※本記事は、ホテル、ニューグランド の有価証券報告書(第148期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ホテル、ニューグランドってどんな会社?
横浜・山下公園前に位置する老舗クラシックホテルを運営。伝統的なおもてなしと食文化を強みとしています。
■(1) 会社概要
同社は1926年に設立され、翌1927年にホテル営業を開始しました。1991年には新館タワーが完成し、営業を開始しています。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。近年では、2024年4月に直営ショップ「S.Weil by HOTEL NEW GRAND」を出店するなど、ブランド展開を進めています。
同社(単体)の従業員数は232名です。筆頭株主は役員が代表を務める不動産会社の原地所で、第2位は個人株主、第3位は事業会社の横浜銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 原地所 | 16.22% |
| 穐田誉輝 | 4.88% |
| 横浜銀行 | 4.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長は原信造氏です。社外取締役比率は69.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 原 信造 | 代表取締役会長兼社長(取締役会議長) | 財務省、原地所代表取締役社長を経て2019年より現職。 |
| 岸 晴記 | 常務取締役財務兼管理本部長 | 1989年入社。経理部長、財務本部長等を経て2025年より現職。 |
| 関口 真司 | 取締役総料理長 | 1985年入社。調理部長を経て2022年より現職。 |
| 木曽 博文 | 取締役営業本部長総支配人 | 1993年入社。マーケティング部長、宴会部長等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、上野孝(横浜商工会議所会頭)、岡崎真雄(あいおいニッセイ同和損害保険顧問)、川本守彦(川本工業代表取締役社長)、勝治雄(横浜エレベータ取締役社長)、山﨑明(清水建設常任顧問)、奥津勉(公認会計士)、佐々木寛志(元横浜市副市長)、川村健一(横浜銀行顧問)、矢野精一(東日本旅客鉄道執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ホテル事業」および「不動産賃貸事業」事業を展開しています。
■(1) ホテル事業
横浜市中区の「ホテルニューグランド」内における宿泊および料飲(婚礼・宴会含む)施設の運営を行っています。また、髙島屋横浜店およびそごう横浜店内においてレストランを運営しており、伝統ある料理とサービスを提供しています。
収益は、宿泊客やレストラン・宴会利用者からのサービス料および飲食代金等から得ています。運営は主にホテル、ニューグランドが行っています。
■(2) 不動産賃貸事業
同社が保有するオフィスビル等の賃貸管理業務を行っています。横浜市内における不動産資産の有効活用を図っています。
収益は、オフィスビル等のテナントからの賃貸料収入から得ています。運営は主にホテル、ニューグランドが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、2021年11月期から2022年11月期にかけては赤字を計上していましたが、2023年11月期以降は黒字化し、売上高も回復基調にあります。特に売上高は32億円台から65億円台へと倍増しており、コロナ禍からの回復と成長が顕著です。利益面でも安定して数億円規模の利益を確保する体制となっています。
| 項目 | 2021年11月期 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 32.0億円 | 42.8億円 | 53.7億円 | 58.6億円 | 65.3億円 |
| 経常利益 | -4.7億円 | -3.2億円 | 2.6億円 | 2.4億円 | 2.7億円 |
| 利益率(%) | -14.7% | -7.6% | 4.8% | 4.2% | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13.2億円 | -3.5億円 | 3.9億円 | 3.0億円 | 2.0億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は58.6億円から65.3億円へと増加しています。売上総利益率も約75%と高い水準を維持しており、営業利益は2.5億円から3.0億円へと増益となりました。売上の伸長に伴い利益額も拡大しています。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 58.6億円 | 65.3億円 |
| 売上総利益 | 44.3億円 | 48.9億円 |
| 売上総利益率(%) | 75.6% | 74.9% |
| 営業利益 | 2.5億円 | 3.0億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | 4.6% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が16億円(構成比35%)、販売手数料が6億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ホテル事業はインバウンド需要の増加や単価改善により増収増益となりました。不動産賃貸事業は安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年11月期) | 利益(2024年11月期) | 利益(2025年11月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ホテル事業 | 58.1億円 | 64.8億円 | 2.2億円 | 2.7億円 | 4.1% |
| 不動産賃貸事業 | 0.5億円 | 0.5億円 | 0.4億円 | 0.4億円 | 76.5% |
| 連結(合計) | 58.6億円 | 65.3億円 | 2.5億円 | 3.0億円 | 4.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、運転資金を自己資金と短期借入金で、設備投資資金を自己資金と長期借入金で調達する方針です。
営業活動では、本業による資金獲得が前事業年度より増加しました。
投資活動では、設備投資等で資金が減少しました。
財務活動では、借入金の返済や配当金の支払いにより資金が減少しました。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.9億円 | 6.8億円 |
| 投資CF | -6.6億円 | -5.1億円 |
| 財務CF | 3.2億円 | -3.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「培ったおもてなしの心と、最高のサービスと商品の提供により、国際社会の発展と文化の向上、お客様の満足と幸福に貢献」することを経営理念として掲げています。歴史的建造物を維持・保存しながら持続的成長を実現し、国際都市横浜の一翼を担うことを社会的役割と認識しています。
■(2) 企業文化
同社は、人材を企業成長の源泉と捉え、魅力的な職場環境の整備やエンゲージメント向上を重視する文化があります。また、100周年を見据え、伝統や歴史に敬意を払いつつも探求を怠らず、「驚きと感動を与える商品・サービス」を提供することでブランド価値向上に努める姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、人事戦略、ブランド戦略、成長戦略の3つの基本戦略により、課題解決と収益性向上、持続的成長による経営基盤の確立を目指しています。現状では具体的な数値目標は設定していませんが、従業員満足度の向上や企業価値の向上に向けた環境整備を推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、業績回復と財務体質の改善が進む中で、競争力の強化と集客力の向上を図っています。本館客室の改修工事を予定しているほか、外販事業「エスワイル」を将来の成長事業とするため事業投資を拡大しています。また、2027年の開業100周年を見据えた足場固めを進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人手不足の中で専門スキルを有する人材の確保や定着を目指し、賃上げや人事制度改善により魅力的な職場環境を整備しています。また、女性活躍の推進や仕事と育児の両立支援を強化するとともに、業務のデジタル化による効率化を進め、人的タスクの補完を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 34.2歳 | 11.8年 | 4,191,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 12.2% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 72.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 78.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 65.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自然災害や感染症の発生
大規模地震や台風などの自然災害が発生した場合、同社所有の建物・設備への損害や一時的な営業停止による売上減少、修復費用の発生が懸念されます。また、感染症の蔓延による移動制限等は業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 食の安全に関わる問題
同社は食品安全衛生対策会議を開催するなど管理体制を構築していますが、食中毒やBSE等の食品衛生上の問題が発生した場合、同社の信用失墜や業績への悪影響が生じる可能性があります。
■(3) 個人情報の漏洩
顧客の個人情報管理については外部への流出防止策を講じていますが、万が一漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等の費用負担により、同社の業績に影響を与える可能性があります。



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