ナトコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナトコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナトコは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する化学メーカーです。塗料、ファインケミカル、蒸留(リサイクル)の3事業を展開しています。直近の業績は、売上高223億円(前期比7.3%増)、経常利益15億円(前期比9.6%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、ナトコ株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ナトコってどんな会社?


塗料メーカーとして創業し、現在は高機能樹脂や溶剤リサイクルなど環境・化学分野へ事業領域を拡大しています。

(1) 会社概要


1948年に名古屋塗料として設立され、1998年に現在のナトコへ商号変更しました。1993年の店頭登録を経て、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しています。国内外に拠点を展開し、2025年6月には三丸化学を子会社化するなど、M&Aを含めた事業拡大を進めています。

同社グループの従業員数は連結452名、単体230名です。大株主構成は、筆頭株主が創業家とみられる個人で、第2位は取引先持株会、第3位は同社社長となっています。安定的な株主基盤のもと、長期的な視点での経営が行われています。

氏名 持株比率
粕谷 忠晴 15.45%
ナトコ共栄会 9.62%
粕谷 太一 6.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は粕谷太一氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
粕谷 太一 取締役社長(代表取締役) 2002年入社。購買部長、塗料事業部長、専務取締役などを経て2021年より現職。
山本 豊 専務取締役 1995年入社。情報システム部長、経営管理部長、常務取締役などを経て2022年より現職。
粕谷 英史 常務取締役 2005年入社。購買部長、海外事業部長、フィリピン・タイ・ベトナム現地法人代表などを経て2022年より現職。
大野 富久 取締役研究所所長 1993年入社。化成品事業部長を経て2024年より現職。
水野 和義 取締役塗料事業部長 1982年入社。無機建材用塗料チーム部長などを経て2017年より現職。
原 昌弘 取締役化成品事業部長 2000年入社。研究所所長を経て2024年より現職。


社外取締役は、脇田政美(公認会計士脇田会計事務所所長)、林克行(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「塗料事業」「ファインケミカル事業」「蒸留事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 塗料事業


合成樹脂塗料および塗料関連製品の製造・販売を行っています。主な製品は金属用塗料や建材用塗料であり、国内外の工場で生産され、顧客へ提供されています。

収益は、製品の販売代金として得ています。運営は主にナトコが行っており、海外では中国、フィリピン、ベトナムの現地法人が製造を担当し、タイの販売会社や特約代理店を通じて販売されています。

(2) ファインケミカル事業


高機能性樹脂や樹脂素材用コート剤などの製造・販売を行っています。光学フィルム向けやモビリティ(自動車関連)向けのコーティング剤などが含まれ、高付加価値製品の開発に注力しています。

収益は、製品の販売代金からなります。運営はナトコおよび中国、フィリピン、ベトナムの製造子会社が行い、直接または代理店を通じてグローバルに展開しています。

(3) 蒸留事業


使用済み溶剤の回収・再生を行うリサイクル事業と、産業廃棄物の収集運搬・処分を行っています。循環型社会の実現に向けた環境対応事業として位置づけられています。

収益は、再生溶剤の販売や産業廃棄物の処理委託料などから得ています。運営は、子会社の巴興業、三丸化学、アイシー産業が担っており、地域ごとに効率的な回収と処理を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな増加傾向にあり、200億円台で安定して推移しています。経常利益率は6〜11%台を維持しており、底堅い収益性を確保しています。特に直近では増収増益となっており、堅調な業績です。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 190億円 204億円 202億円 208億円 223億円
経常利益 22億円 21億円 14億円 14億円 15億円
利益率(%) 11.6% 10.3% 6.7% 6.6% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 13億円 7億円 6億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。原価率や販管費率に大きな変動はなく、安定したコスト構造を維持しながら事業規模を拡大していることが読み取れます。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 208億円 223億円
売上総利益 45億円 50億円
売上総利益率(%) 21.9% 22.3%
営業利益 12億円 14億円
営業利益率(%) 5.9% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が8億円(構成比22%)、研究開発費が7億円(同20%)、運賃諸掛が7億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


