

(2) 損益計算書


前期は売上原価や販管費の負担が重く利益率が低迷していましたが、当期は売上高が減少した一方で、売上総利益率が大きく改善しました。その結果、営業利益および営業利益率は大幅に上昇しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,632億円 1,434億円
売上総利益 76億円 131億円
売上総利益率(%) 4.7% 9.2%
営業利益 5億円 55億円
営業利益率(%) 0.3% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が33億円(構成比44%)、退職給付費用が2億円(同2%)を占めています。売上原価については、工事損失引当金繰入額の減少などが原価率改善に寄与しています。

(3) セグメント収益


土木事業は大型工事の進捗遅れ等により減収となりましたが、採算性は改善し黒字転換しました。建築事業は前期比で大幅な減収となりましたが、利益面では増加しています。その他の事業は増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
土木事業 736億円 708億円
建築事業 854億円 679億円
その他の事業 43億円 47億円
連結(合計) 1,632億円 1,434億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -115億円 118億円
投資CF -10億円 -9億円
財務CF 17億円 -66億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も47.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「顧客第一」「創造と開拓」「共生」「自己責任」を経営理念として掲げています。この理念の下、社会の各地域に寄与し、地域社会から真に信頼される良い会社であること、そして社員にとって夢のある会社であり続けることを目指しています。

(2) 企業文化


社員一人ひとりが自己に誇りと責任を持ち、誠実に行動することを重視しています。常に未来に向けて創造の精神と開拓する姿勢を持ち、適正利潤を求めながら総合力を発揮する組織風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2023年5月に策定した中期経営計画(2023-27年度)の基本方針を維持しつつ、環境変化に対応したアジャスト版として新たな数値目標を設定しています。2027年度の連結業績目標として以下を掲げています。

* 売上高:1,600億円
* 営業利益:67億円
* ROE:7.0%程度

(4) 成長戦略と重点施策


「人的資本経営の強化」と「事業構造の変革」を基本方針とし、これらを実現する投資戦略を推進します。土木事業では得意技術であるシールド・ニューマチックケーソン工事での国内シェア拡大を、建築事業では産業・生活・公共の3領域を軸に取り組みます。また、親会社の麻生グループとの協業によるPPP事業や、不動産開発、ESG関連事業などの新領域にも注力します。

* 戦略投資総額(2025-27年度):207億円
* 事業領域拡大関連(開発、維持修繕、PPP、M&A):80億円
* 経営基盤強化関連(人材、研究開発、DX):37億円
* 株主還元(配当性向70%への引上げ):90億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


サステナブルな建設業の実現に向け、「エンゲージメント強化」「DX・研究開発の促進」「人材育成」の3領域で人的資本経営を強化しています。具体的には、作業所の「4週8休」実現や時間外労働規制の遵守など労働環境の改善を進めるとともに、IT技術との融合による技術伝承や社員の能力開発に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.1歳 19.4年 7,652,928円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 68.0%
男女賃金差異(全労働者) 60.8%
男女賃金差異(正規) 62.2%
男女賃金差異(非正規) 39.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員に占める女性職員の割合(10.5%)、新卒採用者に占める女性総合職の割合(14.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設業を取り巻く環境の変化


公共工事費の削減や景気後退による建設需要の縮小などの環境変化が業績に影響を与える可能性があります。また、公共工事の入札競争激化による低入札や、労務費・主要資材価格の高騰による建設コストの増加が利益を圧迫するリスクがあります。

(2) 取引先等の信用リスク


取引先の業績悪化により、工事代金の未回収や工事の遅延等が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、情報収集や与信管理、債権保全などの対策を講じています。

(3) 海外工事に伴うリスク


海外工事において為替変動による損失や、想定外のカントリーリスクが発生し、業績に影響を与える可能性があります。進出国を適度に分散させることでリスクの軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。