※本記事は、株式会社オハラ の有価証券報告書(第117期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年01月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
オハラ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
1. オハラってどんな会社?
オハラは、カメラや半導体露光装置などに使用される光学ガラスおよび特殊ガラス素材の開発・製造・販売を行う専業メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1935年に小原光学硝子製造所として創立され、光学ガラスの生産を開始しました。1985年に現在の商号に変更し、2005年に東京証券取引所市場第一部に株式を上場しました。米国、台湾、ドイツ、マレーシア、香港、中国などに現地法人を設立し、グローバルに事業を展開しています。2022年には東証の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結1,421名、単体468名です。主要株主には、取引関係のある事業会社が名を連ねています。筆頭株主は時計・精密機器メーカーを傘下に持つセイコーグループ株式会社、第2位は同社の主要顧客でもあるキヤノン株式会社、第3位は京橋起業株式会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| セイコーグループ株式会社 | 19.30% |
| キヤノン株式会社 | 19.30% |
| 京橋起業株式会社 | 19.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長執行役員は齋藤弘和氏が務めています。取締役会の半数は社外取締役で構成されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 齋藤 弘和 | 代表取締役社長執行役員経営全般 | 1982年入社。経営企画室長、香港・中国・台湾・マレーシア等の海外子会社代表を経て、2009年代表取締役社長に就任。2016年より現職。 |
| 中島 隆 | 取締役専務執行役員コーポレート統轄 | 1997年入社。経理部長、取締役管理本部経理部長、常務取締役管理センター長などを歴任。2019年より現職。 |
| 後藤 直雪 | 取締役専務執行役員生産・技術統轄 | 1983年入社。製造技術部長、研究開発部長、特殊品事業部長などを歴任。台灣小原光學材料股份有限公司董事長を兼務し、2023年より現職。 |
| 鈴木 雅智 | 取締役常務執行役員事業統轄 兼事業推進センター長 | 2001年入社。経営企画部長、戦略企画室長、企画財務センター長などを歴任。2025年7月より現職。 |
社外取締役は、市村誠(セイコーフューチャークリエーション社長)、戸倉剛(キヤノン副社長執行役員)、軒名彰(北洋証券代表取締役会長)、牧野友香子(原後綜合法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「光事業」、「エレクトロニクス事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 光事業
このセグメントでは、一眼レフカメラやミラーレスカメラ、プロジェクター、監視カメラ、車載カメラなどの光学機器に使用される光学ガラス素材や、光学機器用レンズ材(プレス品、ブロック品など)の製造・販売を行っています。主な顧客は光学機器メーカーです。
収益は、顧客であるカメラメーカーや光学機器メーカーへの製品販売によって得ています。運営は、オハラおよび台湾小原光学股份有限公司、小原光学(中山)有限公司などの海外子会社が行っています。
■(2) エレクトロニクス事業
このセグメントでは、半導体露光装置やFPD露光装置などのエレクトロニクス製造装置に使用される高均質光学ガラス、極低膨張ガラスセラミックス、石英ガラスなどの製造・販売を行っています。また、ハードディスク用ガラス基板素材なども取り扱っています。
収益は、半導体製造装置メーカーや電子部品メーカーへの製品販売によって得ています。運営は、オハラおよび株式会社オハラ・クオーツ、株式会社オーピーシー、台湾小原光学材料股份有限公司などのグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年10月期に大きく伸長した後、280億円前後で推移しています。経常利益は2022年10月期をピークに減少傾向にありますが、毎期黒字を確保しています。当期純利益については変動があるものの、安定して利益を計上しています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 235億円 | 283億円 | 281億円 | 279億円 | 289億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 37億円 | 26億円 | 26億円 | 23億円 |
| 利益率(%) | 7.4% | 13.0% | 9.3% | 9.3% | 7.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 4億円 | 19億円 | 21億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は増加しましたが、売上原価率の上昇により売上総利益は減少しました。販売費及び一般管理費も微増しており、営業利益は減少しています。売上高の増加に対して利益面での課題が見られる構造となっています。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 279億円 | 289億円 |
| 売上総利益 | 88億円 | 85億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.5% | 29.6% |
| 営業利益 | 22億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 7.8% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が17億円(構成比25%)、研究開発費が7億円(同11%)を占めています。売上原価は203億円で、売上高に対する比率は70.4%です。
