トビラシステムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トビラシステムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。迷惑情報データベースを活用したフィルタリングサービスを行うセキュリティ事業と、法人向けに電話業務効率化ツールを提供するソリューション事業を展開しています。直近の業績は、主力サービスの契約数増加や法人向け製品の販売拡大により、売上高・利益ともに過去最高を更新する増収増益となりました。


※本記事は、トビラシステムズ株式会社 の有価証券報告書(第19期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トビラシステムズってどんな会社?


独自の迷惑情報データベースを中核に、特殊詐欺やフィッシング詐欺等を防ぐセキュリティサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


2006年に株式会社A&A tecnologiaとして設立され、2010年に現社名へ変更しました。2011年に迷惑電話フィルタ「トビラフォン」を発売し、2019年に東証マザーズへ上場を果たしました。その後、2020年に東証一部へ市場変更し、2022年の市場区分見直しを経て現在はスタンダード市場に上場しています。2021年には広告ブロックアプリを提供する合同会社280blockerを吸収合併し、事業領域を拡大しました。

同社(単体)の従業員数は114名です。筆頭株主は創業社長である明田篤氏で45.63%を保有しており、オーナーシップの強い経営体制です。第2位はインタラクティブ・ブローカーズ証券(7.78%)、第3位は資産管理を行う日本カストディ銀行(6.31%)となっており、国内外の機関投資家も名を連ねています。

氏名 持株比率
明田 篤 45.63%
INTERACTIVE BROKERS LLC(常任代理人 インタラクティブ・ブローカーズ証券) 7.78%
日本カストディ銀行(信託口) 6.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は明田篤氏が務めています。取締役6名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
明田 篤 代表取締役社長 2006年12月株式会社A&A tecnologia(現 同社)設立し、代表取締役社長に就任。以来、現職。
松原 治雄 取締役 第一コンサルタント、バイザーを経て2018年同社入社。2020年執行役員技術部長を経て、2022年1月より現職。
金町 憲優 取締役 防衛省航空自衛隊、有限責任監査法人トーマツを経て2021年同社入社。管理部長、執行役員CFO等を歴任し、2025年4月より現職。


社外取締役は、田名網尚(元マネックス証券代表取締役副社長)、中浜明光(中浜明光公認会計士事務所所長)、松井知行(弁護士法人三浦法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「セキュリティ事業」、「ソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) セキュリティ事業


警察や利用者からの情報提供、独自調査で収集した「迷惑情報データベース」を活用し、特殊詐欺やフィッシング詐欺、迷惑電話・SMSを自動で遮断・警告するサービスを提供しています。モバイル向けアプリや固定電話向け端末などを通じて、一般消費者の安全な通信環境を守っています。

主な収益源は、提携する通信キャリア(ソフトバンク、NTTドコモ、KDDI)が提供するオプションパックの契約数や利用者数に応じた収益分配です。また、金融機関へのデータベース提供も行っています。運営はトビラシステムズが行っています。

(2) ソリューション事業


法人向けに、オフィス電話の業務効率化やセキュリティ対策を行う製品・サービスを提供しています。通話録音や迷惑電話ブロック機能を備えた「トビラフォン Biz」や、スマートフォンで会社の電話番号を利用できるクラウドPBX「トビラフォン Cloud」が主力製品です。

収益は、サービスの導入企業から受け取る初期費用や月額利用料、および販売代理店を通じた機器販売代金等から構成されています。近年はカスタマーハラスメント対策やテレワーク需要を取り込み、契約数を伸ばしています。運営はトビラシステムズが行っています。

