※本記事は、株式会社岡野バルブ製造 の有価証券報告書(第126期、自 2024年12月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 岡野バルブ製造ってどんな会社?
発電所向け特殊バルブの製造・メンテナンスを行う老舗メーカーです。原子力発電所向けに強みを持ちます。
■(1) 会社概要
1926年に岡野商会として創業し、動力用高温高圧バルブの製作を開始。1936年に法人化され、1968年には原子力用バルブの本格生産を開始しました。1962年に東証2部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。
同グループは連結従業員324名、単体179名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は同社製品の販売を行う関係会社の岡野商事、第2位は個人の岡野正敏氏、第3位は個人の清原達郎氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 岡野商事 | 24.43% |
| 岡野正敏 | 8.37% |
| 清原達郎 | 5.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は岡野武治氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡野武治 | 代表取締役社長 | 2006年入社。経営企画室統括責任者、取締役総務部長、常務取締役管理統轄兼経営本部長などを経て2020年より現職。 |
| 丹野信康 | 取締役副社長コア事業統括兼メンテナンス事業部長 | 2013年入社。テクニカルサービス部東部統括、メンテナンス事業部長、岡野クラフト代表取締役社長(現任)などを経て2025年2月より現職。 |
| 木村浩一 | 取締役最高財務責任者 | 1996年入社。総務部次長兼総務財務課長、総務部長兼資材課長などを経て2021年より現職。 |
| 石田仁 | 取締役人事・ものづくり統括 | 1996年入社。製造部次長、バルブ事業部生産技術部長などを経て2022年より現職。岡野クラフト常務取締役を兼務。 |
| 菊池勇太 | 取締役経営企画室長兼新規事業統括 | 2021年同社取締役(監査等委員)。新事業開発本部長を経て2024年6月より現職。合同会社アソウト業務執行役員、合同会社ポルト代表を兼務。 |
| 常盤木龍治 | 取締役DX推進本部長 | SAPジャパンなどを経て、株式会社EBILAB取締役、株式会社うむさんラボ執行役員などを兼務。2022年より現職。 |
| 寺脇豊 | 取締役監査等委員 | 1971年入社。製造グループ長、監査役を経て2016年より現職。 |
社外取締役は、相浦圭太(税理士法人TAパートナーズ代表社員)、渕上耕司(株式会社大手町会計事務所代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「バルブ事業」および「その他」事業を展開しています。
■バルブ事業
発電所向け原子力弁・一般弁等の製造・販売を行っています。また、発電所等のバルブの安全性・健全性を維持するため、定期検査を主体としたバルブメンテナンスを提供しています。主な顧客は電力会社やプラントメーカーです。
製品の販売やメンテナンスサービスの提供により収益を得ています。製造およびメンテナンス業務の一部については、子会社の岡野クラフトが担当しています。また、受注・販売活動は主に関係会社の岡野商事が代理店として行っています。
■その他
バルブ事業以外の新規事業として、ドローンやロボット技術、IoTなどのテクノロジーを駆使した設備点検・診断ソリューションの展開や、製造受託の拡充などに取り組んでいます。
これらの新規事業からのサービス提供料などが収益源となります。運営は主に同社が担い、実証実験等を進めています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
※第126期は決算期変更により10ヶ月決算となっています。
| 項目 | 2021年11月期 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 59億円 | 69億円 | 74億円 | 82億円 | 70億円 |
| 経常利益 | 4.5億円 | 5.6億円 | 9.1億円 | 13億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 7.6% | 8.2% | 12.3% | 15.7% | 14.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.6億円 | 4.3億円 | 6.3億円 | 11億円 | 8億円 |
売上高は順調に拡大傾向にありましたが、直近の2025年9月期は変則決算のため見かけ上の数値は減少しています。利益率は高い水準を維持しており、特に2024年11月期には経常利益率が15%を超えました。バルブ製造とメンテナンス事業が安定した収益基盤となっています。
■(2) 損益計算書
※第126期は決算期変更により10ヶ月決算となっています。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 82億円 | 70億円 |
| 売上総利益 | 26億円 | 25億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.2% | 35.0% |
| 営業利益 | 12億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 14.5% | 12.3% |
10ヶ月決算の影響があるものの、売上総利益率は32.2%から35.0%へと改善しました。これは採算性の高い部品販売や廃炉関連工事の増加によるものです。営業利益率は若干低下しましたが、引き続き2桁台を確保しており、効率的な事業運営が行われています。
