※本記事は、大豊建設株式会社の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大豊建設ってどんな会社?
大豊建設は、シールド工法などの独自技術に強みを持つ土木事業と各種建築事業を展開する総合建設会社です。
■(1) 会社概要
同社は1949年に土木、建築技術者が集結し設立されました。1952年には大豊式潜函工法の特許を登録し、技術的基盤を確立しています。1962年に東京証券取引所市場第二部に株式を上場し、1972年には同市場第一部に指定されました。その後も独自の工法開発や国内外への拠点展開を進め、事業を拡大しています。
現在の従業員数は連結で1,700名、単体で1,072名です。筆頭株主は親会社である麻生であり、第2位はATRA、第3位は工事請負における取引先である住友不動産となっています。麻生とは資本業務提携を結び、親会社として同社グループの事業基盤強化やシナジー創出に向けた連携を図る体制となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 麻生 | 50.12% |
| ATRA | 13.18% |
| 住友不動産 | 3.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役執行役員社長は益田浩史氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 益田浩史 | 代表取締役執行役員社長 | 1981年に同社入社。大阪支店土木部長や東北支店長、大阪支店長、土木本部長などを歴任し、2022年に取締役常務執行役員に就任。2026年より現職。 |
| 森下覚恵 | 代表取締役 | 1979年に同社入社。広島、九州、名古屋の各支店長などを経て、2019年に取締役専務執行役員土木本部長に就任。2022年に代表取締役執行役員社長となり、2026年より現職。 |
| 屋宮康信 | 取締役執行役員副社長 | 1981年に日特建設へ入社し、取締役執行役員副社長などを歴任。エンデバー・ユナイテッドなどのアドバイザー等を経て、2024年に同社取締役に就任し、2026年より現職。 |
| 中村百樹 | 取締役専務執行役員建築本部長 | 1985年に同社入社。東京支店建築部長や東京建築支店長を経て、2021年に常務執行役員建築本部長に就任。同年に取締役常務執行役員となり、2022年より現職。 |
| 瀬知昭彦 | 取締役専務執行役員企画本部長 | 1984年に同社入社。秘書課長や企画室長を経て、2019年に執行役員企画室長に就任。2022年に常務執行役員企画本部長および取締役常務執行役員となり、2026年より現職。 |
| 釘本実 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1983年に同社入社。経理部財務課長や東北支店総務部長、経理部長などを経て、2019年に常務執行役員に就任。2021年より常務執行役員管理本部長および現職。 |
| 麻生巌 | 取締役 | 1997年に日本長期信用銀行へ入行。麻生セメント(現・麻生)の取締役等を経て、2010年より麻生の代表取締役社長を務める。他社の社外取締役を多数歴任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、内藤達次郎(元LIXIL取締役副社長)、藤田和弘(東京共同会計事務所パートナー)、大島義孝(東京ベイ法律事務所代表弁護士)、渥美陽子(あつみ法律事務所代表弁護士)、神谷宗之介(弁護士法人神谷法律事務所)、加藤智治(まん福ホールディングス代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「土木事業」「建築事業」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 土木事業
シールド工法やニューマチックケーソン工法などの独自技術を活用し、道路、鉄道、上下水道、港湾などの社会インフラ整備を中心とした公共投資や民間投資に伴う各種土木工事を提供しています。国内外の官公庁や民間企業が主な顧客となります。
収益源は、各種土木工事の請負代金です。当事業の運営は主に大豊建設が行うほか、子会社の森本組が土木工事の施工および施工協力を行って収益をあげています。
■(2) 建築事業
住宅、医療福祉施設、商業施設などの生活関連事業や、生産・流通施設などの産業関連事業、さらにはPFI等を用いた公共事業領域における各種建築物の施工を提供しています。多様なニーズを持つ民間企業や官公庁が主な顧客です。
収益源は、各種建築物の建設に伴う工事請負代金です。大豊建設が主体となって建築工事を営むほか、森本組が施工および施工協力を行い、海外ではタイ王国に拠点を置くタイ大豊が事業を運営しています。
■(3) その他の事業
建設事業を支える付帯事業として、福利厚生施設を含む不動産の売買や賃貸事業、塗装関連の工事業、さらには建設用資材の販売やリース業などを展開し、グループ内外の顧客にサービスを提供しています。
収益源は、不動産の賃貸料や売却益、塗装工事の請負代金、および建設資材の販売・リース料などです。運営は、大豊不動産が不動産事業を、大豊塗装工業が塗装工事業を、進和機工が建設資材リース業をそれぞれ担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は1,400億円から1,600億円の規模で推移しています。経常利益は一時的に落ち込み赤字を計上した時期もありましたが、その後は回復傾向にあり、利益率も5%台まで改善しています。継続的な事業構造の変革や選別受注の徹底が利益水準の向上に寄与しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,565億円 | 1,561億円 | 1,632億円 | 1,434億円 | 1,398億円 |
| 経常利益 | 93億円 | 51億円 | 13億円 | 52億円 | 73億円 |
| 利益率(%) | 6.0% | 3.2% | 0.8% | 3.6% | 5.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 104億円 | 14億円 | -22億円 | 29億円 | 40億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となりましたが、売上総利益および営業利益は増加しています。売上総利益率は9.2%から10.8%へ、営業利益率は3.9%から4.9%へとそれぞれ改善しており、採算性を重視した受注活動や維持修繕工事などの利益向上策が成果を上げ、収益構造の良化が進んでいることが分かります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,434億円 | 1,398億円 |
