倉敷紡績 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

倉敷紡績 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の繊維製品大手。繊維事業を祖業とし、現在は化成品、環境メカトロニクス、食品・サービス、不動産事業等を多角的に展開する。第217期(2025年3月期)の連結業績は、売上高1,507億円で前期比微減となった一方、経常利益は118億円、当期純利益は90億円と増益で着地した。


※本記事は、倉敷紡績株式会社 の有価証券報告書(第217期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 倉敷紡績ってどんな会社?


1888年創業の老舗企業。祖業の繊維に加え、化成品、環境メカトロニクス、食品、不動産など多角的に事業を展開する複合企業体です。

(1) 会社概要


1888年に倉敷紡績所として創立し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。1962年には寝屋川工場を新設して化成品事業に進出し、1970年代にはエンジニアリング事業やエレクトロニクス事業へ展開するなど多角化を進めてきました。2022年にはプライム市場へ移行し、直近では2025年に安城工場の閉鎖を決定するなど事業構造改革に取り組んでいます。

同グループは連結従業員数3,881名、単体1,176名の体制で事業運営を行っています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は日本生命保険、第3位は中国銀行となっており、機関投資家や金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.04%
日本生命保険 5.38%
中国銀行 4.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名(監査等委員である取締役)の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表者は代表取締役社長の西垣伸二氏が務めています。なお、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
藤田 晴哉 代表取締役・取締役会長 1983年入社。化成品事業部化成品業務部長、企画室長、取締役社長などを歴任し、2024年より現職。
西垣 伸二 代表取締役・取締役社長 1986年入社。化成品事業部産業資材部長、執行役員、常務執行役員などを経て、2024年より現職。
北畠 篤 取締役・専務執行役員 1982年入社。繊維事業部繊維素材部長などを経て、2014年より繊維事業部長を務める。
馬場 紀生 取締役・専務執行役員 1982年入社。化成品事業部産業資材部長などを経て、2014年より化成品事業部長を務める。
川野 憲志 取締役・常務執行役員 1985年入社。香港営業所長などを経て、2017年より環境メカトロニクス事業部長を務める。
稲岡 進 取締役・執行役員 1983年入社。化成品事業部化成品業務部長、監査役などを経て、2014年より企画室長を務める。
藤井 裕詞 取締役・執行役員 1983年入社。財経部長、執行役員を経て、2016年より現職。
岡田 治 取締役(常勤監査等委員) 1984年入社。人事部長、執行役員を経て、2016年より現職。


社外取締役は、茂木鉄平(弁護士)、新川大祐(公認会計士・税理士)、西村元秀(泉州電業代表取締役社長)、谷澤実佐子(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「繊維事業」「化成品事業」「環境メカトロニクス事業」「食品・サービス事業」「不動産事業」を展開しています。

繊維事業


糸、テキスタイル、繊維製品(縫製品等)の製造・販売を行っており、衣料品メーカー等を主な顧客としています。独自の技術を生かした高機能製品やサステナブル素材の提供に注力しています。

収益は製品の販売代金等から得ており、運営は同社、クラボウインターナショナル、大正紡績、タイ・クラボウなどが担っています。

化成品事業


軟質ウレタン、機能樹脂製品(機能フィルム、高機能樹脂製品)、住宅用建材、不織布等の製造・加工・販売を行っています。半導体、自動車、建築業界など幅広い分野に製品を提供しています。

収益は製品の販売代金等から得ており、運営は同社、倉敷繊維加工、東名化成、シーダムなどが担っています。

環境メカトロニクス事業


エレクトロニクス(情報システム機器、検査・計測システム)、エンジニアリング(環境・エネルギー関連プラント等)、バイオ関連製品の製造・販売・保守を行っています。

収益は製品販売やプラント工事代金等から得ており、運営は同社、エコー技研、クラボウプラントシステムなどが担っています。

食品・サービス事業


フリーズドライ食品の製造・販売およびホテル、自動車教習所等の経営を行っています。食品メーカーや一般消費者を顧客としています。

収益は食品販売や宿泊料、教習料等から得ており、運営は日本ジフィー食品、倉敷アイビースクエア、クラボウドライビングスクールなどが担っています。

不動産事業


工場跡地等の遊休資産を活用し、不動産の賃貸を行っています。オフィスや商業施設、大規模メガソーラー用地などを提供しています。

収益は賃貸先からの賃貸料から得ており、運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は1,500億円台で推移しており、直近5期間では全体として増加傾向にあります。経常利益も増加基調にあり、特に2022年3月期以降は高い水準を維持しています。利益率も改善傾向にあり、当期純利益も増益トレンドを示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,222億円 1,322億円 1,535億円 1,513億円 1,507億円
経常利益 42億円 88億円 100億円 102億円 118億円
利益率(%) 3.5% 6.6% 6.5% 6.7% 7.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 56億円 55億円 67億円 90億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、売上総利益および営業利益は増加しており、収益性が向上しています。営業利益率は6%台後半まで上昇しており、コストコントロールや高付加価値化が進んでいることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,513億円 1,507億円
売上総利益 303億円 317億円
売上総利益率(%) 20.0% 21.0%
営業利益 92億円 103億円
営業利益率(%) 6.1% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が48億円(構成比22%)、運賃・保管料・荷造費が38億円(同18%)を占めています。また、研究開発費は17億円(同8%)となっています。

