※本記事は、株式会社エアトリ の有価証券報告書(第19期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. エアトリってどんな会社?
オンライン旅行予約サイト「エアトリ」を中核に、ITオフショア開発や投資事業も展開する総合IT企業です。
■(1) 会社概要
2007年に旅キャピタルとして設立され、2016年に東証マザーズへ上場しました。2017年には東証一部へ市場変更し、2018年にエアトリインターナショナル(旧DeNAトラベル)を子会社化して事業を拡大しました。2020年に現社名へ変更し、2022年には東証プライム市場へ移行しています。
2025年9月末時点の従業員数は連結439名、単体174名です。筆頭株主は創業者で取締役会長の大石崇徳氏が代表を務める大石キャピタルで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業者の資産管理会社が大株主となっており、オーナーシップの強い資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大石キャピタル | 28.10% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.07% |
| 吉村ホールディングス | 5.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 兼 CFOは柴田裕亮氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柴田 裕亮 | 代表取締役社長 | 2005年監査法人トーマツ入社。野村證券出向を経て2015年同社取締役CFO就任。2020年1月より現職。複数の子会社代表も兼任。 |
| 大石 崇徳 | 取締役 | 1995年アイ・ブイ・ティ設立。2007年同社設立に関わり、2009年10月より現職。ピカパカ取締役などを兼任。 |
| 田村 諭史 | 取締役 | 1995年IACEトラベル入社。2006年スカイゲート(現エアトリ)入社。同社執行役員、取締役CIO等を経て2024年10月より現職。 |
| 増田 武 | 取締役 | 2004年アイ・ブイ・ティ入社。2013年同社執行役員を経て2019年1月より現職。国内航空券販売本部を管掌。 |
社外取締役は、大森泰人(元金融庁証券取引等監視委員会事務局長)、石原一樹(石原総合研究所代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「オンライン旅行事業」「ITオフショア開発事業」「投資事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) オンライン旅行事業
総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を運営し、航空券、ホテル、パッケージツアー等の比較・予約サービスを一般消費者向けに提供しています。また、他社媒体への旅行コンテンツOEM提供や、訪日外国人向け旅行事業、地方創生事業、クラウド事業なども手掛けています。
収益は、主に旅行商品の販売に伴う手数料収入や旅行代金、広告収入等から得ています。運営は同社に加え、インバウンドプラットフォーム、まぐまぐ、エヌズ・エンタープライズ、かんざし等の連結子会社が行っています。
■(2) ITオフショア開発事業
ベトナムのホーチミン、ハノイに開発拠点を持ち、Eコマース、Webソリューション、ゲーム開発会社などを顧客として、ラボ型開発サービスを提供しています。エンジニアリソースを提供し、システム開発の上流工程から対応可能な体制を構築しています。
収益は、主に顧客企業から受け取る開発委託料(人月単価×人員数)から構成されています。運営は、ベトナム現地法人のEVOLABLE ASIA CO., LTD.等が行っています。
■(3) 投資事業
成長企業への投資育成を行い、投資先企業との協業によるシナジー追求や、将来的なキャピタルゲインの獲得を目指しています。投資先は145社まで拡大しており、IPOを目指す企業への出資も積極的に行っています。
収益は、保有する投資有価証券の売却益や評価益、配当金等から得ています。運営は同社グループが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第15期から第19期までの業績を見ると、売上収益は第16期に一時減少しましたが、その後は回復し拡大傾向にあります。利益面では、第17期以降、税引前利益は安定して推移しており、第19期は大幅な増益を達成しました。当期利益は税金費用の影響等により変動が見られます。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 175億円 | 136億円 | 234億円 | 266億円 | 281億円 |
| 税引前利益 | 30億円 | 20億円 | 20億円 | 19億円 | 30億円 |
| 利益率(%) | 17.4% | 14.9% | 8.4% | 7.2% | 10.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 24億円 | 17億円 | 13億円 | 20億円 | 18億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の増加に伴い売上総利益も増加していますが、販管費の増加により営業利益の伸び率は売上総利益の伸び率を上回っています。営業利益率は11.0%と前年から改善しており、本業の収益性が向上していることがうかがえます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 266億円 | 281億円 |
| 売上総利益 | 155億円 | 161億円 |
| 売上総利益率(%) | 58.4% | 57.4% |
| 営業利益 | 24億円 | 31億円 |
