工藤建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

工藤建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

工藤建設は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、建設事業を中心に不動産事業や介護事業を展開する企業です。神奈川・東京を基盤に、人々の全ライフステージを支える「生活舞台創造企業」を目指しています。直近の業績は、主要事業が堅調に推移し、増収増益を達成しており、安定した成長トレンドを描いています。


記事タイトル:「工藤建設転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」

※本記事は、工藤建設株式会社 の有価証券報告書(第54期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 工藤建設ってどんな会社?


同社は神奈川・東京を地盤とし、建設・不動産・介護事業を展開する「生活舞台創造企業」です。

(1) 会社概要


同社は1971年に建築・土木の請負企業として設立されました。1995年に住宅事業を本格的に開始し、1997年には東京証券取引所に上場を果たしました。その後、2004年に介護付有料老人ホームを開所して介護事業に参入し、事業の多角化を進めました。直近では2024年に日建企画を連結子会社化しています。

現在の従業員数はグループ全体で762名、単体では733名となっています。筆頭株主は役員の兼任があるトップで、第2位は個人の武笠清一郎氏、第3位には法人のMOMOコーポレーションが名を連ねており、多様な株主構成となっています。

氏名 持株比率
トップ 45.46%
武笠清一郎 4.19%
MOMOコーポレーション 3.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は藤井研児氏が務めており、社外取締役比率は22%です。

氏名 役職 主な経歴
工藤英司 代表取締役会長 1986年同社入社。常務取締役、専務取締役などを経て、2005年代表取締役社長に就任。2024年より現職。
藤井研児 代表取締役社長 1991年同社入社。住宅事業部部長、執行役員介護事業部長、常務取締役などを歴任し、2024年より現職。
工藤隆晃 常務取締役 1977年同社入社。建物管理事業部長等を経て、2013年取締役常務執行役員。2017年より現職。
中山仁 取締役建設本部長兼建設事業部長 1990年ミサワホーム入社。2019年同社顧問を経て取締役就任。2024年より現職。
白坂義道 取締役総合企画室長兼経営管理部担当 1984年横浜銀行入行。2013年出向で同社執行役員。2023年取締役就任、2025年より現職。
後藤斉由 取締役建物管理事業部長 1998年同社入社。日建企画代表取締役などを経て、2024年同社取締役に就任し、2025年より現職。
工藤隆司 取締役 1986年間組入社、1988年同社入社。日建企画代表取締役や同社執行役員等を経て、2011年より現職。


社外取締役は、平沼義幸(元横浜銀行常務執行役員)、鴨下香苗(Utops法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」「不動産事業」「介護事業」を展開しています。

建設事業


建設・土木工事の設計、施工、監理および請負、ならびに戸建住宅の設計、施工、請負を行っています。

顧客からの工事請負代金が主な収益源です。運営は主に同社が行っており、関連業務を行う関連会社の東洋リースが事業をサポートしています。

不動産事業


建物の保守点検、管理事業、家賃収納代行などの建物総合管理業務や、不動産の賃貸業務および売買業務を行っています。

不動産売買代金や賃貸料、建物管理手数料が主な収益源です。事業の運営は同社と、連結子会社である日建企画が行っています。

介護事業


介護保険法に基づく高齢者向け介護事業のうち、主に介護付有料老人ホームの運営を行っています。

入居者からの入居一時金や月額利用料、および介護保険サービスに伴う介護報酬が主な収益源です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、一時的な落ち込みがあったものの、その後は着実な回復を見せています。特に直近の事業年度においては売上高・利益ともに過去最高水準を記録し、利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 198億円 170億円 196億円 205億円 225億円
経常利益 6億円 2億円 3億円 4億円 6億円
利益率(%) 2.8% 1.2% 1.6% 1.9% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 1億円 1億円 2億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い売上総利益が増加しており、利益率も向上しています。営業利益ベースでも大幅な増益を達成しており、収益基盤の強化が確実な数字として表れています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 205億円 225億円
売上総利益 15億円 18億円
売上総利益率(%) 7.1% 8.2%
営業利益 4億円 6億円
営業利益率(%) 2.1% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が10億円(構成比39%)、賞与引当金繰入額が2億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


建設事業が売上高全体の過半を占め、最大の利益を稼ぎ出す柱となっています。介護事業と不動産事業も安定した収益を確保しており、3つの事業がバランスよく利益に貢献しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
建設事業 - 129億円 - 8億円 6.0%
不動産事業 - 35億円 - 2億円 5.9%
介護事業 - 61億円 - 3億円 5.1%
連結(合計) - 225億円 - 6億円 2.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来の成長を見据えて借入による積極的な投資を継続している勝負型の状況です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 31億円 -21億円
投資CF -5億円 -3億円
財務CF -6億円 12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様の感動を創造し、人生のさまざまなステージを支える生活舞台創造企業の実現」を長期経営ビジョンに掲げています。また、2030年の目指す姿として「未来・環境・幸福をつなぐリーディングカンパニー」を標榜し、神奈川・東京の人々が全ライフステージにわたって居住し続けられる住まいの提供を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「積善経営」という理念の下、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を重視しています。地域社会への貢献や地域環境の保全など社会的な活動を積極的に展開しており、社会や外部環境の変化に柔軟に対応しながら、すべてのステークホルダーの期待に応える誠実な組織風土を築いています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を最終年度とする中期経営計画において、「安定的に利益を創出できる事業基盤の構築」を目標としています。建設部門中心の現状を踏まえつつ、安定的に利益を創出する体制を整え、着実な増収増益を計画しています。

* 2025年度の連結業績目標
* 売上高:250億円
* 営業利益:6億円

(4) 成長戦略と重点施策


「収益力の強化」「人財力の強化」「サステナビリティの推進」を基本方針とし、環境変化への的確な対応や働きがいのある職場環境づくりに取り組んでいます。各事業においても、建設インフラの老朽化対応や、不動産の長寿命化ニーズの取り込み、介護サービスにおける商品性の向上などを進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業価値を高める人財育成と確保を目指し、魅力的で働きがいのある職場環境づくりを推進しています。若手社員の能力開発やスキルアップのための階層別研修、資格取得支援を整備するほか、多様な人材の採用・登用や、労働時間の短縮など働き方改革にも積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 43.7歳 7.1年 4,958,533円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 31.4%
男性育児休業取得率 54.5%
男女賃金差異(全労働者) 67.9%
男女賃金差異(正規雇用) 69.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 49.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設・住宅市場の動向に関するリスク


景気後退や建設市場の縮小、官公庁による公共事業の減少、住宅市場における価格の大幅な変動などにより受注額が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。リノベーションや戸建地下室などの注力分野で対応を進めています。

(2) 建設コストの高騰等に関するリスク


建設資材の急激な価格高騰や調達難、労務価格の高騰や建設技能労働者の不足等が生じた場合、工事採算が悪化する可能性があります。効率的な施工体制の構築や、営業と施工部門の連携によるコスト対応を図っています。

(3) 介護保険制度に関するリスク


介護サービスの提供は自治体の指定や法令に従う必要があり、制度改正による介護報酬の引き下げや自己負担割合の引き上げが行われた場合、業績に影響する可能性があります。リハビリ強化型ホームなど差別化による高稼働率維持を図っています。

(4) 法的規制に関するリスク


建設業法や建築基準法、宅地建物取引業法、介護保険法など多岐にわたる法的規制を受けており、新たな制約につながる法改正や基準の変更、行政処分等を受けた場合、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。