※本記事は、tripla株式会社 の有価証券報告書(第11期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. triplaってどんな会社?
宿泊業界のDXを支援するIT企業です。公式サイト予約システムやAIチャットボットなどをSaaS型で提供しています。
■(1) 会社概要
2015年に設立され、2017年にAIチャットボット「tripla Bot」、2019年に宿泊予約エンジン「tripla Book」の提供を開始しました。2022年に東証グロース市場へ上場を果たしています。2023年以降はインドネシア、台湾、シンガポール等の企業を相次いで子会社化し、アジアを中心とした海外展開を加速させています。
連結従業員数は190名(単体105名)です。筆頭株主は創業メンバーで代表取締役CPOの鳥生格氏、第2位は同じく創業メンバーで代表取締役CEOの高橋和久氏です。第3位には米国の証券会社であるInteractive Brokers LLCが名を連ねています。経営陣が主要株主となっており、オーナーシップを持った経営体制です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 鳥生 格 | 19.20% |
| 高橋 和久 | 13.29% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC(常任代理人 インタラクティブ・ブローカーズ証券株式会社) | 5.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役CEOは高橋和久氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高橋 和久 | 代表取締役CEO | フィリップモリスジャパン、A.T.Kearney、アマゾンジャパン、日本コカ・コーラを経て、2015年に同社取締役就任。2016年6月より現職。 |
| 鳥生 格 | 代表取締役CPO | 日本オラクル、日本コカ・コーラ、アマゾンジャパンを経て、2015年に同社(旧株式会社umami)設立、代表取締役就任。 |
| 岡 義人 | 取締役CFO | 監査法人トーマツ、ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)、Wovn Technologiesを経て、2020年6月に同社入社。同年9月より現職。 |
| 山本 雅輝 | 取締役 | 農林中央金庫、農中証券(現みずほ証券)、外資系証券数社を経て、2013年オフィス雅代表取締役就任。2021年11月より現職。 |
| 市橋 景子 | 取締役 | 弁護士法人内田・鮫島法律事務所所属。METATEAM社外監査役などを経て、2025年2月より現職。 |
社外取締役は、山本雅輝(オフィス雅代表取締役)、市橋景子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ホスピタリティソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 宿泊予約システム「tripla Book」
宿泊施設の公式サイト上で動作するクラウド型予約システムを提供しています。最短2クリックで予約が完了するUI/UXや、OTA(オンライントラベルエージェント)との価格比較機能、会員機能などを備え、宿泊施設の自社予約比率向上を支援しています。主な顧客はホテルや旅館等の宿泊施設です。
収益は、宿泊施設から受け取る月額基本料金(固定収益)と、宿泊実績や決済金額に応じた従量料金(従量収益)で構成されています。日本、台湾、韓国、東南アジア等で展開しており、運営は主にtriplaや海外子会社が行っています。
■(2) AIチャットボット「tripla Bot」
宿泊施設の公式サイトにチャットボットを表示し、AIが自動回答するサービスです。宿泊予約の受付やFAQ対応を自動化し、施設の業務効率化を支援します。AIで回答できない質問にはオペレーターが対応するハイブリッド方式も採用しています。
収益モデルは、AI回答のみのプランやオペレーター対応を含むプランに応じた月額料金および従量課金です。多言語対応(5言語以上)しており、インバウンド需要にも対応しています。運営は主にtriplaが行っています。
■(3) その他ソリューション
CRM・MAツールの「tripla Connect」、広告運用代行の「tripla Boost」、チャネルマネージャー「tripla Link」などを提供しています。これらは「tripla Book」等と連携し、集客から予約管理、顧客分析までを一気通貫で支援するエコシステムを形成しています。
収益は、各サービスの月額利用料や従量料金、広告運用手数料などです。また、海外子会社を通じて現地向けのチャネルマネージャーやウェブサイト制作サービスなども提供しており、グループ全体で宿泊施設の収益最大化を支援しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は順調に拡大しており、特に直近の第11期は前期比で大幅な増収となりました。利益面でも、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益ともに大きく伸長しており、高い利益率を維持しながら成長を続けています。M&Aによる海外事業の取り込みや既存サービスの導入施設数増加が寄与しています。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 19億円 | 26億円 |
| 経常利益 | 2.4億円 | 5.8億円 |
| 利益率(%) | 13.1% | 22.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.1億円 | 5.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の大幅な増加に伴い、営業利益も倍増近くまで拡大しました。事業規模の拡大により収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 19億円 | 26億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 2.7億円 | 5.2億円 |
