※本記事は、株式会社くろがね工作所 の有価証券報告書(第106期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. くろがね工作所ってどんな会社?
オフィス家具や学習机などの家具製造販売と、病院・研究施設向けの建築付帯設備機器を手掛ける老舗メーカーです。
■(1) 会社概要
1927年に大阪で創業し、スチール家具の製造を開始しました。1961年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、1963年には学習机等の家庭用家具分野へ進出しました。1974年には建築付帯設備事業を開始し、事業を多角化しています。2023年には京都工場を津工場へ移転集約し、生産体制の効率化を図っています。
連結従業員数は264名、単体では248名です。筆頭株主はワイ・ケイで8.87%を保有し、第2位はエイ・シイ工業で8.35%、第3位はくろがね取引先持株会で6.66%を保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ワイ・ケイ | 8.87% |
| エイ・シイ工業 | 8.35% |
| くろがね取引先持株会 | 6.66% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名、計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は田中成典氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田 中 成 典 | 代表取締役社長 | 1980年三和銀行入行。三菱東京UFJ銀行情報セキュリティ管理部長、ジャルカード取締役、エム・ユー・フロンティア債権回収専務取締役等を経て、2019年同社入社。2023年8月より現職。 |
| 森 吉 武 | 取締役 | 2006年同社入社。経理本部経理部長、理事、執行役員経理本部長、常務執行役員経営管理本部長を経て、2024年2月より専務執行役員。 |
| 大 和 資 郎 | 取締役(監査等委員) | 1983年日本開発銀行入行。日本政策投資銀行監査部内部監査役、中国経済連合会常務理事を経て、2016年同社入社。常勤監査役を経て、2025年2月より現職。 |
社外取締役は、岩嵜理致(元大阪国税局・税理士)、太田克実(元大阪国税局・税理士)、中礒亜由美(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「家具関連」「建築付帯設備機器」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 家具関連
オフィス向けの事務用家具や、学習机、チェア、本棚などの家庭用家具の製造および販売を行っています。全国の需要家に対して直接販売するほか、代理店を通じた販売も展開しており、米国Steelcase社との提携による製品なども取り扱っています。
製品の販売代金が主な収益源です。製造および販売は、主に同社および子会社のケイ・エス・エム、ケイ・エフ・エスが行っています。また、関連会社の日本アキュライドも一部事業に関与しています。
■(2) 建築付帯設備機器
ビルディング、工場、病院、研究施設などに向けた建築付帯設備機器や、空調関連機器、クリーン機器などの製造および販売を行っています。自社ブランドでの納入に加え、OEM契約による主要工場等への納入も行っています。
製品の販売および納入による代金が収益源です。製造は同社および子会社のケイ・エス・エム、ケイ・エフ・エスが行っており、販売は主に同社が担当しています。
■(3) その他
同社グループ全体の物流業務を担う事業です。製品の配送や保管などの物流サービスを提供しています。
グループ会社からの物流業務受託料などが収益源となります。運営は子会社のくろがね興産が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は減少傾向にあり、特に直近では大型案件の遅延などが影響しています。利益面では、経常損益が赤字と黒字を行き来しており、安定性に課題が見られます。当期は営業損失および経常損失を計上しましたが、投資有価証券売却益により当期純利益は前期比で増加し、黒字を確保しています。
| 項目 | 2021年11月期 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 84億円 | 69億円 | 72億円 | 72億円 | 63億円 |
| 経常利益 | -0.7億円 | -2.7億円 | -1.8億円 | 0.2億円 | -0.1億円 |
| 利益率(%) | -0.8% | -3.8% | -2.5% | 0.3% | -0.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.1億円 | -5.6億円 | 12億円 | 1.8億円 | 2.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益も減少していますが、売上総利益率は若干改善しています。一方で、営業損益は赤字幅が拡大しており、販管費の増加などが影響しています。営業外収益として受取配当金や持分法投資利益などがあり、経常損益の赤字幅は営業損益より縮小しています。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 72億円 | 63億円 |
| 売上総利益 | 15億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.5% | 23.7% |
| 営業利益 | -0.3億円 | -1.2億円 |
| 営業利益率(%) | -0.4% | -1.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.8億円(構成比36%)、荷造及び発送費が2.3億円(同14%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注加工費などが主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
