※本記事は、株式会社不二越 の有価証券報告書(第143期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 不二越ってどんな会社?
不二越は、工具やベアリングなどの精密部品から、工作機械、産業用ロボットまでを手掛ける総合機械メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1928年に富山市で機械工具の国産化を目指して創立され、金切りのこ刃の製造を開始しました。1939年にはベアリング、1943年には工作機械、1969年には産業用ロボットの製造販売を開始し、事業を多角化しています。1949年に東京証券取引所へ上場し、2017年には本社機能を東京へ一本化しました。現在はグローバルに製造・販売拠点を展開しています。
2025年11月30日時点で、連結従業員数は6,532名、単体従業員数は2,965名です。筆頭株主は那智わねい持株会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社の従業員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 那智わねい持株会 | 12.73% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 8.68% |
| ナチ不二越従業員持株会 | 6.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長執行役員は黒澤勉氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒 澤 勉 | (代表取締役)取締役社長執行役員 | 1989年入社。軸受事業部長、取締役軸受構造改革担当、調達本部長などを経て、2023年2月より現職。 |
| 原 英 明 | (代表取締役)取締役専務執行役員営業統括、国内営業担当、中国事業担当 | 1983年入社。取締役不二越(中国)有限公司ロボットビジネスセンター長、常務取締役などを経て、2024年2月より現職。 |
| 本 間 博 夫 | 取締役会長執行役員 | 1970年入社。常務取締役、取締役副社長、取締役社長、取締役会長を経て、2023年2月より現職。 |
| 古 澤 哲 | 取締役常務執行役員経営企画担当、海外営業担当、人事担当コンプライアンス本部長 | 1982年入社。取締役営業戦略本部副本部長、取締役経営企画部長などを経て、2023年2月より現職。 |
| 澤 﨑 裕 一 | 取締役常務執行役員財務担当、財務部長、総務担当、リスク管理総括 | 1986年入社。財務部長、取締役財務担当を経て、2023年2月より現職。 |
| 佐々木 法 嗣 | 取締役執行役員アジア(韓国・台湾・アセアン・インド・ドバイ)営業担当、二輪営業担当 | 1986年入社。取締役営業戦略本部長、執行役員韓国営業担当などを経て、2025年2月より現職。 |
| 国 崎 晃 | 取締役執行役員技術開発本部長、調達担当 | 1990年入社。取締役ロボット事業部長、執行役員DX推進担当を経て、2025年2月より現職。 |
| 小 林 昌 行 | 取締役(常勤監査等委員) | 1977年入社。財務部長、取締役、常務取締役、常勤監査役を経て、2023年2月より現職。 |
社外取締役は、岡部洋(元クボタパイプシステム事業ユニット理事)、山崎昌一(元北陸銀行執行役員)、澤近泰昭(元理研製鋼代表取締役社長)、後藤恵実(税理士法人深代会計事務所税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「機械工具」、「部品」、「その他」事業を展開しています。
■(1) 機械工具事業
切削工具、工作機械、産業用ロボットの製造・販売を行っています。自動車産業をはじめとする幅広い製造業の現場において、加工精度の向上や生産ラインの自動化・効率化に貢献する製品を提供しています。
収益は、主に工具やロボットシステム等の製品販売代金として顧客から受け取ります。運営は、主に同社および国内外の製造・販売子会社が行っています。
■(2) 部品事業
各種ベアリング(軸受)および油圧機器の製造・販売を行っています。ベアリングは自動車や産業機械の回転部分に不可欠な部品であり、油圧機器は建設機械や産業機械の駆動制御に使用されます。
収益は、自動車メーカーや産業機械メーカー等への製品販売代金として受け取ります。運営は、主に同社および国内外の製造・販売子会社が行っています。
■(3) その他の事業
特殊鋼、工業炉などの製造・販売を行っています。特殊鋼は工具やベアリングの素材として自社製品の競争力を支えるほか、外部への販売も行っています。また、物流や情報処理等のサービスも含みます。
収益は、製品の販売代金やサービスの提供対価として受け取ります。運営は、同社および関連する子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2,300億円から2,600億円台で推移しています。第142期に利益率が低下しましたが、第143期には回復傾向を示しています。
| 項目 | 2021年11月期 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,291億円 | 2,581億円 | 2,655億円 | 2,399億円 | 2,359億円 |
| 経常利益 | 145億円 | 171億円 | 110億円 | 42億円 | 84億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 6.6% | 4.2% | 1.8% | 3.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 46億円 | 93億円 | 46億円 | 34億円 | 53億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高は微減となりましたが、売上総利益および営業利益は増加しており、利益率の改善が見られます。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,399億円 | 2,359億円 |
