川崎地質 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

川崎地質 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、地質・土質調査の大手企業です。地質調査、海洋調査、環境・防災調査等を主力事業とし、官公庁や電力会社等を主要顧客としています。直近の決算では、防衛省の大型案件や洋上風力発電関連の受注が好調で、売上高・利益ともに大きく伸長し、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社川崎地質の有価証券報告書(第75期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 川崎地質ってどんな会社?


地質・土質調査のパイオニアとして、陸域から海域まで幅広く調査・解析を手掛ける建設コンサルタントです。

(1) 会社概要


同社は1943年に合資会社川崎試錐機製作所として発足し、1951年に川崎ボーリングを設立しました。1970年に現商号へ変更し、物理探査や海洋調査へ進出しました。1997年に株式を店頭登録(現スタンダード市場)し、2022年には北海道の地質調査会社であるユニオン・コンサルタントを子会社化するなど、事業基盤を拡大しています。

2025年11月30日現在の連結従業員数は373名(単体357名)です。筆頭株主は日本カストディ銀行(信託E口)で、第2位は個人株主の三木健嗣氏、第3位は主要取引銀行であるみずほ銀行です。大手金融機関や生保、従業員持株会が上位株主として名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本カストディ銀行(信託E口) 7.55%
三木 健嗣 5.65%
みずほ銀行 4.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は栃本泰浩氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
栃本 泰浩 代表取締役社長経営管理本部長 1983年入社。西日本支社技術部長、執行役員西日本事業本部長、取締役戦略企画本部長などを経て、2020年2月より現職。
太田 史朗 代表取締役専務執行役員企画・技術本部長 1996年入社。北日本支社技術部長、取締役北日本支社長、取締役常務執行役員などを経て、2023年2月より現職。
若狭 聡 取締役常務執行役員西日本地区担当企画・技術本部設計統括室長 パシフィックコンサルタンツ取締役事業管理統括部長などを経て、2021年1月に入社。2025年2月より現職。
濱田 泰治 取締役執行役員監査統括部長 1994年入社。事業本部地盤部長、執行役員首都圏事業本部長、関東支社長などを経て、2025年2月より現職。
沼宮内 信 取締役執行役員企画・技術本部副本部長 1994年入社。北海道支店長、本社営業本部営業企画部長、理事事業企画部事業推進部長などを経て、2023年2月より現職。
風間 基樹 取締役技術・品質管理技術開発担当 運輸省(現国土交通省)入省後、東北大学大学院工学研究科教授などを務め、2024年4月に入社。2025年2月より現職。
土子 雄一 取締役(常勤監査等委員) 富士銀行(現みずほ銀行)入行後、みずほFG人材開発室長などを経て2013年入社。取締役執行役員経営管理本部財務・株式部長などを歴任。


社外取締役は、若林眞妃(弁護士)、小代順治(弁護士)、蓮沼辰夫(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「地質・土質調査関連事業」「海洋調査関連事業」「環境・防災関連事業」などを展開しています。

地質・土質調査および海洋調査事業


河川、ダム、道路、港湾、発電所などの建設工事に関連する地質・土質調査、測量、設計、施工管理などを行っています。また、洋上風力発電や海底資源開発に関連する海洋調査も手掛けています。顧客は国土交通省、防衛省などの官公庁や、電力会社、ゼネコンなどが中心です。

収益は、これらの調査・設計業務等の受託に対する対価として顧客から受領します。調査業務の進捗に応じて収益を認識する契約が多くを占めます。運営は主に川崎地質が行っており、北海道エリアでは子会社のユニオン・コンサルタントも地質調査や測量設計を行っています。

その他事業


上記以外に、文化財調査コンサルタント(関連会社)による微化石分析・文化財調査や、OHYA UNDERGROUND ENERGY(関連会社)による大谷石採石場跡地の地下水を利用した熱供給事業に関連する業務などを行っています。

これらの事業における収益は、それぞれの専門的な調査・管理業務の対価として得ています。運営は、川崎地質が一部業務を受託しているほか、それぞれの関連会社が主体となって事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間のデータを見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に当期は売上高が大幅に伸長し、利益面でも税引前利益以下の各段階利益が増加しています。利益率も改善傾向にあり、増収増益の好調な推移を示しています。