| 売上総利益 | 131億円 | 152億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.2% | 10.8% |
| 営業利益 | 55億円 | 69億円 |
| 営業利益率(%) | 3.9% | 4.9% |
販売費及び一般管理費(当期合計約83億円)のうち、従業員給料手当が36億円(構成比約44%)を占め、次いで賞与引当金繰入額が2億円(同約2%)となっています。売上原価(当期合計約1,247億円)の具体的な内訳は記載されていませんが、人件費を中心としたコストが管理費の大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力である土木事業は大型工事の順調な進捗により前年並みの規模を維持しています。一方、建築事業は施工体制を確保した選別受注を徹底した影響により、前期比で売上高が減少しています。その他の事業は不動産やリース事業などを安定的に手掛け、前年と同等の水準を保っています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 土木事業 | 708億円 | 703億円 |
| 建築事業 | 679億円 | 648億円 |
| その他の事業 | 47億円 | 47億円 |
| 連結(合計) | 1,434億円 | 1,398億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスの「改善型」となっています。これは、本業での利益創出や資産売却等によって得た資金を元に、借入金の返済などを進めて財務体質の改善を図っている局面であることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 118億円 | 39億円 |
| 投資CF | -9億円 | 2億円 |
| 財務CF | -66億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.4%となっており、いずれもスタンダード市場の平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「顧客第一」「創造と開拓」「共生」「自己責任」を経営理念に掲げています。社員が自己に誇りと責任を持って誠実に行動し、常に未来へ向けた創造と開拓の姿勢を持つことを重視しています。適正な利潤を追求しながら地域社会に寄与し、社会から真に信頼される良い会社、社員にとって夢のある会社であり続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「大豊建設企業行動規範」を定め、すべての役員および従業員が法令や定款、社内規程、社会通念を遵守して行動する文化を重視しています。反社会的勢力を排除し、コンプライアンスを徹底することで、株主や顧客をはじめとするステークホルダーの期待や要望に誠実に応えていく姿勢を基盤としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中期経営計画(2023-27年度)において、建設資材や人件費の高騰といった環境変化にアジャストした目標を設定しています。「人的資本経営の強化」と「事業構造の変革」を基本方針とし、2027年度に向けて以下の数値目標を掲げて持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。
* 売上高:1,600億円
* 営業利益:67億円
* ROE:7.0%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「人的資本経営の強化」と「事業構造の変革」を成長戦略の柱としています。エンゲージメント向上やDX推進を図るとともに、土木事業では独自工法の国内シェア50%以上を目指し、維持修繕事業を強化します。また、PPP事業や不動産開発事業などの新領域へも積極的に投資を行い、収益基盤の多角化を進める方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、サステナブルな建設業の実現に向けて「人的資本経営の強化」を掲げています。雇用の門戸を拡げ、適切な人事ローテーションによる機会均等を図りつつ、公正な評価制度の運用で働きがいを向上させます。誰もが挑戦し活躍できる環境を整備し、従業員の成長が企業価値を高める好循環の構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.0歳 | 19.2年 | 8,199,789円 |
※平均年間給与は、諸手当及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 73.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 66.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 40.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントサーベイ回答率(94.5%)、「4週8休」の確保率(98.2%)、重大災害の発生件数(0件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 取引先等の信用リスク
取引先の業績悪化により工事代金の未回収や工事の遅延などが発生した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は情報収集や与信管理、債権保全に努めることでリスクの軽減を図っています。
■(2) 海外工事に伴う為替・カントリーリスク
海外工事に関連して、為替の変動による差損や想定を超えるカントリーリスクが顕在化した場合、損失が生じる可能性があります。同社は進出国の適度な分散を図ることで、これらのリスクの低減に努めています。
■(3) 建設業を取り巻く環境の変化によるリスク
公共工事費の大幅な削減や景気後退による建設需要の縮小、あるいは労務費や資機材費の高騰による建設コストの増加が懸念されています。これらの事業環境の急激な変化は、同社グループの利益を圧迫する要因となります。
■(4) 人材確保についてのリスク
建設業に対するイメージや高齢化などから、優秀な人材や技能労働者の確保が困難になる恐れがあります。同社は「働き方改革」を推進し、作業現場の4週8休の実施など労働環境の改善に注力して人材の確保に努めています。



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