(3) セグメント収益


化成品事業は増収増益となり、全社の利益成長を牽引しました。繊維事業は売上が減少しましたが、営業利益は黒字転換しました。環境メカトロニクス事業は減収減益となりましたが、一定の利益水準を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
繊維事業 511億円 485億円 -3億円 1億円 0.2%
化成品事業 613億円 660億円 40億円 50億円 7.6%
環境メカトロニクス事業 255億円 219億円 36億円 33億円 15.2%
食品・サービス事業 96億円 105億円 6億円 7億円 6.9%
不動産事業 38億円 37億円 23億円 22億円 60.2%
調整額 -億円 -億円 -11億円 -11億円 -%
連結(合計) 1,513億円 1,507億円 92億円 103億円 6.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

倉敷紡績は、営業活動により潤沢な資金を生み出しており、事業活動の基盤を支えています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資等を行っています。財務活動では、株主還元や自社株買い等を実施し、資本構成の最適化を図っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 129億円 110億円
投資CF -4億円 -30億円
財務CF -70億円 -90億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちクラボウグループは、新しい価値の創造を通じてより良い未来社会づくりに貢献します。」という経営理念を掲げています。サステナビリティ経営を推進し、株主や取引先をはじめとするステークホルダーから存在価値を評価され、信頼と安心感を持たれる企業グループを目指しています。

(2) 企業文化


創業以来の社是「同心戮力(どうしんりくりょく)」を大切にし、一人ひとりの個性を活かしつつ心を一つにして協力する風土があります。「クラボウグループ倫理綱領」を行動指針とし、地球環境の保全や豊かで健康的な生活環境づくりを目指して、独創的で価値のある商品・情報・サービスを提供することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年のありたい姿を描いた長期ビジョンの第3ステージとして、中期経営計画「Accelerate'27」(2025年4月~2028年3月)を策定しました。高収益事業の成長加速と経営資源の効率的な活用により、企業価値向上を目指しています。
* 2027年度 売上高:1,650億円
* 2027年度 営業利益:130億円
* 2027年度 ROE:10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


半導体製造関連や自動化・制御装置、メディカル等の成長市場に向け、高機能プロダクツ事業やエレクトロニクス事業等の注力事業へ経営資源を集中し、事業拡大を加速させます。また、R&D活動の強化により、ロボットセンシングやライフサイエンス等の分野で新規事業の創出と早期収益化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「エンゲージメントの高い組織」の構築を目指し、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進、柔軟な働き方の推進、多様な人材の確保と育成に取り組んでいます。具体的には、女性活躍推進や男性の育児休職取得率向上、健康経営の推進などを行い、社員一人ひとりが主体的に貢献できる職場環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.7歳 17.9年 5,870,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 73.9%
男女賃金差異(全労働者) 64.0%
男女賃金差異(正規雇用) 66.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 50.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒総合職に占める女性の割合(37.5%)、経験者総合職採用に占める女性の割合(27.6%)、障がい者雇用率(2.63%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要な市場における景気の悪化


同社グループは半導体、自動車、住宅、衣料品、不動産など多岐にわたる業界で事業を展開しています。これらの主要市場や特定の国・地域における経済情勢の変化により景気が悪化した場合、受注減少に伴う売上高の低下など、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競争優位性の低下


関連する各事業分野において、品質や価格面での競合他社との競争が激化しています。同社グループの競争優位性が低下した場合、売上や利益の減少につながり、経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。これに対し、独自技術を活かした新製品やサービスの開発・提供により競争力の向上を図っています。

(3) 特定の取引先の業績悪化等


各事業分野において収益への影響度が大きい特定の取引先が存在します。これらの取引先の業績悪化による受注減や在庫調整、生産調整などが発生した場合、同社グループの売上が減少し、経営成績等に影響を与える可能性があります。リスク分散のため、新規顧客の開拓や取引先以外の販売強化にも注力しています。

(4) 原材料等の調達困難


製品に使用する一部の部品や原材料について、需給状況や物流の混乱により安定調達が困難になるリスクがあります。供給不足により生産能力を確保できない場合、販売機会の喪失や納入遅延が発生し、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、備蓄や代替調達先の確保等により安定供給に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。