※本記事は、横浜冷凍株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 横浜冷凍ってどんな会社?
食品流通のエキスパートとして、冷蔵倉庫事業と食品販売事業を両輪に、グローバルなコールドチェーンを展開する企業です。
■(1) 会社概要
1948年に設立され、1962年に東京証券取引所市場第2部に上場、1991年には同市場第1部に指定されました。2011年にはタイに現地法人を設立するなど海外展開を加速させ、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。近年はベトナムでの事業拡大や国内物流センターの新設を推進しています。
連結従業員数は1,804名、単体では1,446名です。筆頭株主は株式会社松岡で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には証券会社が名を連ねており、国内外の機関投資家や事業会社が株主に含まれています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社松岡 | 10.00% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.58% |
| GOLDMAN,SACHS & CO.REG | 4.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性1名(監査役含む計16名)の計16名で構成され、女性役員比率は6.0%です。代表取締役社長は古瀬健児氏です。社外取締役比率は25.0%(4名/16名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 古瀬 健児 | 代表取締役社長 | 1986年入社。九州グループ統括部長、内部監査室長、取締役管理本部長などを経て、2023年12月より現職。 |
| 吉川 俊雄 | 取締役会長 | 1968年入社。取締役札幌営業所長、代表取締役社長などを歴任。2023年12月より現職。 |
| 越智 孝次 | 常務取締役内部監査室長 | 1984年入社。管理本部長、販売事業本部長などを経て、2025年1月より現職。 |
| 吉川 尚孝 | 常務取締役事業総合企画本部長 兼 販売事業本部長 中期経営計画推進委員長 | 1998年入社。総務人事統括部長、投融資部長、海外事業部長などを経て、2023年12月より現職。 |
| 岡田 洋 | 取締役販売戦略管理部長 | 1996年入社。京浜ブロック長、海外戦略室長、販売推進事業部統括部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 池田 浩人 | 取締役販売事業本部副本部長 | 1983年入社。関東ブロック長、国内産地販売グループ統括部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 星野 義明 | 取締役ダイヤモンド十勝(株)取締役副社長 | 1985年入社。総務部長、畜産事業部長などを経て、ダイヤモンド十勝(株)へ出向し、同社取締役副社長として現職。 |
| 吉田 郷 | 取締役管理本部長 兼 人事部長 兼 人材開発センター長 気候関連担当 中期経営計画推進副委員長 | 2019年第一生命保険入社。2022年同社入社。総務人事統括部長を経て、2025年1月より現職。 |
社外取締役は、酒井基次(元全国農業協同組合連合会監事監査事務局局長)、堀合洋祐(公認会計士堀合事務所代表)、本田光宏(元高松国税局総務部長)、坂本順子(六田・坂本法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「冷蔵倉庫事業」、「食品販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■冷蔵倉庫事業
水産品や農畜産品などの冷蔵・冷凍保管およびそれに付帯する事業を行っています。国内および海外(タイ、ベトナム)において、顧客から寄託された物品を低温環境下で保管・管理し、入出庫業務や配送手配などの物流サービスを提供しています。
収益源は、顧客である食品メーカーや商社等から受け取る保管料、荷役料、運送取扱料などです。運営は主に横浜冷凍、THAI YOKOREI CO.,LTD.、BEST COLD CHAIN CO.,LTD.、VIETNAM YOKOREI CO.,LTD.などが行っています。
■食品販売事業
水産品や農畜産品などの加工・販売、輸出入を行っています。世界各地からの食材調達力と目利き力を活かし、ノルウェー産サーモン等の水産品や、畜産品、農産品を市場や量販店、外食産業などに供給しています。
収益源は、顧客への商品販売代金です。また、一部取引では代理人として手数料収入を得る場合もあります。運営は主に横浜冷凍および関係会社が行っています。
■その他
不動産賃貸業などを展開しています。同社グループが保有する不動産資産の有効活用を図っています。
収益源は、テナントからの賃貸料収入などです。運営は主に横浜冷凍が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は1,100億円前後から1,250億円規模へと拡大傾向にあります。利益面では、2023年9月期に親会社株主に帰属する当期純損失を計上しましたが、翌期には黒字回復しています。2025年9月期は売上高が増加した一方で、経常利益および当期純利益は減少しました。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,098億円 | 1,108億円 | 1,256億円 | 1,223億円 | 1,256億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 50億円 | 41億円 | 48億円 | 37億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | 4.5% | 3.3% | 3.9% | 2.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 24億円 | 33億円 | -108億円 | 39億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益および経常利益は減少しました。特に経常利益の減少幅が大きく、収益性の低下が見られます。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,223億円 | 1,256億円 |