■(3) セグメント収益
光事業は、カメラ市場の需要回復などにより増収となりましたが、利益面では営業損失が継続しています。エレクトロニクス事業は、半導体関連の在庫調整の影響などで減収減益となりましたが、依然として全社の利益を支える柱となっています。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) | 利益(2024年10月期) | 利益(2025年10月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 光事業 | 139億円 | 153億円 | -8億円 | -8億円 | -5.2% |
| エレクトロニクス事業 | 140億円 | 136億円 | 30億円 | 26億円 | 19.1% |
| 連結(合計) | 279億円 | 289億円 | 22億円 | 18億円 | 6.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
オハラは、事業活動で得た資金を設備投資や配当金の支払いに充てています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利益は計上したものの、棚卸資産の増加が主な要因となり、前期比で減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が主な要因となり、使用額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いなどが主な要因となり、使用額は前期比で減少しました。これらの結果、期末の現金及び現金同等物は減少しました。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 27億円 | 10億円 |
| 投資CF | -22億円 | -9億円 |
| 財務CF | -12億円 | -9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
オハラグループは、「常に個性的な新しい価値を創造して、強い企業を構築し、オハラグループ全員の幸福と社会の繁栄に貢献します」という経営理念を掲げています。この理念のもと、中長期的な視点で社会課題に向き合い、企業価値の向上に取り組むことを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念に基づき、「オハラバリュー」を定めています。これはコーポレート・メッセージの価値観・姿勢を表現したもので、「ひかり・ひからせる人材」を、会社の持続的成長と社会発展に貢献する人材として定義しています。社員一人ひとりが主体者意識を持ち、価値創造を行うことを重視する文化です。
■(3) 経営計画・目標
創業100周年となる2035年に向けた「長期ビジョン2035」を掲げ、ROE8.0%以上を目指しています。また、中期経営計画(2024年10月期~2026年10月期)では、経営基盤の強化などを進めています。
* 売上高:320億円以上(2026年10月期)
* 営業利益:37億円以上(同上)
* ROE:6.5%以上(同上)
■(4) 成長戦略と重点施策
光事業では、生産拠点の再編による収益性改善と、成長分野であるXR(クロスリアリティ)市場向けの新製品開発を進めます。エレクトロニクス事業では、AI半導体需要等に対応するため生産設備を増強し、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスや電子基板用低誘電ガラスなどの新規事業の拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「ひかり・ひからせる人材」を価値創造の源泉と位置づけ、経営人材や専門職人材の育成を加速させています。主体性と挑戦を促すため、新人事制度や表彰制度を導入し、リスキリング支援や社内公募制度も推進しています。また、ダイバーシティ推進として女性や外国人、中途採用者の活躍支援を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 42.8歳 | 15.6年 | 5,958,761円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.6% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 50.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リスキリング支援ツールの受講時間(1人当たり年間約6.5時間)、職場経験数(1人当たり2.32職場)、従業員エンゲージメントスコア(3.34)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外での事業展開に関するリスク
アジア地域を中心とした海外事業展開において、各国の政治・軍事・社会的な緊張の高まりや法規制強化などの地政学的リスクにより、サプライチェーンの混乱やビジネス機会の喪失が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料及び資材の高騰・調達途絶に関するリスク
特定のメーカーや産地に限られる原材料を使用しており、調達難による生産支障のリスクがあります。また、市況変動による価格高騰が業績に影響を与える可能性があります。レアアース原料については、サプライヤーとの連携強化や代替材料の研究を進めています。
■(3) 人材の確保・育成に関するリスク
持続的な成長に必要な人材が十分に確保・育成できない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。このため、社員が挑戦し成長できる環境整備や教育プログラムの実施を通じて、優秀な人材の確保と育成に取り組んでいます。
■(4) 特定市場への依存リスク
光事業はデジタルカメラ市場への依存度が高く、市場縮小や競争激化が売上・利益率の低下を招く可能性があります。これに対し、高効率生産体制の構築や、新規事業の探索・構造改革による高収益事業の創出に努めています。



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