※本記事は、株式会社CINC の有価証券報告書(2025年10月期、2024年11月1日 ~ 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
CINCは、ビッグデータとAI・機械学習技術を活用し、顧客のマーケティング課題をデータドリブンに解決し、ビジネス成果の創出を支援しています。マーケティング用調査・分析・運用ツール「Keywordmap」を提供するソリューション事業と、DXコンサルティングを行うアナリティクス事業を主軸としています。
同社の単体従業員数は105名、連結従業員数は114名です。セグメントはソリューション事業、アナリティクス事業、M&A仲介事業の3つです。
主な国内グループ会社は、CINC Capital(M&A仲介事業)などです。
CINCは、2024年8月16日の取締役会決議に基づき、新設分割方式による会社分割を実施し、同年11月1日付で株式会社CINC Capitalを設立しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
CINCは、ソリューション事業やアナリティクス事業を展開する企業です。同社グループは、人的資本経営の重要性を認識し、人材の育成と定着、多様な人材の確保に注力しています。柔軟な働き方や福利厚生の拡充を通じて、従業員が健康でモチベーション高く働ける環境づくりを進めているようです。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
CINCでは、従業員の平均年齢が30代半ばであり、平均勤続年数は3年程度となっています。このことから、比較的若い世代の従業員が多く活躍しており、活発な人材の入れ替わりがある傾向がうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,911,000円 |
| 平均勤続年数 | 3.3年 |
| 平均年齢 | 35.3歳 |
| 単体従業員数 | 105人 |
| 連結従業員数 | 114人 |
| 単体のグループ内比率 | 92.1% |
退職給付制度に関する記載はありません。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
CINCグループは、人的資本経営を重視しており、中長期的な企業価値向上には人材の育成と定着、そして多様な人材の確保が不可欠であると考えています。この方針に基づき、人材の多様性の確保を含む育成と社内環境整備に積極的に取り組んでいます。
具体的には、人材育成においては、定期的な役職者向けの階層別研修を通じて、従業員のモチベーション向上と能力開発を支援しています。また、社内環境整備としては、テレワーク勤務やフレックスタイム制度を導入し、柔軟な働き方を可能にしています。さらに、各種福利厚生制度の拡充にも力を入れ、多様な人材が健康で、高いモチベーションとやりがいを持って働ける環境づくりを進めています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
連結子会社は法定開示の公表義務対象外のため、提出会社単体のデータを示します。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 13.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 71.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 85.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 172.3% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
CINCグループは、ビッグデータとAI・機械学習技術を駆使し、顧客のマーケティング課題をデータドリブンに解決することで、ビジネス成果の創出を支援しています。主にマーケティング支援ツールとDXコンサルティングを提供し、企業のデジタルマーケティング活動を包括的にサポートしています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、株式会社CINCと連結子会社である株式会社CINC Capitalの計2社で構成されています。ビッグデータとAI・機械学習技術を核としたマーケティング支援を主軸としており、収益モデルは主に月額定額制のサブスクリプション型サービスが中心です。
ソリューション事業
ソリューション事業では、マーケティング用調査・分析・運用ツール「Keywordmap」の開発・提供を行っています。「Keywordmap」は、同社が保有する日本語キーワードのビッグデータに対し、自然言語処理やAI技術を用いた解析・分析を行い、マーケティングに活用可能なデータとして提供するプロダクトです。AI検索最適化(GEO/LLMO)への対応を強化しており、「AI Overviews出現レポート機能」や「AIリライト機能」といった新機能の実装も進めています。収益は、月額定額制のサブスクリプション型の料金体系から得ています。
アナリティクス事業
アナリティクス事業では、「Keywordmap」や社外のプロ人材を活用し、クライアントのマーケティング活動の利益最大化を支援するDXコンサルティングを提供しています。同社のデータアナリストがビッグデータを中心に多量かつ多様なデータを定量的・客観的に調査・分析し、クライアントのデジタルマーケティングの戦略立案・施策実行・効果測定までを統合的にサポートしています。2025年6月からは、生成AI経由での集客・購買を最大化する「AI検索最適化(GEO/LLMO)コンサルティングサービス」の提供も開始しました。収益は、原則として初期調査費用と月額定額制のサブスクリプション型の料金体系から得ています。
M&A仲介事業
M&A仲介事業は、株式会社CINC Capitalが運営しています。マーケティングテクノロジーを活用し、主に中堅・中小企業をメインターゲットとして、事業承継ニーズや事業再編、企業価値向上を目的とした譲渡ニーズに対してM&Aの仲介サービスを提供しています。同社グループの強みであるビッグデータ収集と活用を活かし、独自システム「CAMM DB」を開発してマッチング業務の効率化を図っています。当連結会計年度においては、この事業からの売上高は計上されていません。
