ケア21 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケア21 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の総合福祉企業です。訪問介護や有料老人ホームなどの介護事業を中心に、保育、障がい者支援、教育事業等を展開しています。直近の業績は、売上高482億円(前期比6.1%増)、営業利益、経常利益ともに前期の赤字から黒字転換を果たし、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ケア21 の有価証券報告書(第32期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ケア21ってどんな会社?


訪問介護からスタートし、有料老人ホームなどの施設介護、保育、教育へと事業領域を広げる総合福祉企業です。

(1) 会社概要


1993年に学習塾経営として設立され、2000年に訪問介護事業を開始しました。2003年には大証ヘラクレス(現・東証スタンダード)へ上場を果たし、2005年より有料老人ホーム事業に参入しています。近年では、2020年にベトナム現地法人を設立するなど、海外展開にも取り組んでいます。

連結従業員数は6,319名、単体従業員数は5,472名です。筆頭株主は会長の依田平氏が代表を務める資産管理会社(浅科依田)で、第2位は個人株主、第3位は業務提携関係にある不動産・建設大手企業です。

氏名 持株比率
浅科依田 22.32%
吉田 嘉明 15.25%
スターツコーポレーション 10.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は依田雅氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
依田 雅 代表取締役社長 2003年学校法人未来学園入職。2012年同社入社。取締役副社長等を経て2020年6月より現職。
依田 平 代表取締役会長 1993年同社代表取締役社長。2020年6月より現職。学校法人未来学園理事長等を兼任。
端山勝博 取締役福祉事業本部長 2002年同社入社。西日本福祉事業本部長を経て2025年5月より現職。
山田耕嗣 取締役業務統括本部長 2014年同社入社。財務経理部長、経営企画部長等を歴任し、2025年1月より現職。


社外取締役は、深貝亨(行政書士)、手代木啓(弁護士・NY州弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「在宅系介護事業」「施設系介護事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 在宅系介護事業


利用者の自宅を訪問して行う訪問介護や、ケアプランを作成する居宅介護支援、デイサービスなどを提供しています。高齢者の在宅生活を支えるサービスが中心で、24時間365日体制での対応も行っています。

主な収益源は、介護保険法に基づく介護報酬および利用者からの自己負担金です。運営は主にケア21が行っています。

(2) 施設系介護事業


特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム)や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)を運営しています。入浴・排泄・食事等の介護や機能訓練、日常生活上の世話を入居者に対して提供しています。

収益は、介護保険に基づくサービス対価のほか、入居者から受け取る家賃や食費等の利用料からなります。運営は主にケア21が行っています。

(3) その他


福祉用具の販売・貸与、住宅改修、認可保育所の運営、障がい者就労支援、訪問看護、給食事業、介護人材教育などを展開しています。また、特例子会社による軽作業請負なども含みます。

収益源は、福祉用具貸与料、保育委託費、障害福祉サービス費、給食提供による売上など多岐にわたります。運営はケア21のほか、サポート21、EE21、美味しい料理、ケア21メディカルなどの子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、前期に一時的な赤字を計上しましたが、当期は黒字回復を果たしました。利益率は低水準ながらも改善傾向にあります。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 364億円 384億円 411億円 454億円 482億円
経常利益 17億円 12億円 2.0億円 -2.4億円 5.4億円
利益率(%) 4.6% 3.0% 0.5% -0.5% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 7.7億円 3.1億円 -0.2億円 1.9億円 3.1億円

(2) 損益計算書


売上高の伸長に加え、売上総利益が増加しました。前期に計上された営業損失から、当期は営業黒字へと転換しており、収益性が改善しています。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 454億円 482億円
売上総利益 97億円 111億円
売上総利益率(%) 21.3% 23.1%
営業利益 -4.6億円 7.8億円
営業利益率(%) -1.0% 1.6%

(3) セグメント収益


全てのセグメントで増収となりました。特に在宅系介護事業と施設系介護事業において利益が大きく伸長し、連結業績の黒字化を牽引しました。施設系では入居率の改善やコスト管理が奏功しています。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期) 利益(2024年10月期) 利益(2025年10月期) 利益率
在宅系介護事業 149億円 150億円 26億円 31億円 20.8%
施設系介護事業 236億円 256億円 4億円 17億円 6.5%
その他 69億円 75億円 8億円 8億円 10.1%
調整額 - - -41億円 -50億円 -
連結(合計) 454億円 482億円 -2.4億円 5.4億円 1.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、新規開設に係る設備資金や人件費を主な資金需要としています。人件費は自己資金で、設備資金は金融機関からの借入金で賄い、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業運営を通じて生み出される資金の流れを示します。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資などによる資金の増減を表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済などによる資金の動きを示しています。

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF 7.1億円 22億円
投資CF -10億円 1.4億円
財務CF 8億円 -12億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「100年続くいい会社」となるべく、9つの経営理念を掲げています。最大ではなく「最高のサービスの提供」、および「人間の尊厳を尊重し、ご利用者本位の真心と優しさのこもったサービスの提供」を目標とし、利用者から最も支持され信頼される企業となることを目指しています。福祉理念と市場原理の融合を図り、継続的に企業価値を高めていく方針です。

(2) 企業文化


「現場第一主義」に根ざし、「徹底討論・徹底和解」を行う文化を重視しています。「人を大事にし、人を育てる」ために、「常に考え、変わり続ける」企業であり続けることを掲げており、すべてのステークホルダーの信頼と期待に応えるため、従業員の声を聞き、より良い仕組みや体制を構築する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


長期的・継続的な企業価値の向上を目指し、売上高伸長率、売上高経常利益率、ROE(自己資本利益率)を主要な経営指標として位置づけています。売上高伸長率については新規出店数に沿った着実な成長を、売上高経常利益率およびROEについては前年数値を継続的に上回ることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


人材の確保と育成を最重要課題とし、外国人技能実習生や留学生の受け入れ拡大など採用手段を多様化します。また、ICT活用による業務効率化や、緻密な市場分析に基づく新規出店、不採算事業所の統廃合を進めます。海外展開ではベトナム等での事業基盤構築を図り、総合福祉企業としての地位確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「インクルーシブカンパニー(多様な人財が活躍できる企業)」を掲げ、国籍や年齢、雇用形態に関わらず活躍できる環境整備を進めています。定年制度の撤廃やパートタイマーの無期雇用化に加え、独自の評価制度「チャレンジキャリア制度」や「技能段位制度」を通じて、キャリア形成支援とサービス品質の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 46.6歳 4.3年 4,050,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 63.2%
男性育児休業取得率 43.2%
男女賃金差異(全労働者) 96.3%
男女賃金差異(正規) 98.3%
男女賃金差異(非正規) 98.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 介護保険制度の改定リスク


主要事業である介護サービスは、介護保険法等の規制を受け、3年ごとの介護報酬改定の影響を直接的に受けます。報酬引き下げ等の不利な改正が行われた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は介護周辺事業等の新規事業へ参入し、リスク分散を図っています。

(2) 人材確保の困難化


要介護認定者数の増加に伴い、有資格者や優秀な介護人材の不足が恒常化しています。計画通りに人員を確保できない場合、サービス提供体制に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。同社は雇用条件の改善や外国人材の活用等で対応を進めています。

(3) 有利子負債への依存


事業拡大に伴う施設開設等のため、金融機関からの借入やリース契約を活用しており、有利子負債比率が高い水準にあります。金利上昇や資金調達環境の変化が生じた場合、支払利息の増加や資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。