※本記事は、株式会社ギフトホールディングスの有価証券報告書(第16期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ギフトホールディングスってどんな会社?
横浜家系ラーメン「町田商店」を中心に、直営店運営とプロデュース事業を両輪で展開する飲食企業です。
■(1) 会社概要
2008年に田川翔氏が個人事業として「町田商店」を創業し、2009年に法人化しました。2010年にはプロデュース事業を開始し、直営とプロデュースのハイブリッド経営を確立。2018年に東証マザーズへ上場し、2020年には東証一部(現プライム)へ市場変更を果たしました。2022年に持株会社体制へ移行し、現商号に変更しています。
連結従業員数は744名、単体では115名です。筆頭株主は株式会社グローウィングで、発行済株式の約44%を保有しています。第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社取締役副社長の笹島竜也氏となっており、経営陣による安定的な持株比率が維持されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| グローウィング | 43.96% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.69% |
| 笹島 竜也 | 4.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は田川翔氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田川 翔 | 代表取締役社長 | 2008年1月町田商店創業。2009年当社設立し代表取締役社長就任。2010年ファイナル・スリー・フィート社長、2015年四天王社長等を歴任。グループの創業者として経営を牽引。 |
| 笹島 竜也 | 取締役副社長 | ヒロキ・アドバンス等を経て2011年ファイナル・スリー・フィート入社。2016年当社取締役副社長就任。海外子会社の代表なども兼務し、プロデュース事業や海外展開を統括。 |
| 藤井 誠二 | 専務取締役直営店運営本部長人財開発本部長 | 2009年町田商店(現当社)入社。店長を経て2014年取締役、2015年専務取締役就任。直営店事業や人財開発を統括し、子会社代表も兼務。 |
| 末廣 紀彦 | 常務取締役管理本部長 | セイコー電子工業等を経て、複数の企業でCFOや管理本部長を歴任。2016年当社入社、管理本部長就任。2020年より現職。管理部門全体を統括。 |
| 榎 正規 | 取締役経営企画室長 | 公認会計士。監査法人トーマツ等を経て2016年当社入社。経営企画部長兼経理部長を務めた後、2017年より取締役経営企画室長として経営企画を統括。 |
| 寺田 三男 | 取締役製造本部長 | ホテルパシフィック東京、アリアケジャパン開発本部長を経て2018年当社入社。商品開発本部長等を歴任し、2023年より製造本部長として製造部門を統括。 |
社外取締役は、原俊之(元名水美人ファクトリー社長)、香月由嘉(弁護士)、花房幸範(公認会計士)、布施義男(元コメダ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「飲食事業」の単一セグメントですが、主に「直営店事業部門」と「プロデュース事業部門」を展開しています。
■(1) 直営店事業部門
横浜家系ラーメン「町田商店」、ガッツリ系ラーメン「豚山」、油そば「元祖油堂」などを主力ブランドとして展開しています。駅近、ロードサイド、商業施設など多様な立地に出店し、麺、タレ、スープ等の主要食材を自社工場で製造・供給する製販一体のビジネスモデルを特徴としています。海外でも直営店を運営しています。
収益は、店舗に来店する一般顧客からの飲食代金です。運営は主に連結子会社の株式会社ギフト、株式会社Amazing、株式会社Craft、および海外子会社(GIFT USA INC.など)が行っています。
■(2) プロデュース事業部門
ラーメン店を開業したいオーナーに対し、店舗運営ノウハウの提供や開業支援を行っています。店舗のプロデュースに加え、プライベートブランド商品(麺、タレ、スープ等)の継続的な販売を行っています。また、国内外で「町田商店」等のブランドによるフランチャイズ(FC)展開も進めています。
収益は、プロデュース店およびFC店への食材等の卸売による商品代金が中心です。FC店からは加盟金やロイヤリティも受領しますが、プロデュース店からは原則として加盟金やロイヤリティを徴収せず、食材購入契約に基づく継続取引を収益源としています。運営は主に株式会社ギフトが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に売上高は毎期増収を達成しており、直近の第16期には359億円に達しました。経常利益も順調に拡大しており、コロナ禍の影響を乗り越え、利益率も安定した水準を維持しています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 135億円 | 170億円 | 230億円 | 285億円 | 359億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 24億円 | 24億円 | 30億円 | 34億円 |
| 利益率(%) | 13.0% | 14.4% | 10.5% | 10.4% | 9.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 9億円 | 12億円 | 14億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約67%と高い水準を維持しており、営業利益率も9%台を確保しています。事業規模の拡大に合わせ、利益額もしっかりと積み上がっていることが分かります。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 285億円 | 359億円 |
| 売上総利益 | 193億円 | 240億円 |
| 売上総利益率(%) | 67.9% | 66.8% |
| 営業利益 | 29億円 | 34億円 |
| 営業利益率(%) | 10.2% | 9.4% |
販売費及び一般管理費のうち、雑給が51億円(構成比25%)、給料及び手当が33億円(同16%)、賃借料が27億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
