川口化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

川口化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所(スタンダード市場)および名古屋証券取引所(メイン市場)に上場する化学メーカーです。主な事業はゴム薬品や樹脂薬品など化学工業薬品の製造販売です。直近の決算では、売上高は88億円と前期比で微減しましたが、経常利益は4億円と増益になり、減収増益で着地しました。


※本記事は、株式会社川口化学工業 の有価証券報告書(第124期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 川口化学工業ってどんな会社?


ゴム薬品や樹脂薬品等の化学品製造を主力とする老舗化学メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1935年に写真薬品の製造企業化を目的に設立され、1937年に現在の組織となりました。1961年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2022年の市場区分見直しを経てスタンダード市場へ移行しています。2010年には中国上海に現地法人を設立して海外展開を進め、2024年には名古屋証券取引所メイン市場へ上場を果たしました。

2025年11月末時点の従業員数は連結で160名、単体で155名です。筆頭株主は同社製品の販売や原材料の仕入先である山田化成株式会社で16.60%を保有しており、第2位は同社の第2位株主でもある正喜商事株式会社が9.92%を保有しています。事業上の関係が深い企業が主要株主となっています。

氏名 持株比率
山田化成 16.60%
正喜商事 9.92%
いずも産業 3.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山田秀行氏が務めています。取締役会における社外取締役の比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
山田秀行 代表取締役社長 2000年入社。取締役総務部長、業務部長、常務取締役を経て2021年2月より現職。
萱野高志 常務取締役 1981年入社。研究開発部長、川口工場長、取締役を経て2019年2月より現職。
泉本勝 常務取締役営業部長 1994年入社。営業部専門部長大阪営業所長、取締役大阪営業所長、営業部長を経て2024年2月より現職。
安藤博之 取締役 1985年入社。業務部長兼生産物流グループリーダー、川口工場長を経て2018年2月より現職。
本間義隆 取締役経理部長 2020年入社。経理部専門部長、経理部長を経て2023年2月より現職。


社外取締役は、宮本浩士(元三菱UFJ銀行支店長)、石上尚弘(弁護士)、鈴木俊介(経営技法代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化学工業薬品事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

(1) 化学工業薬品事業


ゴム薬品(加硫促進剤、老化防止剤など)、樹脂薬品(酸化防止剤など)、中間体(染料・顔料・医農薬中間体)、および機能性化学品等のその他工業薬品の製造販売を行っています。自動車関連製品や医療・電子材料など多岐にわたる分野で使用されています。

主な収益源は、各化学製品の販売による対価です。日本国内だけでなく、アジアやアメリカなどの海外市場へも輸出販売を行っています。運営は、親会社である川口化学工業および中国の連結子会社である開溪愛(上海)貿易有限公司が行っています。

(2) 不動産賃貸事業


同社グループが保有する不動産の賃貸を行っています。

収益源は、保有する土地等の賃貸に伴う賃貸料収入です。運営は川口化学工業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年11月期から2025年11月期までの推移を見ると、売上高は79億円から89億円前後まで増加傾向にありましたが、直近では88億円と微減しました。経常利益は3億円台から4億円台で推移し、直近では4億円と安定した収益性を維持しています。当期利益も概ね2億円から3億円台で推移しており、堅実な業績トレンドを示しています。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 79億円 84億円 86億円 89億円 88億円
経常利益 4億円 3億円 3億円 4億円 4億円
利益率(%) 4.9% 3.6% 4.0% 4.4% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.4億円 1.8億円 2.5億円 3.2億円 2.8億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は89億円から88億円へとわずかに減少しましたが、売上総利益は16億円を維持し、売上総利益率は18.1%から18.6%へ改善しています。販管費の抑制効果もあり、営業利益は3.8億円から4.3億円へ増加し、営業利益率も4.2%から4.8%へと上昇しました。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 89億円 88億円
売上総利益 16億円 16億円
売上総利益率(%) 18.1% 18.6%
営業利益 4億円 4億円
営業利益率(%) 4.2% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、社員給料手当が3.4億円(構成比28%)、研究開発費が2.5億円(同21%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の製造コストが大部分を占めています。

(3) セグメント収益


化学工業薬品事業は売上高が微減しましたが、利益および利益率は向上しており、収益性が改善しています。不動産賃貸事業は売上規模は小さいものの、高い利益率を維持し安定的に収益に貢献しています。全社的には減収ながらも、主力の化学品事業の利益増が全体の増益を牽引しました。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期) 利益(2024年11月期) 利益(2025年11月期) 利益率
化学工業薬品事業 89億円 88億円 3.5億円 4.0億円 4.5%
不動産賃貸事業 0.4億円 0.4億円 0.3億円 0.3億円 79.8%
連結(合計) 89億円 88億円 3.8億円 4.3億円 4.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)に加え、借入等による資金調達(財務CFプラス)を行い、それらを設備投資等(投資CFマイナス)に充てる「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 1.4億円 8.3億円
投資CF -3.1億円 -7.4億円
財務CF -1.4億円 3.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、有益な化学品の研究開発、製造、販売によって社会に貢献することを基本としています。同時に、事業の成長発展を通じて社員の生活向上を図り、利潤の適正な配分をもって株主の負託に応えることを経営の基本理念として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、持続的な成長のために、サステナビリティ経営の推進やリスク管理の徹底を重視する文化を持っています。環境汚染の予防を社会的責務とし、環境マネジメントシステムを通じて環境負荷の低減に努めています。また、人材を重要な経営資源と位置づけ、教育・評価・処遇の一体運用や、活力ある職場環境の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、将来にわたる持続的成長のために、5つの事業戦略を柱とする中期経営計画「ACCEL2026」を推進しています。最終年度に向けて、売上高経常利益率を重視し、継続的な収益基盤の確立と財務体質の改善を目指しています。具体的な数値目標としては、収益構造の安定化に向けた指標の改善を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の最終年に向け、環境変化に対応し企業価値を向上させるため、事業基盤の強化、組織力の向上、マネジメント強化に重点的に取り組みます。特に、増強設備の最大活用による生産能力向上と工程最適化、研究開発と連動した新製品の市場投入加速を進めます。また、地政学リスク等への備えとして調達・在庫管理を徹底します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を重要な経営資源と位置づけ、教育・評価・処遇の一体運用を進めています。人事評価制度の改定によりモチベーション向上とキャリアパスの明確化を図るとともに、情報共有や目標管理の標準化を通じて組織力の底上げを目指しています。また、1on1面談の実施や定年延長(65歳へ)の検討など、多様な人材が能力を発揮できる環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 41.7歳 15.8年 6,780,000円


※平均年間給与は、賞与及び時間外割増を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内外の経済情勢・需要変動


同社グループの製品は自動車、医療、電子材料など多岐にわたる分野で使用されており、これらの分野の経済状況の影響を受けます。国内外の経済情勢や需要の変動が、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(2) 原材料価格の高騰


主要原料は原油を基礎としているため、ナフサ価格や為替相場の変動の影響を受けます。また、需給バランスの変化や地政学的リスクによる供給不足が生じた場合、原料価格が高騰し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 価格競争


市場における国際競争が激化しており、競合他社との競争や新規参入により、厳しい価格競争にさらされる可能性があります。これにより製品価格の下落やシェアの低下が起き、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 原材料の調達、サプライチェーンに関するリスク


原材料の調達遅延や供給停止が発生した場合、生産活動に支障をきたす恐れがあります。地政学リスクや物流の停滞、サプライヤーの事故や品質不良などが要因となり得、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。