エルテス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エルテス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エルテスは東京証券取引所グロース市場に上場し、デジタルリスク対策やAIセキュリティ事業を展開する企業です。直近の業績では、売上高が約90億円と増収を達成し経常利益も大幅な増益となりましたが、一部の事業における特別損失の計上等により親会社株主に帰属する当期純利益は赤字となっています。


※本記事は、株式会社エルテスの有価証券報告書(第15期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エルテスってどんな会社?


同社は、デジタルテクノロジーの発展に伴う新たなリスク対策や、警備業界等のDXを支援する事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は2004年に旧エルテスとして設立され、2007年よりソーシャルリスクコンサルティングを開始しました。2014年に現エルテスが旧エルテスを吸収合併し商号を変更しています。2016年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場し、2020年にはJAPANDXを設立して自治体DX支援にも進出しています。

従業員数は連結で504名、単体で126名です。筆頭株主はTSパートナーズで約16.39%を保有し、第2位は情報セキュリティ事業で提携するラック、第3位には創業者の菅原貴弘氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
TSパートナーズ 16.39%
ラック 10.02%
菅原貴弘 5.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長は菅原貴弘氏が務めています。取締役3名のうち1名が社外取締役であり、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
菅原貴弘 代表取締役社長 2004年旧エルテス設立代表取締役。2012年当社設立代表取締役社長に就任。関連会社の代表取締役や社外取締役を歴任し現職。
伊藤豊 取締役副社長 日本アイ・ビー・エム入社後、スローガン等の設立や役員を経て、2023年に当社取締役に就任。2025年より現職。


社外取締役は、篠地里百合氏(アセット・グロース代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルリスク事業」「AIセキュリティ事業」「DX推進事業」「スマートシティ事業」を展開しています。

デジタルリスク事業


SNSなどのソーシャルメディアに起因するソーシャルリスク対策と、情報持ち出しなどの社内に潜むリスクを検知するインターナルリスク対策を提供しています。顧客はリスク感度の高い大手製造業や金融機関などが中心です。

収益は、リスク検知システムの環境設定費用や、その後の継続的なサービス利用料から得ています。運営は主にエルテス単体が行っています。

AIセキュリティ事業


フィジカルな警備保障サービスを運営しつつ、AIやデータを活用した警備業界のDXプロダクトを開発・提供しています。インターネット上で警備を依頼できるプラットフォームなどを展開しています。

収益は、警備保障サービスの提供に伴う売上のほか、DXプロダクトを通じて警備会社との間で取引が成立した際の手数料等から得ています。運営はAIKやAnd Securityなどが担っています。

DX推進事業


自治体や事業会社のDX支援サービスを展開しています。自治体向けには住民サービスのデジタル上の総合窓口アプリやLINE活用サービスを提供し、事業会社向けにはSESとラボ型開発による支援を行っています。

収益は、アプリ等の導入に伴う環境設定費用や継続的なサービス利用料、またDX人材の派遣に伴う利用料等から得ています。運営はJAPANDXやGloLing、プレイネクストラボなどが行っています。

スマートシティ事業


スマートな街づくりで地方創生に貢献することを目的に、不動産のプロパティ・マネジメント事業のデジタル化や、地方企業・自治体のマーケティング支援サービスなどを展開しています。

収益は、賃貸借契約に基づく継続的な収入や、不動産売買契約に基づく物件の引渡し時の売却収入などから得ています。運営はアクターやイーリアルティが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の売上高は直近5年間で継続的な右肩上がりとなっており、直近では約90億円に達しています。経常利益も概ね黒字基調で推移し、直近では大幅な増益となりましたが、特別損失の計上等により当期純利益は赤字となる期も見られます。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 27億円 47億円 65億円 73億円 90億円
経常利益 0.9億円 1億円 1億円 0.7億円 3億円
利益率(%) 3.5% 3.1% 2.2% 0.9% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 0.4億円 3億円 -9億円 -2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の売上高は順調に拡大しており、売上総利益も増加しています。売上総利益率はやや低下したものの、販売費及び一般管理費を抑制したことで営業利益は大幅に増加し、営業利益率も改善しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 73億円 90億円
売上総利益 29億円 32億円
売上総利益率(%) 39.3% 35.6%
営業利益 0.9億円 4億円
営業利益率(%) 1.3% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7億円(構成比25%)、のれんの償却額が3億円(同11%)、役員報酬が3億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントにおいて前年を上回る売上高を記録しています。特にAIセキュリティ事業やスマートシティ事業は大幅な増収となっており、グループ全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
デジタルリスク事業 25億円 27億円
AIセキュリティ事業 16億円 22億円
DX推進事業 17億円 20億円
スマートシティ事業 15億円 21億円
連結(合計) 73億円 90億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的となる末期型を示しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 6億円 -0.1億円
投資CF -6億円 -3億円
財務CF 9億円 -4億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.5%で市場平均を下回っています。ROEは当期純損失計上のため算出されていません。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「安全なデジタル社会をつくり、日本を前進させ続ける。」というビジョンを掲げています。デジタルテクノロジーの発展に伴い生じる新たなリスクを解決することで、日本社会や日本企業の前進を支える社会インフラとなることを目指しています。

(2) 企業文化


インテリジェンスを武器に日本のデジタルリスク対策を支援するプロフェッショナル集団を目指しています。市場価値の高い多様な人材が長く活躍し続ける環境整備を重視し、柔軟な働き方の推進など人的資本の強化に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


2026年4月に公表された3ヵ年経営計画において、時価総額200億円超の実現を中長期のターゲットに掲げています。量から質への転換を図り、最重要指標を営業利益額から営業利益率へ変更し、2029年2月期において以下の数値を目標としています。

* 営業利益:9億円
* 営業利益率:12.0%
* 自己資本比率:40.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


収益性・成長性の高いデジタルセキュリティセグメントをコア事業と位置づけ、同領域への経営資源の集中と事業ポートフォリオの再構築(Eltes Lean Transformation)を進めます。

* 成長事業である内部不正対策領域(IRI事業)の拡大
* 生成AIの普及に伴うAIガバナンス対策など新たな成長事業の育成
* 不確実性の高い一部事業の売却等によるポートフォリオ再構築
* 自己資本比率40%以上維持をKPIとする規律ある財務戦略の実行

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、サービスの持続的な発展と企業価値向上において、人材を最も重要な経営資源(人的資本)と位置付けています。多様性に富んだ優秀なプロフェッショナル人材を採用し、事業の前進に取り組める人材の育成や、長く活躍し続けるための社内環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 35.8歳 4.3年 6019000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務に基づく公表項目として選択しておらず公表していないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT・セキュリティ市場における競合激化


テクノロジーを活用したデジタル化・DX化市場や情報セキュリティ市場において、巨大企業や他社の新規参入により競合が激化した場合、価格競争等により事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 専門的なIT人材の確保・育成


事業拡大に伴う優秀なデータアナリストやエンジニアの確保が重要ですが、人材市場に経験者が少なく採用は容易ではありません。人材の確保や育成に支障をきたした場合、業務遂行に影響を与える可能性があります。

(3) 激しい技術革新によるサービスの陳腐化


生成AI等のIT関連技術や情報セキュリティ分野は技術革新が速く、継続的な研究開発を行っていますが、想定を上回る速度での技術革新により既存サービスが陳腐化した場合、競争力が低下する恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。