(3) その他


上記セグメントに含まれない事業として、システムの受託開発等を行っています。ただし、同社の方針として本事業の積極的な展開は行っていません。

収益は、顧客からのシステム開発受託による対価ですが、事業規模は小さく、全社収益への寄与は限定的です。運営はトビラシステムズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は5期連続で増加しており、順調な成長トレンドを描いています。利益面でも、経常利益・当期純利益ともに増加傾向にあり、高い利益率を維持しながら事業拡大を続けています。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 14億円 17億円 21億円 24億円 28億円
経常利益 6億円 5億円 7億円 8億円 9億円
利益率(%) 40.6% 31.6% 33.0% 34.5% 32.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 3億円 5億円 6億円 6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。営業利益率も30%を超える高水準を維持しており、収益性の高いビジネスモデルであることがわかります。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 24億円 28億円
売上総利益 17億円 19億円
売上総利益率(%) 70.9% 69.0%
営業利益 8億円 9億円
営業利益率(%) 34.6% 32.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.4億円(構成比23%)、広告宣伝費が1.6億円(同16%)、支払手数料が1.5億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


セキュリティ事業はモバイル向けや固定電話向けが安定的に推移し、増収を確保しました。ソリューション事業は「トビラフォン Cloud」等の販売拡大により売上高が大幅に増加し、利益も倍増するなど、成長ドライバーとしての役割を果たしています。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期) 利益(2024年10月期) 利益(2025年10月期) 利益率
セキュリティ事業 18億円 19億円 13億円 13億円 70.2%
ソリューション事業 6億円 9億円 0.7億円 2億円 16.8%
その他 - - - - -
調整額 - - △6億円 △6億円 -
連結(合計) 24億円 28億円 8億円 9億円 32.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で稼いだ現金を投資や借入返済に充てており、財務基盤は安定的です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.2%で市場平均を下回っています。

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF 13億円 18億円
投資CF △0.8億円 △14億円
財務CF △4億円 △5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐトビラになる」を企業理念として掲げています。この理念に基づき、「誰かがやらなければならないが、誰もが実現できていない社会的課題の解決を革新的なテクノロジーで実現すること」を事業方針の軸とし、特殊詐欺防止などの社会課題解決に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は「失敗を恐れず挑戦する場の実現」を重視しています。フレックスタイム制の導入やリモートワークなど、個人の裁量を尊重した環境づくりを進めるとともに、資格取得支援やカンファレンス参加費用の負担などを通じて、個人のスキルアップとチーム力の向上を推奨する風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2028」を策定し、2028年10月期に向けた経営目標を設定しています。収益基盤の拡大と資本収益性の確保の両立を目指しています。

* 売上高:60億円
* 営業利益:17億円
* 当期純利益:11億円
* ROE(自己資本利益率):22.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2028」の達成に向け、「トビラフォン Cloud」および「トビラフォン Biz」の販売加速、通信キャリア向け販売の拡充、新規事業の創出、人材の拡大・成長の5つを重点施策としています。特に法人向けクラウドPBX市場でのシェア拡大や、代理店チャネルの強化、M&Aも含めた新規事業展開に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、優秀な人材の確保と育成を最重要の経営課題と位置づけています。特にITエンジニアや営業職の採用に注力し、適正な評価・報酬制度の構築に努めています。また、失敗を恐れず挑戦できる環境づくりとして、フレックスタイム制や株式報酬制度を導入し、社員の自律的な成長とチームへの貢献を促進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 34.6歳 3.7年 6,238,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.7%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均残業時間(月間)(15.5時間)、男性労働者の育児休業取得率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新・新技術による陳腐化


AIを活用した迷惑電話やSMSの手口など、詐欺技術の進化に対策が追いつかない場合、サービスが陳腐化する可能性があります。また、OS等の動作環境の仕様変更により、期待した機能が提供できなくなるリスクもあります。

(2) 他社・他業界からの参入


市場拡大に伴い、他業界や海外企業を含む新規参入者が増加し、競争が激化する可能性があります。同社のビジネスモデルに類似したサービスが登場した場合、優位性が低下し、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 特定取引先への依存


売上の約6割を国内大手通信キャリアに依存しています。これらの取引先との契約更新がなされない場合や、取引条件の変更、新サービスの契約遅延などが発生した場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報漏えい・セキュリティリスク


サービス提供に伴い顧客の個人情報や、警察等から提供される機密性の高いデータベースを保有しています。サイバー攻撃や人為的ミスによりこれらが漏えいした場合、社会的信用を失い、事業存続に関わる重大な影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。