北興化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北興化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北興化学工業は東証スタンダード市場に上場し、農薬とファインケミカル製品の製造・販売を主力としています。直近の業績は、国内農薬の販売好調や電子材料分野の受注増により増収増益の傾向にあります。財務面では営業キャッシュ・フローが安定してプラスで、積極的な設備投資を継続しており、健全な成長を遂げています。


※本記事は、北興化学工業株式会社の有価証券報告書(第76期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 北興化学工業ってどんな会社?


農薬ならびにファインケミカル製品の製造・販売を主たる事業として展開する化学メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1950年に野村鉱業の製薬部より分離独立し、北海道で農薬の生産・販売を開始しました。1961年に東証二部へ上場し、1972年にはファインケミカル部を設置して事業領域を拡大させました。1987年に東証一部へ指定替えとなり、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しています。

現在の従業員数は連結で742名、単体で629名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は不動産等を取り扱う野村殖産、第3位は化学メーカーの住友化学と、事業会社が上位に名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.88%
野村殖産 8.16%
住友化学 7.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は佐野健一が務めており、取締役8名のうち社外取締役は5名です。

氏名 役職 主な経歴
佐野健一 代表取締役社長 1981年4月同社入社。総務部長、企画部長等を経て2019年12月より代表取締役社長農薬事業グループ担当。2021年2月より現職。
早川伸一 取締役専務執行役員農薬事業グループ担当 1985年4月同社入社。東京支店長、製品企画部長等を経て2021年2月より取締役。2025年2月より現職。
濱田尚之 取締役常務執行役員ファインケミカル事業グループ担当 1988年4月同社入社。ファインケミカル製造部長や企画部長等を経て2022年2月より取締役。2025年7月より現職。


社外取締役は、垂水裕之(元Huckleberry Mines Ltd.社長)、田口芳樹(野村殖産代表取締役社長)、石尾勝(元日本医師会総合政策研究機構主任研究員)、中川登紀子(合同会社ヘアカラーマスター検定協会代表社員)、佐伯円香(慶應義塾大学特任准教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「農薬事業」「ファインケミカル事業」「繊維資材事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 農薬事業


水稲用除草剤などの農薬製品や農薬原体を製造・販売しており、全国農業協同組合連合会等を主要な顧客として製品を供給しています。

製品の販売から収益を得ており、運営は主に北興化学工業が行うほか、原料等の製造や一部販売を連結子会社の美瑛白土工業や北興産業が担っています。

(2) ファインケミカル事業


樹脂添加剤、医農薬中間体、電子材料原料等のファインケミカル製品を製造・販売し、信越化学工業などの化学メーカー等を顧客としています。

製品の販売から収益を得ており、運営は主に北興化学工業が行うほか、一部製造を中国の連結子会社である張家港北興化工有限公司が担っています。

(3) 繊維資材事業


産業用繊維素材等の環境に配慮した繊維資材商品を開発・販売しています。

製品の販売から収益を得ており、運営は連結子会社の村田長が行っています。

(4) その他


報告セグメントに含まれない事業として、石油製品等の販売を行っています。

製品の販売から収益を得ており、運営は連結子会社のホクコーパツクス等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が403億円から491億円へと順調に拡大しています。経常利益率も概ね12%台で安定して推移しており、当期純利益も毎期着実に増加するなど、堅調な成長を維持しています。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 403億円 449億円 452億円 462億円 491億円
経常利益 38億円 59億円 55億円 57億円 61億円
利益率(%) 9.5% 13.2% 12.1% 12.3% 12.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 25億円 29億円 33億円 39億円 44億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も順調に伸びています。売上総利益率は26%前後で安定しており、営業利益率も約10%を維持し、着実な本業の収益力を示しています。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 462億円 491億円
売上総利益 121億円 127億円
売上総利益率(%) 26.1% 25.9%
営業利益 45億円 49億円
営業利益率(%) 9.8% 10.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料・賞与が20億円(構成比26%)、研究開発費が17億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


