エルテス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エルテス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場する同社は、デジタルリスク対策、AIセキュリティ、DX推進の3事業を展開しています。直近の決算では、M&Aやデジタル化需要の取り込みにより売上高は前期比39.5%増と大幅な増収を達成。利益面では繰延税金資産の計上等により最終増益となりました。


※本記事は、株式会社エルテス の有価証券報告書(第13期、自 2023年3月1日 至 2024年2月29日、2024年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エルテスってどんな会社?


インターネット上のリスク検知や炎上対策を行う「デジタルリスク事業」を祖業とし、警備DXや自治体DXも展開する企業です。

(1) 会社概要


2004年に企業のWebブランディング支援を目的に設立され、2007年よりソーシャルリスク対策を開始しました。2016年に東証マザーズ(現グロース)へ上場を果たし、その後は警備事業のAIKや自治体DXを担うJAPANDXなどを設立・子会社化して事業領域を拡大しています。2022年には株式会社ラックと資本業務提携を行いました。

連結従業員数は409名、単体では114名です。筆頭株主は株式会社TSパートナーズ、第2位はセキュリティ分野で提携関係にある株式会社ラック、第3位はDOSO株式会社です。創業者の菅原貴弘氏は個人としても第4位の株主となっています。

氏名 持株比率
TSパートナーズ 16.80%
ラック 10.27%
DOSO 6.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.0%です。代表取締役社長は菅原貴弘氏が務めています。取締役3名のうち1名が社外取締役であり、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
菅原 貴弘 代表取締役社長 2004年4月に旧エルテスを設立し代表取締役に就任。2012年4月に同社を設立し代表取締役社長。グループ各社の代表や取締役も兼務。
三川 剛 取締役ソリューション本部長 富士銀行、ボストンコンサルティンググループ等を経て、gumi取締役、トランス・コスモス専務執行役員を歴任。2020年8月に入社し、2023年3月より現職。


社外取締役は、伊藤豊(スローガン株式会社創業者・取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルリスク事業」「AIセキュリティ事業」「DX推進事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) デジタルリスク事業


SNSや掲示板などのソーシャルメディアに起因するリスク対策と、内部情報持ち出しなどのインターナルリスク対策を提供しています。具体的には、SNS炎上の予兆検知、危機対応コンサルティング、内部脅威検知サービスなどを、企業の広報・リスク管理部門等へ提供しています。

収益は、顧客企業からのサービス利用料やコンサルティングフィー等によって構成されています。運営は主にエルテスが行うほか、株式会社エフエーアイ、アクター株式会社などが事業を担っています。

(2) AIセキュリティ事業


警備業界のDXを推進する事業です。警備会社と利用者をマッチングするプラットフォーム「AIK order」や警備管制システム「AIK assign」の開発・提供を行うほか、従来型の警備サービス(交通誘導警備や施設警備等)も自社グループで提供しています。

収益は、警備サービスの対価や、プラットフォーム利用料、システム利用料などから得ています。運営は株式会社AIKを中心に、株式会社And Security、ISA株式会社、SSS株式会社などの子会社が行っています。

(3) DX推進事業


自治体や企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する事業です。自治体向けには住民サービスアプリ「DX-Pand」やLINE活用ツールを提供し、企業向けにはSES(エンジニア派遣)とラボ型開発を組み合わせた支援を行っています。

収益は、システム開発や導入支援の対価、サービスの月額利用料、エンジニア派遣料などから構成されています。運営は株式会社JAPANDX、株式会社GloLing、株式会社メタウン、プレイネクストラボ株式会社などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高はM&Aや事業拡大により、毎期着実に増加傾向にあります。特に直近では大幅な増収を達成しました。利益面では、投資フェーズにあるため経常利益率は低水準で推移していますが、当期は最終利益が大きく増加しています。

項目 2020年2月期 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期
売上高 20億円 20億円 27億円 47億円 65億円
経常利益 1.7億円 -3.6億円 0.9億円 1.4億円 1.4億円
利益率(%) 8.9% -18.0% 3.5% 3.1% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.2億円 -4.7億円 1.0億円 2.2億円 2.6億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も増加していますが、売上総利益率は低下傾向にあります。また、事業拡大に伴う販売費及び一般管理費の増加により、営業利益率は若干低下しました。

項目 2023年2月期 2024年2月期
売上高 47億円 65億円
売上総利益 19億円 25億円
売上総利益率(%) 41.4% 38.2%
営業利益 2.0億円 1.8億円
営業利益率(%) 4.3% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5億円(構成比22%)、のれんの償却額が3億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。特にDX推進事業は売上高が倍増し、黒字転換を果たしました。AIセキュリティ事業も増収により黒字化しています。デジタルリスク事業は安定して利益を創出し、全社の収益を支えています。

区分 売上(2023年2月期) 売上(2024年2月期) 利益(2023年2月期) 利益(2024年2月期) 利益率
デジタルリスク事業 24億円 26億円 9億円 11億円 41.9%
AIセキュリティ事業 13億円 15億円 -0.3億円 0.4億円 2.6%
DX推進事業 10億円 24億円 -0.8億円 0.2億円 0.8%
連結(合計) 47億円 65億円 2.0億円 1.8億円 2.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「勝負型」です。本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる一方で、借入等による資金調達を行い、M&Aやソフトウェア開発への投資を継続しています。事業拡大に伴う運転資金の増加が営業CFマイナスの主な要因です。

項目 2023年2月期 2024年2月期
営業CF 7.2億円 -0.0億円
投資CF -31億円 -7億円
財務CF 28億円 6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「健全にテクノロジーが発展する豊かなデジタル社会を守り、デジタル社会にとってなくてはならない存在となること」をビジョンに掲げています。また、「安全なデジタル社会をつくり、日本を前進させ続ける。」というビジョンのもと、デジタル化に伴うリスク解決と社会へのデジタル実装支援に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、中長期的な企業価値向上に向けて、グループが一丸となり各社の強みを発揮することを重視しています。また、人材を最も重要な経営資源と位置付け、多様性に富んだ優秀な人材の採用・育成や、柔軟な配置転換、人的資本投資の強化を通じて、事業とサービスの前進に取り組む姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


第2期(2025年2月期~2027年2月期)中期経営計画「Build Up Eltes」においては、営業利益を最重要指標として掲げ、収益基盤の強化を最優先テーマとしています。また、持続的な事業拡大を通じて企業価値を向上させることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


デジタルリスク事業での収益基盤強化に加え、AIセキュリティ事業やDX推進事業を次代の中核事業へと育成する方針です。また、新たに「スマートシティ事業」をセグメント化し、プロパティ・マネジメントのデジタル化や地域全体のデジタル化を目指します。グループ経営管理の強化や人材育成への投資も重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業成長には優秀な人材の確保が不可欠とし、採用広報への投資や人事評価制度の整備を進めています。また、グループ内での柔軟な配置転換や研修などの人的資本投資を強化し、能力向上の機会を創出することで、競争優位性を高める多様な人材の育成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年2月期 34.1歳 3.8年 5,470,000円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務に基づく公表項目として選択しておらず公表していないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ビッグデータの利用規制・SNS情報取得について

ソーシャルメディアやビッグデータに関する法令・規制の変更、あるいはプラットフォーム側の仕様変更により情報収集が制限された場合、サービスの品質低下やコスト増が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術開発・競合について

技術進化への対応遅れや開発不調によるサービス品質低下、国内外の競合他社との競争激化による価格下落や受注減が、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保や育成について

データアナリストやエンジニア、警備員等の専門人材の確保・育成が計画通り進まない場合、業務遂行や受注活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。