項目 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 93億円 96億円 127億円
経常利益 2億円 5億円 7億円
利益率(%) 2.1% 5.4% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 4億円 6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は若干低下しましたが、売上規模の拡大が利益額を押し上げました。販売費及び一般管理費も増加しましたが、売上高の伸びがそれを上回り、営業利益は大きく成長しました。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 96億円 127億円
売上総利益 27億円 32億円
売上総利益率(%) 27.9% 25.0%
営業利益 4億円 7億円
営業利益率(%) 4.5% 5.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が9億円(構成比36%)、賞与引当金繰入額が4億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


※同社は単一セグメントのため、本項目の記載はありません。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

川崎地質グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動から生み出される資金の状況を示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却などによる資金の増減を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなどによる資金の動きを示しています。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 8億円 -15億円
投資CF -0.1億円 0.5億円
財務CF -7億円 7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人間社会と自然環境との共生、国民が安全で安心できる社会に技術をもって広く貢献する」ことを企業理念としています。また、「地球環境にやさしい優れた技術と判断力で、豊かな社会づくりに貢献する」を経営ミッションに掲げ、地盤に関する多様な問題に取り組む総合建設コンサルタント技術者集団としての発展を目指しています。

(2) 企業文化


創業以来、「協力一致、積極活動、堅実経営」を社是としています。「現場を重視するアースドクター」として、陸域から海域まで自然環境との調和を図りながら、誠実・迅速・高品質なサービスを提供することを重視しています。発注者の課題解決に応えるため、精緻な調査・解析技術の開発とレベルの高いアドバイスを心がける文化があります。

(3) 経営計画・目標


第6次中期経営計画(第75期~第77期)を推進しており、初年度である第75期は計画を達成しました。中長期的には、安定した経営を持続するために自己資本当期純利益率(ROE)を重要な経営指標の一つと位置づけ、その向上に努めています。

* 売上高:100億円(第75期目標・達成済み)
* 営業利益:4億円(第75期目標・達成済み)
* 営業利益率:4%(第75期目標・達成済み)

(4) 成長戦略と重点施策


経営基盤の強化、技術力・技術開発に立脚した事業展開、企業価値向上を軸とした成長戦略を描いています。特に洋上風力発電事業におけるセントラル方式の受注推進や、新たな調査領域(浮体式洋上風力発電、CCS等)への設備投資・技術開発に注力しています。また、防災設計対応部署の拡充やDX推進による生産性向上も重点施策としています。

* コンサル業務:防災設計対応部署の拡充、専門技術者の中途採用
* 海洋調査分野:洋上風力発電事業の受注推進、新技術開発
* DX分野:生成系AIの活用等による業務効率化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な価値観を持った人材が能力を発揮することが企業価値向上に繋がると考えています。特に管理職における女性の活躍推進や、キャリア研修、産休・育休・時短勤務制度の活用促進などの環境整備に努めています。また、外国人や中途採用者に関わらず優秀な人材を登用する方針をとっており、急速に変化する社会に対応できる人材育成と多様な働き方の充実に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 42.4歳 14.6年 8,237,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.2%
男女賃金差異(正規雇用) 65.8%
男女賃金差異(非正規) 86.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員の男女比(83:17)、35歳以下の若手社員における女性割合(25.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業動向


同社グループの売上高において、官公庁や公共企業体をはじめとする公共部門との取引比率が高くなっています。そのため、国の予算配分や公共投資の動向、発注計画の変更などが生じた場合、同社グループの受注高や経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 季節的変動


同社が手掛ける公共事業関連の業務は、納期が年度末(3月)に集中する傾向があります。そのため、同社の決算月は11月ですが、四半期ごとの売上高は第2四半期と第4四半期に偏るという季節変動の特性があります。天候不順等で業務進捗が遅れた場合、業績変動が大きくなる可能性があります。

(3) 退職給付債務


同社グループは確定給付型の退職給付制度を採用しています。退職給付債務の算定にあたって用いられる割引率や期待運用収益率等の前提条件に変更が生じた場合、あるいは年金資産の運用環境が悪化した場合には、退職給付費用が増加し、経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) 気候変動


同社グループは屋外での調査・工事を行うことが多いため、気候変動による異常気象や自然災害の激甚化・頻発化がリスク要因となります。台風や豪雨などにより現場作業の中断や遅延が発生した場合、工期の延長やコストの増加を招き、売上高の減少や採算の悪化等につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。