モリト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

モリト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム市場)に上場。アパレル関連資材、生活産業資材、自動車内装部品の製造・販売を行うグローバルニッチトップ企業。直近の業績は、国内アパレル市場の回復や新規連結効果、サステナブル関連商品の伸長等により、売上高・経常利益ともに前期を上回る増収増益で推移しています。


※本記事は、モリト株式会社 の有価証券報告書(第88期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年02月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. モリトってどんな会社?


ハトメ・ホック等の服飾資材から自動車内装部品まで扱う専門商社。グローバルな製造・販売網が強みです。

(1) 会社概要


1908年にハトメ・ホックの仲買商として創業し、1935年に株式会社森藤商店を設立しました。1960年にマジックテープの販売を開始し、1989年には大阪証券取引所市場第二部に上場しました。2019年に持株会社体制へ移行し、2024年には株式会社Ms.IDの経営権を取得するなど事業拡大を進めています。

連結従業員数は1,708名、単体従業員数は73名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は保険会社の明治安田生命保険相互会社、第3位は同社グループの主要仕入先等であるカネエム工業となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.20%
明治安田生命保険相互会社 6.51%
カネエム工業 6.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は一坪隆紀氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
一坪 隆紀 代表取締役社長 1981年入社。欧州現地法人社長、海外事業部長、アパレル事業本部長、管理統轄本部長などを歴任し、2013年11月より現職。
矢野 文基 取締役常務執行役員事業推進室長 1993年入社。欧州現地法人社長、香港現地法人総経理、海外事業本部長、経営企画部長、事業戦略本部長などを経て、2024年3月より現職。
阿久井 聖美 取締役常務執行役員コーポレート統括室長兼管理本部長 1987年入社。人事部長、管理本部副本部長、管理本部長、経営管理本部長などを歴任。2025年3月より現職。


社外取締役は、石原真弓(弁護士)、松澤元雄(元フェラガモ・ジャパン取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「アジア」、「欧米」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


アパレル関連資材、生活産業資材、自動車内装部品の企画開発・製造・販売を行っています。アパレル資材や製品に加え、映像・ゲーム関連商品、厨房機器レンタルなども手掛けています。

主な収益は、製品・商品の販売代金やレンタル料です。運営は主にモリトジャパン、モリトアパレル、モリトオートパーツ、エース工機、マニューバーライン、マテックス、Ms.ID、ミツボシコーポレーションなどが行っています。

(2) アジア


中国、香港、ベトナム、タイなどにおいて、アパレル関連資材、生活産業資材及び自動車内装部品の製造・販売を行っています。生産拠点としての機能に加え、販売拠点としての役割も担っています。

主な収益は、現地および海外顧客への製品・商品の販売代金です。運営は主にMORITO SCOVILL HONG KONG CO.,LTD.、摩理都工貿(深圳)有限公司、MORITO DANANG CO.,LTD.などが行っています。

(3) 欧米


米国、メキシコ、オランダなどにおいて、アパレル関連資材の製造・販売および自動車内装部品の販売を行っています。ホックなどのアパレル資材や、日系自動車メーカー向けの部品供給を展開しています。

主な収益は、各地域における製品・商品の販売代金です。運営は主にMORITO NORTH AMERICA,INC.、MORITO SCOVILL AMERICAS,LLCなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に直近では大幅な増収を達成しており、事業規模が拡大しています。利益面でも、経常利益は毎期増加しており、収益性が向上しています。当期純利益については一時的な変動も見られますが、全体として堅調な推移を示しています。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 436億円 485億円 485億円 485億円 569億円
経常利益 18億円 23億円 28億円 30億円 36億円
利益率(%) 4.2% 4.8% 5.7% 6.2% 6.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 0億円 18億円 22億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大きく増加し、それに伴い売上総利益も伸長しています。売上総利益率は若干の改善傾向にあります。営業利益も増加しており、本業の収益力が強化されていることが読み取れます。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 485億円 569億円
売上総利益 141億円 174億円
売上総利益率(%) 29.1% 30.6%
営業利益 29億円 33億円
営業利益率(%) 5.9% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料が43億円(構成比30%)、その他が22億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは売上高が大きく伸長し、全体の成長を牽引しています。アジアセグメントは売上高が微減となったものの、堅調な水準を維持しています。欧米セグメントは売上高が増加しており、安定的に推移しています。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期)
日本 330億円 413億円
アジア 84億円 83億円
欧米 72億円 73億円
連結(合計) 485億円 569億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 46億円 30億円
投資CF 6億円 -50億円
財務CF -27億円 -41億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「小さなパーツで世界を変え続ける」をキーワードに、「あたりまえに、新しさ。」を生み出すグローバルニッチトップ企業として存在価値を示すことを目指しています。パーツを通じて持続可能な社会のためにできることを常に念頭に置いて活動しています。

(2) 企業文化


同社は、法令遵守及び倫理に基づき誠実に行動することを経営理念に取り入れています。人材に関しては「自育自成」を基本とし、高い成果を発揮する能力・意欲を持つ人材に対し能力開発の機会を提供することや、多様性を尊重するダイバーシティ経営を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2024年1月にアップデートした第8次中期経営計画に基づき、更なる成長に向けた取り組みを推進しています。2026年11月期の通期見通しとして、以下の数値を予想しています。

* 売上高:630億円
* 営業利益:35億円
* 経常利益:37億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:30億円

(4) 成長戦略と重点施策


「収益力の向上」「管理体制の強化」「投資戦略とサステナブル経営の実践」を掲げています。既存事業の成長に加え、付加価値商品の開発やグローバル調達・販売網の整備、BtoC事業領域の拡大に注力します。また、積極的な事業拡大を見据え、資金循環の効率化とリスク管理を徹底し、強固な財務体質を構築する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「モリトグループ人材マネジメント方針」を策定し、採用、人材育成、労務、配置・キャリア、評価、処遇の各カテゴリで目指す姿を可視化しています。国籍等を問わず能力を発揮できる適所配置や、成果に応じた公平な評価・処遇を実現し、人的資本価値の向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 42.4歳 10.6年 7,349,241円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.2%
男女賃金差異(正規雇用) 69.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 21.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(64.2%)、男性社員の育児関連制度利用者割合(50%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) コンプライアンスリスク


同社グループは、法令遵守及び倫理に基づき誠実に行動することを経営理念とし、徹底を図っています。しかし、万一法令や行動規範から逸脱する行為が発生し、コンプライアンス上の問題に直面した場合、監督官庁等からの処分、訴訟の提起、社会的信用の失墜等により、業績に悪影響を与える可能性があります。

(2) 海外進出リスク


同社グループの商品の一部は海外生産を行っています。そのため、海外における政治・経済情勢の変化、戦争やテロ等による国際社会の混乱、自然災害の発生などは、商品の安定供給に支障をきたし、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 海外商品との競合リスク


販売する商品は、アジア及び国内において中国製等の安価な商品との価格競争が激しくなっています。コスト競争力強化のため海外生産能力の増強や現地調達比率を高める戦略を講じていますが、競合による販売価格の下落や販売数量の減少が業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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