SREホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SREホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のSREホールディングスは、不動産や金融領域等の実業(リアルビジネス)とテクノロジーを融合させた事業を展開しています。AIクラウド&コンサルティング事業とライフ&プロパティソリューション事業を柱とし、直近の業績は売上高267億円、営業利益31億円の増収増益となっています。


※本記事は、SREホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第11期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SREホールディングスってどんな会社?


AI技術と実業の知見を融合し、不動産・金融・IT・ヘルスケア領域等へDXソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要


2014年にソニー不動産として設立され、不動産事業を開始しました。2015年にはAI不動産価格推定エンジンを開発し、テクノロジー活用を本格化させます。2019年にSREホールディングスへ商号変更するとともに東証マザーズへ上場しました。その後、2020年に東証一部へ市場変更し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

同社グループの従業員数は連結487名、単体131名です。筆頭株主は創業母体であるソニーグループ(23.28%)で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も同様に信託銀行となっています。

氏名 持株比率
ソニーグループ 23.28%
日本カストディ銀行(信託口) 18.32%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.73%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役 社長 兼 CEOは西山和良氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
西山 和良 代表取締役社長 兼 CEO ソニー(現 ソニーグループ)にてSRE事業準備室長等を経て、2014年より現職。
久々湊 暁夫 取締役コンプライアンス内部監査担当 ソニー(現 ソニーグループ)入社、ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ)法務部長等を経て、2023年より現職。


社外取締役は、原田潤(あおばアドバイザーズ代表取締役)、太田彩子(ベレフェクト代表取締役)、琴坂将広(慶應義塾大学総合政策学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AIクラウド&コンサルティング」「ライフ&プロパティソリューション」および「その他」事業を展開しています。

(1) AIクラウド&コンサルティング(AICC)


不動産・金融・IT・ヘルスケア領域などを対象に、AIを活用したクラウドツールやDXソリューションを提供しています。実務有用性を磨き上げたプロダクトを提供し、企業の業務効率化やデータ活用を支援するのが特徴です。

収益は主に、クラウドサービスの利用料やコンサルティングフィー、ソリューション開発による対価からなります。運営は主にSREホールディングスやSRE AI Partners、メディックスなどが行っています。

(2) ライフ&プロパティソリューション(L&P)


テクノロジーを活用した不動産売買仲介やアセットマネジメント、IoT技術を導入したスマートプロパティ(マンション等)の開発・販売を行っています。実業を通じて得たデータや知見をAI事業へ還元する役割も担います。

収益は、不動産の売買仲介手数料、アセットマネジメントフィー、不動産の販売代金などから構成されます。運営は主にSREホールディングスが行っています。

(3) その他


上記セグメントに含まれない新規事業開発などを行っています。

新たなプロダクト開発や実証実験などを通じて、将来の収益源を育成する位置づけです。運営は主にSREホールディングスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大しており、特に直近では260億円規模に達しています。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに増加傾向にあり、増収増益の成長トレンドを維持しています。利益率も10%を超える水準で推移しており、収益性を伴った事業拡大が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 73億円 136億円 185億円 242億円 267億円
経常利益 10億円 13億円 15億円 21億円 29億円
利益率(%) 13.9% 9.6% 8.3% 8.5% 10.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 9億円 11億円 14億円 17億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高が増加し、売上総利益および営業利益も大きく伸長しています。売上総利益率、営業利益率ともに改善しており、効率的な事業運営が進んでいることがうかがえます。特に営業利益は30億円台に到達し、収益力の強化が顕著です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 242億円 267億円
売上総利益 75億円 95億円
売上総利益率(%) 30.8% 35.7%
営業利益 22億円 31億円
営業利益率(%) 9.1% 11.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が15億円(構成比24%)、広告宣伝費が10億円(同16%)、業務委託料が10億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


AIクラウド&コンサルティング事業は大幅な増収増益を達成し、高い利益率を維持しています。ライフ&プロパティソリューション事業も堅調に推移し、安定した収益基盤となっています。その他事業は先行投資段階にあり、赤字となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
AIクラウド&コンサルティング 40億円 63億円 17億円 25億円 39.4%
ライフ&プロパティソリューション 202億円 202億円 9億円 10億円 5.1%
その他 0.8億円 2億円 -2億円 -3億円 -128.5%
調整額 -9億円 -16億円 -2億円 -1億円 -
連結(合計) 242億円 267億円 22億円 31億円 11.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、リアルビジネスを内包した実務有用性の高いテクノロジー創出に取り組んでおり、新規プロダクト開発への投資を進めています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益等が資金増加要因となったものの、営業出資金の増加がそれを上回り、獲得額は前期を下回りました。投資活動では、投資有価証券の売却収入があったものの、子会社株式の取得や無形固定資産の取得による支出がそれを上回り、使用額は前期を大きく上回りました。財務活動では、長期借入れによる収入が長期借入金の返済や自己株式の取得による支出を上回り、大幅な資金獲得となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4.5億円 4.4億円
投資CF -3.8億円 -13.7億円
財務CF -5.5億円 19.4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「今の先鋭が10年後の当たり前を造る A DECADE AHEAD」をミッションに掲げています。少子高齢化等の社会課題に対し、AIやITを活用して解決策を提供する「ライフテックカンパニー」を目指しています。

(2) 企業文化


「リアルビジネスを内包したテックプロバイダー」という独自の価値提供を追求しています。自ら実業を手掛け、現場の課題やデータを直接把握することで、実務有用性の高いテクノロジーを開発・提供する姿勢を重視しています。また、現場から経営層までアウトプット志向のコラボレーションを推進する風土があります。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長を目指し、特にAIクラウド&コンサルティングセグメントにおけるストック収入の成長性と安定性を重視しています。そのため、連結の売上高および営業利益に加え、ARR(Annual Recurring Revenue)を重要な経営指標としてモニタリングしています。

(4) 成長戦略と重点施策


AIクラウド&コンサルティング事業と実業(不動産・金融・IT・ヘルスケア)のシナジーを追求し、顧客提供価値の向上と対象領域の拡大を図ります。また、優秀な専門人材の確保・育成や、M&Aによるインオーガニックな成長、生成AI等の先進技術の事業活用を積極的に推進する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループのミッションに共感し、高い専門性や技術力を有する優秀な人材の確保と育成を最重要課題と捉えています。経営トップが採用にコミットするとともに、執務環境の整備やモチベーション向上に資する人事制度の導入を進め、組織体制の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.6歳 2.4年 7,135,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) AI及びIT業界の競争激化


AIやIT業界では技術革新が速く、多くの企業が課題解決ソリューションを提供しています。同社グループは新規サービス開発等に努めていますが、競合他社との競争が激化した場合、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新やAI倫理への対応


AI技術の進化スピードは速く、既存技術の陳腐化リスクがあります。また、AI利用に伴うプライバシーや倫理的問題も懸念されます。技術動向の大幅な変化や倫理的検証不足によりサービス競争力が低下した場合、経営成績等に影響が出る可能性があります。

(3) 人材の確保


AIクラウド&コンサルティング事業には高度な技術や知識を持つ人材が不可欠です。十分な人材を確保できない場合や、専門性の高い役職員が社外へ流出した場合、事業運営に支障をきたし、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) システム障害


クラウドソリューションの提供において、サーバーの冗長化等の対策を行っていますが、インフラ障害やシステムエラー、インターネット障害等によりサービスが安定的に提供できなくなった場合、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。