※本記事は、倉敷紡績株式会社の有価証券報告書(第218期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 倉敷紡績ってどんな会社?
同社グループは、化成品や繊維をはじめ多角的な事業を展開し、社会の課題解決に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
1888年に倉敷紡績所として創立し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。その後、綿紡績から事業を多角化し、1962年に化成品事業、1970年にエンジニアリング事業、1976年にエレクトロニクス事業へ進出しました。1991年にはバイオメディカル事業も開始し、時代のニーズに応じた事業拡大を続けています。
従業員数は連結3,714名、単体1,090名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も日本生命保険相互会社などの資産管理等を行う信託銀行となっています。また第3位には海外法人のAVI JAPAN OPPORTUNITY TRUST PLCが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.28% |
| 日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) | 5.68% |
| AVI JAPAN OPPORTUNITY TRUST PLC(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 4.54% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は西垣伸二氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤田晴哉 | 代表取締役取締役会長 | 1983年4月同社入社。鴨方工場長、化成品業務部長等を経て2012年6月取締役。2014年6月代表取締役社長。2024年6月より現職。 |
| 西垣伸二 | 代表取締役取締役社長 | 1986年4月同社入社。化成品事業部産業資材部長等を経て2018年6月執行役員。2023年6月取締役。2024年6月より現職。 |
| 馬場紀生 | 取締役・専務執行役員化成品事業部長 | 1982年4月同社入社。産業資材部長等を経て2012年6月執行役員。2014年6月化成品事業部長。2024年6月より現職。 |
| 川野憲志 | 取締役・常務執行役員環境メカトロニクス事業部長 | 1985年4月同社入社。香港営業所長等を経て2014年6月執行役員。2017年6月環境メカトロニクス事業部長。2020年6月より現職。 |
| 中川眞豪 | 取締役・常務執行役員繊維事業部長 | 1985年4月同社入社。繊維営業部長等を経て2017年6月執行役員。2024年5月クラボウインターナショナル代表取締役社長。2025年6月より現職。 |
| 藤井裕詞 | 取締役・執行役員財経部、IT統括部、総務部、不動産開発部担当 | 1983年4月同社入社。2011年4月財経部長を経て、2013年6月執行役員。2016年6月より現職。 |
| 松井一雄 | 取締役・執行役員企画室長企画室、知的財産部、技術研究所担当 | 1985年4月同社入社。2018年6月執行役員企画室長兼技術研究所長付を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、茂木鉄平(大江橋法律事務所パートナー)、新川大祐(北斗税理士法人代表社員)、西村元秀(泉州電業代表取締役社長)、谷澤実佐子(谷澤公認会計士事務所設立)です。
2. 事業内容
同社グループは、「化成品事業」「繊維事業」「環境メカトロニクス事業」「食品・サービス事業」「不動産事業」を展開しています。
■(1) 化成品事業
高機能樹脂製品、機能フィルム、産業マテリアル(軟質ウレタン、合成木材、無機建材等)の製造・加工・販売を行っており、半導体、自動車、建築など幅広い業界の顧客に製品を提供しています。処方開発や成形技術を活かし、顧客ニーズに迅速に対応できる体制を構築しています。
収益は顧客に対する製品の販売によって得ており、主に同社、倉敷繊維加工、東名化成、シーダムなどが事業の運営を行っています。熊本イノベーションセンター等での安定的な供給体制の構築や、半導体用途を中心とした拡販を進めています。
■(2) 繊維事業
糸、ユニフォーム、カジュアル等の製造・加工・販売を行っており、綿を中心とした天然繊維をベースとした繊維製品を扱っています。紡績、織布、染色整理加工、縫製における独自の技術を生かし、高機能繊維製品やサステナブル素材を顧客に提供しています。
収益は、糸や衣料品等の販売により得ており、同社をはじめクラボウインターナショナル、大正紡績、タイ・クラボウ等の国内外の子会社が事業運営を担っています。適地生産・適地調達や販売体制の見直しによるグローバルサプライチェーンの構築を進めています。
■(3) 環境メカトロニクス事業
バイオ関連製品やロボットビジョン等のライフサイエンス・テクノロジー、検査・計測システム等のエレクトロニクス、環境・エネルギー関連のプラント等のエンジニアリング製品を製造・販売しています。医療・研究機関、半導体業界等に提供しています。
収益は、製品の販売や保守サービス、プラント設計・施工等による対価として得ており、同社、エコー技研、クラボウプラントシステムなどが運営を行っています。臨床検査市場への進出や半導体関連の検査ビジネスの拡大に取り組んでいます。
■(4) 食品・サービス事業
フリーズドライ食品の製造・販売や、ホテル、自動車教習所等の運営を行っています。食品分野では安価で付加価値の高い商品を開発し、ホテル分野では宿泊やレストラン等でインバウンド需要を取り込むための魅力的な商品やサービスを提供しています。
食品事業による販売収益やホテル、教習所等のサービス提供対価が主な収益源です。事業運営は日本ジフィー食品、倉敷アイビースクエア、クラボウドライビングスクール等が担っており、海外市場への参入やインバウンド販促活動の強化を進めています。
■(5) 不動産事業
工場跡地等の遊休資産を有効活用し、オフィスや商業施設、大規模メガソーラー用地等の不動産賃貸事業を展開しています。長期安定収益の確保を目指し、効率的な事業推進や遊休地の再開発等による早期収益化に向けた取り組みを行っています。
収益は、賃貸先の企業等から受け取る不動産の賃貸料によって得ており、同社が運営を行っています。賃貸事業の主力である大型商業施設において、テナントとの関係を維持しながら、長期安定収益の確保に努めています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第215期をピークに減少傾向にあり、当期は繊維事業や化成品事業の需要低迷などが影響し減収となりました。一方、経常利益は安定して推移しており、当期純利益は投資有価証券売却益などの特別利益が寄与し、大幅な増益を達成しています。収益性の改善が進んでいます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,322億円 | 1,535億円 | 1,513億円 | 1,507億円 | 1,438億円 |
