大阪有機化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大阪有機化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する有機化学工業薬品メーカーです。特殊アクリル酸エステルを主力とし、半導体材料やディスプレイ材料、化粧品原料などを展開しています。2025年11月期の連結業績は、半導体材料や化成品事業の回復により、売上高は前期比10.9%増、営業利益は同34.2%増の増収増益となりました。


※本記事は、大阪有機化学工業株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大阪有機化学工業ってどんな会社?


独自の蒸留技術等を活かし、多品種少量の特殊アクリル酸エステル製造を得意とする化学メーカーです。

(1) 会社概要


1946年に大阪市で設立され、1953年にアクリル酸の製造を開始しました。1987年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2011年に東京証券取引所市場第一部へ指定されています。2014年には中国に販売子会社を設立し、2024年には韓国に現地法人を設立するなど海外展開を進めています。2025年9月には米国に合弁会社Visnex Chemicals Corporationを設立しました。

同グループは連結従業員467名、単体従業員405名の体制で事業を行っています。筆頭株主は資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は株式会社日本カストディ銀行、第3位はWesternRedCedar株式会社となっています。主要株主には取引先等の事業会社も名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.82%
日本カストディ銀行 6.05%
WesternRedCedar 5.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名(22.0%)の計9名で構成されています。女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は安藤昌幸氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
安藤昌幸 代表取締役社長 1986年入社。技術本部長、常務取締役執行役員経営企画本部長などを歴任。技術・開発部門の経験を経て2020年7月より現職。
本田宗一 取締役執行役員管理本部長 1990年入社。管理本部長、人事担当部長などを経て2018年2月より現職。神港有機化学工業取締役を兼務。
小笠原元見 取締役執行役員事業本部長兼海外事業部長 1988年入社。化学品部長などを経て2021年12月より現職。光碩(上海)化工貿易有限公司董事長、韓国大阪有機化学工業代表理事を兼務。
渡辺哲也 取締役執行役員経営企画本部長 1995年入社。執行役員経営企画本部長、品質保証室管掌を経て2025年12月より現職。


社外取締役は、濵中孝之(弁護士)、榎本直樹(元東京税関長)、吉田恭子(公認会計士)、高瀬朋子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化成品事業」、「電子材料事業」、「機能化学品事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 化成品事業


塗料、粘接着剤、インキ向けなどの特殊アクリル酸エステルおよびアクリル酸の製造販売を行っています。自動車や建築用途の塗料、コーティング材、エレクトロニクス分野のポリマー原料として使用されています。

収益は、主に塗料メーカーやインキメーカー等の顧客への製品販売による対価です。運営は、製造販売を同社が行い、中国および韓国の現地法人が販売を担当しています。多品種少量生産に対応可能なマルチパーパス生産設備を活用して事業展開しています。

(2) 電子材料事業


ディスプレイや半導体向けを中心とした電子材料の製造販売を行っています。アクリル酸エステルの光硬化性を活かした製品や、そこから誘導化した機能性ポリマー製品を電子材料原料として提供しています。

収益は、電子部品メーカーや材料メーカー等の顧客への製品販売による対価です。運営は同社が主体となり、液晶ディスプレイパネル加工用フォトレジスト材料や半導体用フォトレジスト原料などを製造販売しています。

(3) 機能化学品事業


化粧品向け原材料や機能材料等の製造販売を行っています。頭髪用機能性ポリマー製品、各種中間体原料、特殊溶剤としての機能材料などを関連産業分野へ提供しています。

収益は、化粧品メーカーや化学メーカー等の顧客への製品販売による対価です。運営は同社が化粧品材料や機能材料を担当し、連結子会社の神港有機化学工業が酢酸エステルや特殊溶剤等の製造販売を行っています。海外子会社も販売を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は変動しつつも増加傾向にあり、当期は過去最高水準となっています。利益面では、原材料価格等の影響を受けつつも、当期は大幅な増益を達成し、高い利益率を維持しています。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 350億円 322億円 289億円 327億円 363億円
経常利益 63億円 64億円 39億円 48億円 66億円
利益率(%) 17.9% 19.7% 13.4% 14.5% 18.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 45億円 43億円 29億円 37億円 66億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。増収効果に加え、生産効率の改善や製品構成の良化が利益率の向上に寄与していることが読み取れます。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 327億円 363億円
売上総利益 97億円 116億円
売上総利益率(%) 29.6% 31.9%
営業利益 46億円 62億円
営業利益率(%) 14.1% 17.1%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が19億円(構成比35%)、運搬費が7億円(同14%)を占めています。売上原価については、製造費用が中心となります。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。特に電子材料事業は半導体材料の回復により大幅な増収となっています。機能化学品事業も堅調に推移しました。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期)
化成品事業 125億円 133億円
電子材料事業 144億円 167億円
機能化学品事業 58億円 63億円
連結(合計) 327億円 363億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


キャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動によるキャッシュ・フローがプラス、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる「改善型」です。なお、当期の投資CFがプラスとなった主な要因は、設備投資の支出があったものの、サプライチェーン対策のための補助金収入(約31億円)があったことによるものです。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 86億円 71億円
投資CF -3億円 15億円
財務CF -31億円 -59億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.5%でプライム市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.0%で市場平均(製造業)を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「わたしたちは、一人ひとりの個性を大切にし、ユニークな機能を備えた材料を提供することにより、お客様と共に社会の発展に貢献します。」という経営理念を掲げています。優れた生産活動を通じて地域社会の秩序を守り、社会と産業界の進歩と発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「誠意・熱意、創意を醸成する風土づくり」を中期方針として掲げ、一人ひとりの個性を尊重し、全社員が生き生きと働ける環境づくりを目指しています。また、経営理念、経営ビジョン、行動指針からなる理念体系の下、目標と価値観を共有して行動することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2024年11月期から2030年11月期までの新中期経営計画「Progress & Development 2030(P&D 2030)」を推進しています。2030年度の目標として以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:500億円以上
* 連結営業利益:75億円以上
* 連結営業利益率:15%以上
* 戦略投資・事業投資:累積300億円以上
* ROE:12%以上
* ROIC:9%以上
* 配当性向:40%目安

(4) 成長戦略と重点施策


基本戦略として、最先端半導体材料の開発加速や周辺材料への展開による半導体事業の拡大、LCD用レジスト技術の非ディスプレイ用途への展開、親水性ポリマー技術の生体適合材料等への応用などを進めます。また、バイオマスアクリレート開発や非化石原料由来製品への挑戦など、環境配慮型製品の開発にも注力します。

海外戦略としては、中国、韓国、北米への販売会社設置や現地生産を含むチャネル戦略の強化を図ります。さらに、DX推進による生産性向上や人的資本経営の実行、サステナビリティへの取り組みを通じ、持続的な成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、会社と従業員を運命共同体と捉え、従業員を貴重な経営資本としています。「自らの役割を認識し責任をもって行動する人材」「個性を発揮し熱意と意欲を持ち続ける人材」「人格と能力を磨き互いに支えあえる人材」を期待する人材像とし、採用と育成の強化、ダイバーシティの促進、自律的なキャリア形成支援に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 41.3歳 17.4年 8,581,191円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.7%
男女賃金差異(正規雇用) 78.7%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※非正規雇用の男女賃金差異については、女性の該当者がいないため算出不可となっています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用比率(33%)、有給休暇消化率(64%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達および市況変動


原材料の供給元や生産委託先の災害、事故、倒産等により供給遅延や生産中断が発生する可能性があります。また、原油価格やナフサ価格の大幅な変動は業績に影響を与える可能性があります。これに対し、同社は複数購買によるリスク分散や、製品価格への連動、原価低減等の施策を進めています。

(2) 海外での事業活動


海外展開において、政治・経済情勢の悪化、法規制の変更、治安悪化等のカントリーリスクが存在します。これらが顕在化した場合、事業活動に支障が生じ業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は現地人材の育成や情報収集体制の整備、内部統制の強化によりリスクの最小化に努めています。

(3) 経済動向による需要変動


同社の製品は幅広い分野で使用されており、各業界の需要変動の影響を受けます。為替変動や市況悪化、安価な製品の流入等により製品価格が低下した場合、収益性が低下する可能性があります。同社は高機能・高付加価値製品の拡充により、需要変動の影響を受けにくい収益構造を目指しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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