| セグメント | 売上高(2024年10月期) | 売上高(2025年10月期) |
|---|---|---|
| アナリティクス事業 | - | 10.6億円 |
| ソリューション事業 | - | 7.6億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
CINCグループは当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、過去の業績推移は記載されていません。当連結会計年度の売上高は18.2億円を計上しましたが、営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失となりました。
利益面では、ソリューション事業は営業利益を確保したものの、アナリティクス事業における新規案件獲得の鈍化に加え、M&A仲介事業における広告宣伝費や人材投資が上回ったことが損失の主な要因です。営業活動によるキャッシュ・フローも使用超過となっています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | - | 18.2億円 |
| 経常利益 | - | - | - | - | △1.1億円 |
| 経常利益率 | - | - | - | - | △5.9% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | - | - | - | - | △1.5億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | - | - | - | - | △49.93 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
CINCグループの当連結会計年度における従業員1人あたり売上高は16.0百万円となっています。また、従業員1人あたり営業利益は△1.0百万円となりました。
連結財務諸表の作成が当連結会計年度からであるため、前期との比較はできません。営業損失を計上していることから、従業員1人あたりの営業利益も損失を示しており、組織全体の収益性向上が今後の課題であると言えます。
| 指標 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | - | 16.0百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | - | △1.0百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループは、事業拡大に向けた先行投資を行っており、財務状況にはその影響が見られます。現在の資金の流れから、今後の成長に向けた取り組みの状況を把握することができます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの自己資本比率はプライム市場の非製造業平均と比較して高い水準を示しており、財務基盤の厚みがうかがえます。一方、ROE(自己資本利益率)はプライム市場平均を下回っています。手元資金である現金及び預金は前期から減少しており、同社グループの事業運営における資金の状況と、収益性への影響を示しています。
| 指標 | 2024年10月期(前期) | 2025年10月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 15.1億円 | 10.6億円 |
| 自己資本比率 | - | 76.5% |
| ROE(自己資本利益率) | - | -14.5% |
| 現金及び預金 | 13.5億円 | 8.5億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュフローはマイナスとなっています。これは主に税金等調整前当期純損失や未払金の減少によるものです。投資活動によるキャッシュフローもマイナスとなっており、無形固定資産の取得や敷金及び保証金の差入に資金を使用しています。財務活動によるキャッシュフローはマイナスであり、自己株式の取得や長期借入金の返済に資金を充当しています。これらの結果、フリーキャッシュフローはマイナスとなっています。本業で資金を創出できていない状況であり、事業拡大に向けた先行投資を行っている一方で、収益化が追いついていないことがうかがえます。今後の収益改善が、雇用や給与の安定性に影響を与える可能性があります。
| 項目 | 2024年10月期(前期) | 2025年10月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | - | △1.4億円 |
| 投資CF | - | △0.4億円 |
| 財務CF | - | △3.2億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | - | △1.8億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、デジタルマーケティング市場における競合リスクを認識しています。新興企業の参入や開発の遅れ、既存マーケティング手法の劣化が経営成績に影響を与える可能性があります。また、ビッグデータ活用技術やAI技術分野の急速な技術革新もリスクとして挙げられています。競合他社の代替サービス登場や予期しない技術の進歩により、同社グループのサービスの優位性が保てなくなる可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、インターネット業界の急速な技術進歩と環境変化に対応できる人材の確保を重要な課題としています。優秀な人材の確保と既存人材のスキルアップが図れない場合、経営成績に重大な影響を与える可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
