クックビズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クックビズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クックビズは東京証券取引所グロース市場に上場し、飲食業界に特化した人材紹介等のHR事業と、水産加工や食品製造を手掛ける投資事業を展開しています。当期の業績は、求職者の集客が想定通りに進まず応募不足が影響したことなどから減収となり、各利益段階において赤字を計上する厳しい結果となりました。


※本記事は、クックビズ株式会社の有価証券報告書(第18期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クックビズってどんな会社?


同社は飲食業界に特化した人材サービスの提供と、食産業に関する投資事業を展開しています。

(1) 会社概要


2007年に飲食業界特化型の人材サービスを目的として設立され、2008年に求人情報サイトをリリースしました。2017年に東京証券取引所マザーズへ株式を上場し、2022年にグロース市場へ移行しています。同年以降、水産加工会社や特定技能人材の紹介事業を行う企業を子会社化し、事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で169名、単体で137名です。筆頭株主は創業者の藪ノ賢次氏で、第2位は金融商品取引業を行うSBI証券、第3位は個人の藪ノ郁子氏となっています。

氏名 持株比率
藪ノ 賢次 37.62%
SBI証券 8.76%
藪ノ 郁子 7.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は藪ノ賢次氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
藪ノ 賢次 代表取締役社長 2005年に有限会社ネクシティを設立。2007年に同社を設立し代表取締役に就任。2021年より現職。きゅういちやワールドインワーカーなどの子会社で代表取締役社長等も務める。


社外取締役は、吉崎浩一郎(グロース・イニシアティブ代表取締役)、嶋内秀之(アンファク代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「HR事業」および「投資事業」の報告セグメントで事業を展開しています。

HR事業


同事業は、飲食業界に特化した求人情報サイトを運営し、人材紹介サービス、求人広告サービス、スカウトサービスを提供しています。また、特定技能外国人人材の紹介や研修サービス、シフト管理などのSaaSプロダクトの提供も行っています。

収益は、人材紹介における成功報酬や、求人広告の掲載料金、スカウトサービスの利用料金などから得ています。運営は同社のほか、子会社のワールドインワーカーが特定技能外国人人材紹介等を担当しています。

投資事業


同事業は、事業承継課題を抱える中堅・中小企業に対し、事業再構築や財務サポートを行い企業価値を最大化する取り組みを行っています。ホタテやホッケなどの冷凍加工業や、北海道産ジャガイモを使用したコロッケ等の惣菜の製造販売を展開しています。

収益は、水産物の冷凍加工後の仲卸等への販売や、国内百貨店の催事販売等における食品の製造販売から得ています。運営は子会社のきゅういちが冷凍加工業を、マルヒロ太田食品が食品製造販売を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間では、前期まで売上高が拡大していましたが、当期は減収に転じています。利益面では前期に経常利益が大きく減少し、当期は各利益段階で赤字を計上する結果となっています。

項目 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 27億円 33億円 29億円
経常利益 3億円 0.8億円 -4億円
利益率(%) 10.8% 2.5% -13.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 -1億円 -3億円

(2) 損益計算書


前期から当期にかけて減収となり、売上総利益も減少しています。これに伴い、営業利益は前期の黒字から当期は赤字へと転落しています。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 33億円 29億円
売上総利益 22億円 18億円
売上総利益率(%) 68.5% 62.0%
営業利益 0.9億円 -4億円
営業利益率(%) 2.9% -13.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7億円(構成比34%)、広告宣伝費が3億円(同15%)、業務委託費が2億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


HR事業は求職者集客の苦戦による応募不足などから減収となっています。投資事業はホタテの原材料価格高止まりによる販売数量の減少などにより減収となりました。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期)
HR事業 21億円 17億円
投資事業 12億円 11億円
連結(合計) 33億円 29億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

クックビズのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動では、主力事業である冷凍加工業において原材料価格の高止まりや販売数量の伸び悩み等により、資金が流出しました。投資活動では、子会社株式の取得による収入があったものの、固定資産や無形固定資産の取得により資金が流出しました。財務活動では、借入金の返済等により資金が流出しましたが、新たな借入により資金が増加しました。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 3億円 -4億円
投資CF -5億円 -0.8億円
財務CF 3億円 0.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、食産業の発展のためには「人」がもっとも大事であるという事業の原点に立ち返り、「『食』は『人』」をミッションに掲げています。また、ビジョンとして「Empower the Food People」を制定し、人を起点に築いてきた事業を成長させながら、食ビジネスの変革に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材を惹きつける魅力ある組織基盤の構築を重視しています。ミッションへの貢献度を公正に測る評価制度や従業員同士の相互投票による表彰制度などにより、賞賛文化の醸成と相互理解を深め、組織一体感を生み出す文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期的な事業成長に加え、利益の持続的な成長による株主価値の向上を図るため、売上高、営業利益、営業利益率を重視する方針を掲げています。また、次期の早期黒字化を最優先課題とし、不採算コストの精査や固定費の削減といった抜本的なコスト構造改革を断行しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の成長とともに、多様化する顧客ニーズや課題を探索し、新たな収益機会の獲得を目指しています。既存システム基盤と求職者集客を掛け合わせた高付加価値なサービス開発を行うほか、マーケティング手法の強化やオフライン施策により集客の改善を図ります。また、DX領域でのクラウドサービスや事業再生領域を中心に新規事業の開発を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、高い専門性と挑戦意欲を持つ人材の獲得と育成が不可欠であると考え、役割と期待値を明確化する等級制度、ミッションへの貢献度を測る評価制度、パフォーマンスを適正に還元する報酬制度を三位一体で刷新しました。また、多様な人材の採用や研修の充実、副業解禁など柔軟な働き方を支援する環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 37.2歳 5.8年 5,800,682円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.0%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.2%
男女賃金差異(正規雇用) 73.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 53.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材関連市場の縮小や競争激化


同社グループは人材採用や入社後の活躍を支援する領域を中心に事業を推進していますが、市場規模の縮小や成長鈍化、同業他社との競争激化などが生じた場合、サービスの競争力低下や価格下落により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 求職者の集客と検索エンジンへの依存


人材紹介や求人広告において、求人情報サイトへの継続的な集客が重要です。集客は特定の検索エンジンからの誘導が一定割合を占めており、検索エンジンの表示方針の変更などにより集客効果が低下した場合、収益機会が減少し業績に影響を与えるリスクがあります。

(3) 求人企業と求職者のマッチング精度の低下


求人企業のニーズと求職者の希望や適性を適正にマッチングさせることが重要です。同社グループの取り組みにもかかわらず、マッチング精度の低下により成約率の大幅な低下や早期退職が増加した場合、事業の収益性や信頼性が低下する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。