直営店事業部門、プロデュース事業部門ともに増収となりました。特に直営店事業部門は「町田商店」「豚山」「元祖油堂」の積極的な出店により、大幅な増収を達成しています。プロデュース事業部門も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) |
|---|---|---|
| 直営店事業部門 | 240億円 | 308億円 |
| プロデュース事業部門 | 45億円 | 51億円 |
| 連結(合計) | 285億円 | 359億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で得た資金と、財務活動による調達資金を合わせ、積極的な投資を行っている「積極型」です。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 33億円 | 41億円 |
| 投資CF | -43億円 | -55億円 |
| 財務CF | 13億円 | 14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.0%で市場平均(プライム・非製造業)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「シアワセを、自分から。」という企業理念を掲げています。お客様だけでなく、従業員、株主、取引先、地域社会など全てのステークホルダーに幸せを届けることを使命としています。美味しいラーメンの提供に加え、エンターテイメント性や笑顔あふれるサービスを通じて、多くの人々に満足してもらうことで企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
従業員には「元気と笑顔と〇〇で、シアワセを届ける。」というミッションを与えています。「〇〇」の部分は、それぞれの立場や役割に応じて自ら考え行動することを促しており、主体性を重視する文化があります。美味しい味の追求はもちろん、気遣いのあるサービスと活気ある店舗空間作りを大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2028年10月期を最終年度とする中期経営計画を策定し、「世界中に最高のラーメンをお届けできる企業」を目指しています。長期的には世界のラーメンマーケットでシェア50%(国内シェア50%、海外シェア50%)の獲得を目標としています。
* 売上高成長率:20.0%以上
* 売上高営業利益率:10.0%以上
* ROE(自己資本当期純利益率):20.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
国内事業のオーガニックな成長と海外事業の積極展開を軸としています。具体的には、既存事業における1店舗あたりの品質向上や営業時間延長、モデル開発による出店ポテンシャルの拡大、海外人材の採用・育成、エリア別安定供給体制の構築などを推進します。また、AIを活用した管理体制の構築や、物流コストの最適化にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材確保を最重要経営課題と位置づけ、採用力の強化、離職率低下、教育システムの改良に取り組んでいます。具体的には、キャスト(アルバイト等)からの正社員登用、外国人の採用および教育、賃上げ、店内労働環境の改善に注力しています。また、多様な人材の確保に向け、女性活躍や障がい者雇用などのダイバーシティマネジメントも推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 40.2歳 | 3.8年 | 5,267,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 5.4% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 50.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 50.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 52.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | -% |
※上記は提出会社(単体)のデータです。なお、非正規雇用の賃金差異については対象となる男性労働者がいないため記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人社員比率(10.1%)、障がい者雇用比率(2.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競争激化と市場環境の変化
外食産業は参入障壁が低く、競合店の増加や価格競争が激しい環境にあります。人口減少による国内需要の縮小や、食の安全性への意識の高まり、消費低迷などが続く中、同社は店舗コンセプトの明確化や差別化を図っていますが、競争がさらに激化した場合には経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 原材料価格の高騰と調達リスク
小麦粉や食肉などの主要原材料は、国際相場や為替変動の影響を受けやすく、価格高騰がコスト増につながるリスクがあります。また、異常気象や自然災害、家畜伝染病、国際情勢の変化などにより、安定的な調達が困難になる可能性もあります。同社はこれに対し、商品・オペレーション・製造物流の改善等で対応しています。
■(3) 大規模自然災害の影響
日本国内各地に店舗や工場を展開しているため、地震や台風などの大規模自然災害が発生した場合、店舗の休業や工場の機能停止、供給遅延などが生じる可能性があります。BCP(事業継続計画)の策定や危機管理マニュアルの整備を行っていますが、想定を超える災害が発生した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 感染症パンデミックの再来
過去の新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックが再び発生した場合、営業制限や人流抑制により来店客数が減少するリスクがあります。ラーメンという日常食の特性上、影響は一定範囲にとどまると見込んでいますが、規模や期間によっては業績に重大な影響を与える可能性があります。



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