正栄食品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

正栄食品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の食品専門商社兼メーカーです。製菓・製パン業界向け原材料の輸入・加工・販売や、ナッツ・ドライフルーツ等のリテール商品、菓子類の製造販売を展開しています。直近の連結業績は売上高1249億円(前期比8.4%増)、経常利益50億円(前期比0.8%増)と増収増益でした。


※本記事は、正栄食品工業株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 正栄食品工業ってどんな会社?


製菓・製パン向け食品原材料の輸入・加工・販売を主力とし、ナッツやドライフルーツ、菓子類の製造販売も行う食品専門商社兼メーカーです。

(1) 会社概要


1947年に設立され、乳製品の卸販売を開始しました。1985年には米国に現地法人を設立し、農産物の輸出入や農園経営に着手しています。1986年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、2002年に中国・青島に現地法人を設立するなど海外展開を進め、2017年には東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)へ指定替えしています。

連結従業員数は1483名、単体では362名です。筆頭株主は正栄プラザで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は本多興産となっています。

氏名 持株比率
正栄プラザ 9.70%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.10%
本多興産 5.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名、計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長は本多秀光氏です。社外取締役比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
本 多 秀 光 代表取締役社長 1983年入社。商品部長、中国・香港現地法人の董事長、専務取締役、副社長を経て2024年1月より現職。
本 多 市 郎 代表取締役会長 1975年入社。取締役関西支社長、常務、専務事業統轄本部長を経て1998年社長に就任。2024年1月より現職。
中 島 豊 海 専務取締役生産本部長 1978年入社。関西支店長、食品営業部長、正栄デリシィ社長、営業本部長などを歴任。2018年4月より現職。
藤 雄 博 周 専務取締役管理本部長 1978年入社。経理部長、総務部長などを歴任し、2010年常務管理本部長に就任。2022年11月より現職。
加 納 一 徳 常務取締役経営企画部長兼情報システム部長 1984年東京銀行入行。三菱UFJ銀行イスタンブール駐在員事務所所長などを経て2014年入社。2025年11月より現職。
坂 口   健 常務取締役人事総務部長 1986年入社。九州支店次長、原料一部長、営業本部副本部長、営業本部長を経て2024年1月より現職。
本 多 泰 隆 常務取締役営業本部長 2008年入社。九州支店長、原料一部長、取締役営業統括部管掌などを経て2024年1月より現職。


社外取締役は、甲斐隆(元三井物産九州食料部長)、橋詰豪(元みずほ証券執行役員)、田内直子(元味の素監査部専任部長)、豊田優美子(元電通経営企画局IR部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「米国」、「中国」の各報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本セグメント


国内外から商品や加工用原料を仕入れ、製菓・製パン業界等へ販売するほか、菓子類やナッツ・ドライフルーツ等のリテール商品の製造・販売を行っています。また、乳製品や製菓原材料の加工・製造、米穀粉類の委託販売、保険代理店業務なども展開しています。

収益は顧客への商品販売等から得ています。運営は正栄食品工業が販売を担い、製造は正栄デリシィ、ロビニア、京まろん、筑波乳業などの子会社が行っています。また、近藤製粉が米穀粉類の委託販売を、成光商事が保険代理店業務を行っています。

(2) 米国セグメント


米国において乾果実類を仕入れ、日本および中国グループ会社へ輸出を行っています。また、クルミやプルーンの仕入・加工・販売に加え、プルーン・クルミ・アーモンドの農園経営、乾果実類の輸入販売も手掛けています。

収益は農産物や加工品の販売から得ています。運営は主にShoEi Foods (U.S.A.), Inc.が行っており、現地の農園経営から加工、販売までを一貫して手掛けています。

(3) 中国セグメント


中国での生産拠点として製菓原材料類、乾果実類の加工・製造を行い、日本への輸出や中国・香港内での販売を行っています。また、海外から乾果実類を仕入れ、中国および香港での販売も行っています。