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4億円(構成比26%)、賞与引当金繰入額が3億円(同18%)を占めています。売上原価に関しては詳細な内訳データがありません。
■(3) セグメント収益
同社グループは「バルブ事業」の単一セグメントですが、バルブ製造部門では部品販売が好調に推移し、メンテナンス部門では廃炉関連工事や定期点検工事が増加しました。新事業は一部不振でしたが、全体としては堅調です。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| バルブ事業 | 82億円 | 70億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
岡野バルブ製造のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、原子力発電所向けメンテナンス工事の好調や部品販売の伸長によりプラスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却収入が主な増加要因となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払いによりマイナスとなりました。これらの結果、現金及び現金同等物は増加しました。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 23億円 | 7億円 |
| 投資CF | -10億円 | 2億円 |
| 財務CF | -4億円 | -4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、コア事業であるバルブの製造・保守と、ものづくりの強みを活かした新規事業の二軸を柱として、事業規模の拡大と企業価値の向上を図ると同時に、社会的な価値の創出を経営方針としています。
■(2) 企業文化
創業以来100年にわたり産業と地域に支えられてきた企業として、地域社会との共生に積極的に取り組んでいます。様々な活動を通じて地域との交流を深め、地域の課題を解決し、地域創生に貢献していくことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
売上規模の拡大を優先課題と位置づけ、コア事業の深化と新たな成長分野の開拓を進めています。環境経営目標として、2022年を基準年度とし、二酸化炭素排出量の削減目標(2025年度5%削減、2026年度6%削減)等を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
コア事業であるバルブ製造・保守では、品質要求の高度化や競争環境の変化に対応し、技術力および生産効率の向上を図ります。新規事業では、ドローンやロボット技術、IoTを活用した設備点検・診断ソリューションの事業化を進め、技術開発の迅速化や市場開拓の加速により早期収益化を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営に必要な知識・経験・能力を備えた多様な人材による構成を目指しています。社員の自主的なキャリア形成を推進するため、半年ごとに会社と意見交換を行うキャリアパス制度を実施しています。また、有給休暇、育休、産休の取得推進に加え、人事制度や就業規程の見直しを随時行い、多様な人材の受け入れとモチベーション向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 43.2歳 | 19.4年 | 7,230,740円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.9% |
| 男性育児休業取得率 | 22.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※労働者の男女の賃金の差異については、女性活躍推進法の規定による公表項目として選択していないため、記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員1月当たりの平均残業時間を15時間以内(目標)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営環境の変化(原子力政策)
同社事業は現在、原子力発電所向けの割合が高いため、国内外の原子力利用政策の後退や、規制による建設抑制・検査サイクルの変更などが生じた場合、業績に重要な影響を与える可能性があります。これに対応するため、原子力政策に依存しないソリューション事業の拡大を図っています。
■(2) 業績の季節変動
発電所のメンテナンスを実施しているため、電力需要が高まる夏季および冬季には工事需要が減少し、業績に季節変動が生じる傾向があります。このリスクに対し、メンテナンス工事以外の事業への参画を進めて平準化を目指しています。
■(3) 品質保証
発電設備等で重要な機能を果たす特殊バルブを扱っているため、製品の欠陥や不具合によるトラブルが発生した場合、事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。品質保証室による定期的なモニタリングを通じ、品質管理の強化と不適合製品の出荷防止に努めています。
■(4) 原材料価格の高騰
製品にはレアメタルなどの特殊部材を使用しているため、購入価格の急騰や産出国の動向が財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。複数の購買先を確保することで、仕入価格の安定化を図っています。



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