AB&Company 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AB&Company 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(グロース市場)に上場しており、美容室チェーン「Agu.」の直営店運営およびフランチャイズ展開を主要事業としています。2025年10月期の連結業績は、店舗数の拡大により売上収益は193.8億円で増収となりましたが、コスト増加等の影響により税引前利益は14.9億円で減益となりました。


※本記事は、株式会社AB&Company の有価証券報告書(第8期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. AB&Companyってどんな会社?


美容室チェーン「Agu.」を全国展開し、スタイリストの業務委託モデルと独自のフランチャイズ制度による店舗網拡大を特徴とする企業です。

(1) 会社概要


2009年に「Agu.」の前身となる「Alice hair salon」をオープンし、2011年にフランチャイズ本部となるB-firstを設立しました。2018年に持株会社としてAB&Companyを設立し、Sunrise Capitalと資本提携を開始しています。2021年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2025年にはグループ店舗数が1,100店舗に到達しました。

連結従業員数は276名、単体従業員数は13名です。筆頭株主と第2位株主は、いずれも代表取締役社長である市瀬一浩氏の資産管理会社であり、第3位は個人株主です。

氏名 持株比率
SunFlower 7.20%
Logotype 7.20%
丹内悠佑 7.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は市瀬一浩氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
市瀬 一浩 代表取締役社長 2003年hair salon asia AOYAMA入社。2009年美容室Alice hair salon設立。ロイネス、B-firstの代表取締役社長を経て、2018年より現職。
駒田 道洋 取締役CFO 2013年三井物産入社。デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社等を経て、2020年同社入社。2024年より現職。


社外取締役は、岩田真吾(三星染整代表取締役)、井上直也(マガシーク取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「直営美容室運営事業」「フランチャイズ事業」および「インテリアデザイン事業」を展開しています。

(1) 直営美容室運営事業


「Agu.」ブランドを中心とした美容室を直営で運営し、来店客に対してヘアカットなどの美容サービスを提供しています。都心部から地方まで全国に展開しており、スタイリストが柔軟に働ける環境を提供しています。

収益は、店舗における顧客からの美容サービス対価です。運営は、ロイネス、Puzzle、agir、BELLTREE、KESHIKI、est、Arose、SENSE、AGU NY, Inc.、J ISLAND Inc.が行っています。

(2) フランチャイズ事業


「Agu.」グループのフランチャイズ本部として、加盟店に対して経営指導、事業ノウハウや教育研修の提供、商品販売、広告代理業務などを行っています。同グループで育ったスタイリストをオーナーとして起用する独自の制度を採用しています。

収益は、フランチャイズ加盟法人からのロイヤリティ、商品販売代金、経営指導料などです。運営は、主にB-firstが行っています。

(3) インテリアデザイン事業


美容室等の内装デザイン業者として、店舗デザインや施工業者のアレンジ等のサービスを提供しています。同グループの美容室出店案件に加え、グループ外からの受注案件も手掛けています。内製化により工事費用の抑制と短期間での開業を実現しています。

収益は、店舗内装工事等の対価です。運営は、建.LABOが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近5期間で一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では、税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益ともに増減が見られ、直近の第8期では減益となりました。利益率も低下傾向にあります。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上収益 109億円 126億円 168億円 182億円 194億円
税引前利益 14億円 13億円 17億円 16億円 15億円
利益率(%) 13.0% 10.2% 10.0% 8.7% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 9.4億円 8.3億円 11億円 11億円 8.9億円

(2) 損益計算書


売上収益は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益は減少しました。売上総利益率は一定水準を維持していますが、営業利益率は低下しています。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上収益 182億円 194億円
売上総利益 86億円 92億円
売上総利益率(%) 47.2% 47.2%
営業利益 17億円 16億円
営業利益率(%) 9.6% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、減価償却費及び償却費が22億円(構成比29.1%)、人件費が16億円(同20.5%)を占めています。売上原価においては、外注費が86億円(構成比83.8%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


直営美容室運営事業とフランチャイズ事業は増収となりましたが、直営事業はセグメント損失となりました。フランチャイズ事業は増収増益で利益貢献しています。インテリアデザイン事業は減収減益となりました。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期) 利益(2024年10月期) 利益(2025年10月期) 利益率
直営美容室運営事業 148億円 157億円 1.4億円 -0.2億円 -0.1%
フランチャイズ事業 27億円 29億円 11億円 12億円 40.4%
インテリアデザイン事業 24億円 22億円 11億円 0.7億円 3.0%
その他 10億円 10億円 4.3億円 5.0億円 48.1%
調整額 -27億円 -26億円 -0.4億円 -1.1億円 -
連結(合計) 182億円 194億円 17億円 16億円 8.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

AB&Companyグループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは事業の根幹を成し、金融機関からの借入れも重要な資金調達手段です。投資活動は、フランチャイズ展開や業務委託契約を通じた事業拡大に繋がっています。財務活動では、借入金の返済や新規調達を行い、資金調達のバランスを図っています。

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF 34億円 29億円
投資CF -7.0億円 -12億円
財務CF -28億円 -16億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「スタイリストファーストを信念にお客さまに幸せと喜びを提供する」ことを企業理念として掲げています。美容室業界の課題である長時間労働や低賃金などを是正し、新たなキャリアデザインを創造することでスタイリストの喜びに繋げ、それが顧客の幸せに繋がると考えています。

(2) 企業文化


「お客さまに感動を与える美容室という劇場を全国に展開する」というブランドビジョンのもと、「Challenge Yourself(自分に挑戦する)」「Never Give Up(決して諦めない)」「Stay Innovative(革新的であり続ける)」を行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


売上収益面では、店舗数、店舗当たりスタイリスト数、スタイリスト当たり顧客数、顧客単価を重要な経営指標として位置づけています。また、株主資本コストについてはROEを重要な経営指標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


フランチャイズオーナーの育成と地方展開の加速を戦略として掲げています。グループ内で育ったスタイリストをオーナーに起用する独自のモデルにより、帰属意識の高いオーナーを輩出し、離反リスクを抑えつつ全国展開を進めています。また、WEB広告やリファラル採用を活用したスタイリストの確保・育成にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


スタイリストファーストを掲げ、業務委託モデルやフランチャイズオーナー制度により、多様なキャリアプランに応じた柔軟な働き方を提供しています。美容学校新卒生向けの育成プログラムやリファラル採用の強化により、優秀なスタイリストの確保と育成を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 43.8歳 3.0年 7,552,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は具体的な目標数値並びに目標年度については検討中としており、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(男性50%)、有給休暇取得率(女性57%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 有利子負債について


子会社買収や店舗賃借等により有利子負債を計上しており、市場金利の上昇が業績に影響する可能性があります。また、一部借入には財務制限条項が付されており、抵触した場合は一括返済を求められる可能性があります。これに対し、収益性を重視した出店戦略や適切な資金計画により対応しています。

(2) のれん及び無形資産の商標権の割合が高いことについて


総資産に占めるのれん及び商標権の割合が高く、減損損失が発生した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、スタイリストの確保、WEB広告による集客、地方展開及び空中店舗展開により収益力の強化に努めていますが、計画通りに進まない場合は減損リスクがあります。

(3) 業務委託契約に対する労働関係法令の適用に関するリスク


スタイリストとは主に業務委託契約を締結しており、指揮命令を行わない運用を徹底しています。しかし、法令改正や行政解釈の変更等により労働者性が認められた場合、社会保険料の負担増などが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、実態調査や専門家との連携により適切な体制を維持しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。