| 売上総利益 | 137億円 | 141億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.2% | 11.3% |
| 営業利益 | 46億円 | 42億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 3.4% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬給料手当等が21億円(構成比20.9%)、運賃が13億円(同13.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
冷蔵倉庫事業は在庫高水準が続き、保管料・荷役料ともに好調で増収増益となりました。一方、食品販売事業は売上高が微増したものの、運賃や保管料等のコスト増を吸収できず減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 冷蔵倉庫事業 | 351億円 | 377億円 | 72億円 | 74億円 | 19.7% |
| 食品販売事業 | 871億円 | 878億円 | 15億円 | 12億円 | 1.4% |
| その他 | 0.6億円 | 0.3億円 | 0.3億円 | 0.4億円 | 125.8% |
| 調整額 | -21億円 | -24億円 | -40億円 | -45億円 | - |
| 連結(合計) | 1,223億円 | 1,256億円 | 46億円 | 42億円 | 3.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
横浜冷凍のキャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローが堅調に推移し、事業活動を通じて安定的に資金を生み出していることを示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長に向けた設備投資等で資金流出が見られます。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入等により資金調達を行い、事業運営を支えています。これらの活動の結果、現金及び現金同等物は増加傾向にあります。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 135億円 | 111億円 |
| 投資CF | -179億円 | -167億円 |
| 財務CF | 36億円 | 56億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「会社は社会の公器であり、利益は奉仕の尺度である」という企業理念を掲げています。この理念のもと、「人」「もの」「地球」に優しい食品流通のエキスパートとして、すべてのステークホルダーの信頼と期待に応えられる経営を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「ヨコレイサステナビリティビジョン2030」において、「明るい食の未来へ」を掲げています。地球環境への配慮と持続的な企業成長を両立させることを重視し、食品流通を通じて持続可能な社会への貢献を目指す姿勢が根底にあります。
■(3) 経営計画・目標
2026年を最終年度とする新・中期経営計画(第Ⅱ期)「繋ぐ力」を策定し、取り組んでいます。次期の業績見通しとして以下の目標数値を掲げています。
* 売上高:1,180億円
* 営業利益:48億円
* 経常利益:46億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:30億円
■(4) 成長戦略と重点施策
冷蔵倉庫事業では、高品質な物流で課題を解消し「スマートコールドサービス」を提供することを目指し、環境配慮型センターの展開や海外展開を推進します。食品販売事業では、グローバルな生産者ネットワークと目利き力を活かし、収益性向上や独自商品の拡大を図ります。また、生産性を向上させ事業成長を加速させることを経営基盤の方針としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員の成長を企業の発展の原動力と捉え、職務に応じた能力開発や実務研修、自己啓発支援を通じて人材育成を推進しています。また、多様な人材が個性を発揮できる環境づくりや、ワーク・ライフ・バランスの支援、労働安全衛生の確保、健康経営の推進に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 36.6歳 | 12.2年 | 5,973,753円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.7% |
| 男性育児休業取得率 | 51.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 63.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 51.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気候変動(地球温暖化)のリスク
温暖化による冷蔵倉庫の動力費増加や、自然環境の変化による食品販売事業の調達・供給への影響が懸念されます。同社はTCFD提言への賛同を行い、省エネや再生可能エネルギーの活用、自然冷媒への移行などを通じて、2030年までに温室効果ガス排出量削減などの目標を掲げ、対策を進めています。
■(2) 自然災害のリスク
大規模な台風、豪雨、地震などにより、冷蔵倉庫施設への被害や物流機能の停止、水産物等の調達減少が発生し、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、災害BCPの策定や危機管理体制の整備、災害に強い冷蔵倉庫の建設などの対策を講じています。
■(3) 経済状況及び事業環境に関するリスク
原材料価格やエネルギーコストの高騰、消費者の節約志向、人口減少による労働力不足などが経営環境に影響を及ぼしています。食品販売事業における調達価格の変動や、冷蔵倉庫事業における保管需要の変化などが業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 商品の価格変動に関するリスク
海外の人口増加や食生活の変化による資源獲得競争などで、調達・販売価格が大きく変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。調達先の分散化や養殖事業の強化、在庫の適正化を通じてリスク分散を図っています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。