トーシンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーシンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーシンホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、携帯電話販売や不動産賃貸、ゴルフ場運営などを手掛ける企業です。直近の業績は、売上高が微増し営業利益は大幅増益となりましたが、減損損失や事業構造改善費用の計上により最終赤字が拡大しています。現在、会社更生手続の下で事業の再建を図っています。


※本記事は、株式会社トーシンホールディングスの有価証券報告書(第40期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トーシンホールディングスってどんな会社?


携帯電話販売、不動産賃貸、ゴルフ場運営の3本柱で事業を展開し、現在は会社更生手続による再建を進める企業です。

(1) 会社概要


1988年に東新産業として設立され、1994年に東海デジタルフォンショップを開設して携帯電話販売事業を開始しました。2000年にトーシンへ社名変更し、同年株式上場を果たしました。2005年に子会社を設立しゴルフ場運営を開始、2018年には持株会社体制へ移行しトーシンホールディングスに社名変更しています。2026年に会社更生手続開始の決定を受けています。

同社グループの従業員数は連結で94名、単体で28名です。筆頭株主は資産運用業を行うジェットで、第2位は創業者の石田信文氏、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
ジェット 33.60%
石田信文 6.25%
光通信KK投資事業有限責任組合 5.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は平塚栄氏が務めており、取締役5名のうち2名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
平塚栄 代表取締役社長 1978年ヤナセ愛知入社。2005年ソフトバンクBB(現ソフトバンク)に入社し、営業企画部部長などを歴任。アイ・スペース代表取締役社長を経て、2026年より現職。
旭萌々子 取締役管理部長 2005年に同社へ入社。2013年社長室部長を経て、2014年に取締役就任。取締役社長室長兼総務部長、取締役副社長兼管理部長などを歴任し、2026年より現職。
石田ゆかり 取締役 1986年に石田興業を設立し取締役に就任。1988年の同社設立とともに取締役に就任。財務部長、管理部長(財務担当)などの要職を歴任し、2026年より現職。


社外取締役は、深谷隆雄(深谷隆雄税理士事務所開設等の経歴を持つ税理士)、奥村竜弥(愛知クライスラーなどの代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「移動体通信関連事業」「不動産事業」「リゾート事業」および「その他」事業を展開しています。

移動体通信関連事業


同事業では、各通信事業者から仕入れた移動体通信機器などを直営店で新規および既存の顧客へ直接販売しています。また、携帯電話サービス契約への加入取次をはじめとした各種サービス変更手続きの業務受託や、法人・事務所向けの営業およびサービスも提供しています。

収益源は、通信事業者からの受取手数料や携帯電話などの販売代金です。同事業の運営は、子会社であるトーシンモバイルが主体となって行っています。

不動産事業


同事業では、入居者の快適な暮らしを優先した管理物件の定期清掃やメンテナンスなどを通じて、貸しビルや賃貸マンションの不動産賃貸および不動産販売を行っています。

収益源は、テナントや入居者から受け取る賃貸収入および不動産の販売代金です。同事業の運営は、同社および子会社であるトーシンコーポレーションが担当しています。

リゾート事業


同事業では、複数のゴルフ場およびゴルフ練習場の運営管理や、運営受託を対象としたゴルフ場の新規開拓を行っています。コースコンディションの上質化や設備の更新、接客サービスの向上などを進めています。

収益源は、ゴルフ場や練習場の利用者から受け取るプレー代や各種施設利用料などです。同事業の運営は、子会社のトーシンリゾートおよび伊良湖シーサイドゴルフ倶楽部が行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、飲料水の販売や太陽光発電事業、ゴルフレッスン施設の運営などを展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は164億円から181億円の範囲で推移しています。経常利益は黒字と赤字を繰り返しており、当期は営業利益の大幅な改善により経常黒字に転換しました。しかし、減損損失や事業構造改善費用の計上に伴い、当期純利益は大幅な赤字となっています。

項目 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期 2026年4月期
売上高 181億円 164億円 171億円 175億円 178億円
経常利益 5.4億円 -1.5億円 2.8億円 -0.3億円 0.7億円
利益率(%) 3.0% -0.9% 1.7% -0.2% 0.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.6億円 -3.1億円 0.3億円 -0.2億円 -13.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となった一方で、売上総利益は減少しました。しかし、販売費及び一般管理費が大幅に削減された結果、営業利益は前期の約6倍に拡大し、本業の収益性に改善が見られます。

