※本記事は、丸八倉庫株式会社 の有価証券報告書(第130期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 丸八倉庫ってどんな会社?
倉庫・運送などの物流サービスと、不動産賃貸事業を柱とする企業です。創業90年以上の歴史を持ちます。
■(1) 会社概要
同社は1934年に創立され、1938年には清澄営業所を開設しました。1963年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2025年には東京都杉並区と世田谷区の賃貸マンションを取得するなど、不動産事業の基盤強化も進めています。
2025年11月30日時点の連結従業員数は102名、単体では45名です。筆頭株主は尾張屋土地で27.68%を保有し、第2位は山﨑商事で6.76%を保有しています。上位株主には事業会社や保険会社が名を連ねており、安定した資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 尾張屋土地 | 27.68% |
| 山﨑商事 | 6.76% |
| 東京海上日動火災保険 | 5.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は峯島一郎氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 峯島 一郎 | 代表取締役社長 | 1993年同社入社。営業部長、常務取締役営業本部長、取締役副社長などを経て、2017年2月より現職。 |
| 宮沢 浩元 | 専務取締役 | 三菱UFJ信託銀行を経て2015年同社入社。総合企画部長、常務取締役などを歴任し、2025年2月より現職。 |
| 谷 健次 | 常務取締役総務部長 兼 情報システム部長 兼 品質管理部長 | 1982年同社入社。総合企画部次長、情報システム部長などを経て、2023年2月より現職。 |
社外取締役は、山口正志(元創和エンジニアリング社長)、佐藤久和(元斎久工業常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「物流事業」、「不動産事業」の2つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 物流事業
貨物の保管、荷役作業、貸倉庫業務および運送業務を提供しています。顧客は多岐にわたり、長年蓄積した3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)のノウハウを活かしたサービスを展開しています。
収益は、顧客からの保管料、荷役料、運送料などから得ています。運営は、同社が倉庫業務全般を行い、連結子会社の東北丸八運輸が東北地区を拠点とした運送業務や一部の保管・荷役業務を担っています。また、同社の保管貨物の一部配送も東北丸八運輸が請け負っています。
■(2) 不動産事業
不動産の造成、売買、仲介、賃貸、管理およびコンサルテーションを行っています。所有する賃貸マンションやオフィスビルなどの不動産資産を活用した事業です。
収益は、テナントや入居者からの不動産賃貸料などが主な源泉です。運営は、同社および連結子会社の丸八クリエイトが行っており、両社とも同様の不動産関連業務を手掛けています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は48億円から49億円前後で推移しており、横ばい傾向にあります。利益面では、2024年11月期に経常利益や当期純利益が一時的に増加しましたが、2025年11月期は減益となり、利益率は低下しました。
| 項目 | 2021年11月期 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 48億円 | 48億円 | 50億円 | 50億円 | 49億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 6億円 | 6億円 | 6億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 15.2% | 12.1% | 11.8% | 12.7% | 9.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 3億円 | 3億円 | 8億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となりましたが、売上総利益率はほぼ横ばいを維持しています。一方、営業利益は減少しました。これは、新規設備投資に伴う初期コストの発生や、人手不足・物価高騰によるコスト上昇などが影響しています。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 50億円 | 49億円 |
| 売上総利益 | 12億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.2% | 24.2% |
| 営業利益 | 6億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 12.4% | 10.1% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給与が2.3億円(構成比33%)、租税公課が1.8億円(同26%)を占めています。
■(3) セグメント収益
物流事業は、保管料や運送料収入の減少により減収となりましたが、コスト削減効果により利益は前年並みを確保しました。不動産事業は、新規物件の取得により微増収となりましたが、取得に伴う初期コスト等により微減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年11月期) | 利益(2024年11月期) | 利益(2025年11月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 物流事業 | 43億円 | 43億円 | 7億円 | 7億円 | 16.4% |
| 不動産事業 | 7億円 | 7億円 | 3億円 | 3億円 | 49.4% |
| 連結(合計) | 50億円 | 49億円 | 6億円 | 5億円 | 10.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
丸八倉庫は、物流事業と不動産事業を主軸としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利益の増加等により堅調に推移しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出が大きくなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の増加等によりプラスとなりました。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 3億円 |
| 投資CF | 12億円 | -28億円 |
| 財務CF | -9億円 | 10億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「お客さまに完全な業務を提供する」「社業の発展を通じて市民生活の向上に貢献する」「人間尊重の経営に徹する」という経営理念を掲げています。時代とともに変化するニーズに応えることで、顧客に選ばれる物流カンパニーを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、長年蓄積してきた3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)のノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせたビジネスモデルを強みとしています。単なる物品保管にとどまらず、顧客の物流課題解決に向けた「物流コンシェルジュ」的な役割を担い、ソリューション提案を重視する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2022年に策定した新中期経営計画(2022-2026)に基づき、最終年度である2026年11月期の数値目標を掲げています。なお、収益基盤の変化に伴い計画は修正されています。
* 売上高:51億円
* 営業利益:6.5億円
* 経常利益:6.5億円
* EBITDA(償却前利益):12.88億円
* ROE:3.4%
■(4) 成長戦略と重点施策
新中期経営計画の達成に向け、営業力・営業基盤の強化、事業基盤の拡大・強化、ガバナンスの強化、株主還元施策を基本方針として掲げています。物流事業では新規倉庫建設による保管能力増強や料金適正化、不動産事業では新規資産取得による収益基盤拡大を進めています。
* 各営業所の稼働率向上
* 各営業所の適切な修繕実施による収益力の安定化
* 資金調達の際の借入金利の固定化による金利上昇リスク抑制
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「お客さま目線」での提案力向上のため、外部教育研修への参加を中心に社員教育を実施しています。外部テストによるスキル把握とそれに基づく研修受講を推進しています。また、多様な人材が活躍できるよう、育児・介護支援や時差出勤などの柔軟な働き方を推奨し、ワークライフバランスの充実に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 46.5歳 | 19.5年 | 6,755,338円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は開示義務対象外のため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業用資産の時価変動リスク
同社グループは「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しており、保有する土地や建物などの事業用資産の時価が下落した場合や、十分なキャッシュ・フローが見込めなくなった場合には、減損処理を行う可能性があります。これにより、経営成績や財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 金利変動リスク
設備資金等を借入金により調達しており、金利の固定化を進めていますが、将来の新規借入金に関するコストについては金利変動の影響を受ける可能性があります。金利が上昇した場合、調達コストが増加し、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 株式価値の変動リスク
同社グループは上場株式および非上場株式を保有しています。これらの株式の時価や価値が下落した場合、評価損の計上などにより、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 退職給付に係る負債の変動リスク
退職給付債務を確定給付企業年金として運用機関に委託しています。運用の結果が期初に想定した予測残高に達しない場合、不足額を追加で積み立てる必要が生じ、経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。



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