ラバブルマーケティンググループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラバブルマーケティンググループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラバブルマーケティンググループは、東京証券取引所グロース市場に上場する企業です。「人に地球に共感を」をパーパスに、企業のSNSアカウント運用支援や運用ツールの提供を行うSNSマーケティング事業と、Webサイト制作等のDX支援サービスを展開しています。直近の業績は、決算期変更の影響により減収減益となっています。


※本記事は、株式会社ラバブルマーケティンググループの有価証券報告書(第13期、自 2025年11月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ラバブルマーケティンググループってどんな会社?


同社は、生活者の情報消費行動に寄り添う「愛されるマーケティング」を推進するマーケティング企業グループです。

(1) 会社概要


2008年のコムニコ設立を起点とし、2014年に経営陣によるMBOを経て、純粋持株会社として同社が設立されました。2021年に東証マザーズ市場に上場し、近年はユニオンネットやエルマーケ、ライスカレーLSなどの子会社化により、DX支援やLINE・インフルエンサー領域へ事業を拡大しています。

現在の従業員数はグループ全体で231名、単体で16名です。筆頭株主は資本業務提携を通じて親会社となったAIフュージョンキャピタルグループで、第2位は代表取締役社長の林雅之氏の資産管理会社である合同会社みやびマネージメント、第3位は楽天証券共有口となっています。

氏名 持株比率
AIフュージョンキャピタルグループ 45.87%
合同会社みやびマネージメント 11.51%
楽天証券共有口 5.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は林雅之氏が務めています。社外取締役比率は30.0%(10名中3名)です。

氏名 役職 主な経歴
林 雅之 代表取締役社長 1995年三和銀行入行。ロームを経て2008年コムニコ代表取締役社長。2014年同社設立、代表取締役社長に就任し現職。
長谷川 直紀 取締役 2013年コムニコ入社、2014年取締役。2022年同社取締役に就任し現職。コムニコ等の代表取締役や取締役も務める。
松本 高一 取締役 AGSコンサルティング、新光証券等を経て2017年同社社外取締役。2026年1月同社取締役に就任し現職。
久保 隆 取締役 1988年弁護士登録。森田宏法律事務所等を経て、AIフュージョンキャピタルグループ等の社外取締役を歴任。2026年1月同社取締役に就任し現職。


社外取締役は、鵜川太郎(リルーデンス代表取締役)、柿沼佑一(高篠・柿沼法律事務所パートナー)、深川裕季(深川公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マーケティング事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) SNSマーケティング事業


企業のSNSアカウントの戦略策定から運用代行、コンテンツ制作、効果検証までをワンストップで提供しています。また、SaaS型の運用支援ツールの開発や、SNSに関するノウハウやリスク対策を体系化した検定講座を提供する人材教育サービスも展開し、企業のSNS活用を包括的に支援しています。

収益源は、企業からの運用支援手数料やSaaSツールの利用料、検定講座の受講料などです。事業の運営は、主にコムニコが運用支援やツールの提供を担い、SNSエキスパート協会が教育サービスを提供しています。また、インバウンド・バズやエルマーケなどが特定領域のマーケティング支援を行っています。

(2) DX支援サービス


Webサイトの企画、デザイン、構築から運用までを一貫して提供するサービスを展開しています。コーポレートサイトやブランドサイトの構築に強みを持ち、クライアントのマーケティング課題や表現意図に応じたWebサイトやクリエイティブの開発を行っています。

収益源は、顧客企業からのWebサイト制作の受託費用や保守・運用代行費用、Webコンサルティング費用などです。事業の運営は、主に2024年に子会社化したユニオンネットやコムニコが担っており、SNSをはじめとする他のデジタル施策との相乗効果を創出しながらサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は事業拡大により増加傾向にあります。2025年10月期には売上高26億円、経常利益1.7億円と順調な成長を示しました。2026年3月期は決算期変更に伴う5ヶ月間の変則決算のため、売上高13億円、経常利益0.6億円となっていますが、M&Aや新規サービス開発を通じた提供領域の拡大により、引き続き収益基盤の強化と事業成長を図っています。

項目 2023年3月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期 2026年3月期
売上高 17億円 10億円 22億円 26億円 13億円
経常利益 0.8億円 0.3億円 1.5億円 1.7億円 0.6億円
利益率(%) 4.8% 2.5% 6.8% 6.3% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 376万円 3億円 -0.4億円 3億円 0.1億円

(2) 損益計算書


売上高や利益の金額は、決算期変更による変則決算のため表面上は減少していますが、売上総利益率は48%台を維持しています。営業利益率も一定の水準を保っており、M&A関連費用などが発生したものの、主力事業であるSNSマーケティング支援の収益性が下支えし、安定した利益構造を形成しています。