| 営業利益率(%) | 14.4% | 20.2% |
※同社の損益計算書では売上原価と販売費及び一般管理費が「営業費用」として一括表示されているため、売上総利益は記載していません。
営業費用のうち、給与手当が7.9億円(構成比38%)、通信費が2.7億円(同13%)、業務委託料が1.9億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全サービスで売上が増加しました。主力サービスの「tripla Book」が大きく伸長したほか、海外子会社の連結効果などにより「その他」も増加しています。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) |
|---|---|---|
| tripla Book | 13.0億円 | 18.1億円 |
| tripla Bot | 3.7億円 | 4.1億円 |
| その他 | 2.0億円 | 3.5億円 |
| 連結(合計) | 19億円 | 26億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
triplaは、事業運営上必要な資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。当連結会計年度は、営業活動により多くの資金を獲得し、預金増加などが主な要因となりました。投資活動では、定期預金の減少により資金の獲得に繋がりました。財務活動では、長期借入金の返済により資金を使用しました。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 40億円 | 85億円 |
| 投資CF | -10億円 | 0.6億円 |
| 財務CF | 11億円 | -2.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はパーパスとして「最高の旅行ソリューションを通じて、宿泊施設の持続可能な成長と、世界中の地域社会の発展を支援する。」を掲げています。宿泊施設の利益最大化や地域社会との連携、多様なニーズへの対応を支援することで、地域観光産業の持続的な発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「Core Value(行動指針)」として7つの項目を定めています。特に「Market-In for Customer Satisfaction(顧客満足実現へのマーケットイン)」を掲げ、市場が真に望むものを提供することを重視しています。また、「Ownership(オーナーシップ)」や「Challenge for Innovation(イノベーションへの挑戦)」など、自律的な行動と革新を推奨する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標として、営業収益と営業利益を重視しています。また、主力サービスである「tripla Book」の導入施設数および取扱高・GMV(流通取引総額)を重要なKPIとして設定し、これらの拡大による継続的かつ累積的な収益増加を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「tripla Book」を中心に、チャットボットやCRM、決済サービスなどの周辺プロダクトの導入施設数を拡大し、クロスセルを推進することで顧客単価の向上を図ります。また、APAC(アジア太平洋地域)を中心とした海外販路の拡大や、M&Aを通じた海外子会社の活用により、グローバルでの事業成長を加速させます。
* 各サービスの導入施設数拡大と取扱高・GMVの増加
* サービス間のクロスセル推進による顧客単価向上
* 海外子会社の活用とPMIによるプロダクト強化・販路拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
パーパスの実現に向け、エンジニア等の必要な人材を継続的に採用しています。世界16か国から集まった多様性の高い企業文化を持ち、多言語でのコミュニケーションが行われています。また、ストックオプションの付与や資格取得支援制度などを通じ、従業員のインセンティブ向上やスキルアップを支援し、優秀な人材の確保と定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 35.7歳 | 4.2年 | 6,648,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 宿泊市場の変動リスク
同社の事業は宿泊業界に関連しており、感染症の流行、自然災害、国際紛争、為替変動などの外部要因により旅行需要が減退した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に宿泊予約に応じた従量収益は、市場環境の変化による影響を直接的に受けやすい性質があります。
■(2) 新規事業・サービスの立上げ
さらなる成長のために新規サービスの開発や提供を行っていますが、計画通りに顧客への導入が進まない場合や、収益化に想定以上の時間を要する可能性があります。これにより先行投資負担が増加し、利益率が低下するリスクがあります。
■(3) 海外事業におけるリスク
アジアを中心に海外展開を進めていますが、PMI(買収後の統合)の遅れや、現地の商慣習・法規制への対応コスト増加などが生じる可能性があります。また、為替変動による業績への影響や、海外子会社におけるガバナンス・セキュリティ管理の不備がリスク要因となります。
■(4) システムの安定性とセキュリティ
クラウド型サービスを提供しているため、システム障害やサイバー攻撃によるサービス停止は重大なリスクです。特に、2025年12月にはインドネシア子会社で不正アクセスの痕跡が確認されており、セキュリティ対策の強化が急務となっています。情報漏洩やサービス停止が発生した場合、信用の失墜や損害賠償などにより業績に影響を与える可能性があります。



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