農薬事業は国内水稲剤・園芸剤の販売好調により大きく増収し、利益も倍増しています。一方、ファインケミカル事業は電子材料分野の受注増で増収となったものの、中国子会社の減益等により微減益となりました。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期) 利益(2024年11月期) 利益(2025年11月期) 利益率
農薬事業 267億円 294億円 4億円 8億円 2.9%
ファインケミカル事業 176億円 178億円 41億円 40億円 22.5%
繊維資材事業 19億円 19億円 0.9億円 0.8億円 4.2%
その他 0.1億円 0.1億円 -0.1億円 -0.1億円 -183.3%
連結(合計) 462億円 491億円 45億円 49億円 10.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

北興化学工業は、自己資本比率が68.2%と安定した財務基盤を維持しています。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加や仕入債務の増加により、増加しました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得により減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式取得目的の信託設定や配当金の支払いにより減少しました。これらの活動の結果、現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 61億円 76億円
投資CF -13億円 -24億円
財務CF -18億円 -18億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会貢献」「環境」「技術」を経営のキーワードとしています。全ての人々の幸せのため、食糧の安定供給に寄与する安全で安心な農薬製品および産業活動を幅広く支えるファインケミカル製品を社会に提供していくことを企業理念として掲げています。

(2) 企業文化


持続的かつ安定的な成長を実現し、国内外の産業の発展と豊かな社会づくりに貢献する文化を重視しています。また、取締役会を中心とした経営の自己規律のもと、企業価値の向上を図るとともに、社会に信頼される企業であり続けることを行動の基盤としています。

(3) 経営計画・目標


2029年度をゴールとする長期経営計画(HOKKO Value Up Plan 2029)および2024年度を初年度とする第2次3ヵ年経営計画(2nd Stage)を策定しています。業績が順調に推移していることから、それぞれの計画目標を上方修正し、収益基盤・生産基盤の強化に取り組んでいます。

* 2026年度売上高:520億円
* 2026年度経常利益:61億円
* 2029年度売上高:550億円
* 2029年度経常利益:68億円+α

(4) 成長戦略と重点施策


成長投資に集中的に取り組む方針であり、ファインケミカル事業の生産能力増強やサステナビリティ向上、次世代領域の創出に向けて戦略的設備投資・投融資枠100億円を設定しています。さらに、農薬事業の国内販売強化や海外展開拡大を進め、両事業を両輪とした経営を深化させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業を支える源は社員であるとの考えのもと、「新たな分野にチャレンジする人材の育成」および「社員が活躍できる職場づくり」を重要課題と位置づけています。階層別研修や自己啓発プログラムの提供により能力開発を支援するとともに、多様な人材が活躍できる職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 44.8歳 18.5年 6,937,985円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 63.6%
男女賃金差異(全労働者) 65.1%
男女賃金差異(正規雇用) 71.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 農薬製品販売に対する諸条件の影響


農薬製品の販売は、農業政策の変化、市場動向、天候、病害虫の発生状況等によって影響を受けます。特に、気候変動を含めて予期せぬ急激で大きな変動が生じた場合には、同社グループの事業が大きな影響を受ける可能性があります。

(2) 急速な技術革新による影響


ファインケミカル製品の市場は、新規企業の市場参入や廉価製品の台頭などにより価格競争にさらされています。想定外の技術革新や急激な市場変化に適切に対応できなかった場合、同社グループの事業が影響を受ける可能性があります。

(3) 原材料の調達による影響


同社グループで製造している製品の原材料等の調達は、国内外の状況や原油、ナフサ価格などの動向の影響を受けます。購入先における法規制の強化やサプライチェーンの混乱等の支障が生じた場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

北興化学工業の転職研究 2025年11月期決算に見るキャリア機会

北興化学工業の2025年11月期決算は、経常利益が過去最高を更新。農薬事業の収益改善に加え、半導体素材を主軸とするファインケミカル事業への構造転換を加速させています。長期目標の上方修正や岡山工場の専用化など、エンジニアや研究職、グローバル営業職にとって見逃せない変革の全容を整理します。