| 営業利益率(%) | 8.9% | 11.0% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が47億円(構成比38%)、従業員給付費用が21億円(同17%)、外注費が12億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のオンライン旅行事業が増収増益となり、全社の業績を牽引しています。ITオフショア開発事業は減収となり、営業損失が継続しています。投資事業は売上収益が減少したものの、黒字転換を果たしました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| オンライン旅行事業 | 246億円 | 277億円 | 41億円 | 45億円 | 16.1% |
| ITオフショア開発事業 | 2億円 | 0.1億円 | -2億円 | -1億円 | -757.1% |
| 投資事業 | 18億円 | 3億円 | -0.4億円 | 1億円 | 30.1% |
| 調整額 | -0.0億円 | -0.0億円 | -15億円 | -14億円 | - |
| 連結(合計) | 266億円 | 281億円 | 24億円 | 31億円 | 11.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
エアトリのキャッシュ・フローは、営業活動で資金を獲得し、投資活動で成長企業への投資育成や事業拡大のための支出を行っています。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払いを通じて資金を調達・使用しています。これらの活動により、同社の資金残高は増加傾向にあります。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 23億円 | 45億円 |
| 投資CF | -36億円 | -14億円 |
| 財務CF | -14億円 | -8億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「和製OTA No.1」を目指し、エアトリが国民的サービスになることを目標としています。「オンライン旅行事業」「ITオフショア開発事業」「投資事業」を柱にITの力を活用し、「エアトリ経済圏」を強化することで、「終わりなき成長」を目指すことを基本方針として掲げています。
■(2) 企業文化
常にユーザーファーストで「毎日がファン作り」を標榜し、役職員が誇りを持てる「エアトリ」ブランド作りをミッションとしています。また、グループ内の多様な事業をつなぐ「エアトリ経済圏」の構築・強化を戦略的に推進し、グループ全体の非連続的な成長を実現する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期成長戦略「エアトリ5000」を策定し、グループ連結取扱高5,000億円の達成を目指しています。エアトリ旅行事業を柱とした既存事業と新規事業の成長により、終わりなき成長を目指します。
* グループ連結取扱高:5,000億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「エアトリ経済圏」の構築・強化を軸に、全方位的な成長戦略を推進します。オンライン旅行事業ではブランド認知強化によるオーガニック流入の増加とUI/UX改善による収益拡大を図ります。ITオフショア開発事業では上流工程からの開発ソリューション提供を強化し、投資事業では成長企業への投資とシナジー創出、IPOの実現による収益貢献を目指します。
* 国内旅行需要の取り込み:レンタカー・新幹線等の商材拡大、ポイント施策による囲い込み。
* 大規模プロモーション:「エアトリ」ブランドの活用とマス向けマーケティングの推進。
* IT活用:システム技術の研鑽による利便性向上と新サービス開発。
* グループ再編:かんざし等、主要子会社の上場準備の推進。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員を成長を支える重要な存在と位置づけ、多様な人材が能力を発揮できる環境整備に取り組んでいます。管理職登用においては年齢・性別・社歴で区分せず、平等な機会を提供する人事評価制度を整備しています。特に女性活躍推進や、ITオフショア開発事業を通じたグローバル人材の活用、経験豊富な中途採用者の積極活用を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 36.9歳 | 4.0年 | 6,097,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.9% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | -% |
※非正規雇用の賃金差異については、対象者がいない等の理由で記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員比率(38%)、経験者採用者の管理職比率(47%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) オンライン旅行事業における競合激化
インターネットによる旅行商品販売の一般化に伴い、競合環境が激化しています。価格競争やサービス競争により売上が低下したり、サービスレベル維持のためのコストが増加したりすることで、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、航空会社との関係強化やブランド認知向上等で対応しています。
■(2) 自然災害及び国際情勢等の影響
旅行事業は、天災、悪天候、海外の政情不安、国際紛争、テロ、感染症の流行等の外的要因の影響を大きく受けます。これらの事象により旅行需要が低下した場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、経営施策を通じて継続企業の前提に不確実性が生じないよう適切に対応しています。
■(3) 会社組織に関するリスク
創業者の大石崇徳氏は経営方針決定等に重要な役割を果たしており、同氏に不測の事態が生じた場合、事業展開に影響を与える可能性があります。これに対し、権限移譲を進め、特定の個人に依存しない経営体制の構築を図っています。また、個人情報漏洩等のリスクに対しては、厳格な管理体制を整備しています。



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