CINCは、デジタルマーケティング領域でデータ分析とコンサルティング、SaaS型ソリューションを提供する企業です。同社グループは、確かな信念と革新的なアプローチで、日本のマーケティング業界を牽引する存在を目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
CINCグループは、「確信をもつ、核心をつく、革新をおこす」という経営理念を掲げています。この理念は、分析、コンサルティング、ソリューションに求められる信念を集約したものです。
同社グループは、「マーケティングソリューションで日本を代表する企業へ」というビジョンのもと、マーケティングのDX支援サービスの提供に取り組んでいます。あらゆるデータを様々な分析手法で活用し、革新的ソリューションを提供することを目指しています。
近年進展する生成AI技術を成長機会と捉え、企業の事業活動を生成AI時代に最適化させる支援のため、技術開発やサービス開発、提供体制を整えています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
CINCグループは、創業以来、デジタルマーケティング領域におけるデータ分析や総合的なコンサルティングサービス、ビッグデータを活用したSaaS型ソリューションの開発・販売を行ってきました。同社グループは、経営理念である3つの「カクシン」を社名の由来としています。
人的資本経営の重要性を認識しており、人材の育成と定着、成長戦略の推進に向けた多様な人材の確保が中長期的な企業価値の向上に必要であると考えています。人材の多様性の確保を含む人材の育成および社内環境整備に関する取り組みを推進しています。
また、サステナビリティのリスク管理を経営の重要課題と捉え、「リスク管理委員会」を設置し、リスク管理体制を機動的に実施しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
CINCグループは、優秀な人材の獲得と育成を優先的な課題としています。デジタルトランスフォーメーション業界の変化に対応し、課題解決力および新たな事業創出に挑戦し続ける人材の確保・育成が重要であると認識しています。
AI領域を中心とした事業推進と社外への発信により、採用力の強化を図っています。また、AI検索最適化に関するノウハウの組織全体への浸透や、業務プロセス全般におけるAI活用推進による生産性および付加価値の向上も重要な課題です。
開発体制の強化として、市場ニーズを迅速に機能開発に反映させるため、開発部門と営業部門の密なコミュニケーションを重視しています。さらに、知的財産管理体制の整備、情報セキュリティ体制の強化、コンプライアンスおよび内部管理体制の強化にも注力しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
株式会社CINCは監査役会制度を採用しており、株主総会、取締役会、監査役会を設置することで、透明性の高い意思決定と機動的な業務執行、適正な監査に対応できる体制を構築しています。取締役会は代表取締役社長が議長を務め、取締役と社外取締役で構成されています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社の株主構成を見ると、代表取締役社長である石松友典氏が筆頭株主であり、その関連会社であるCZも上位に名を連ねています。これにより、経営陣が安定した基盤の上で事業を推進していることがうかがえます。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 石松 友典 | 31.92% |
| CZ | 28.22% |
| Tech Fablic | 4.88% |
| SBI証券 | 1.70% |
| 松田 周 | 1.65% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は7名(男性6名・女性1名)で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は石松友典氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石松 友典 | 代表取締役社長 | 2004年エキスパートスタッフ入社、ソシエテ ジェネラル証券、JPモルガン証券等を経て、2014年同社設立、代表取締役より現職。 |
| 山地 竜太 | 常務取締役兼マーケティングDX事業本部長 | 2010年テンポスバスターズ入社、カンボジアでの事業立ち上げを経て、2015年同社入社。アナリティクス事業本部長、取締役を経て、2025年常務取締役兼マーケティングDX事業本部長より現職。 |
| 雨越 仁 | 取締役兼 経営管理本部長 | 2003年BNPパリバ証券入社、JPモルガン証券、三井物産等を経て、2016年公認会計士登録。2018年同社入社、経営管理本部長、取締役より現職。 |
社外取締役は、武井章敏氏(Interaction Pro代表取締役)です。
同社は監査役会設置会社であり、株主総会、取締役会、監査役会を設置しています。社外取締役は、事業戦略や組織変革に関する豊富な経験に基づき、経営全般に対する助言を行うことで、経営監督機能を果たしています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の取締役の報酬額は、株主総会で決議された報酬総額の限度内で決定されています。役職ごとの算定方針は定めていないものの、同社の業績や本人の貢献度を鑑みて、取締役会で個別の報酬額が決定される仕組みです。監査役の報酬は、株主総会で決議された範囲内で、監査役会の協議により決定されます。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 4名 | 68百万円 | 17.1百万円 |
| 社外役員 | 5名 | 17百万円 | 3.4百万円 |
役員ごとの連結報酬等の総額は、連結報酬等の総額が1億円以上である役員が存在しないため、開示は省略されています。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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