ベルグアース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ベルグアース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場する野菜苗の生産販売大手。主力事業の野菜苗・苗関連事業を中心に、農業資材販売や小売事業も展開しています。直近の業績は、売上高が前期比2.9%増の73億円と伸長した一方、経常損失は拡大しましたが、最終利益は増益を確保しました。


※本記事は、ベルグアース株式会社 の有価証券報告書(第25期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ベルグアースってどんな会社?


同社は、野菜苗の生産・販売を主力事業とする農業系企業です。特に高度な技術を要する接ぎ木苗の生産に強みを持ち、全国規模で事業を展開しています。

(1) 会社概要


2001年に愛媛県で設立され、2006年には閉鎖型苗生産装置を新設するなど技術開発に注力してきました。2011年に大阪証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場し、その後も国内外へ拠点を拡大。2021年には伊予農産を完全子会社化するなど、M&Aを通じた事業基盤の強化も進めています。

連結従業員数は313名、単体では236名です。筆頭株主は創業者の山口一彦氏で、第2位は政策投資を行うアグリビジネス投資育成、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
山口 一彦 10.13%
アグリビジネス投資育成 7.04%
松岡 馨 4.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は山口一彦氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
山口 一彦 代表取締役社長 1996年山口園芸設立。2001年同社設立時に代表取締役専務就任、2003年より現職。ベルグ福島やファンガーデン等のグループ会社代表も兼務。
山口 眞由子 専務取締役 1996年山口園芸専務取締役。同社常務取締役等を経て、2020年11月より専務取締役総務本部管掌として現職。
小谷 近之 常務取締役 1983年協和発酵工業入社。協和バイオ社長、Kyowa Kirin執行役員等を経て、2023年1月より常務取締役経営企画本部及び財務経理本部管掌として現職。


社外取締役は、宮側浩一(伊予銀行営業本部地域産業担当)、野田修(元三井物産アグリサイエンス事業部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「野菜苗・苗関連事業」、「農業・園芸用タネ資材販売事業」、「小売事業」を展開しています。

(1) 野菜苗・苗関連事業


主にトマト、キュウリ、ナスなどの野菜接ぎ木苗を生産し、全国の野菜生産者や農業法人、ホームセンター等の量販店向けに販売しています。接ぎ木技術や閉鎖型育苗施設を活用した高品質な苗の安定供給が特徴です。
収益は、顧客への苗の販売代金から得ています。運営は主にベルグアース、ベルグ福島、九重おひさまファームなどが行っています。

(2) 農業・園芸用タネ資材販売事業


生産者や家庭園芸愛好家向けに、農業資材の仕入販売や、培養土などのオリジナル商品の販売、種子のコーティング加工などを行っています。また、海外からの優良品種の選定・販売も手掛けています。
収益は、資材や種子の販売代金から得ています。運営は主にベルグアース、伊予農産、むさしのタネなどが行っています。

(3) 小売事業


一般消費者向けに、野菜苗、花苗、農業園芸資材などを実店舗およびインターネットを通じて販売しています。家庭園芸からプロ農家まで幅広い層に提案を行っています。
収益は、店舗やECサイトでの商品販売代金から得ています。運営は主にファンガーデンが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は54億円から73億円へと着実に拡大しています。一方、利益面では経常損益が赤字と黒字を行き来しており、安定的な収益確保が課題となっています。当期は売上高が増加したものの、経常損失は継続しています。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 54億円 64億円 71億円 71億円 73億円
経常利益 -0.6億円 -0.4億円 1.1億円 -0.2億円 -0.3億円
利益率(%) -1.1% -0.7% 1.5% -0.2% -0.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.3億円 2.0億円 0.8億円 0.4億円 0.5億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は増加しましたが、売上原価の増加率が売上高の伸びを上回り、売上総利益は微減となりました。販売費及び一般管理費も増加したことで、営業損益は黒字から赤字に転じています。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 71億円 73億円
売上総利益 17億円 17億円
売上総利益率(%) 24.6% 23.5%
営業利益 0.2億円 -0.3億円
営業利益率(%) 0.3% -0.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4億円(構成比26%)、荷造運賃費が4億円(同24%)を占めています。売上原価については内訳データがありません。