項目 2025年10月期 2026年3月期
売上高 26億円 13億円
売上総利益 13億円 6億円
売上総利益率(%) 48.3% 48.6%
営業利益 1.6億円 0.6億円
営業利益率(%) 6.1% 4.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.7億円(構成比30%)、支払手数料が1.0億円(同18%)、役員報酬が0.7億円(同12%)を占めています。売上原価については、外注費や労務費などが計上されています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金と資金調達により積極的な投資を行う「積極型」の傾向を示しています。当期はM&Aなどの投資活動により資金を使用しつつ、第三者割当増資や借入により財務活動のキャッシュ・フローが大幅なプラスとなっています。

項目 2025年10月期 2026年3月期
営業CF -189万円 158万円
投資CF -1.1億円 -8.2億円
財務CF -0.1億円 9.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人に地球に共感を」をパーパスとして掲げています。短期的な成果のために生活者を欺いたり、邪魔をしたりする広告やマーケティング活動は行わず、生活者や購買者の視点に立ち、その人にとって価値のある情報を適切な形で届けることを重視しています。この活動を「愛されるマーケティング(Lovable Marketing)」と位置づけ、日本のマーケティング業界を変えていくことをミッションとしています。

(2) 企業文化


同社グループの名前である「ラバブルマーケティンググループ」には、愛されるマーケティング活動を推進するという強い思いが込められています。短期的な利益の追求よりも、生活者との継続的で双方向なコミュニケーションを構築し、共感を重視する姿勢が組織の文化として根付いています。また、従業員一人ひとりがパーパスに共感し、自らの能力を最大限に発揮できる「働きがいのある組織」づくりを全活動の礎としています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、事業規模の成長と収益性の向上を両立させることを基本方針とし、「売上高」および「営業利益率」を重要な経営指標と位置付けています。また、M&Aによるのれん償却費などの影響を除外し、事業の実態に近い収益力やキャッシュ創出力を測る指標として「調整後EBITDA」を補完的な経営指標としています。中期的な目標としては、東京証券取引所グロース市場の上場維持基準を見据え、時価総額100億円の達成を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「既存事業の安定的成長」「新規領域の早期立ち上げ」「M&Aによる非連続的成長」を成長戦略の3本柱としています。既存事業ではSNS運用支援ツールの機能拡充やAI技術の活用を通じた生産性向上を進めます。新規領域では、訪日外国人向けインバウンドメディア「Talon Japan」を軸とした東南アジア需要の取り込みに注力します。さらに、M&Aによるサービス領域の拡大や顧客基盤の相互活用を通じて、グループ全体の収益基盤の強化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、ビジネスの礎である人材を価値創造の源泉と位置付け、「働きがいのある組織」づくりを経営のベースとしています。採用・育成・制度整備やAI・DXへの投資を通じて、従業員が成長機会を得て、能力を最大限に発揮できる職場環境を構築しています。また、公正で納得性のある評価制度の運用により、事業成長の成果を従業員に適切に還元し、中長期的な成長意欲の向上と優秀な人材の確保・定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.1歳 3.9年 8,567,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性の育児休業取得率 -
男女の賃金格差(全労働者) 38.9%


※「-」は男性の育児休職取得の対象となる従業員が無いことや、管理職の該当者がいないことなどを示しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(100.0%)、ストレスチェック受検率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新と環境変化への対応遅れ


インターネット業界およびデジタルマーケティング領域では、生成AIの進展や主要SNSプラットフォームの仕様変更など、技術革新や市場の変化が急速に進んでいます。これらに対応する技術者・専門人材の確保や新サービスの開発が想定通りに進まない場合、競争力が低下するリスクがあります。

(2) 情報セキュリティと個人情報保護


顧客、サービス利用会員、SNS利用者などの個人情報を取得・管理しており、セキュリティ環境の強化やアクセス権限の管理に努めています。しかし、外部からの不正アクセスや内部からの情報漏洩が発生した場合、損害賠償や信用力の低下により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定の主要SNSプラットフォームへの依存


同社のサービスは、InstagramやX(旧Twitter)などの主要SNS上でのマーケティング手法を中心としています。これらのプラットフォームにおけるユーザーの利用動向の変化や、広告関連規約・API提供方針の変更により、従来の手法が制限されるリスクがあります。

(4) M&Aとグループ経営管理の複雑化


M&A戦略の推進により連結子会社が増加し、事業領域や顧客基盤が拡大しています。これに伴いグループ全体のガバナンスや内部統制の維持・強化が求められますが、買収先企業との統合(PMI)が円滑に進まず想定したシナジーが発現しない場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。