※本記事は、鈴茂器工株式会社 の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 鈴茂器工ってどんな会社?
世界初の寿司ロボットを開発した米飯加工機械のパイオニアであり、世界シェアNo.1を誇るメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1961年に鈴茂商事として設立され、1981年に世界初の量産型小型寿司ロボットの製造販売を開始しました。2004年にジャスダック証券取引所に株式を上場し、海外展開を加速させるため2006年に米国子会社を設立しています。2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結494名、単体444名です。筆頭株主は資本業務提携先である投資ファンド、第2位は同社代表取締役会長です。第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| GULF JAPAN 1(常任代理人 株式会社みずほ銀行決済営業部) | 13.90% |
| 鈴木美奈子 | 12.60% |
| 鈴木映子 | 12.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は谷口徹氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 谷口 徹 | 代表取締役社長執行役員 | 大和証券、ゴールドマン・サックス証券、パルコを経て2015年同社入社。経営企画部長、専務取締役などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 鈴木 美奈子 | 代表取締役会長 | メイツ入社後、2003年同社入社。取締役管理本部長、常務取締役、取締役副社長を経て、2017年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。 |
| 越野 純子 | 取締役常務執行役員 | あおぞら銀行、フィデリティ投信等を経て、JVCケンウッド執行役員などを歴任。2024年同社入社、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、髙橋正己(元トーヨーカネツ代表取締役社長)、髙橋昭夫(元大和インベストメント・マネジメント代表取締役社長)、笹川利哉(元きらぼしキャピタルマネージングパートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「米飯加工機械関連」「衛生資材関連」「店舗システム関連」事業を展開しています。
■(1) 米飯加工機械関連
寿司ロボット、盛付けロボットなどの米飯加工機械を製造・販売しています。主な顧客は回転寿司店、スーパーマーケット、テイクアウト専門店などの外食・中食産業です。
収益は顧客からの製品代金および部品・メンテナンス料からなります。運営は主に鈴茂器工が行い、海外市場においては米国やシンガポールの子会社等が販売を担当しています。
■(2) 衛生資材関連
食品加工現場や飲食店で使用されるアルコール系洗浄剤、除菌剤などの衛生資材を取り扱っています。食の安全・安心を支える製品として、米飯加工機械のユーザー等へ提供しています。
収益は製品の販売代金からなります。運営は連結子会社のセハージャパンが行っており、同社においては仕入・販売を行っています。
■(3) 店舗システム関連
飲食店向けのPOSシステム、セルフオーダーシステム、配膳ロボットなどの店舗システムを開発・販売しています。飲食店の省人化・効率化ニーズに対応するソリューションを提供しています。
収益はシステム機器の販売代金やサービス利用料からなります。運営は連結子会社の日本システムプロジェクトが行っており、同社においては仕入・販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、堅調な成長を続けています。利益面でも、経常利益率は10%前後で推移しており、高い収益性を維持しています。直近の第65期では、売上高・利益ともに過去最高水準を更新し、増収増益を達成しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 95億円 | 116億円 | 135億円 | 145億円 | 156億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 15億円 | 11億円 | 15億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 9.7% | 13.3% | 8.5% | 10.3% | 12.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 10億円 | 6億円 | 10億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も10.2%から12.1%へと改善しており、増収効果が利益増に寄与していることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 145億円 | 156億円 |
| 売上総利益 | 69億円 | 79億円 |
| 売上総利益率(%) | 47.2% | 50.5% |
| 営業利益 | 15億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 10.2% | 12.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が20億円(構成比33%)、賞与引当金繰入額が2億円(同3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、地域別の売上動向を見ると、主力である日本国内に加え、北米を中心とした海外市場が成長を牽引しています。特に北米市場は日本食人気の高まりや日系企業の進出加速により大きく伸長しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 103億円 | 106億円 |
| アジア | 17億円 | 16億円 |
| 北米 | 17億円 | 22億円 |
| 欧州 | 5億円 | 8億円 |
| オセアニア | 4億円 | 3億円 |
| その他の地域 | 0.6億円 | 0.7億円 |
| 連結(合計) | 145億円 | 156億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を元に借入金の返済を行いつつ、設備投資などは手元資金で賄っている「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 23億円 | 14億円 |
| 投資CF | -7億円 | -14億円 |
| 財務CF | -5億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は『食の「おいしい」や「温かい」を世界の人々へ』を長期ビジョンとして掲げています。食の分野で価値ある製品・サービス等を提供し、食文化の向上を通じて社会に貢献できる企業への成長を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、社是である「誠実、情熱、創造」に則った行動規範を社訓として制定し、企業活動の原点としています。法令遵守と社会倫理の尊重を重視し、代表取締役がその精神を全従業員に継続的に伝達することで、コンプライアンス意識の浸透を図っています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画「Next 2028」を策定しています。「真のグローバル企業体制の構築」「付加価値創造型企業への進化」「サステナブルな成長を実現する企業基盤の構築」を基本方針とし、最終年度の数値目標を設定しています。
* 売上高:220億円
* 営業利益:30億円
* ROE:12.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
海外戦略として、北米を中心とした市場拡大に対応する事業基盤を構築し、グローバル大手スーパーマーケットや外食への拡販、販売店体制の強化を進めます。国内では、ご飯盛付けロボット「Fuwarica」の市場拡大や、機械以外の製品・サービスの拡充により顧客の課題解決を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ビジョンの達成と持続的成長のため、多様な価値観と変革への意欲を持つ人材の育成を目指しています。人事制度の刷新、人材ポートフォリオの構築、全社教育体系の見直しを進めるとともに、フレックスタイム制度の拡大や健康経営の推進により、社員が能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.8歳 | 12.0年 | 6,635,215円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 45.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 63.3% |
※女性管理職比率については、有価証券報告書に数値の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修の受講者割合(99.1%)、資格取得率(65.3%)、健康診断受診率(99.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客の出店計画に関するリスク
同社は回転寿司やスーパーマーケット等の大手チェーンストアを主力ユーザーとしており、継続的に製品を採用されています。しかし、主要顧客の新規出店や改装などの設備投資計画が変更または中止された場合、同社の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
■(2) 市場競争に関するリスク
米飯加工機械市場には複数の競合他社が存在しています。同社は小型寿司ロボットのパイオニアとして一定のシェアを有していますが、将来的にシェアを維持できる保証はありません。競争激化によりシェアが低下した場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外事業に関するリスク
海外展開においては、各国の法規制や税制の変化、許認可政策、為替変動、政情不安などのリスクが存在します。これらが顕在化した場合、海外での製品販売が困難となり、事業成長が阻害される可能性があります。
■(4) 原材料・資材の調達に関するリスク
製品の製造に必要な原材料や部品を外部から調達しています。市況変動による価格高騰が長期化した場合や、需給逼迫により調達に支障が生じた場合、利益率の低下や製造・販売活動の停滞を招き、経営成績が悪化する可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。