(3) セグメント収益


主力の野菜苗・苗関連事業は売上が伸長しましたが、コスト増により減益となりました。農業・園芸用タネ資材販売事業は増益を確保しましたが、小売事業は赤字が継続しています。全体として野菜苗事業への依存度が高い構造です。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期) 利益(2024年10月期) 利益(2025年10月期) 利益率
野菜苗・苗関連事業 62億円 64億円 5億円 4億円 7.0%
農業・園芸用タネ資材販売事業 8億円 8億円 0.1億円 0.1億円 1.5%
小売事業 1億円 1億円 -0.1億円 -0.1億円 -11.8%
調整額 -0.3億円 -0.2億円 -5億円 -5億円 -
連結(合計) 71億円 73億円 0.2億円 -0.3億円 -0.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ現金を投資に回しつつ、不足分を財務活動で調達する「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF 1.1億円 3.3億円
投資CF -2.4億円 -5.7億円
財務CF 0.5億円 2.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%でスタンダード市場平均(7.2%)を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.9%でスタンダード市場平均(57.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「日本の農業の為になる、役に立つ会社になる事で、農業に革命を興します。ひいてはそれが人々の食と暮らしを豊かにします。」という経営理念を掲げています。日本から世界の農業に革命を興すことができる企業を目指し、企業価値の向上に努めています。

(2) 企業文化


「良い苗をいつでも・どこでも・いくらでも」を経営方針とし、使いやすさや環境への配慮、顧客一人ひとりに合った苗づくりを目指す文化があります。閉鎖型育苗施設などの設備投資とパートナー農場との連携により、安定供給体制の構築を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2033年に向けて「日本の農業に革命を」という理念の下、量から質、売上から利益、農業から製造業へのマインド転換を目指す中期経営計画を策定しています。
* 2026年10月期 売上高:80億円
* 2026年10月期 営業利益:1.1億円
* 2026年10月期 親会社株主に帰属する当期純利益:0.5億円

(4) 成長戦略と重点施策


「苗事業の更なる拡大と収益力強化」「苗事業を起点とした事業領域の拡大」「新製品・新技術の開発」「事業インフラ強化」の4つを戦略として掲げています。特に、新規植物ワクチンの開発とオリジナル品種の開発を重要視し、苗事業から周辺領域へ深化させたフードバリューチェーンの構築に挑戦しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長のため、人的資本への投資を最重要課題と認識しています。社内外の研修制度拡充やリスキリング、自己啓発の推進を行い、能力・スキルの向上を図っています。また、農業志向人材だけでなく、女性、外国人、中途採用者など多様な人材を積極的に受け入れ、適材適所の配置とキャリア形成の機会提供に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 38.9歳 8.7年 4,005,289円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.4%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 62.3%
男女賃金差異(正規雇用) 84.8%
男女賃金差異(非正規) 63.7%


※男性育児休業取得率は、育児・介護休業法に基づく公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、温室効果ガス排出量 Scope1(2,436t-CO2)、温室効果ガス排出量 Scope2 ロケーション基準(2,168t-CO2)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 天候不順・異常気象による影響


主力事業である野菜苗の生産は、気温や日照等の天候の影響を強く受けます。猛暑や日照不足、台風などの異常気象が発生した場合、苗の品質低下や生産量の減少を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料・燃料価格の変動


種子や育苗資材、ハウス暖房用の重油・灯油などの価格変動リスクがあります。特に種子は海外採種が主流であり、現地の情勢により価格が高騰する場合があります。これらのコスト上昇を製品価格に転嫁できない場合、利益を圧迫する可能性があります。

(3) 病害虫の発生リスク


屋外ハウス栽培も行っているため、病害虫の侵入を完全に防ぐことは困難です。納品後に病害虫が発生した場合、補償問題や風評被害により受注が減少し、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 野菜苗・苗関連事業への依存


売上高および利益の大部分を野菜接ぎ木苗の生産販売に依存しています。国の政策変更や技術革新により接ぎ木苗の需要が減少した場合、事業全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。