※本記事は、東亜道路工業株式会社 の有価証券報告書(第119期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東亜道路工業ってどんな会社?
道路舗装業界の大手であり、国内で初めてアスファルト乳剤の製造を開始した独立系の道路建設会社です。
■(1) 会社概要
1930年に米国企業の技術導入により日本ビチュマルスとして設立され、国内初のアスファルト乳剤製造を開始しました。1948年に株式の店頭売買を開始し、1961年に東京証券取引所市場第二部に上場、1970年には同第一部へ指定替えとなりました。2004年には国土道路と合併し、事業基盤を強化しています。
同グループの連結従業員数は1,670名、単体では1,064名体制です。筆頭株主は外国法人の常任代理人である銀行で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。そのほか、主要取引銀行である横浜銀行や従業員持株会、取引先持株会などが大株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN)LIMITED SOLEL Y IN ITSCAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP | 14.76% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.95% |
| 横浜銀行 | 4.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長執行役員社長は森下協一氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森下協一 | 代表取締役社長執行役員社長 | 1981年入社。東北支社工事部長、執行役員中国支社長、工務本部長、企画営業本部長などを歴任し、2017年6月より現職。 |
| 堀之内悟 | 代表取締役執行役員副社長建設事業本部長 | 1983年入社。工務本部長、技術本部長、製品事業本部長、営業本部長などを歴任し、2023年4月より現職。 |
| 仲村直規 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1986年入社。東北支社管理部長、管理本部経理部長、執行役員管理本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、楠美雅堂(公認会計士)、田原裕子(國學院大學経済学部教授)、市川祐一郎(元日本海洋掘削社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」および「製造販売・環境事業等」事業を展開しています。
■(1) 建設事業
舗装工事を中心として、土木工事、造園・緑化工事、スポーツ施設工事、地盤改良工事、河川改修工事などの建設工事を行っています。また、建設物の解体やコンサルタント業務も手掛けており、顧客は官公庁や民間企業など多岐にわたります。
主な収益源は、発注者からの工事請負代金です。運営は主に東亜道路工業が担い、姶建産業、敷島組、コクドなどの関係会社も事業を展開しています。インフラの老朽化対策や防災・減災対策に伴う公共投資が需要の柱となっています。
■(2) 建設材料等の製造販売・環境事業等
アスファルト乳剤、改質アスファルト、アスファルト合材、リサイクル骨材などの建設資材の製造・販売を行っています。また、建設機械の製造販売や、建設廃棄物の中間処理、汚染土壌の調査・浄化処理などの環境事業も手掛けています。
収益は、建設会社や舗装会社等への製品販売代金や、廃棄物処理・土壌浄化の請負代金から得ています。運営は東亜道路工業のほか、札幌共同アスコン、東亜利根ボーリング、トーア物流などの関係会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな増加傾向にあり、特に当期は前期比で増収となりました。経常利益は50億円前後で推移していますが、当期は前期より減少しています。利益率は4%台で安定しています。当期利益は変動が見られますが、当期は前期を上回る結果となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,118億円 | 1,121億円 | 1,187億円 | 1,181億円 | 1,266億円 |
| 経常利益 | 73億円 | 56億円 | 50億円 | 57億円 | 52億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | 5.0% | 4.2% | 4.8% | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 37億円 | 24億円 | 16億円 | 20億円 | 29億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価の増加率が売上高の増加率を上回ったため、売上総利益は微増にとどまりました。これに伴い売上総利益率は低下しています。販売費及び一般管理費の増加もあり、営業利益は前期を下回る結果となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,181億円 | 1,266億円 |
| 売上総利益 | 135億円 | 135億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.4% | 10.7% |
| 営業利益 | 55億円 | 50億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | 4.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が40億円(構成比47%)、退職給付費用が2億円(同2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建設事業は完成工事高の増加により増収増益となりました。製造販売・環境事業等は、製品販売価格の改定などにより増収を確保しましたが、原材料価格の高騰などが響き減益となりました。全体としては増収減益の結果となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設事業 | 702億円 | 774億円 | 35億円 | 38億円 | 4.9% |
| 製造販売・環境事業等 | 478億円 | 492億円 | 42億円 | 35億円 | 7.0% |
| 連結(合計) | 1,181億円 | 1,266億円 | 55億円 | 50億円 | 4.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
東亜道路工業グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、道路舗装の新材料・新工法開発など、技術力向上に繋がる研究開発投資を支えています。設備投資や長期運転資金は金融機関からの借入で調達し、将来キャッシュ・フローを勘案した収益向上に資する投資を着実に実施しています。短期運転資金は自己資金と短期借入で賄い、安定的な事業運営を図っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「自らの意思と成長をもって、人々の生活を足元から支える」を企業理念に掲げています。この理念のもと、コンプライアンスの実践や透明性の高い経営を行い、時代の変化に適合した技術開発を通じて新しい価値を提供し、社会との良好な関係を築くことを目指しています。
■(2) 企業文化
「挑戦・発想・実行で社会から選ばれ続ける企業に」を基本方針としています。企業に対する社会からの要請が変化する中、経営方針の軸を「CSR経営」へシフトし、すべてのステークホルダーにコミットすることで支持される企業を目指す文化があります。また、不確実性の時代に対応できるレジリエントな企業体質の構築を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
創立100周年を迎える2030年を目標とした長期ビジョン「TOA STYLEをさらに磨き、社会から選ばれ続けるオンリーワン企業へ」の実現に向け、中期経営計画「TOA ROAD Sustainable Plan 2026」を推進しています。2026年3月期の連結数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:1,270億円
* 営業利益:65億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:41億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「CSR経営へのシフト」と「持続可能な成長基盤の確立」を二つの柱としています。建設事業では、DX技術の導入による生産性向上や、PPP、海外事業、スポーツファシリティ事業の強化による事業領域拡大に注力しています。製品事業では、環境配慮型製品の展開や設備のDX化を推進しています。
また、技術開発においては、舗装の長寿命化技術や、デジタル技術を活用した道路マネジメントシステムの開発を進めています。さらに、路面太陽光発電技術や走行中ワイヤレス充電技術など、未来の舗装の可能性を見出すイノベーションにも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
2024年問題を契機に、労働時間の適正管理、人材確保と教育・育成、労働環境の改善に取り組んでいます。DX導入による業務効率化や省人化を推進し、多様な働き方を実現することを目指しています。また、エンゲージメントスコアの導入と改善を通じて、従業員との相互理解を深め、高い生産性と顧客満足度を達成する組織づくりを行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.6歳 | 18.9年 | 8,215,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.5% |
| 男性育児休業取得率 | 10.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 53.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 50.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(51.8)、離職率(3.42%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 官公庁工事の減少
同社グループは売上を建設市場に依存しており、建設事業は公共事業関連が大半を占めています。そのため、国の財政事情などにより公共投資が削減された場合、受注機会が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 資材価格の変動
建設材料等の製造販売事業における主要資材であるストレートアスファルトの価格は原油価格に連動します。為替変動や地政学リスクにより価格が高騰し、その上昇分を販売価格や請負金額に転嫁できない場合、利益を圧迫する要因となります。
■(3) 施工上の不具合および製商品の不良発生
施工や製品の品質管理には万全を期していますが、重大な契約不適合や不良が発生した場合、補修費用や損害賠償費用の発生に加え、社会的信用の失墜により受注活動に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。



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