塗料事業は建材用などの需要増により増収増益、蒸留事業も子会社の新規連結効果などで増収増益となりました。一方、ファインケミカル事業はモビリティ向けの低迷により減収減益となりました。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期) 利益(2024年10月期) 利益(2025年10月期) 利益率
塗料事業 128億円 143億円 9億円 12億円 8.1%
ファインケミカル事業 27億円 25億円 7億円 5億円 21.6%
蒸留事業 53億円 55億円 4億円 5億円 8.9%
連結(合計) 208億円 223億円 12億円 14億円 6.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ナトコは、蒸留事業における既存顧客の需要増や新規顧客獲得、三丸化学株式会社のグループ参画により売上高・利益が増加しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の減少や役員退職慰労引当金の増加により、前年同期比で収入が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入増加により、支出が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払減少により、支出が減少しました。

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF 16億円 18億円
投資CF -8億円 -2億円
財務CF -4億円 -4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「ユニークな発想で新しい価値を創造する」ことをミッションとしています。独創的・革新的な研究と技術力の向上に努め、「あらゆる表面のリノベーション&イノベーションカンパニーへ」発展することを2030ビジョンとして定めています。

(2) 企業文化


持続可能な社会の実現に向けて、「環境対応重視の事業展開」「人的資本経営の実現」「責任ある事業活動」をサステナビリティ基本方針として掲げています。また、多様性を前提とした風土づくりや、挑戦を楽しむ企業文化の創造を目指しており、安全第一やコンプライアンス遵守といった社会の一員としての責務を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、独創的な高付加価値製品の開発と生産性向上により収益率を重視した経営を目指しています。具体的な数値目標として以下を掲げています。

* 2027年10月期までにEBITDA 28億円
* ROE 6%前後

(4) 成長戦略と重点施策


2030ビジョン達成に向け、環境配慮型製品の提供や蒸留事業の拡大による循環型社会への貢献を重点課題としています。また、4つの要素技術(ポリマー合成、分散、コーティング、色彩)を組み合わせた研究開発体制を構築し、高付加価値製品を開発します。生産面では、老朽化設備の更新や自動化・DX活用による最適化を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長の根幹は人的資本にあるとの認識の下、経営基盤としての人的資本の充実を図っています。「グローバル人材」「プロフェッショナル人材」「リーダーシップ人材」を計画的に育成するとともに、女性やシニアの活躍推進、多様な人材の採用に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 42.7歳 16.9年 6,556,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 0.0%
男性労働者の育児休業取得率 -
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) -
労働者の男女の賃金の差異(非正規) -


※男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員に占める女性の割合(9.3%)、男性労働者の育児休業取得率(43%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 需要業界の動向


同社グループの製品は、金属、機械、電機・電子、住宅、自動車など多岐にわたる分野で生産財として使用されています。これらの主要顧客業界の需要が景気変動等により低迷した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品・原材料価格の変動


製品市場での競争激化等による販売価格の下落リスクがあります。また、主要原材料には石化原料が多く含まれるため、原油価格や為替相場の変動により調達コストが上昇した場合、収益を圧迫する可能性があります。

(3) 法的規制等の遵守


国内外で様々な法的規制の適用を受けており、特に環境規制や化学物質管理に関する規制強化への対応が求められます。これらを遵守できなかった場合や予期せぬ規制変更があった場合、事業活動の制限や対応費用の増加が生じる可能性があります。

(4) 海外事業の展開


韓国、中国、フィリピン、タイ、ベトナムなどで事業を展開しており、現地での人材確保の困難さや、経済的・社会的・政治的な混乱等のカントリーリスクが存在します。これらが顕在化した場合、海外事業の遂行や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。