萩原工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

萩原工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の萩原工業は、合成樹脂加工製品と産業機械の製造・販売を行う企業です。2025年10月期は、建築・土木関連の需要減や海外での価格競争により減収営業減益となりました。一方で、工場建設に伴う補助金収入を計上したことなどから、当期純利益は増益を確保しています。


※本記事は、萩原工業株式会社 の有価証券報告書(第63期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 萩原工業ってどんな会社?


合成樹脂繊維「フラットヤーン」技術を核に、ブルーシート等の加工製品や産業機械を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1962年に萩原商店の水島工場が分社独立して設立され、1969年にフラットヤーン製造工場を増設しました。2000年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2014年には東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしました。2018年にはコンクリート補強繊維事業の強化を目的にバルチップ・アジア社や東洋平成ポリマーを子会社化し、事業基盤を拡大しています。

2025年10月31日現在、連結従業員数は1,292名、単体では545名です。筆頭株主は創業家資産管理会社の萩原で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。主要製品であるブルーシートの水平リサイクルプロジェクトを推進するなど、環境配慮型企業としての側面も強化しています。

氏名 持株比率
萩原 10.14%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.05%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 3.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名、計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長社長執行役員は浅野和志氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
浅野 和志 代表取締役社長社長執行役員 1986年入社。事業支援部門長、合成樹脂事業管掌補佐などを歴任し、2016年1月より現職。
飯山 辰彦 取締役執行役員エンジニアリング事業部門長 1982年入社。エンジニアリング事業部門の営業・技術・生産管理を経て、2020年1月より現職。
犬飼 正樹 取締役執行役員合成樹脂事業部門長兼国際営業部長 1985年入社。ハギハラ・ウエストジャワ・インダストリーズ社社長などを経て、2023年1月より現職。
藤田 学 取締役執行役員事業支援部門長 1989年入社。合成樹脂事業部門副部門長、日本ファブウエルド社長などを経て、2024年11月より現職。
笹木 真尚 取締役執行役員 1992年入社。合成樹脂事業部門国際部長、事業支援部門経理部長などを経て、2025年1月より現職。
萩原 佳明 取締役執行役員 2015年入社。バルチップ出向を経て、2022年7月バルチップ社長に就任。2025年1月より現職。


社外取締役は、大原あかね(大原芸術財団代表理事)、西田陽介(岡山大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「合成樹脂加工製品事業」および「機械製品事業」を展開しています。

合成樹脂加工製品事業

フラットヤーン技術を用いた原糸、クロス、ラミクロス(ブルーシート等)、コンクリート補強繊維「バルチップ」等の製造・販売を行っています。主な顧客は建設・土木業界や農業分野です。
収益は、国内外の顧客への製品販売による対価から得ています。運営は、同社、ハギハラ・ウエストジャワ・インダストリーズ社、バルチップ、東洋平成ポリマーなどが担っています。

機械製品事業

スリッター(切断機)、ワインダー(巻取機)、押出関連機器などの産業機械の製造・販売、および据付・アフターサービスを行っています。二次電池やプラスチックリサイクル関連の需要も取り込んでいます。
収益は、機械製品の販売および保守サービス等の対価から得ています。運営は、同社、萩華機械技術(上海)有限公司、ハギハラ・インダストリーズ(タイランド)社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円前後で推移してきましたが、2024年10月期をピークに2025年10月期は減少しました。利益面では変動が見られ、2025年10月期は経常利益が減少しましたが、利益率は5%台後半を維持しています。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 277億円 300億円 312億円 331億円 319億円
経常利益 24億円 17億円 23億円 22億円 18億円
利益率(%) 8.6% 5.6% 7.2% 6.6% 5.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 8億円 20億円 9億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が減少しました。売上総利益率は微減傾向にあり、コストコントロールが課題となっています。営業利益率は6.3%から4.6%へ低下しており、収益性の改善が求められる状況です。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 331億円 319億円
売上総利益 89億円 84億円
売上総利益率(%) 26.8% 26.2%
営業利益 21億円 15億円
営業利益率(%) 6.3% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が17億円(構成比25%)、運賃及び荷造費が9億円(同13%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の変動費が大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


合成樹脂加工製品事業は、建築・土木需要の低迷や海外競争激化により減収減益となりました。機械製品事業も、スリッター関連の落ち込みにより減収減益となりました。全セグメントで厳しい事業環境となっています。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期) 利益(2024年10月期) 利益(2025年10月期) 利益率
合成樹脂加工製品事業 267億円 263億円 17億円 12億円 4.4%
機械製品事業 64億円 56億円 4億円 3億円 5.4%
調整額 -3億円 -4億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 331億円 319億円 21億円 15億円 4.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF 44億円 45億円
投資CF -32億円 -28億円
財務CF -17億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「フラットヤーン技術を大事にしながら 常に変革し続け 世のため人のために役立つ会社であろう」を経営理念としています。コア技術であるフラットヤーン関連技術を活かし、顧客ニーズに応える製品やサービスを提供することで、社会的価値の創造と自らの成長を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「『ありがとう』と言われる、『いい製品』を創ろう!」をスローガンに掲げています。製品の企画から製造、営業まで全社の力を結集し、顧客の期待に応える製品作りを通じて事業拡大を目指す姿勢を重視しています。また、社員の成長と幸福の追求も戦略の柱としています。

(3) 経営計画・目標


2025年12月に策定された新中期経営計画では、2028年10月期に向けた数値目標を設定しています。
* 売上高:400億円
* 経常利益:30億円
* DOE(株主資本配当率):3.5%

(4) 成長戦略と重点施策


「LINK THE LEAP」をスローガンに、ビジネスパートナーとの連携強化、環境事業の拡大、社員との一体的成長を基本方針としています。特に、ブルーシート水平リサイクル「Re VALUE+」の拡大や、金属箔スリッターなどの新規需要取り込みに注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員と会社の成長」を掲げ、多様な社員が能力を発揮できる職場づくりを進めています。アーリータイム制度や時間有給休暇、企業主導型保育所の運営など働きやすい環境を整備するとともに、課長クラス以上の経営会議参画や若手社員の海外子会社異動など、育成機会の提供にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 41.5歳 17.4年 622万7千円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 54.5%
男女賃金差異(全労働者) 71.6%
男女賃金差異(正規) 74.8%
男女賃金差異(非正規) 41.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、大卒採用に占める外国人比率(11.1%)、水平リサイクルシステム「Re VALUE+」による再生ブルーシートのリサイクル率(25%以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動に伴うリスク

気候変動による自然災害の増加や海面上昇などの物理的被害、および原材料調達難や炭素税導入によるコスト増のリスクがあります。これに対し、災害対策や柔軟な調達体制の整備、温暖化ガス排出削減を進めています。一方で、防災関連製品の需要拡大は事業機会とも捉えています。

(2) 自然災害等のリスク

地震、暴風、洪水等の災害により、社員の被災や生産設備の損壊が生じ、事業活動が低下・停止する可能性があります。これに対し、設備の防災対策やBCP(事業継続計画)の策定、損害保険の付保などの対策を講じています。

(3) 法制度・規制に関するリスク

事業活動において法令違反が生じた場合、課徴金や事業停止のリスクがあります。特に近年は人権問題や輸出管理などの新たなリスクも発生しています。法務部門等による情報収集や行動規範の徹底により、コンプライアンス遵守に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。