項目 2025年4月期 2026年4月期
売上高 175億円 178億円
売上総利益 33億円 29億円
売上総利益率(%) 18.8% 16.4%
営業利益 0.4億円 2.6億円
営業利益率(%) 0.3% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5億円(構成比20%)、人材派遣費用が4億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて売上高および利益のデータが揃っています。移動体通信関連事業は売上高の大部分を占め、当期は黒字転換を果たしました。不動産事業およびリゾート事業は安定して黒字を計上しています。

区分 売上(2025年4月期) 売上(2026年4月期) 利益(2025年4月期) 利益(2026年4月期) 利益率
移動体通信関連事業 151億円 154億円 -0.9億円 1.8億円 1.2%
不動産事業 9億円 8億円 5.0億円 3.0億円 36.3%
リゾート事業 15億円 15億円 2.2億円 2.2億円 14.1%
連結(合計) 175億円 178億円 -0.3億円 0.7億円 0.4%


本業の稼ぐ力がマイナスになっている一方、保有する固定資産や有価証券の売却などで資金を確保し、借入金の返済や事業の見直しを進めている状況です。

項目 2025年4月期 2026年4月期
営業CF 2.8億円 -5.5億円
投資CF 15.8億円 13.7億円
財務CF -8.5億円 -13.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-78.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.9%で、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様第一主義」のもと、安定した収益が期待できる事業に取り組むことを基本方針としています。取り巻く事業環境の変化に柔軟に対応し、企業価値および業績のさらなる向上を目指すとともに、お客様、取引先、そして従業員の安全を最優先に考えた経営を行っています。

(2) 企業文化


同社グループは、「人材」を価値創造と競争優位の源泉と位置づけています。人材に投資することで「人材が育ち、人材で勝つ会社」を目指しており、従業員一人ひとりが向上心を持って持続的に成長していくことを重視しています。多様な働き手を支援し、様々な業務にチャレンジできる環境の整備を進めています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは現在、会社更生法に基づく更生手続を利用した事業の再建を最優先の目標としています。手元資金を上回る多額の有利子負債を抱え、特別注意銘柄に指定されるなどの厳しい状況にあるため、ガバナンス体制の改善や金融機関への返済計画の策定を通じ、経営体制と財務状態の安定化を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、既存事業の収益性向上と効率化を掲げています。移動体通信関連事業では対面接客の強化や店舗オペレーションの改善、不動産事業では効率運営による安定収益の確保を図ります。リゾート事業では施設整備と魅力的なサービスの提供により集客力を高め、同時に保有不動産の売却などによる有利子負債の圧縮を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、企業の持続的な成長と発展を実現するため、新卒・中途を問わず優秀かつ即戦力となる人材の確保に向けて多面的な採用活動を続けています。人材の価値を高めることで組織能力を向上させ、事業戦略の実現を目指すとともに、様々な事業や業務に挑戦できる多様な働き方を支援する環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年4月期 44.0歳 5.8年 3,350,532円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 継続企業の前提に関する重要事象


同社グループは多額の有利子負債を抱え、過年度の決算訂正や監査報告書の意見不表明に起因して借入契約の条項に抵触しています。返済が困難な状況に陥ったため、会社更生法に基づく更生手続の開始決定を受けており、継続企業の前提に関する重要な疑義が存在しています。

(2) 特別注意銘柄の指定


同社は、不適切な会計処理やガバナンスの機能不全を理由に、東京証券取引所から特別注意銘柄に指定されています。内部管理体制の改善が求められており、今後の審査において適切に整備・運用されていると認められない場合には、上場廃止となるリスクがあります。

(3) 特定取引先への依存と手数料条件の変更


移動体通信関連事業の手数料収入などは、ソフトバンクおよびKDDIの2社に大きく依存しています。両社の戦略や方針に基づく出店計画の決定や、事業方針の変更に伴う取引条件の大幅な見直しがあった場合、同社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 過去の不適切会計による課徴金等


過去に行われた不適切な会計処理および開示に関して、過年度の有価証券報告書等の訂正を行っています。これにより、開示規制違反に係る課徴金の納付命令などの措置を受ける可能性や、株主などから損害賠償を求める訴訟を提起されるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。