※本記事は、三洋貿易株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三洋貿易ってどんな会社?
ゴム、化学品、自動車部品などを扱う「最適解」の提供を目指す複合型専門商社です。
■(1) 会社概要
1947年、旧三井物産の解体に伴い設立されました。1961年に米国現地法人を設立して海外展開を本格化させ、2004年にはコスモス商事を完全子会社化し事業領域を拡大しました。2012年の東証二部上場を経て、2013年に東証一部へ指定替えとなり、現在はプライム市場に上場しています。
現在の従業員数は連結747名、単体323名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は化学メーカーの東亞合成であり、同社とはファインケミカルセグメントにおいて取引関係があります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.29% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.81% |
| 東亞合成 | 5.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長兼社長執行役員は新谷正伸氏です。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 新谷 正伸 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 1982年同社入社。Sanyo Corporation of America社長、取締役兼執行役員事業本部長、経営戦略室長などを歴任し、2018年12月より現職。 |
| 平澤 光康 | 取締役兼執行役員 事業部門担当 | 1989年同社入社。産業資材事業部長、事業開発室長などを経て、2022年取締役兼執行役員就任。2025年10月より現職。 |
| 大谷 隆一 | 取締役兼執行役員 管理部門担当 | 1994年同社入社。経営戦略室長、コスモ・コンピューティングシステム代表取締役CFOなどを経て、2024年12月より現職。 |
| 難波 嘉己 | 取締役兼執行役員 事業部門担当・経営企画部長 | 三井物産入社後、Penske Automotive Group取締役などを経て2022年同社入社。経営企画部長を務め、2024年12月より現職。 |
社外取締役は、杉原弘隆(元ポケットカード副社長)、小河光生(クレイグ・コンサルティング代表取締役)、白井浩(元同社取締役兼執行役員)、長谷川麻子(公認会計士)、小林邦聡(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファインケミカル」「インダストリアル・プロダクツ」「サステナビリティ」「ライフサイエンス」および「その他」事業を展開しています。
■ファインケミカル
合成ゴム、合成樹脂、ゴム特殊薬品、天然ゴム、医療関連材料、塗料・インキ・プラスチックなどを取り扱っています。自動車、家電、情報機器などの幅広い産業分野の顧客に対し、高付加価値素材を提供しています。
収益は、主にこれらの商品の販売代金として顧客から得ています。運営は、主に同社、Sanyo Corporation of America、三洋物産貿易(上海)有限公司、Sanyo Trading Asiaなどの海外現地法人が行っています。
■インダストリアル・プロダクツ
自動車用関連用品・部品・機器、溶接関連資材、精密鋳造用副資材などを取り扱っています。特に自動車内装部材を中心としたモビリティ関連商品に強みを持ちます。
収益は、商品の販売代金として自動車部品メーカーや関連企業から得ています。運営は、主に同社、日本フリーマン、Sun Phoenix Mexicoなどのグループ会社が行っています。
■サステナビリティ
肥飼料関連機器、環境関連機器、バイオマス関連機器、地熱掘削機材、洋上風力発電関連機器などを取り扱っています。再生可能エネルギーや環境保全に関連する分野でのソリューションを提供しています。
収益は、機器や機材の販売、および関連する技術サービスの対価として顧客から得ています。運営は、主にコスモス商事、三洋機械工業、新東洋機械工業などが行っています。
■ライフサイエンス
農薬、各種工業薬品、食品添加物、医薬品原料、分析機器、理化学機器などを取り扱っています。医薬・化粧品・食品・ヘルスケア分野における製品や技術を提供しています。
収益は、商品の販売代金として製薬会社、食品メーカー、研究機関などから得ています。運営は、主に同社、ワイピーテック、三洋ライフマテリアル、日本ルフト、三洋テクノス、スクラム、KOTAIバイオテクノロジーズなどが行っています。
■その他
ソフトウェアのパッケージ開発、受託開発、業務系システム開発などを行っています。
収益は、システム開発やソフトウェア提供の対価として顧客から得ています。運営は、主にコスモ・コンピューティングシステムが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期増加を続けており、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では、経常利益率が第78期の6.1%をピークに第79期には5.2%へと低下しており、増収ながらも利益成長には足踏みが見られます。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 891億円 | 1,073億円 | 1,205億円 | 1,293億円 | 1,327億円 |
| 経常利益 | 62億円 | 62億円 | 71億円 | 79億円 | 69億円 |
| 利益率(%) | 6.9% | 5.8% | 5.9% | 6.1% | 5.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 35億円 | 35億円 | 33億円 | 37億円 | 44億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は増加していますが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。一方、営業利益率は低下しており、販管費の増加などの影響が見られます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,293億円 | 1,327億円 |
| 売上総利益 | 222億円 | 226億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.2% | 17.0% |
| 営業利益 | 71億円 | 64億円 |
