SREホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SREホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SREホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場するライフテック企業です。AIクラウドと不動産・ヘルスケアの実業を融合させた独自の事業モデルを展開しています。直近の業績は売上高が前期比で増加し、経常利益も大きく伸びる増収増益のトレンドを維持しており、力強い成長を遂げています。


※本記事は、SREホールディングス株式会社の有価証券報告書(第12期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SREホールディングスってどんな会社?


不動産とヘルスケアの実業にAIテクノロジーを掛け合わせ、業界特化型の業務支援サービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は2014年にソニー不動産として設立されました。2019年にSREホールディングスへ商号を変更し、同年12月に東証マザーズ市場へ上場、2020年には東証一部への市場変更を果たしています。2022年にアセットマネジメント事業を開始したほか、2024年にはヘルスケア領域の強化に向けてメディックスを完全子会社化するなど、新たな事業領域への展開を加速しています。

現在の従業員数は連結で533名、単体で144名となっています。筆頭株主は事業会社のソニーグループで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
ソニーグループ 23.26%
日本カストディ銀行(信託口) 16.64%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長 兼 CEOは西山和良氏が務めています。監査等委員3名全員が社外取締役であり、社外取締役比率は60.0%に達しています。

氏名 役職 主な経歴
西山和良 代表取締役社長 兼 CEO 2003年ソニー入社。2012年同社コーポレート企画推進部門担当部長、2014年SRE事業準備室長を経て、同年4月より現職。
久々湊暁夫 取締役コンプライアンス内部監査担当 1987年ソニー入社。2004年ソニーコミュニケーションネットワーク法務部部長、2017年SREホールディングス経営管理室長を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、原田潤(あおばアドバイザーズ代表取締役)、太田彩子(ベレフェクト代表取締役)、琴坂将広(慶應義塾大学総合政策学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AIクラウド&コンサルティング」「ライフ&プロパティソリューション」および「その他」事業を展開しています。

AIクラウド&コンサルティング


医療・介護・ヘルスケアおよび不動産業務に特化したAIクラウドサービスやBPaaSソリューションを提供しています。対象となる顧客は、ヘルスケア施設や医療機関、不動産事業者などの事業会社です。

主な収益源は、顧客からのクラウドサービス利用料やソリューション提供に伴う対価です。運営は主にSREホールディングス本体のほか、SRE AI Partnersやメディックスが行っています。

ライフ&プロパティソリューション


AIを活用した不動産の仲介・コンサルティングサービスのほか、シニアレジデンスを含む多様な物件の企画・開発、およびファンド運用を行っています。顧客は一般の不動産購入者や投資家、ファンドなどです。

収益源は、開発物件の売却益、仲介手数料、およびファンド運用によるアセットマネジメントフィーです。運営は主にSREホールディングスが行っています。

その他


中長期的な成長を見据え、リアルビジネスに関するパイロットプロジェクトを展開しながら、新規プロダクトやサービスの開発を推進しています。

収益源は、これらのプロジェクト等に関連したサービス提供によるものです。運営は主にSREホールディングスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで拡大し、経常利益も高い水準で増加傾向を維持しています。利益率は常に8〜11%台を確保しており、安定した高成長と収益性の両立が図られています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 136億円 185億円 242億円 267億円 329億円
経常利益 13億円 15億円 21億円 29億円 38億円
利益率(%) 9.6% 8.3% 8.5% 10.9% 11.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 7億円 11億円 5億円 3億円

(2) 損益計算書


直近の業績では、売上高の拡大に伴い売上総利益と営業利益が順調に伸びています。売上総利益率および営業利益率ともに高い水準を維持しており、収益力の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 267億円 329億円
売上総利益 95億円 114億円
売上総利益率(%) 35.7% 34.7%
営業利益 31億円 42億円
営業利益率(%) 11.6% 12.7%


販売費及び一般管理費(72億円)のうち、給料及び手当が20億円(構成比28%)、広告宣伝費が10億円(同14%)、業務委託料が9億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


AIクラウド事業と不動産実業の両輪が牽引し、特にライフ&プロパティソリューションの売上が前期から大きく拡大しました。AI事業も着実に成長を続けています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
AIクラウド&コンサルティング 63億円 65億円
ライフ&プロパティソリューション 202億円 263億円
その他 2億円 1億円
連結(合計) 267億円 329億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動と投資活動でマイナスとなる一方、財務活動で大きな資金調達を行っており、将来の成長を見据えて借入等で積極的な投資を継続する勝負型のキャッシュ・フロー状況です。

なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4億円 -85億円
投資CF -14億円 -6億円
財務CF 19億円 131億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.1%となっており、いずれもプライム市場の非製造業平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「テクノロジーを用いて暮らしと医療をアップデートする」を掲げています。ライフテックカンパニーとして、不動産・ヘルスケア・金融領域において「リアル×テクノロジー」を追求し、少子高齢化や労働力不足といった社会課題の解決を事業機会と捉えて展開しています。

(2) 企業文化


「成長と変革」への強い意志を持ち、自律的に挑戦する「情熱ある行動者」であることを重視しています。また、「実業の現場知見をAIに昇華し、強化されたAIを現場に戻す」という独自の成長エコサイクルを回すため、現場からマネジメントまでアウトプット志向のコラボレーションを推進する組織文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


SaaS指標であるARRだけでなく、事業のBPaaSへの拡張を踏まえ、課金契約社数、ARPU、AIクラウド&コンサルティングセグメント利益率を代替指標としてモニタリングしています。

* 翌期AIクラウド&コンサルティングセグメントの売上高27.2%増
* 翌期AIクラウド&コンサルティングセグメントの営業利益25.1%増

(4) 成長戦略と重点施策


「実業×AI」の成長エコサイクルの深化と、対象領域の継続的な拡大を最重要テーマに掲げています。不動産・ヘルスケア・金融領域において、業界特化型AIと実業ノウハウを組み合わせたBPaaSソリューションの事業化を推進し、来期以降の非連続な成長を目指しています。また、生成AI等の先進技術の探索と事業活用にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社のミッションに共感し、高い専門性と技術力を持つ「情熱ある行動者」の確保と育成を重視しています。経営トップが自ら採用活動にコミットするとともに、多様な人材が活躍できる企業文化の構築に向け、研修制度の充実や実力に応じた昇格機会の提供、働きやすい職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.6歳 2.6年 7,371,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.5%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.1%
男女賃金差異(正規雇用) 66.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 181.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) AI及びIT業界の競争激化

AI・IT業界では技術応用によるソリューション提供企業が増加しており、新規サービスの開発や既存サービスの拡充に努めていますが、競合他社との競争が激化した場合、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新やAI倫理への対応

技術革新のスピードが速く技術の陳腐化が生じやすいほか、AI利用における倫理的課題も生じています。アライアンスや社内規程に則った運用に努めていますが、代替技術の登場や検証不足で競争力が低下した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 高度専門人材の確保と流出

AIクラウド事業では、高度なテクノロジーやAI技術の専門知識を有する人材の確保が最優先事項です。人材の採用・育成を継続していますが、十分な確保ができない場合や、専門人材が社外へ流出した場合、事業の円滑な運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。