家具関連事業は、首都圏での受注拡大や特注品の好調さが見られたものの、大型案件の遅延等により減収減益となりました。建築付帯設備機器事業は、選別受注の徹底により利益率の低い案件を絞り込んだことで減収となり、営業損失が継続しています。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年11月期) | 利益(2024年11月期) | 利益(2025年11月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 家具関連 | 53億円 | 47億円 | 3.4億円 | 3.0億円 | 6.3% |
| 建築付帯設備機器 | 19億円 | 16億円 | -1.2億円 | -1.5億円 | -9.3% |
| 連結(合計) | 72億円 | 63億円 | -0.3億円 | -1.2億円 | -1.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、自己資金と金融機関からの借入金で運転資金や設備投資資金を調達しています。
営業活動では、投資有価証券の売却損や仕入債務の減少などがあったものの、税金等調整前当期純利益や売上債権の減少などが主な増加要因となり、資金が増加しました。
投資活動では、定期預金の預入による支出があったものの、定期預金の払戻しや投資有価証券の売却による収入があり、資金が増加しました。
財務活動では、借入金の借入による収入があったものの、借入金の返済や自己株式の取得、配当金の支払いなどにより、資金が減少しました。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2.5億円 | 0.8億円 |
| 投資CF | -0.8億円 | 2.1億円 |
| 財務CF | -0.6億円 | -0.2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人と環境にやさしい空間創造」を経営の基本理念としています。これは、人が生活し働く空間において、健康的で快適かつ機能的、効率的な環境づくりを推進することを意味しています。この理念に基づき、地球環境に配慮した製品とサービスの提供を通じて社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「顧客満足度業界No.1」を目指すとともに、コンプライアンスの重視を最重要課題の一つとして位置づけています。ステークホルダーからの信頼を得られる経営を行い、社会に貢献する姿勢を重視しています。また、グループ役職員が一丸となって理念に基づいた行動をとることを求めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画『Revive2025』および新3ヵ年中期経営計画『Power up 2028』を策定しています。業績の黒字定着化と企業価値の極大化を目標とし、財務基盤の改善、製造基盤の強化、商品企画開発力の強化、人材基盤の強化を基本方針として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
収益基盤の拡充による安定的な拡大を目指し、米国Steelcase社の製品・知見利用の最大化、オフィスデザイン・提案事業の拡大、内装工事への取り組み強化などを柱としています。また、製造部門の収益センター化を進め、特注什器の製造販売強化や生産ラインの見直しによる原価低減に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、企業価値向上の源泉は人材であるとの認識の下、安定的かつ多様な人材の確保、現場での技能習熟による人材育成、高いスキルを持った人材の定着化を重視しています。これらを実現するために、適正評価・適正処遇の徹底や、外部事業者との協業体制の構築などを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 47.5歳 | 20.3年 | 4,881,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は開示義務の対象外のため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職数(1人)、男性労働者の育児休業取得率(33%)、有給休暇取得率(55%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
**(1) 原材料価格の変動**
主要原材料である鋼板などの価格は、国内外の需要動向により大きく変動します。同社グループはコスト吸収に努めていますが、価格高騰や供給量の変化が経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。また、円安による輸入製品価格の上昇もリスク要因となります。
**(2) 重要事象等(営業損失の継続)**
同社グループは当連結会計年度まで8期連続で営業損失を計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在しています。これに対し、収益基盤の拡大や製造部門の収益力強化、資金調達の安定化などの対策を講じていますが、業績回復が遅れた場合、事業継続に影響が及ぶ可能性があります。
**(3) 自然災害等による影響**
同社グループは生産拠点を津工場(三重県津市)に集約しています。これにより生産効率を高めていますが、同地域で地震等の大規模な自然災害が発生した場合、生産活動の停止や物流網の寸断が生じ、経営成績に甚大な影響を及ぼす可能性があります。



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