| 営業利益率(%) | 5.5% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が61億円(構成比38%)、その他が38億円(同24%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の仕入等が主な内訳です。
■(3) セグメント収益
サステナビリティ事業が大幅な増収増益となり業績を牽引しました。一方、インダストリアル・プロダクツやライフサイエンス事業は利益面で苦戦し、ファインケミカル事業も減益となりました。全社的には増収減益の結果となっています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ファインケミカル | 428億円 | 424億円 | 27億円 | 24億円 | 5.7% |
| インダストリアル・プロダクツ | 369億円 | 368億円 | 34億円 | 27億円 | 7.3% |
| サステナビリティ | 98億円 | 135億円 | 12億円 | 19億円 | 13.9% |
| ライフサイエンス | 383億円 | 387億円 | 17億円 | 14億円 | 3.5% |
| その他 | 12億円 | 13億円 | -2億円 | -3億円 | -23.4% |
| 調整額 | 3億円 | - | -17億円 | -16億円 | - |
| 連結(合計) | 1,293億円 | 1,327億円 | 71億円 | 64億円 | 4.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「改善型」のキャッシュ・フロー状態にあります。本業で得た現金に加え、投資活動でも資金を回収しており、それらを借入金の返済や配当支払いなどの財務活動に充てています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 54億円 | 72億円 |
| 投資CF | -20億円 | 3億円 |
| 財務CF | -28億円 | -32億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均(プライム市場9.4%)とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.9%で市場平均(プライム非製造業24.2%)を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「堅実と進取の精神、自由闊達な社風の下、柔軟かつ迅速に最適解を提供し、国際社会の永続的な発展と従業員の幸福を共創する」をミッションとしています。また、「世の中の課題解決に貢献し、人と地球の笑顔をつくる」を目指すべきビジョン(あり姿)として掲げ、ステークホルダーの期待に応えることを目指しています。
■(2) 企業文化
コーポレートスローガン「Quest for Next」を掲げ、全社一丸となって事業展開を推進しています。また、行動指針として「誠実」「挑戦」「迅速」「変革」「利他」を定めており、自由闊達で挑戦を奨励する企業文化の醸成に努めています。従業員一人ひとりが能力を発揮できる環境を提供し、創造性や革新性を引き出すことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
長期経営計画「SANYO VISION 2028」を策定しています。2028年9月期の数値目標として以下を掲げています。
* ROE:10~12%
* 営業利益:90億円
* 営業利益率:5.1%以上
* 自己資本比率:50%以上維持
■(4) 成長戦略と重点施策
「SV2028」に基づき、「収益基盤の強化」と「企業体質の改善」に取り組んでいます。既存事業では技術力と顧客ニーズを融合させたハイブリッドアプローチを推進し、新規ビジネスでは市場分析に基づいた戦略的投資を行います。また、グローバル事業部制の深化による連結経営体制の強化や、DX推進、人的資本への投資も重点施策としています。
* 5年間で累計200~300億円を事業投資、DX投資、人的資本に投資
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「SV2028」において、人材育成を支援する「Sanyo Growth Style」、活躍できる環境を整備する「Sanyo Work Style」、信頼の基盤となる「Sanyo Governance Code」を「Sanyo人材3S」として定めています。「誠実な対応で常に挑戦し、最適解を提供できる自燃型人材」の育成を目指し、独自の教育機関「Sanyoアカデミー」の整備や多様な人材のキャリア開発支援を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 39.1歳 | 8.7年 | 10,204,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.6% |
| 男性育児休業取得率 | 69.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 62.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 41.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、選択式研修の年間延べ受講回数(443回)、エンゲージメント調査回答率(82.6%)、新卒総合職女性採用比率(22.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要市場の経済動向について
同社グループは広範な産業分野に商品を販売していますが、特に自動車、家電・情報機器関連向けの割合が大きくなっています。そのため、これらの業界の市況が悪化した場合には、グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 商品価格の変動について
取扱商品には需給バランスにより仕入価格が大きく変動するものが含まれています。販売価格の設定や適正在庫の管理に努めていますが、価格転嫁が十分にできない場合や、在庫価値が下落し評価損を計上する場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 競合のリスクについて
多岐にわたる商品を扱っており、国内外の企業と競合しています。競合相手の戦略変更や、新興国企業など価格競争力の強い新規参入があった場合、優位性を維持できず、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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