収益は加工食品や原材料の販売から得ています。運営は、青島秀愛食品有限公司や延吉秀愛食品有限公司が生産を行い、上海秀愛国際貿易有限公司や香港正栄国際貿易有限公司が販売を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移は以下の通りです。売上高は増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益率は概ね4%前後で推移しています。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 996億円 1,032億円 1,096億円 1,152億円 1,249億円
経常利益 43億円 41億円 41億円 50億円 50億円
利益率(%) 4.3% 4.0% 3.8% 4.3% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 28億円 28億円 32億円 30億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成は以下の通りです。売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。営業利益率も同水準を維持しており、安定した収益性を保っています。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 1,152億円 1,249億円
売上総利益 186億円 196億円
売上総利益率(%) 16.2% 15.7%
営業利益 48億円 49億円
営業利益率(%) 4.2% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が36億円(構成比25%)、荷造運搬費が34億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントが売上の大部分を占めており、原料価格上昇に対応した価格転嫁等により増収となりました。米国セグメントは販売量減少があるものの価格上昇により増収、中国セグメントも国内販売の増加により増収となっています。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期)
日本 1,014億円 1,084億円
米国 63億円 65億円
中国 75億円 100億円
連結(合計) 1,152億円 1,249億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

正栄食品工業のキャッシュ・フローの状況について解説します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、利益の計上や棚卸資産の増加などにより、資金の使用となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得により、資金の使用となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加などにより、資金の獲得となりました。

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF 31億円 -6億円
投資CF -26億円 -19億円
財務CF -21億円 26億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、顧客に常に国内および海外から厳選された安全・安心な食品を提供することで、新たな食文化を創造し、社会に貢献することを目指しています。高品質な原料の安定調達、加工機能による付加価値の向上、顧客ニーズへの対応力強化の三つの機能を融合・追求することを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社グループは、「経営理念」と「正栄食品工業グループ 行動規範」に基づく企業活動を通じて、ステークホルダーとの持続的成長と持続可能な社会・環境の実現に貢献することを目指しています。公正で適正な取引を前提に、人権・労働環境・環境負荷などの課題に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


経営指標として、売上高よりも売上総利益や営業利益の増加を主要な経営目標としています。また、設備、DX、人材等への積極的な投資により企業価値の持続的な向上を目指し、資本コストを十分に上回るROE(株主資本利益率)を確保し、中長期的にROE8%の達成を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


食品専門商社としては、既存得意先との取り組み強化や新商品開発、海外市場開拓、産地リスク分散を進めます。食品加工メーカーとしては、成長市場向け自社加工品の育成や生産能力増強、合理化推進を行います。また、DX推進、人的資本経営の強化、物流課題への対応、ガバナンス強化等を経営基盤の強化策として掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員一人一人の人権を尊重し、個性を活かして生き生きと働き成果を高めることが企業成長の原動力であると考えています。多様な人材を大切にし、人事面での公正な評価と適所への登用を徹底することで、女性・外国人・中途採用者等が活躍することを促進し、ダイバーシティ&インクルージョンを実現する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 39.9歳 13.1年 6,669,343円


※平均年間給与には、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.6%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.3%
男女賃金差異(正規) 70.3%
男女賃金差異(非正規) 39.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性課長補佐職の割合(32.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品の安全性について


国内外からの調達や自社工場での製造において、品質管理の高度化や安全性確保に努めていますが、予見しえない問題や不測の事故発生等により、大規模な商品回収や製造物賠償責任が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 在庫について


多品種の食品原材料や商品、特に輸入原材料等の在庫を維持しており、在庫管理に努めていますが、販売見込みと実績の乖離による在庫廃棄や大きな価格変動が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 気候変動による食品原材料や商品の安定調達と価格高騰について


国内外から調達する原材料等は、自然災害や気候変動等による凶作で品質・数量が確保できないリスクや、需給変動・為替変動により仕入原価等が影響を受ける可能性があります。想定を超える変動が生じた場合、品質低下や物量不足により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 事業のグローバル化による影響について


海外からの調達や海外での生産・販売事業を行っているため、戦争、テロ、政治・社会変化、法規制の変更等、予期せぬ事象が生じた場合や海外グループ会社へのガバナンスに問題が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。