| 経常利益 | 88億円 | 100億円 | 102億円 | 118億円 | 111億円 |
| 利益率(%) | 6.6% | 6.5% | 6.7% | 7.8% | 7.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 40億円 | 40億円 | 68億円 | 47億円 | 95億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が減少したことに伴い、売上総利益も減少しましたが、売上総利益率は上昇しました。一方で、販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益および営業利益率は低下する結果となりました。基盤事業の収益力強化が今後の課題となります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,507億円 | 1,438億円 |
| 売上総利益 | 317億円 | 309億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.0% | 21.5% |
| 営業利益 | 103億円 | 92億円 |
| 営業利益率(%) | 6.8% | 6.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が50億円(構成比23%)、運賃・保管料・荷造費が39億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、化成品事業および繊維事業では受注減少により減収となりました。一方で、環境メカトロニクス事業はプラント設備工事等の好調により増収となり、食品・サービス事業や不動産事業も順調に売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 化成品事業 | 660億円 | 627億円 |
| 繊維事業 | 485億円 | 433億円 |
| 環境メカトロニクス事業 | 219億円 | 227億円 |
| 食品・サービス事業 | 105億円 | 111億円 |
| 不動産事業 | 37億円 | 40億円 |
| 連結(合計) | 1,507億円 | 1,438億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 110億円 | 146億円 |
| 投資CF | -30億円 | 14億円 |
| 財務CF | -90億円 | -158億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も65.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「私たちクラボウグループは、新しい価値の創造を通じてより良い未来社会づくりに貢献します。」という経営理念を掲げています。株主や取引先をはじめとするステークホルダーから存在価値を評価され、信頼感が持てる企業、安心感を与える企業として支持されることを目指しています。
■(2) 企業文化
社会的責任遂行のための行動指針として「クラボウグループ倫理綱領」を定めています。地球環境の保全をはじめとするサステナブルな社会の実現に貢献するとともに、豊かで健康的な生活環境づくりを目指して、独創的で真に価値のある商品・情報・サービスを提供し、企業価値を高める文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年のあるべき姿を描いた「長期ビジョン2030」の第3ステージとして、中期経営計画「Accelerate'27」(2025年4月~2028年3月)を実行しています。最終年度である2027年度の目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高:1,650億円
* 営業利益:130億円
* R O E:10.0%
* R O A:7.5%
* R O I C:7.9%
■(4) 成長戦略と重点施策
基本方針を「高収益事業の成長加速と経営資源の効率的な活用による企業価値の向上」としています。成長市場に向けた注力事業の展開加速と基盤事業の収益力強化を図り、R&D活動の強化や新規事業の創出・収益化に取り組みます。また、サステナブル社会の実現への貢献や、エンゲージメントの高い組織の構築も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、企業価値を持続的に向上させるため、好奇心と行動力で新しい価値を生み出すことのできる、チャレンジ精神と創造的思考力を持った社員の育成に注力しています。働きやすさとやりがいを感じられる職場環境を整備し、一人一人が主体的に貢献する「エンゲージメントの高い組織」の構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.2歳 | 17.8年 | 6,385,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.5% |
| 男性育児休業取得率 | 78.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 49.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.78%)、外国籍総合職採用数(2名)、月平均時間外労働(10.6h)、有休取得日数(14.7日)、男性労働者の育児休業14日以上取得率(78.6%)、1人当たり社内研修費用(4.3万円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業運営、戦略リスク
各事業分野には収益への影響度が大きい特定の取引先が存在し、業績悪化等による受注減が生じた場合、売上が減少する可能性があります。また、市場の需給状況や物流の混乱等により原材料が安定的に調達できない場合、生産能力の低下や販売機会喪失につながるリスクがあります。
■(2) 情報セキュリティリスク
事業活動を通じて機密情報や顧客情報等を保有し、情報システムを利用しています。外部からの不正アクセスやマルウェア等のサイバー攻撃、委託業者の過誤等により情報が流出・改ざんされたり、システムが長期間停止したりした場合、事業活動の停止や社会的信用の低下を招くリスクがあります。
■(3) 気候変動リスク
サステナビリティに関するリスクとして気候変動を重要な課題と認識しており、脱炭素社会に向けた法規制の強化や炭素税の導入等の「移行リスク」、異常気象の激甚化による自社・サプライチェーンの被災といった「物理的リスク」が事業戦略や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。



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