| 売上総利益 | 503億円 | 529億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.0% | 22.4% |
| 営業利益 | 66億円 | 98億円 |
| 営業利益率(%) | 2.8% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が171億円(構成比40%)、その他経費が94億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
機械工具事業は中国のロボット需要減少等の影響で減収となりましたが、固定費削減等により増益となりました。部品事業は建設機械向けが減少しましたが、自動車向けの回復等で売上は横ばい、構造改革の効果で大幅な増益を達成しました。その他事業は特殊鋼の需要減により減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年11月期) | 利益(2024年11月期) | 利益(2025年11月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機械工具事業 | 775億円 | 734億円 | 39億円 | 43億円 | 5.8% |
| 部品事業 | 1,464億円 | 1,473億円 | 17億円 | 50億円 | 3.4% |
| その他の事業 | 160億円 | 152億円 | 11億円 | 5億円 | 3.1% |
| 調整額 | -50億円 | -55億円 | 0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 2,399億円 | 2,359億円 | 66億円 | 98億円 | 4.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」を示しています。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 315億円 | 179億円 |
| 投資CF | -76億円 | -53億円 |
| 財務CF | -244億円 | -159億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「世界に誇れるものづくりの技術」を経営理念として掲げています。この理念のもと、企業価値の向上を最重要課題とし、持続的な成長の実現に向けて、ロボット事業を会社の中核として育成することを中長期的な運営方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「人材 企業は人なり」という理念を持ち、企業と人は一体であり人材こそが価値の源泉であると考えています。多様な人材が活発に議論し、新しい価値を創造する挑戦的な風土づくりを推進するとともに、安全を全てに優先する現場重視の文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、長期ビジョンの実現に向けたマイルストーンとして、以下の経営指標を掲げています。
* 海外売上高比率:60%
* 営業利益率:10%
■(4) 成長戦略と重点施策
自動車分野のEV化やものづくりのDX・AI化といった産業構造の変革に対応するため、ロボットを事業成長の中核に据え、高付加価値なソリューションを提供していく方針です。特に海外市場(米国、インド等)での営業拠点拡充や、製造・調達・開発の現地化を進め、競争力を強化します。また、ベアリング事業の構造改革や、生産ラインの自動化・合理化による生産性向上にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営戦略の実現に向けて、多様な人材のグローバルな確保と、会社の成長を牽引する人材(ジェネラルマネージャー)の育成を掲げています。新卒・キャリア採用を通じた多様性の確保や、海外語学留学、DX研修などの教育投資を積極的に行い、挑戦的な風土と働きやすい環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 40.3歳 | 15.8年 | 6,828,908円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 3.2% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 65.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 77.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 82.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 58.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(13.1%)、海外留学実施率(100%)、休業度数(0.7)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車産業の変革と需要変動
同社グループの売上の約5割は自動車関連産業が占めており、EV化の進展や顧客の生産計画の影響を大きく受けます。需要構造の変化や景気変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、産業機械分野など裾野の広い分野への展開を進めています。
■(2) 海外事業展開と地政学リスク
売上の約5割を海外が占めており、各国の経済状況、通商政策、法規制の予期せぬ変化が業績に影響を与える可能性があります。また、ウクライナ・ロシア情勢や中東情勢の緊迫化などの地政学的リスクも懸念されます。特定の地域に偏らずバランスの取れた展開を目指しています。
■(3) 原材料価格の高騰と価格競争
自動車産業からの値下げ要請や新興国製品との競争に加え、レアアースなどの原材料価格高騰が業績に影響する可能性があります。これに対し、VA・VE活動によるコスト低減や内製化、価格転嫁などを進めています。



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